聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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(2010年4月16日付で、名称を変更いたしました)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(厚生労働省講演1)

2005年12月28日 | 報告
11月23日に開催されました「いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を! 全国集会」について、午前中に行った厚生労働省の講演記録を掲載します。
講演内容は
 1.国会審議の状況
 2.11月11日全国会議における「地域生活支援事業」に関する説明
 3.コミュニケーション支援事業に関する検討事項
 4.聴覚障害者情報提供施設の位置づけ
 5.質問事項(※)に関する説明
 6.質疑応答
の6つに分かれています。1~3、4~6の2つに分けて掲載します。講演記録は、下に向かって掲載します。
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※集会前に厚生労働省へ4つの質問事項を提示していました。質問事項については、別に掲載します。
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厚生労働省報告「障害者自立支援法と施行のあり方」
講演者:厚生労働省 社会援護局・障害保健福祉部企画課 社会参加推進室室長補佐 田村 一 氏

 皆様ご苦労様です。ご紹介を頂きました厚生労働省の田村です。
 本日は「いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!全国集会」ということで、この時間をお借りして私どもから自立支援法の関係についてのご説明をさせて頂く時間を頂いたことは、私どもにおいても良い機会を頂いたと考えています。支援法の成立を受けて、今後、政省令あるいはガイドラインといったような検討を進めまして、あるいは来月の予算編成等を受けまして、施行に向けて準備を進めていきたいと考えております。
 特にコミュニケーション支援事業の新たなる枠組みでの施行については、大変関心の高いことと承知をしておりますので、本日はコミュニケーション支援事業の今後の施行に向けて、現段階で私どもが考えていること、あるいは今後さらに皆様との意見交換・協議等を通じて進めていくべき課題について説明させて頂き、皆様方からのご質問を受けて、今後の準備の参考にしていきたいと考えておりますので、よろしくお願い致します。
 本日の私の説明に際しましては、資料4ページに説明させて頂きたい4つの柱を準備致しました。全て詳細を説明すると時間がとても足りないので、この4つの柱を意識しながらご説明させて頂きたいと考えています。更に詳細な資料は25ページ以降に、先だっての11月11日に開催されました全国の都道府県、政令指定都市、中核市等の担当者会議においてお示ししました資料があり、後半には、成立し改めて公布されました自立支援法の条文等々が掲載されております。このへんを後ほど確認して頂きながら、私の話をお聞き頂ければと思います。

1.国会審議の状況
 先ほどの報告とも関連しますが、本年2月に国会へ障害者自立支援法として提出をさせて頂いた以降、衆議院の解散選挙があり再提出させて頂いた場面もありましたが、最終的には先の特別国会で賛成多数により可決・成立したところです。この間の国会におきます審議は、延べ76時間45分に及び、また参考人質疑を合計4回、参考人として合計25人の方にご意見を頂戴しました。更には参議院では、大阪府において地方公聴会を1回開催させて頂き、5人の方に口述をお願いした経過があります。こういう経過を踏まえ11月7日に平成17年の法律第123号として公布されているということです。この間、国会でのご審議において、今後の施行に向けての様々なご質問を頂き、私どもとしましても現在のサービス水準の低下をきたさないことはもちろん、今後の増大する障害者の方への保健福祉政策に万全の措置を講じて、今後増大するであろうサービス利用に対応する体制を各自治体をはじめ関係機関とも共同して作り上げていきたいと考えているところです。施行に向けての当面のスケジュールは25ページに主なもの、主な事項に沿って掲げております。後ほど、ご覧頂いてご確認を頂きたいと思います。
コミュニケーション支援事業が位置付けられます地域生活支援事業については、先ほどのスケジュールにも書いてございますが、先般の11月11日の全国会議において、基本的な考え方、これを各都道府県担当者宛にお示ししたところであり、資料は次の26ページ以降に掲げさせて頂いています。これに沿い若干、現段階での地域生活支援事業、あるいはコミュニケーション支援事業についてお話しさせて頂きます。

2.11月11日全国会議における「地域生活支援事業」に関する説明
 まず27ページの事業の性格については、地方分権の推進という要素も勘案しながら、1番目の○にありますように地域における利用者の状況ですとか、地域での社会資源の整備といったことも勘案し、地域のご判断に基づいて柔軟に実施して頂くことにより効果的・効率的な実施が可能となる事業を地域生活支援事業に位置付けさせて頂こうということであります。柔軟な形態は①~③に掲げておりますが、いずれにしても②にありますように、地方自治体を中心とした、地域で自主的に取り組む事業、こういう性格の事業を地域生活支援事業として改めて位置付けたいということであります。当然、3番目の○にありますように生活ニーズに応じて個別給付と組み合わせて利用することも可能ですし、あるいは単独事業としてご利用を頂くということも可能になるわけです。その他4番目の○にもありますように、今後の障害保健福祉サービスの利用の普及を考えていく上で、啓発に関する事業も、ここに位置付けていきたいと考えています。事業の性格・位置付けについては、これがベースになるわけですので、皆様におかれましても、ご理解を賜ればありがたいと考えております。
 次の28ページからが、これまでの現行事業の再編成、あるいは新規事業の構築というものも含めて、地域生活支援事業全体の事業の位置付けというものを、現段階におきまして暫定的に整理したものであり、冒頭で申し上げました施行に関する準備の過程で、整理・統合や名称変更もありうるという取り扱いをして頂ければ、ありがたいと思います。左側に現行事業を掲げていますが、これらが新しい地域生活支援事業のどの条項に該当するのかということを整理しています。これについて一つ一つ説明する時間はございませんので、本日はコミュニケーション支援事業の部分を中心に話をさせて頂きます。

3.コミュニケーション支援事業に関する検討事項
 コミュニケーション支援事業というのは、市町村の地域生活支援事業 第77条、第1項・第2号事業として位置付けられております。ここでは、手話通訳者の派遣事業、要約筆記者の派遣事業、手話通訳の設置事業、これを主な事業として位置付けようと考えております。この他、日常生活用具給付等事業もこの条項に該当するわけですが、ここに掲げた3つの事業を中心に考えているところです。これらについて従来の障害者社会参加推進事業の中で位置付けられていた、手話通訳者の派遣事業、あるいは要約筆記にかかる派遣事業、手話通訳者の設置事業を継続的に位置付けることを考えています。ただし奉仕員の派遣事業の関係については、今後の公的なコミュニケーション支援として、派遣サービスを担って頂く人材としての位置付けとして、関係の皆様から更に検討する必要があるという意見を頂いているので、この制度改革を機会に現在、更なる見直しを検討させて頂いています。ただ奉仕員に担って頂いていた場面、あるいは今後担うことが期待されている場面については、その役割はいささかも変わるものでないと考えています。そういう意味では29ページの第77条の3項、その他事業ということになりますが、その一番下の社会参加促進事業の中で、奉仕員の方々の養成研修事業について、市町村におかれても取り組んで頂くという位置付けを考えているところです。
 当然、要約筆記者の派遣についても同様の考え方から、その通訳技能の専門性に着目して新たに要約筆記者としての範疇に位置付けすることを検討中です。この事業名の考え方をもう一度繰り返して申し上げれば、それぞれ手話通訳者派遣事業、要約筆記者派遣事業というように明記していますが、この範疇には手話通訳の場面では当然、手話通訳士資格を持つ方々も含まれるものと考えていますし、現在の奉仕員の立場で担って頂いている方々も基本的には「手話通訳者」の言葉の範疇に含めて考える方向で検討中です。要約筆記の場面においても要約筆記者と明記しているが、この範疇には、これまで奉仕員のお立場で要約筆記のサービスを担って頂いた方も含めるという考え方です。 
 ただし、先にも申し上げた公的サービスを担うための一定のレベル・水準は必要であるため、奉仕員の方々に対して、どのようにその水準を明確にしていくのかが新たな課題であると考えているところです。
 それから30ページ以降が、都道府県の地域生活支援事業と考えております。今ほど申し上げました手話通訳者、あるいは要約筆記者の人材養成という部分を特に都道府県に担って頂きたいと考えており、その意味で30ページの下の78条の第2項事業に対応する育成事業の範疇に、手話通訳者、要約筆記者の養成研修事業を位置付けているところです。なお盲ろう者の通訳・介助員派遣事業がこれまで取り組まれていますが、これについては市町村におけるコミュニケーション事業として検討してきましたが、各地域での取り組み状況等を勘案し最終的には継続的に都道府県事業と位置付けさせて頂くことを考えています。31ページ中ほどに、情報支援等事業がありますが、この最後に通訳・介助員の派遣事業を改めて継続的に位置付けたいということです。これにかかる手話通訳者養成・研修事業を資料30ページに位置付けさせてもらっています。また、31ページの社会参加促進事業の中には、下から三つ目の所にあります奉仕員養成研修事業を市町村と同様に位置付けたいと思います。手話通訳者派遣ネットワーク事業も継続的に、ここで位置付けたいと考えています。申し遅れましたが都道府県段階における手話通訳者設置事業についても、31ページの中ほど、情報支援等事業の一つの事業として継続的にやって頂くことを考えています。
 一応、事業の新たなる位置付けについては、このような現段階での暫定案として整理させて頂きました。繰り返しになりますが、今後、検討を進めて参りまして、場合により事業名等の見直しも含めた更なる整理が行われる場面もあるということです。
 次に32ページですが、地域生活支援事業全体の国庫補助の有様について、現段階の大雑把な方向性として、そこに書いてあるような負担割合で補助をさせて頂くことを考えています。
 コメントが要るのが、2つめの※印の「18年4月より実施予定」と書いてある部分です。これについて地域生活支援事業としての施行は18年10月ですので、地域生活支援事業に対する補助としては10月分から適用されるという考え方に立つものです。ただし4~9月分の現行の枠組みの中で事業をして頂く分についての補助の仕組みは、18年度の1年間を通して実務処理等を勘案して、10月以降の地域生活支援事業と同様の仕組みで補助することが出来ないか検討中です。その際には、先ほどからの現行社会参加推進事業のメニュー事業等についても統合化をして所要の予算を確保し、10月以降の地域生活支援事業と、一体的に補助をさせて頂く、交付させて頂く、この効率的方法等を検討したいということで、少し言葉足らずではございますが、ご理解を頂きたいと思っております。
国庫補助の配分の考え方としては(2)にありますように、現行事業の仕組み、あるいは地域生活支援事業として位置付けられる事業の項目を示しましたが、そこにありますように、まず大原則としては、統合化される補助金ですので、私どもとしては、それぞれ掲げてある個別事業のそれぞれの所要額に基づく配分は行わない方向で考えています。基本的には、人口に基づく配分となろうかと考えていますが、2番目の○にありますように、現在、実施していない市町村あるいは、すでに実施して頂いている市町村、これの実施水準を確保するという意味合いから、現在の事業実施水準を反映した基準も設けて総体的に配分額を決定したいと考えています。そこは来年度の予算編成等を踏まえて改めて検討したいということです。
 33ページは利用者負担の考え方を書いています。ここで特にご確認をお願いしたいのは、地域生活支援事業に規定する各サービスをご利用頂く際の利用者負担は個別給付の場合と異なり、一定の定率の負担をお願いすることは考えていないということです。繰り返しますが、地域生活支援事業のサービスをご利用される場合でも、個別給付と同様、1割なら1割の定率負担が求められるのではないかというふうに受け止めておられる方がいらっしゃると聞きますが、地域生活支援事業につきましては、その仕組みは考えていません。 
 むしろ①、②にも書いてありますように、冒頭申し上げた事業の性格、あるいは地方分権推進を考えると、利用者負担の方法も全国一律に定められるべきものではなく、基本的には事業の実施主体のご判断にゆだねたいと考えています。ただ従来からの負担をお願いしている事業も改めて位置付けられ、またコミュニケーション支援のように、従来から無料の位置付けでご利用頂いた場面もあり、そういう状況を各実施主体においては考慮頂き、ご判断頂く仕組みにしたいと考えています。
 時間の関係でこの程度のご説明に止めざるをえませんが、こういった基本的な考え方を踏まえ更に検討し、年明け以降、予算編成を踏まえ、地域生活支援事業にかかるガイドライン案をご提示するとともに、補助金の配分方法も提示させて頂きたいと考えております。合わせて4~9月分までの現行事業の統合後の「地域生活推進事業」というふうに私どもは名称を考えておりますけれども、これに関する実施要綱案もお示ししたいと考えています。これらの案について、関係自治体、及び皆様を初めとする関係団体との意見交換の場を持たせて頂いた上で、年度内にはそれぞれガイドライン等の確定・通知をと考えています。18年4月以降、各自治体において規程整備をし、その体制整備を進めて頂くことになると思います。それから地域住民・国民の意思として地域生活支援事業、特にコミュニケーション支援事業を推進していく上で計画作りが大変重要ですので、国会での審議の過程の中の附帯決議で、この計画作りへの皆様をはじめ障害をお持ちの方の参画、各地域における数値目標の設定などが提起されているので、こうしたことも踏まえながら、各自治体において体制整備を進めて頂きたいと考えています。その上で10月以降の地域生活支援事業として施行して頂くことになるわけです。なお付帯決議については、資料40ページ以降に掲げてあります。後でご確認を頂ければ、ありがたく思います。

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(厚生労働省講演2)

2005年12月28日 | 報告
4.聴覚障害者情報提供施設の位置づけ
 各市町村におけるコミュニケーション支援事業を言わばバックアップするという意味で、各都道府県でのお立場での情報提供施設の役割が今まで以上に重視されてくると考えています。そういう意味で、この付帯決議の中でも改めて各都道府県におきます聴覚障害者情報提供施設の設置の推進がうたわれておりますし、また情報提供サービスとしての新たなるネットワーク構築などもIT技術を活用した情報提供施設の機能として求められています。今後そういうことも含め市町村等の情報支援事業の具体的な担い手ということも含めて、運営の充実に努めていきたいと考えています。

5.質問事項に対する説明
 説明が長くなりましたが、集会にあたって、4項目について説明するよう提起頂いたものがあります。皆様方の資料の3ページです。
 まず1番目は、先ほども少し触れましたけれども、地域生活支援事業のサービス利用の際の利用者負担の問題について、各都道府県、市町村へ指導する件。コミュニケーション支援事業につきましては各都道府県、市町村におかれても、その重要性や聴覚障害者の実態等を踏まえ、最終的には市町村等の判断で決定されますが、これまでと同様、無料扱いになることも期待されます。私どもとしてはガイドラインを示すことを考えていますが、利用者負担の問題について、今のところは、市町村の判断にゆだねたいと考えていますので、ガイドラインに盛り込むことは考えていません。今後の事業全体の更なる検討、あるいは関係者のご意見を踏まえ検討を進めていきたいと思います。
 ただここでご注意頂きたいのは、指導という言葉を皆さんお使いですけれども、地方分権の考え方においては、国と都道府県、市町村、地方自治体というのは従来の上下関係ではありません。一つの福祉サービスなら福祉サービスを推進していく上での重要なパートナーという位置付けであり、現在は、指導ということは権限上出来ないので、言葉を変えるなら、技術的助言という言葉で代表されるように、国としての考え方を示し、それを受けて各自治体がその責任・裁量においてご判断頂くこととなっております。国が都道府県、市町村、自治体に対して指導するというのは、これまでと違うことを理解して頂きたいのです。
 2番目のご質問について、今後のコミュニケーション支援事業の省令での規定についてです。コミュニケーション支援事業に限らず地域生活支援事業にかかる政令・省令等については現在検討中です。これまでの身体障害者福祉法との整合性で言うと、はっきりしておりますのはコミュニケーション支援事業の手話通訳等で規定する省令事項は、要約筆記事業がまずもって掲げられると考えています。それ以外の事業については現在検討中ですが、おそらくガイドラインの中で示すことになると思います。
 3番目のご質問の中で都道府県の広域事業実施についての心配が提起されていますが、これについては自立支援法の地域生活支援事業の実施体制としては、コミュニケーション支援事業について、まず市町村が責任を持って実施することが法律の上においても、大原則です。ただし何らかの理由により市町村での実施体制がともなわない場合には、都道府県が代わって実施することが出来るとの規定があります。コミュニケーション支援事業の重要性について各自治体で、これまでの実績等を踏まえて十分認識してもらっていると思います。指導という場面ではありませんが、各地域でのニーズに応じたコミュニケ-ションサービスが適切に実施されるよう助言をしていきたいと考えています。
 4番目のご質問は、障害程度区分認定、あるいはモニタリング等の支給管理に関する部分のコミュニケーション支援について、予算を確保するのかどうかということです。この問題は根本的な問題と考えていますが、現段階では、従来の派遣事業、設置事業を円滑にならしめるための予算の確保、地域生活支援事業としての予算確保を第一に考えているので、このところに当面は全力をあげて取り組んでいきたいと考えております。そもそも論として、いろんな分野でコミュニケーション支援の態勢の確保は大変重要かと認識しています。国会においても皆さんのご要請等を受けて、国会の責任と負担において手話通訳者の配置が実現致しました。こうしたことを契機として様々な分野で、それぞれのサービスを提供する事業体が自治体は当然のこと、様々な事業体がコミュニケーション支援の態勢を確保し、社会全体に普及していくということが大事と思っています。今後の制度施行の過程で改めて取り組んでいきたいと考えています。
時間の関係上以上で終わり、更にご質問を受ける中で補足的に説明したいと思います。
 どうぞよろしくお願い致します。ご静聴ありがとうございました。

6.質疑応答
(司会)厚生労働省からの報告頂きました。今度は皆様からのご質問をお受けしたいと思います。ご質問の方は県名とご自分のお名前をおっしゃってからご質問お願いします。

(兵庫・山下)手話通訳者の養成についてです。今回、都道府県事業の中に入っておりますが、大都市特例がなくなっています。今まで市でやっていた養成の部分がどうなるのか凄く不安に思っております。

(田村)先ほどお示ししました事業の構築においては、都道府県事業として養成研修事業を引き続き、充実強化をしていこうと考えています。政令指定都市等で実施して頂いている事業については、まず法律上の制度の建前から申し上げると、人材養成というのは都道府県域において一定の水準を確保した担い手の方たちを、各市町村でお仕事をして頂く為に必要な数を確保して頂くことが大原則になるわけです。しかしそうは言いましても大都市、政令指定都市でこれまでやって頂いた養成事業について、自立支援法に基づき再構築するにあたって、私どもとしましては、すぐ止めて頂く必要がありますと申し上げるつもりはございません。都道府県、及び政令指定都市の範囲で今後のコミュニケーション支援サービスの提供、あるいは利用を考えて頂いて、その上で継続的に政令指定都市の方で実施して頂くことが有効であるということであれば、私どもとしてはニーズに対応する体制の整備という意味においては大事なことではないかと考えています。国としての補助についてどうするのかということは、その他の事業の更に必要な事業として補助の道があるかどうかを検討していきたいと思います。要は、先ほど申し上げました計画作りということもありますので、コミュニケーション支援の利用を適切に実施するための、それぞれの地域におけるニーズはいったいどのへんにあるのか、量的にもどうなのか、いろんな生活分野でどのへんにあるのかということを、これを機会に各都道府県、政令指定都市、中核市、その他の市町村において、ご議論して頂いた上で、その地域において効率的・効果的な事業体制を整えて頂き選択して頂きたいのです。そのニーズをきちっと共通認識としてもって頂ければ、養成研修事業を経てその直接的な担い手をその地域内において、どのように確保していくのかということに繋がるのではないでしょうか。それを可能ならしめる為の養成研修事業の取り組みについて、これまでの政令指定都市のお立場で果してきた役割を踏まえ、改めてどういう体制で取り組んでいくのか、一定の方向性を示して頂くことを私どもは、ぜひ期待しております。
   
(東京・中島)二つお伺いしたいことがあります。一つは先ほどコミュニケーション支援事業の担い手として手話通訳者のご説明がありまして、その中に「手話通訳士」を含むと、「士」以外の今の現在の奉仕員に関しても一定のレベルを確保することが必要だとのお話があったと思います。その一定のレベルというのは全国的に何かを決めるご予定があるのか、あるいは市町村にお任せするのか、そのあたり具体的な方向があるのかということと、もう一つ、予算配分について。「統合補助金であるから個別事業の補助金の所要額に基づく配分は行わない」と言われながら、先ほどから細かい説明があるのですが、その統合補助金できた場合、その個別支援事業の中のどの部分をやるのかは、まったく市町村任せになるのか?ということと、もう一つお金のことだが人口に基づく、全国一律の基準、更に、現在の事業実施水準を反映した基準による配分で、現在の水準を維持する為にある程度考慮すると伺ったが、そうすると現在ない所に対しては不利なのではないかと。新しい事業を作ることを促進する為には、今、手話通訳派遣事業がない所が起こせるような支援がもっと必要ではないかと個人的に思うが、このあたりをどう加味されているか説明お願いします。

(田村)一番目のご質問でございますが、担い手としての手話通訳者の範疇及びそのレベルの問題かと思います。特に改めてこれまで奉仕員というお立場でやってきて頂いた方の水準・レベルの問題について、国として一定レベルを決めていくのかということを考えているのかということでございます。これは、これまで皆さんからのいろんなご意見を頂戴しており、また要約筆記でも同じ問題があるわけです。私どもと致しましては、先ほど申し上げました通り、公的福祉サービスの担い手は、社会的にもきちんと明確になったレベル・水準をお持ちの方に担って頂くことが今後どうしても必要じゃないかと考えるわけです。そういう意味でボランティア的な要素の強い奉仕員という言葉自体を使うこともやめたいのです。そうしますと、これまで奉仕員として担って頂いた方々が新たな制度の枠組みで、手話通訳者の範疇に属する担い手としてサービス提供をして頂くことに関しては基本的には、何らかの社会的認知を受けた一定の方向性を提示する必要があると考えています。それを経過措置の中で担い手としての力量・技術があるかどうかの認定をする「認定事業」として統一的にやるかどうかということになるわけですが、要約筆記の問題もございますので、これについては更なる協議・検討を進めていきたいと思います。
 予算配分については、統合補助金として総体として補助をさせて頂くことになりますがここの意味するところは、各地方自治体(都道府県・市町村)が、先ほど掲げさせて頂いたような事業を満遍なくすべて実施するということが理想ですが、現在の様々な状況によって幾つかの事業を選択して実施する場面もあると考えます。これは社会参加のメニュー事業と同様、地域におけるニーズをふまえて、どの部分を優先的に行っていくかについては、各地方自治体のご判断にお任せしたいと思っているのです。その結果、それぞれの各地域において予算的に事業規模がこれくらいであるという言わば総合計が出てきますので、その総合計に対して、人口に基づいた指標、あるいは事業実績をもちいた指標で、総体的な総額として配分、補助をさせて頂くというふうにしていきたいのです。
 そういう意味で、掲げております各事業の選択は、都道府県・市町村のご判断にお任せをするということです。
 それに関連し今、未実施の所の自治体における事業取り組みにインセンティブを働かせる意味での支援も必要かということです。私どもの立場で言いますと、先ほど申し上げた各自治体が改めて各地域のニーズを踏まえた上で、こういう事業をやりますと明確にしていただいた上で、それに必要な事業費はこれだけになるので、これに対応する国の補助金を交付して頂くという位置付けにならざるをえないので、まずは、これまで未実施の自治体において、まず利用者のニーズを踏まえ、あるいは各自治体における社会資源の整備状況等を踏まえた上で、事業を実施するか否か、実施する際にはどういった体制を確保するのか、それに要する費用はどうなのかを、まずもって明確にして頂きたい。これを是非お願いしたいと考え、その上で国としての補助配分が決まるということです。

(鹿児島・山口)2点ご質問したい点があります。1点目、コミュニケーション保障について。今まで国会のいろんな委員会でも、聞く権利、知る権利、コミュニケ-ション保障は生きる為の保障であるという議論があった。福祉の範疇ではなく、言語的な取り組みが必要ではないかと思いますし、憲法25条に、最低の保障をすべきという所があり、言語的な考え方であると私は思っています。それに対しての厚生労働省の考え方を示して頂きたい。
 2点目、先ほど都道府県に対して指導は出来ない代わりにパートナーとしてというお答えがあったと思いますが、現実としては都道府県また市町村におきまして職員のレベルは、まだまだです。厚生労働省のレベルには、まだまだ追いついておりません。そういう所が、ほとんどだと思います。それについて、どんなふうに対応していかれるのか、またガイドラインの位置付けをはっきりして頂きたいと思っています。

(田村)手話に関しての言語的な考え方について、いったい貴方はどう考えているのか?というご質問かと思いますが、再三申し上げています通り、私どもの立場としましては、手話を初めとするコミュニケーション支援は、保障的な意味において大変重要だと考えています。そういう意味では、この日本という社会、世界のどの社会でもそうだと思いますが、きちっとしたコミュニケーション保障の支援体制が、それぞれの分野における、各事業体の責任において確保されることが大変重要かと思っています。その方向性を可能ならしめるよう考えていきたいと思っているところです。現在、福祉サービスという位置付けで派遣事業・設置事業の対応をしていますが、実は利用者とは何かということを考えると、私は直接的に聴覚に障害をお持ちの方は当然のことながら、国会を初めとして様々な社会サービスを提供する事業体全てが、場合によっては利用者というふうに考えても、おかしくないのではないかと考えます。ただ、その際にかかるコスト、費用をどういう形で負担するかは別問題で、福祉サービスという位置付けで国民的合意を受けたものに対して公費が投入されて皆で支え合うという位置づけになるわけです。その他の様々な生活分野でのコミュニケーション保障の体制確保に対する費用は、それとは違う形でまかなわれるべきものになるであろう、これをどういう形で進めていくかということになります。こういった考え方を持ちますと、その担い手は、もっともっと今以上に高いレベルをも持った方たちが相当程度必要になってくるであろうと考えているので、その確保のためには、どういう方策をどういう費用負担に基づいてやっていくのかということを考えていかなければいけないと考えています。そういう意味では私自身は、正におっしゃる通り基本的な人権確保の一つのあり方と思っているので、それを社会的に広めていく、これまでの福祉サービスの実績を踏まえて、これまでの考え方で方向修正を行なうことが出来れば、今以上に良い社会状況になると考えるのです。
 2番目にガイドラインの意味する所は何かについて。これは国として、事業実施にあたっては、こういうことに留意し、こういうところをきちっと押さえて事業実施して頂きたいという骨の部分を示すという意味合いです。国と地方との行政権限においては、技術的助言という言葉に代表される権限で整理されているので、そういう意味でのガイドラインという名称を用いているということです。そこに盛り込まれる内容、骨にふさわしい内容がどの程度のものなのかについては、他の様々なガイドラインの内容を考慮して、今回、考えていきたいと思っています。
要は、第一次的実施責任を持つのは、国ではないというわけではございませんが、三位一体という議論もあるわけで、地方分権の中においては地方自治体ということです。それを十分考えた上で私どもの立場としては骨になる部分をお示しする。そして、骨に改めて血を通わせ肉を付ける、そういう役割を地方自治体に担って頂くという行政体制・構造になっているということを十分ご理解頂き、再三申し上げている通り、各地域での体制作りに向けて、これまで以上に共同という考え方で議論を深めて頂くことを是非、お願いしたいのです。

(福井・吉田)ご質問が2点あります。先ほどのお話の中には含まれておりませんでしたが、コミュニケーション支援事業は、例えば身体障害者手帳を持っている人たちが対象なのか、障害者の程度区分に含まれている方、聴覚障害で、そこでコミュニケーションが難しいというところに該当するのか?それから2点目、設置事業について。現在、市町村、市役所それから県などに手話通訳の設置はなされていますが、今後、私たち聴覚障害者が福祉施設をスムーズに円滑に利用するためには、手話通訳が民間の施設にも設置される必要があると思うが、その為の補助金というものは含まれるのか、どのようにお考えなのか、以上お聞きしたいと思います。

(田村)手短にお答えするつもりなのですが、どうしても私の気持ちを込めて詳しく説明したいと思うものですから、時間を取ってしまいます。
1点目、地域生活支援事業の利用は、個別給付と違うので、今後、新たに明確にされる障害程度区分の認定に基づく制約を受けることは基本的には考えておりません。ただ、一つの利用の場面においては、障害程度区分の情報も含めて、市町村なら市町村あるいは委託を受けた事業体でその必要性を充分に確認して頂くことを考えています。
 2点目の設置事業の民間への普及と、それに対する補助のお話について。これは先ほど申し上げました通り、民間への普及については、私どもと皆さんが一緒になって声を大きくして進めていくべき問題だろうと考えます。ただ民間事業所への設置事業的な体制整備について公的給付、公的助成の対象にするかは議論のあるところです。
福祉サービスとして、設置事業等を自治体を中心としてすすめて頂くことは優先的に考えなければならない体制作りで、公的な助成を用いて更なる普及をはかりたいが、それぞれの分野に対して、言わば民間企業活動的な分野にまで税金を投入していくのは、今日のあるいは今後の社会状況の中で国民的合意をえられるかどうかは私は別問題だと考えています。そういう意味で、別の普及対策、人材の確保も含めて考えることは重要だと思っています。
まだまだ、ご質問あると思いますが、この場でご質問頂けなかった方に対しては事務局で取りまとめをして頂いて、この集会における質問事項という事で私どもの方にお寄せ頂ければ文書でご回答させて頂きます。今後こういう機会があれば私ども参りまして十分時間をとってご説明させて頂きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い致します。ありがとうございました。

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(厚生労働省への質問事項)

2005年12月28日 | 報告
11月23日の全国集会での厚生労働省への質問事項

(1)障害者自立支援法案で義務化された市町村におけるコミュニケーション支援事業の内容を省令でどのように規定され、かつ市町村の実施責任をどういう形で指導されるのでしょうか。特に手話通訳設置事業について、少なくともこれまで都道府県や市町村が行ってきた設置事業を後退させない点での配慮を考えていらっしゃるのでしょうか。
例)第2条第1項弟3号の具体的な手だてとして都道府県、市町村の障害福祉の窓口となる部署にこれまでの手話通訳設置事業を活用し手話通訳者を配置することで対応し、また弟77条弟1項弟2号の手だてはすべての市町村が手話通訳派遣事業を予算化し対応すると考えていいのでしょうか。

(2)聴覚障害者が居住市町村の中だけで行動することはごく限られています。広域的な派遣が保障されるには、地方自治体が広域派遣を積極的に取り込むよう指導が必要と思われます。厚生労働省は、都道府県に対して、市町村の派遣事業の実情をよく把握して実質的な後退が起きないよう指導されるのでしょうか。
例)障害者自立支援法案で、都道府県は基盤整備の観点から「養成事業」実施、市町村はサービス提供の観点から「派遣事業」実施と整理したことにより、来年度に向けて都道府県レベルの派遣事業等(設置を含む)を廃止する動きがでているので、空白地帯ができる可能性が高まっています。

(3)社会保障審議会障害者部会がまとめた「今後の障害保健福祉施策について(中間的な取りまとめ)」では「聴覚障害者に対する手話通訳や要約筆記などの情報・コミュニケーション支援については、現行の支援費制度の対象事業となっておらず、また、あらかじめ予期できないニーズに臨機応変に応えるため、ホームヘルプや他のサービスとは別系統のサービスとして考えるべきである。」とされ、また「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」の「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する議論の整理」においては、「ノーマライゼーションの理念の下、生活のあらゆる場面で、情報・コミュニケーションが保障されることが重要であり、対人サービスとしての福祉施策での取組みにとどまらず、あらゆる公的分野をはじめ、民間を含めた取組みが期待される。」と確認されています。個別給付に馴染まない性格を持つコミュニケーション支援事業において聴覚障害者の利用料負担を導入すべきではないことを都道府県・市町村に指導することを考えていらっしゃいますか。

(4)自立支援給付にかかる障害程度区分認定や、サービス提供時に必要となるコミュニケーション支援について、地域生活支援事業による手話通訳等の活用だけでは、同事業の予算が足りなくなる可能性が十分にあることが、支援費事業のデータから明らかになっています。区分認定やモニタリングなど、支給管理に係る部分だけでも独自予算を確保する必要がありますが、その予定はありましょうか。

【報告】12/22 厚生労働省と意見交換を行いました!

2005年12月26日 | 報告

2005年12月22日、対策中央本部として、厚生労働省社会参加推進室とコミュニケーション支援事業に絞って意見交換を行いました。

厚生労働省は、12月26日の全国課長会議にて地域生活支援事業に割り当てられた予算200億円(2006年10月~2007年3月)の全国への配分方法と、本事業の概要についての説明を行なうとのことです。来年1月末の全国部長会議までに、地域生活支援事業のガイドライン(実施要項を含む)案を準備し、検討を積み重ねながら、3月には確定するという段取りです。
22日の意見交換の結果、対策中央本部が提出した要望書の各事項をガイドラインに入れられるか否かの形で検討いただき、1月に再度意見交換を行なうことを確認しました。

この意見交換の材料として提出した要望書は、下記の【中央本部→厚生労働大臣 要望書】をクリックすると、見ることができます。

【中央本部→厚生労働大臣 要望書】(PDF版)

【この日の出席者】
安藤理事長(全日ろう連)、佐藤事務局主事(全難聴)、鈴木運営委員(全通研)、小椋会長(士協会)、太田理事長(全要研)
社会参加推進室室長、室長補佐

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日本障害フォーラム(JDF)が、2005年11月30日に「障害者自立支援法成立に伴う緊急要望書」を提出しました(下記の【障害者自立支援法成立に伴う緊急要望書】をクリックすると、見ることができます)。
対策中央本部の中では、全日ろう連と全難聴がJDFに加わっています。11/23の全国集会を受けての対策中央本部としての要望は、両団体を通じてJDFの要望書に書き込まれています。

【障害者自立支援法成立に伴う緊急要望書】(PDF版)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告2)

2005年12月09日 | 報告

11月23日に開催されました「いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を! 全国集会」について、午後に行った3つのフロアディスカッションの様子を中心に報告します。
(この集会の報告だけ、下に向かって記事を掲載します
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(1)平成18年度予算獲得への対策について
◆パネラー
川根紀夫氏(日本手話通訳士協会事務局長)
高岡 正氏(全日本難聴者・中途失聴者協会理事長) 
石川芳郎氏(全国手話通訳問題研究会副運営委員長)
石野富志三郎氏(全日本ろうあ連盟事務局長)

◆発言・討議内容
【川根】私が予算確保のお話をすることになったのは、自治体で自立支援法を担当し、予算編成を担当しているからだと考えていただいたらよいと思う。
 まず、レジメの内容に入る前に、お話ししておく。一つは、手話通訳事業において、どの領域を誰が、どのように通訳するのかは、予算の問題とは切り離して考えるということ。二つ目は、障害者自立支援法は、サービスを提供するための法律であって、障害者の自立を支援する総体としてあるものではない。ここを押さえる必要があると思う。そのサービスを受けるにあたって必要な情報の保障が得られるのかどうかがひとつのポイントと考えていただいたほうがよいと思う。
 では、レジメの5ページへ。もう、市町村では予算の編成作業は終えているのではないか。特に、都道府県、政令指定都市では担当レベルでは、もう確実に終わっている。自分の勤めている市では、昨日、丸一日、財政当局と激論を交わしてきた。それで、担当レベルのヒアリングは終わった。だけど、これで終わったわけじゃない。予算は、予算書が刷り上るまで、直しは利く。昨日、私が財政当局とやりやったのは担当レベルのヒアリング。財政当局の担当者が上に説明するのに必要なヒアリングをした。そして、財政当局の担当者は、自分の課長とヒアリングをし、課長と終わったら部長とヒアリングをしなければならない。当然、福祉部長と財政部長とのヒアリングもあり、市長査定もある。だから、まだ時間はある。時間がないわけではない。
 最終的には、議員発議か何かで、「手話通訳事業がないじゃないか!ちゃんと盛れ」と言ったらよい。議会になれば、来年の2月、予算書が刷り上ったあと、議会で予算を修正させるという手続きがまだ残っている。これは、18年度予算、来年度の予算をどう組ませるかということ。特に、手話通訳事業、要約筆記事業の関係予算をすべての市町村で組ませること。午前中、田村さんは、事業の実施主体は市町村とおっしゃった。市町村が必ずやらなきゃいけないのは予算(確保)。事業をどこでやるかというのは別問題。というのは、情報提供施設、団体が運営する事業体などに委託する方法もあり、直営と委託と方法がある。どちらも予算化しないとできないということ。
 来年度予算に向けて、今年度、まだがんばる時間がある。少なくとも、今日の集会が終えたら、地域で、もう一度、市町村と交渉しよう。担当者に「手話通訳事業の予算を組まなければならない」と思わせて、財政当局に走っていくことが大事。まず、これをやらないと、財政当局は予算化せず、話が進まない。
市町村の担当者には、「やらないのはおかしい」と詰めてもだめかもしれない。なぜかというと、市町村にもそんなに情報が降りていない。市町村は、今、何をするかを考えるだけで手一杯。市町村の担当職員とは手を組もう。本当に忙しい最中、がんばっている市町村職員の身になって発言することも大事なポイントかも。
もし、18年度の予算編成に間に合わなくても、慌てる必要はない。基本的なスタートは18年4月とか10月という施行日はあるが、本質的スタートは19年の4月だと思ったほうがいいのかも。この状況では、十分な体制で、新しい事業をスタートすることはできない。
 もう一つ、障害者福祉計画を作ることになっている。障害者福祉計画は、今まで都道府県や市町村にあった障害者計画、いわゆる障害者プラン。これとは別に、障害者福祉計画を障害者自立支援法では作ることになっている。障害者自立支援法はサービスを提供するための法律。このサービスがどれくらい必要かの数値目標を立てて提供することになっている。障害者計画と違って、障害者福祉計画は義務事業。でも、いま、どこも着手していない。この障害者福祉計画づくりは、18年度中に遅くとも終えることになっている。18年度中に、「手話通訳の必要な人たちの数、必要なサービス量、要約筆記を必要とする人たちの数、必要なサービス量、県内全部の手話通訳ニーズを満たすための手話通訳者の数」とかの目標を立てることが障害者福祉計画。遅くとも、この障害者福祉計画に反映させることが重要。特に、地域生活支援事業は、この障害者福祉計画に基づいて、国は予算査定をするといっている。そういう意味で、とても大事。だから、もし18年度予算に間に合わなかったら、障害者福祉計画に自分たちの代表を送り込む。各市町村でもやるし、都道府県でもやる。その地域に、手話サークルやろうあ協会がなかったら、県の代表がそこに行けばいい。参加させてもらい、自分たちの意見を述べさせてもらう、そういう機会づくりがとても重要。
 ちなみに、国はいくらの18年度予算に概算要求を出したか? 10月から来年の3月までで200億円。1年換算で400億円。田村さんは人口規模別にとおっしゃった。ひとつの指標だが、人口で割ると400億÷1億2000万人で一人あたり333.333…円、ざっと300円という計算。僕のところは人口17万人の市。ざっと計算して5,200万円、5,000万強。これは国から来るお金。都道府県は25%、予算の範囲内で支給することになっているから、2,500万円足すとだいたい7,500万円が地域生活支援事業としてくることになる。市町村が25%出すから、1億円の事業が組めるという考え方。1億円のうち手話通訳事業の予算はそんなに大きくない。そんなにむずかしいことではないということ。
 次に、6ページ。障害者自立支援法の中には、コミュニケーション保障に関しての2つの条項がある(資料に官報あり)。1つは第2条第3項、市町村は、障害福祉サービスを利用するにあたって、情報保障をしなければならないという条項。第77条に手話通訳事業が載っている。これを市町村交渉の時に、性格分けを。それが正しいということではなく、市町村職員にわかりやすく説明するにはどうしたらいいか考えた結果。
 第2条は、市町村が、障害福祉サービスを受ける聴覚障害者に情報保障する必要があると考えると、手話通訳設置事業、手話通訳として設置された人の基本的な仕事と考えたらどうか。第77条は、手話通訳派遣システムを構築する条項と考えたらどうか?第77条は派遣事業、第2条は手話通訳者の設置事業と、単純化して考えてはどうか?第2条は、コミュニケーション保障の条項だから、市役所のバリアフリーではなく、聴覚障害者の人たちのコミュニケーションバリア、障害者福祉のコミュニケーションバリアを取り除こうという考え方。そこで、手話通訳派遣事業と設置事業を両立させていく運動を進めたらどうか。これが、6ページの手話通訳設置事業の説明。設置事業では、障害者自立支援法、介護保険といった障害福祉サービスを利用する聴覚障害者の情報保障の拠点という考え方として整理したらどうか。市町村の設置通訳者が、市町村で派遣事業の予算を組む。設置通訳者たちは、障害福祉のバリアフリーとして機能する。
 もうひとつ、日常的に手話通訳をつけることで社会参加していこうという聴覚障害者の人たちは、派遣事業を中心に組み立てるという理屈で整理している。実際には、そんなにきれいに分けられるものではなく、混在や、機能しあうこともあるが、市町村の職員、財政当局にもそう説明してきている。これは、田村さんいわく「技術的助言」。
 これから、それぞれの地域で、実践、成果の交流が進んでいくと思うので、いい方法を生み出し、ひとつひとつ達成していくことが大切。少なくてとも、すべての市町村が手話通訳事業、要約筆記事業を予算化する、そこに絞って、これからどう説明したらいいかを、一緒に考えたい。以上。 

【司会】討論に入る。意見、質問、こちら(舞台前)に並んでください。

【門倉(石川)】市町村で、地域生活支援事業が必ず始まることになり、自治体職員は、その企画・予算編成について、地元の協会、手話通訳者集団などと話しをする機会も出てくる。自治体職員、手話に関わらない障害福祉の職員が実際に研修できる場を提供できないか。国のガイドライン、プラスα、県の行政サイドと一緒に要綱づくり、システムづくりとかを、お互い提案できる場所を提供できればいい。手話研修センターでもよいし、ブロックレベル、県レベルで形にできないか。活動レベルではなく、行政職員と対等に話すためには、知識がないといいものが生まれない。
 2つ目は、生活支援事業における設置事業。補助金であり、三位一体もからむ中で、一般財源化への不安が出るので、交付税の算定で、市町村の定数内職員として採用することを謳えないか。以上2点。

【司会】今の質問に対して、お答えを。

【川根】全く手話がわからない担当職員に呼びかけても、人が集まらないのでは? やるとしたら都道府県レベルであり、県への働きかけは可能と思う。
 というのは、かなり忙しくなる。たとえば、自分がいる佐倉市(千葉県)には、1,200人の精神障害の通院医療費助成を受けている人がいて、今、支援費を受けている身障・知的・精神の人が700人いる。来年の4月までに精神障害の人たちは、利用の決定手続きを全て終えなきゃならない。支援費を受けている人たちは、来年の4月に利用料が変わり、手続きを全て終えなければならない。終えないと、事業者との契約ができない、病院にかかれない、ということになる。なんとしても、2月中旬までに合計1,900人の手続きをという段取りの中で、手話通訳だけで呼びかけられても、個人的には、行く気にならない。それより、県に働きかけて地域生活支援事業の総体として、全て、義務的な事業をどのように市町村で組んでほしいのかを職員に伝えていくとことを、県に働きかけるほうが得策だろう。
 2つ目。市役所には、市の人口による全体の職員数、福祉部の職員数の定数にもとづいて配置されるのが基本だが、手話通訳設置事業の職員を市役所の職員にすることは、ひとつの運動の方向ではあると思う。ただ、3番目のディスカッションの提言で、手話通訳の定数のことは触れることになっているので、あとで、石野さんからお答えがあると思う。

【井上(鹿児島)】19年度予算について質問。設置事業・派遣事業を、現在やっているところでも、予算確保なかなかむずかしい。そこへ、新たに要望し、行政がやりたいと思っても、なかなか単独ではやれない。広域でやれば、その時は、県が取りまとめしてくれるのか? それとも、近隣市町村が相談するのか、行政ではどういう手続きを踏むのか? もうひとつは、障害者福祉計画をつくる時のニーズ、数量把握という問題があったが、これから掘り起こすニーズがあると思う。具体的に、行政担当が、ニーズの掘り起こしをするのか? 実績で予算をつくるのか? 行政担当がしないのなら、われわれはどういうニーズの掘り起こし、実績づくりをしなければならないのか? 行政は予算づくりに、実績が一番大切だと思う。行政がその数量をいかにして作り、いかにしてつかむかを教えてほしい。

【司会】では、回答を。

【石野】連盟の事務局長の立場だけれども、住んでいる滋賀県の取り組みをご報告したい。運動面の、細かいことは、県の対策本部長にご説明願う。
資料の34ページ。滋賀県では、ろうあ者のコミュニケーション獲得対策支援事業の要綱が記載された。交渉積み重ねてきた結果。11月9日、ろうあ者、関係者団体への県の説明会があり、県の方針は①18年度、全ての市町村に手話通訳、要約筆記派遣事業を実施する②手話通訳は無料ということ。
 市町村が手話通訳、要約筆記派遣をする場合、直営、委託と2つの方法がある。委託は情報提供施設があり、運営を担う(社福)滋賀県聴覚障害者福祉協会がある。社会福祉法人と、市町村が契約をする。対策本部は市町村と交渉を重ね、県内全市町村への説明を全て終わった。市町村との話し合いで担当者が「ろうあ者は書けるし、話せる。手話通訳は不要では」と。要約筆記の団体の派遣についても、難色を示していて、これには反論し、説明を続けている。
 市町村が直営を実施する場合、できないところは、手話通訳・要約筆記・登録通訳者が非常に少ない。対応ができないということ。そこで、委託になる。県で示している単価は1時間3,000円。手話通訳、要約筆記いずれも単価は同じ。
 市町村の予算編成をどうのように獲得していくか。静岡県の例で、市町村に移行する時、拠出しているところの1.4倍をもとにして、手話通訳の派遣事業を行っている。たとえば昨年、手話通訳の派遣、要約筆記の派遣の実績数に1.4倍の予算を組むという方法。そう説明してきている。
 モデル要綱については、資料36、37ページ。実施主体は直営、委託と分かれている。要約筆記も。利用料は無料とはっきり明記されている。問題は手話通訳の設置のないところ、派遣事業だけ実施しているところ、設置も派遣もないところ。もし、市町村から提案があれば、設置、派遣を要綱にそってと要望、提案していく必要があると思う。
 今までの運動の成果の積み重ねがあるわけで、千葉も無料と聞いている。滋賀から、運動の説明があればお聞かせ願いたい。

【司会】滋賀の方、どうぞ、説明してください。

【辻(滋賀)】運動面で、いくつかご説明したい。11月9日、県の障害者自立支援課から、課長補佐と担当者2名が参加してくれた。あと、地域対策本部加盟の6団体(聴覚障害者協会、難聴協会、全通研支部、手話サークル連絡会、要約筆記連絡会、全要研支部)と意見交換した。内容は、先ほどのお話があった通り。
 設置・派遣、やっていないところもまだまだ多い。市の設置はあり、派遣事業は自治体が担っているのは2つの市のみ。他の数市は、先ほど話しにあった法人に委託、契約して実施している。その他の町村は、特に、町村、田舎の人口が少ないところについては、設置も派遣も実施していない。
 市町村それぞれが、たとえば滋賀県全域を対象にできるように、派遣事業も弾力的に運用をするということ、利用料については無料でと強く訴えてきた。通訳技術は、認定試験合格者、手話通訳士資格取得者などを派遣していく定義を要綱に入れられた。
 各地域振興局という県の出先が県全体で6つあるが、そこの福祉担当者に県の説明し、それぞれの振興局が該当する市町村に、先ほどと同じような説明をする。ほとんどは終わっている。詳細は、石野さんから報告あった通り。
 それと、今後、県任せではなく、運動体として、地域対策本部で、市町村に要望行動を先々週から11月いっぱいくらいまでやっている。私自身、一昨日、2つの町交渉に参加した。時間がなかったが、「わかりました。県から話を聞いている。決まったら市町村でやらなければならない。考えはある」というお話。どのような方向になるのか、まだ、見えていないところもたくさんあるという話し。そういうことも踏まえ、点検、しっかりと引き続き取り組みしなければと感じた。交渉後も、一緒に、よりよいものを作っていきましょうと確認した。
 他の例としては、米原市。手話通訳設置事業がなく、派遣事業は聴覚障害者センターに委託している市。が、要約筆記の派遣事業も、来年やりますという返事。
設置、派遣事業のない町から、どうしたらいいか意見が出たら、たとえば、町長の講演どうするのか? 手話通訳が必要じゃないかと、お金はどこから出すのか? と。主催団体、課がそれぞれお金を出すのか、福祉の窓口がまとめて役場内の予算付けするのか、まだ、私たちも検討がいるが、そういうことを考えているんだという話があった。まだまだ、十分ではないところもあるが、話し合いの場所を設けていきたいという点で合意を得た。
 保留扱いになった聴覚障害者のほうでつくったモデル要綱。設置と派遣を一体化した事業を町としてやってくださいと出した。県はすぐにできないと。内容は理解しているが、市町村には理解がまだないと。将来的には統合的ということも考えているが、今回は保留になった。今後、協議し実現していきたい。全国からもご意見いただきながら、よいものにしていきたい。

【石川】先ほど、2つの質問が出た。2番目の、ニーズの掘り起こしは行政がやってくれるかという質問。一言でいうと、行政担当者は住民の暮らしをきちんと見る機会が少ない。見ない限り、住民のニーズをきちんと把握して掘り起こす作業が非常に難しい。ニーズの掘り起こしは、今日、ここに集まった私たち全員の仕事なんじゃないか。ろうあ協会の活動家、手話通訳の活動家が、聴覚障害者のくらしと一緒に実態を見つめ、どういうニーズがあるかをわかっている。それを整理して提起するが一番必要な課題と思う。
 同時に、地域福祉計画づくりに、どう当事者の意見を反映させるか、これが大きな運動課題。その当事者というのは、聴覚障害者であり、手話通訳者であると思う。その意見をきちんと福祉計画に盛り込んでいく。いますぐ実績があがらないにしても、実績をつくりあげていく、大きな土台になっていくだろう。
 もうひとつは、地域福祉計画の委員に当事者が参画する。その計画作りの委員会に参加している委員を、私たち地域全体で支えていく。その委員が地域の実情を反映し、方針化できるような内容を、今日、ここに集まった私たち全員でつくると考えたい。本来的には、行政担当者もきちんと学習し、住民ニーズを把握しなければならない。が、住民側からのニーズの提起という意味で私たちに大きな任務があるだろう。
 先日、東京都の支援法についての行政担当者会議があった。多く語られたのは、自立支援医療の関係だけ。地域生活支援事業は、厚生労働省でもほとんど方針が出ていない。そこで、行政担当者に知ってもらう、各行政が行なう担当者向けの説明会、地域生活支援事業の説明会の中に、コミュニケーション支援事業がきちんと語られる内容づくりと、都道府県に、こういう内容で説明してという提起が私たちの運動ではないか思う。

【司会】次の方、短くまとめてお願いします。

(次に続く)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告3)

2005年12月09日 | 報告
(フロアディスカッション1の続き)

【新谷(東京)】午前中の厚生労働省から、「地域生活支援事業は無料だけど裁量的事業で、それのガイドラインは市町村に示さない、市町村の自主的な裁量」というお話しがあった。本来は、法律を制定したんだから、法律に基づいて義務付けるのは政府の責任。聴覚障害者団体側が市町村へ、要望をとりまとめ、ガイドラインを作るというのはむずかしいか?市町村はそれぞれ実情まちまちだと思うが、最低限度のレベルの統一はひとつの方向と思う。そのあたりのお考えお聞きしたい。
 2つ目。私は中途失聴者。地域生活支援事業は、いろんなお話あるが、私たちの自立生活支援事業は本来どこ? 中途失聴者は、手話も新しい勉強。東京都は、都が中途失聴・難聴者対象の手話講習会を設けていて勉強できる。それ以外の全国の市町村に中途失聴・難聴者が手話を勉強する場がほとんどないと聞いている。自立生活支援事業の項目として、これから、要望を出していけると思う。そのあたりお聞かせいただきたい。

【司会】では、ご質問に対して、取り組み方など回答を。

【石川】地域生活支援事業に含まれている内容は、現在の、支援費制度のもと、福祉体系のもとでも、現在も無料のものと有料のものとがある。たとえば日常生活用具は応能負担で、費用負担が生じている。そういうものも地域生活支援事業に入っている。11月11日の、厚生労働省の全国主管課長会議の時の資料が、今日の資料に載っている。その中で、口頭の説明としても「従来無料であったもの、つまり、コミュニケーション事業等については、あまり有料化を考えるべきではない」というような言い方をされた。
 それと、ガイドライン案を、関係団体の意見聴取をした上で、来年の3月頃に各自治体に配るということも、本日の資料に載っていた。そうなると、ガイドラインの内容づくりと、関係団体との協議の中で、コミュニケーション保障を実現できるガイドラインになっているかどうかが、ひとつの勝負と考える。厚生労働省もどこをどう整理していいか、わからない面があるよう。だからこそ、現状に見合ったガイドラインを作らせるという、課題があると思う。

【司会】では、ご回答を。

【高岡】中途失聴・難聴者が、手話、読話の方法、補聴器の使い方を学ぶのは、生活訓練事業に相当すると思う。新しい支援法では資料の31ページ。都道府県の生活訓練事業の中に、オストメイトの日常生活、社会適用訓練、発声訓練事業がならんでいる。中途失聴者などが、新しく社会の中で生活していくための力を身につける、コミュニケーションの方法を学ぶ事業としてここに位置付けることもできるし、コミュニケーション方法の範囲だけに限らず、難聴者の生活に関わるいろいろな問題を学ぶ事業というのにも位置づけられると思う。たとえば、静岡県などでは、難聴者協会が県から委託を受けて、事業を実施しているところもあり、そうした例を示して、各県で対応お願いしたい。

【司会】あと、質問者が3人いらっしゃいますので、手短にお願いします。

【内川(連盟青年部)】支援法対策本部からの厚生労働省への質問、4項目あり、3つ目について、田村さんから、派遣事業、実施主体として市町村がどうしてもできない場合、都道府県でかわりにやるという内容、という説明があったが、都道府県はさらに予算獲得しないといけない。対策本部はどう交渉すればいいのか、簡単でよいので、ご説明を。

【司会】まとめてご回答いただく。次の質問者の方、どうぞ。

【植野(千葉)】要綱を読むと、市に住んでいる聞こえない人の範囲と書いてあり、たとえば、隣の市から通勤や学校に通っている人や、実家に帰った時に事故に遭った…というような派遣に対応できない面があるのではないか。それから、地域のニーズ外というか、いろんな性格、いろんなことが考えられると思う。市の範疇だけになってしまうと、予算をどう要求していけばいいのか、モデル要綱とも合わせ、ぜひ、ご助言いただきたい。

【川手(京都)】ガイドラインについて。先ほど、厚生労働省の田村さんも、手話通訳については、ろうあ者だけに負担を求めるのはおかしいと言っていた。であれば、手話通訳有料化はよくないと、ガイドラインにはっきりと載せてほしい。ガイドラインというのは、やはり市町村からみたら非常に重い。対策本部として、「ガイドラインの中に、手話通訳の有料化は望ましくない、良くない、はっきり載せてほしいと(要望を)出してほしい。

【司会】ありがとうございました。3人の方から質問があった。まとめてお答えを。

【石野】まず広域という考え方。コミュニケーション支援事業は市町村として取り組まなければならない。支援法の77条にも明記されている。けれども、やれないところ、たとえば、聴覚障害者のニーズが少ないところは、独自にやれる条件があるか考えねばならない。できない場合は、広域事業、市町村委託の受け皿整備が必要。先ほど、田村さんのお話にもあったが、情報提供施設がその役割を担っている。情報提供施設は全国で31箇所。そのすべてが受け皿になれるとは思わない。また、情報提供施設がない県の問題もある。先だって、厚生労働省の話を聞いた時に、聴覚障害者団体が担えるかどうか?という話があったが、法人格をもった団体がふさわしいとか、はっきり決められていない。そこが、行動として大切な部分。
 2点目は、千葉からの質問。資料の35ページ。団体、もしくは行事など行った場合、県が担うのか? という考えが示されている。分けて考えていく考え方もちあわせている。手話通訳、要約筆記、盲ろう者、支援、全て同じです。広域の考え方をもっているということ。

【川根】広域という考え方で手話通訳事業を捉えすぎると、狭い範囲になる。たとえば、千葉の人が京都でケガした時、京都の手話通訳が使えないと困る。川手さんが言われた、国のガイドラインで、きちんと整備すべきじゃないかと。利用料が有料だか無料だとかいう別の柱として、聞こえない人は、日本全国、どこに行ったって困らない、そういう日本社会をつくりたいという考え方が原点。そこにひとつ、視点をおいて、中央対策本部では、国とやり合い、中央でできなければ、市町村でやるという確認だけ、しておきたい。
 言いもらしたが、財源の問題。鹿児島の方から、金がないのにどうする?という話があった。今、一番お金がないのは都道府県。ちなみに、僕が勤めている市では支援法ができることで増収。入所型施設、通所型施設を利用していた人がだいたい年間4億円のお金を使っていた。うち国から2億円がきて、市が2億円だしていた。でも、今度、県が1億円だすことに。1億円、市町村は余分に使えるが、県は1億円用意しなければならない。補装具と厚生医療という制度があり、国が半分もっていた。うちの市の予算でいうと4,000万円で1,000万円、県からくることになった。その他、社会参加事業では、先ほどの333円で計算すると、大体5,000万円になって、合計あらたに1億6千万円くらい使えるお金が、市町村はできた。市町村は自立支援法バブルかも。という状況の進行を押さえておかなければならない。市町村対策では、財源はあるという話をしたほうがいい。

【司会】まだ質問の答えがもらえていないという方がいます。

【川手(京都)】ガイドラインには書き込むように交渉するのか?

【川根】手話通訳の無料化は既定方針。パンフにもそう載っていて、国とも、その点でやりあっている。ガイドラインにも書き込むように話す。

【司会】では、1つ目のフロアディスカッションを終わります。

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告4)

2005年12月09日 | 報告
(2)「相談支援事業への対応について」

◆パネラー 
斉藤綾子氏(自治体手話通訳者の集い) 
山口慎一氏(全国ろう重複障害者施設連絡協議会) 
中村慎策氏(全日本ろうあ連盟理事) 

◆発言・討議内容
【山口】ろう重複施設協として、障害者自立支援法について、法成立前も後も厚労省と交渉をしてきた。その様子等を説明したい。
 まずグランドデザインならびに法案に対して、施設事業体系の見直し、応益負担問題やろう重複障害者のための社会資源、基盤整備などについて約9項目の要望を出した。
 障害程度区分に関する試行事業が各市町村で行われ、その調査項目を見ると106項目のうちほとんどは、介護保険の認定調査項目からもってきているため、ろう重複障害者はほぼ障害実態より軽く判定される結果が出た。
 ろう重複障害者の実態がなかなか反映されない。特に調査法については、市町村の職員だけに任せると、本来必要な支援・サービスを受けられないとのことで、次の6項目の要望・意見を出した。1.認定調査員については、ろう重複障害者に理解・知識がある人とする。2.認定調査員は、ろう重複障害者へ伝わる言葉で認定調査を実施すること。3.認定調査時の支援者の同席を必須とすること。4.支援者とは、日常的にろう重複障害者への支援業務を行っている職員や手話通訳に関わっている人をいう。5.調査協力にかかる費用を公費でまかなってほしい。例えば、施設入所や福祉サービスに関する相談事業については、地域生活支援事業の予算なると市町村に負担が生じるということで、別途予算を組んでほしいということ。6.全国のろう重複障害者作業所・施設に、相談窓口としての役割を担わせてほしい。今後ろう重複施設協としては、国で作成している聞き取りの際の調査マニュアルを独自に作成して国から県・市町村におろし、ろう重複障害者の障害特性、支援・介護の必要性を理解してもらった上で判定する、という取り組みを行っていく予定。  
 試行調査に基づき協議会の中の7施設で現利用者の障害程度区分の試行調査をし、結果を昨日、厚労省に持っていった。今施設利用者の7割は、支援費制度の障害程度区分でA(重度)判定。自立支援法の試行における程度区分では、想像通り、8割以上が介護度1にしかならないという結果になった。今の施設生活を維持するには、せめて介護度を2か3に上がらないと経営も含めて維持できないが、介護度をあげることは難しいので、それに代わる要望のためのデータを作成中。
 支援費制度では、重度重複加算制度があったこれが自立支援法ではなくなるかもという懸念がある。なくなれば年間1施設で2000万ほどの収入減。職員の人数を減らすなどの結果になるので、これに代わるものを厚労省と意見・交渉中。

【中村】コミュニケーション支援の問題にかくれ、相談員支援活動という言葉がめだたなくなっている。
 全国には200人近いろうあ者相談員がいる。20年以上も前から、ろうあ者相談員、または名前は違うが生活相談員、手話相談員などの肩書きで設置されている。新しい生活支援事業、相談事業をどう結びつけていくかについて、話し合いも、みなさんからの要望も出されていない。介護保険と同じように事業所で相談を受けることになるのではと思っているが、ろう者専門の相談員がいるとは考えられない。今の制度とどう結びつけていくかが、今後の大きな課題。ニーズを出してほしい。

【司会】以上をまとめて、今後どのような方向で進めていくのか。

【斉藤】行政にいる立場から相談支援事業についての課題は何かについて話したい。
 自立支援法に位置づけられた相談支援事業を、行政の立場で大切と考えている。この事業は従来、3障害者(身障、知的、精神)法別に実施されてきた。が、平成15年度から一般財源化されたことで、継続、縮小し継続、あるいは廃止という状況のなか、自立支援法では市町村の役割として明確に位置づけられた。先の話にあったように、聴覚障害者に対する相談支援はどうなっているかを考えると、非常に心もとない状況にあるといえる。市町村の必須事業との位置づけだが、市町村が自分のところでやっても、委託してもどちらでもよいとなっている。市民としての聴覚障害者に対する支援は行政が担うものだと、私たちは訴えていく必要。
 認定調査について。認定調査をうけるときに、聴覚障害者の場合は低い認定になるという結果が出ている。重要なのは特記事項。聴覚障害者について理解している人が行わなければ特記事項をきちんと書くことができないと思う。それが出来るかどうかは相談支援事業行うところの力量が求められている。相談支援事業も、きちんとしようと思えば、手話通訳者が必ず必要になってくる。だから設置派遣が必要だという話に結びつけていけると思う。自分の住んでいる地域で聞こえる人が受けられる相談支援を、聴覚障害者も受けられる体制を、政策として実施してほしいと市町村に訴えていくことが必要。
 広域的・専門的支援について。情報提供施設が都道府県との連携の中で受け持つ役割も期待されるのではないか。市町村に対しては身近なところでの支援、都道府県に対しては専門的・広域的な支援の実施を訴えていく運動をしなければならないのではないか。

【質問者】連盟に質問。手話通訳設置の問題。今まではコーディネーターの性格をもつということで、相談員の支援も含まれていたように思うが、ろうあ者相談員との関わりはどうなのか、というのが1点目。2点目に、今都道府県に身体障害者相談員がいるが、身体障害者相談員の今後のあり方についてどのようにお考えか?

【中村】20年前くらい前から、ろうあ協会が手話通訳、相談員の設置を行政に要望してきている。ほとんど手話通訳の設置、またはかねていることが多かった。手話通訳を兼任し相談を行うことがよいのか、という動きもある。来年度から相談員の役割を分析する作業が始まる。手話通訳の専門性と相談員の専門性分けて考えていきたいと思っている。2点目。今身体障害者相談員の制度がある、説明が難しいが、相談員といっても専門的といえない。将来なくなるのか、存続するのか、自立支援法の関係ではっきりわからないが、研究する計画があるので、もう少し待ってほしい。

(フロアディスカッション2 終了)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告5)

2005年12月09日 | 報告
(3)重要課題の認識と取り組み

◆パネラー 
石野富志三郎氏(全日本ろうあ連盟事務局長) 
小中栄一氏(全日本ろうあ連盟理事) 
太田晴康氏(全国要約筆記問題研究会理事長) 
高岡 正氏(全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長) 

◆発言・討議内容
【石野】連盟は、昨年から委託を受けて、手話通訳のあり方について検討する「聴覚障害者のコミュニケーション支援の現状把握および再構築検討事業」を行っている。今からの話は、提言案として示したい。
 私は検討委員として、手話通訳の設置・派遣の範囲を担当。
 検討事業の提言案要旨について説明する。1章について。1.手話通訳士、手話通訳者、奉仕員の役割についての見直し。2.司法、選挙、議会など専門性が高い分野の手話通訳士に対する考え方について。3.手話通訳者法(仮称)案の制定。
 次の章、第1節では8項目を提起。1.福祉事務所における、手話通訳のできる職員の定数内職員化について。手話通訳できる職員を定数内職員にしっかり位置づけ、採用し、公務員として優先的に採用する。手話通訳者がいない時には、職員が研修を積み、資格をとるようにし、そして設置するようにするということ。2.公共機関・団体では、原則、手話通訳者を置くということ。バリアフリーの一環としてコミュニケーションを円滑にするという考え方。3.手話通訳設置事業と手話通訳者派遣事業の統合。手話通訳者の派遣事業については、資格をもつ職員を複数配置する。業務を担い、相談できる体制を整える。4.手話通訳者の派遣事業は、原則的には手話通訳者の登録制度をもつこと、全国研修センターで行っている統一試験の合格者を登録すること。5.設置・登録派遣をする事業主体が雇用契約を結ぶ、そして専門職の労働としての位置づけを行う。派遣について、専門性の基準にあった単価をきちんと出すこと。6.利用料負担を導入しないということ。手話通訳は基本的人権であるという見方。7.各自治体が聴覚障害者の情報保障・コミュニケーション保障を円滑に進められるよう、完全実施する体制をつくること。8.国・地方自治体における手話通訳事業予算の増額について。
 次に第2節では、手話通訳機関・事業所のあり方について提起。1.事業所のガイドラインを作成し、普及していこうという考え方。質の高い手話通訳者を利用できるようにするためには、運営基準、最低基準を設けるということ。2.事業所をする場合には、基準に応じているかどうかの基準を保障する必要。そして、3.評価制度、評価機関の設置。      
 第3節、各分野における、手話通訳のあり方について。1.司法・警察・医療・政治・教育・選挙など各分野で、手話通訳財源をそれぞれ確保するということ。
 第4節、情報保障・IT事業の方向性について。
 第5節の連盟として取り組んで行くこととして、1.ろうあ者相談員の研修制度の充実と有資格化の検討。これは、資格の問題があるので、十分議論していきたいと思っている。
最後に、手話通訳機関・事業所認定のための実施の検討。以上。 

【小中】養成・認定について、今後の交渉でのポイントも含めて話したい。
奉仕員派遣事業は廃止し、手話通訳者派遣に絞るという話が。入門課程は、以前から手話を普及する事業としての位置づけ。だが、講習会のように軽く受け止められては困るという話があり、手話通訳者の養成・入門という名称で提言。
 現在は基礎課程から、手話通訳者養成のコースがある。これを、基礎・基本・応用・実践まであわせてしていこうということ。市町村の派遣が増えていくので、できるだけ効率よく手話通訳者を増やしていかねばならない。どういう方法がよいか。予算的な面も交渉が必要と思う。アンケートをとった結果を見ると、養成の委託費が平均160万円だが、高いところでは500万円、安いところでは11万円と非常に差があることがわかった。
 手話通訳者の現任研修は現在あいまいなものになっている。必ずしなければならない事業として提案したい。この研修を受けない場合は、登録を抹消するような方法で、技術の保障をするという提言。
 手話通訳士は、養成のカリキュラムが曖昧になってきている。それを整備し、合格者を増やしていきたい。
 現在は手話研修センターで統一試験を行っている。試験を国が行って、都道府県で認定し、認定後に登録する方法を提言したい。あわせて手話通訳士を、国家資格になるように格上げをしていきたい。
 認定事業と登録事業が別という問題。例えばある地域で認定されて登録したのに引っ越した先でもう一度認定試験を受けなくてはならないという現状がある。これは改める必要。
 自立支援法では、指導者養成ついても記している。関係職員の研修については、役所だけでなく、施設や相談支援事業を委託されている事業体などの職員に、手話でコミュニケーションできる力を持ってもらうための、入門から基礎にわたる80時間の講座を都道府県で実施してほしいという提言。
 手話通訳者を増やしていくことが目標。ある程度増えれば、将来的には、福祉専門職の養成も必要になっている。手話通訳者もそれにあわせて大学での養成に移行していくのではないか、そういうことも視野に入れて検討が必要。

【高岡】支援法と要約筆記の展望ということで考え方を説明したい。
 今回のグランドデザイン案や障害者自立支援法がどうして出てきたのかということについて、社会的な背景を、難聴者・要約筆記者が理解する必要があると思っている。社会的な状況として、国民と障害者の要求が高まってきたということ、少子化・高齢化、地方財政の悪化、財界の要求がある。
 そのなかで全難聴は、地域生活における4つのニーズにまとめた。1.補聴器と補聴援助システム給付拡大。2.要約筆記等コミュニケーション支援事業の充実、3.読話、手話、補聴器等コミュニケーション方法を学習することの支援、4.中途失聴・難聴者相談体制の整備を掲げている。コミュニケーションの問題は多様であるにもかかわらず、十分に対応できていない現状もある。難聴者にとっては必要不可欠な補聴器の給付に制限があったり、日常生活用具には聞こえを補う機械は一つも入っていない。そういう問題がある。
 要約筆記事業の位置づけについて。要約筆記は聴覚障害者のコミュニケーション手段のひとつであり、中途失聴・難聴者の社会参加・基本的権利の保障に不可欠。そのことが身体障害者福祉法等に規定されている。具体的には聴覚に障害のある者に対して、意思の疎通を仲介する通訳として要約筆記が明記されている。2000年の社会福祉法の改正で、要約筆記事業も法定第二種事業に規定された。都道府県障害者社会参加総合推進事業の情報支援事業の一つに奉仕員養成・研修事業がある。また市町村障害者社会参加促進事業の奉仕員派遣事業に、通訳であるはずの要約筆記の養成と派遣事業が行われている。問題は法定事業が、ボランティア事業で実施されていること。要約筆記が通訳であるという理解が徹底していない、要約筆記通訳者を養成するカリキュラム、研修がないという問題がある。
 今回の法改正で、市町村地域生活支援事業に、コミュニケーション支援事業のひとつとして要約筆記者派遣県事業が明記された。都道府県地域生活支援事業では、手話通訳・要約筆記者養成事業が明記された。要約筆記者の派遣事業を市町村が実施主体として実施することになった。
 都道府県と市町村に対する要約筆記事業の基本的な要望について。奉仕員事業から要約筆記者事業になったが、専門性のある通訳の養成がまだ。また要約筆記事業は市町村の義務的事業になったが、要約筆記者が人数、レベル確保の面で十分でない。未実施も多い。全難聴と全要研で確認したこと3つ。1つはサービス提供基盤の整備のないまま市町村事業としない、2.登録している要約筆記者を、自立支援法に定められた要約筆記者として認定し、社会に認められる一定のレベルを示す必要があるということ。3.コミュニケーション支援にかかる利用者の負担をなくすこと。これが基本的なポイント。
 都道府県事業に対する基本的要望としては、1.都道府県の広域事業として要約筆記者派遣事業を実施することを掲げた。2.要約筆記者養成講習会を通訳者養成事業として位置づけて実施する。3つ目に、現任の要約筆記者に認定を受けさせて、派遣事業の対象とする。どのレベルを要約筆記者と認定するかは、利用者と要約筆記の担い手の集団とよく話し合う必要があると思う。4つ目。利用者負担を求めないことになったが、それをガイドラインに明記させる作業が残っている。予算要望については、要約筆記派遣事業実施のための予算確保をする。通訳養成講習会に移行後も対応できる指導者と予算を確保する。要約筆記者が認定試験を受けるに必要な補講や参加保障を行政に負担してほしい。それから全難聴またはそれに類する機関の実施する要約筆記通訳認定試験の会場確保と運営にかかる費用負担も求めていきたい。市町村の派遣事業については、都道府県事業の実施事業体との委託契約等の方法も含めて、事業レベルの低下させないよう配慮する。
 市町村で派遣事業を実施する基盤がない場合、地域の実状に応じた体制をとること。実施する体制とは、予算がある、あるいは要約筆記がいるというだけでなく、的確な派遣をするためのコーディネータの設置も必要と思うので、現在市町村で実施しているところも、都道府県レベルで実施することも含め検討してはどうかと考えている。次に経過措置として、厚労省の要約筆記奉仕員養成講習会のカリキュラムに沿って実施すること。このカリキュラムは基礎32時間、応用課程が20時間、合計52時間であるが、これで養成しているところは全国的にもわずかである。現在のカリキュラムに沿って実施し、それを修了した人が、県レベルでの、都道府県通訳養成のときの一部にふりかえるというような方法を考えている。3つ目には、派遣事業を実施する場合は、要約筆記者認定を受けた者を対象とすること。これは要約筆記奉仕員のままでは派遣できないということ。養成事業の実施に当たっては目的にあった指導者を確保すること、派遣事業の実施に当たっては、専門性を認識したコーディネータを設置すること。都道府県の広域事業との連携を持ち、質の低下を招かないこと。派遣対象を聴覚障害者団体と個人の両方を要望。事業実施主体の決定は、できれば公開にし、関係者間の合意を得ること。
 今後の取り組みであるが、現在、要約筆記者通訳者のカリキュラムを全難聴が、連盟、全要研の委員と一緒に作成中。もう一つ、どういう問題があるか、誰がどういう基準で認定するのか、という認定事業のあり方をモデル事業として実施している。
 来年要約筆記通訳の指導者を養成する。テキスト発行と養成講座を実施する。支援法第二期、2009年には要約筆記通訳制度を作れないかと思っている。

【太田】活動で感じている課題について話をしたい。5団体でこれまで協議してきたが、支援法が成立した今、あらたに自立支援法時代における情報コミュニケーション支援事業の再構築に関する課題を明らかにして、全国に啓発する必要があるのではないかと考える。一つは社会参加について、利用者のライフステージを横断したサービスのあり方があるように思う。その際の専門性は何か。福祉の他の資格との調整が必要。2番目に情報コミュニケーション支援サービスの社会資源化。様々な行政サービスを使うための基本的な施策だという啓発が必要。他の障害者をもつ利用者が情報コミュニケーションをどういう形で使っているか、それと調整をするなかで、障害種別を越えた情報コミュニケーション支援サービスを普及させ体系化させる努力が必要。関係者が情報バリアフリー環境作りをしていく必要があると思う。3つ目。手話と文字による情報伝達。あるいは、通訳の担い手、あるいは利用者間の情報交換を通じた専門性を整理する時代ではないか。手話は手話、要約筆記は要約筆記と運動論の観点からは分かれていたが、要約筆記者も手話を勉強する。手話通訳者も文字による情報保障技術がどのようなものかを学ぶ。相互の乗り入れが必要と思った。医療関係者あるいは福祉施設職員を対象とする手話・文字を含む情報コミュニケーション支援技術の講習、研修も、5団体が手をとって実施できることではないか。新たな運動の柱として視野にいれられるのではないか。

(時間切れのため、フロアからの質問はなし。フロアディスカッション3 終了)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告6)

2005年12月09日 | 報告
(3つのフロアディスカッション後、中央本部副本部長の市川氏から「まとめ」が話されました)


【司会】では、この集会の「まとめ」を、中央本部副本部長の市川さん(全通研運営委員長)にしていただきます。

【市川】田村さんの話で、再度確認できたこと。基本的には自立支援法は市町村が主体のため、コミュニケーション支援事業も、事業規模、予算の組み立て、費用負担をどうするのか含めて市町村判断が原則、それにともなって、ニーズ調査も重要であると繰り返し強調されていた。私たちが押さえなければならないのは、国と地方自治体の関係が、従来と変化したということ。「技術的助言」という言い方だったが、国が指導するのではなく、国と都道府県、市町村が横並びで一緒に事業をやっていくんだということを強調されていた。
 田村さんの個人見解として、手話を言語として認識するかどうかとの質問に、従来の制度整備から考えても社会的に認知されているが、どこがどう保障するかについては未整理ではないかとの話があった。田村さんは国会の例を出されたが、それぞれで通訳を保障することも含め考える必要。私たちも、言語としての手話を社会的に認知・保障させるには、すべて福祉行政の予算でよいのかについて、新たな整理が必要ではないかということが提起されたと受け止めた。
 それをうけて、3点本部から提案。

 ①予算獲得のためには、むやみに要求するだけでなく、予算決定のしくみ、タイムスケジュールを把握し、その機を逃さない取り組みが必要。
 ②自立支援法になって、市町村は財源が保障される面があるということ。
 ③障害者計画への参画が非常に重要。

 それに対しフロアから出された様々な質問は、地域の現状を踏まえ、個々の課題が違うことが明らかになったと思う。そのことを反映し、やはり行政、運動もふくめて、国の提示が非常に大切ということが、明らかになったと思う。
 ディスカッション2・相談支援事業について。提案内容は、ろう重複障害者の障害程度認定の課題の明確化、それへの取り組み報告、そしてろうあ者相談員の制度化に向けた課題整理、また相談事業は市町村の必須事業になったことは評価できるが、そのなかで聴覚障害者が取り残される心配があるがどう対応したらよいかということ。フロアからも、設置手話通訳者とろうあ者相談員の位置づけ・整理についてどう考えるべきかという質問があった。今後の課題であり、早急に整理すべき事がこの集会で確認されたと思う。
 ディスカッション3では現状の取り組みの重要課題について提示をした。
 以下集会で確認された今後の方向性について。
 まず市町村への働きかけ。具体的には市町村にニーズ調査をどう実施させるか、もしくは私たち自身が運動の中で実施したニーズ調査をどう届けるかという問題。障害者計画への参画を早急に運動の中で取り組んでいくこと。都道府県レベルでは情報提供施設を中心とした県レベルの事業を後退させないという取り組み。県をまたいだ全国的ネットワーク事業含め、専門性・広域性の確保も重要課題である。
 これを受け対策本部としては、地域の成果、例えば、滋賀県の取り組みのような取り組みの成功例・失敗例・成果など具体的な情報提供、資料の速やかな提示が重要になっていると認識している。
 国とのパイプを確固たるものにしていくということ。これから様々決められる政省令やガイドラインへの今集会での皆さんの意見をどう反映させるのかということが、中央対策本部に課せられた課題と認識した。地域対策本部、中央対策本部が力あわせてがんばっていきたい。

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この後、参加者全員で「がんばろう三唱」をして、集会は終了しました。