聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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(2010年4月16日付で、名称を変更いたしました)

【報告】いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を!(報告2)

2005年12月09日 | 報告

11月23日に開催されました「いつでも、どこでも、コミュニケーションと生活支援の保障を! 全国集会」について、午後に行った3つのフロアディスカッションの様子を中心に報告します。
(この集会の報告だけ、下に向かって記事を掲載します
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(1)平成18年度予算獲得への対策について
◆パネラー
川根紀夫氏(日本手話通訳士協会事務局長)
高岡 正氏(全日本難聴者・中途失聴者協会理事長) 
石川芳郎氏(全国手話通訳問題研究会副運営委員長)
石野富志三郎氏(全日本ろうあ連盟事務局長)

◆発言・討議内容
【川根】私が予算確保のお話をすることになったのは、自治体で自立支援法を担当し、予算編成を担当しているからだと考えていただいたらよいと思う。
 まず、レジメの内容に入る前に、お話ししておく。一つは、手話通訳事業において、どの領域を誰が、どのように通訳するのかは、予算の問題とは切り離して考えるということ。二つ目は、障害者自立支援法は、サービスを提供するための法律であって、障害者の自立を支援する総体としてあるものではない。ここを押さえる必要があると思う。そのサービスを受けるにあたって必要な情報の保障が得られるのかどうかがひとつのポイントと考えていただいたほうがよいと思う。
 では、レジメの5ページへ。もう、市町村では予算の編成作業は終えているのではないか。特に、都道府県、政令指定都市では担当レベルでは、もう確実に終わっている。自分の勤めている市では、昨日、丸一日、財政当局と激論を交わしてきた。それで、担当レベルのヒアリングは終わった。だけど、これで終わったわけじゃない。予算は、予算書が刷り上るまで、直しは利く。昨日、私が財政当局とやりやったのは担当レベルのヒアリング。財政当局の担当者が上に説明するのに必要なヒアリングをした。そして、財政当局の担当者は、自分の課長とヒアリングをし、課長と終わったら部長とヒアリングをしなければならない。当然、福祉部長と財政部長とのヒアリングもあり、市長査定もある。だから、まだ時間はある。時間がないわけではない。
 最終的には、議員発議か何かで、「手話通訳事業がないじゃないか!ちゃんと盛れ」と言ったらよい。議会になれば、来年の2月、予算書が刷り上ったあと、議会で予算を修正させるという手続きがまだ残っている。これは、18年度予算、来年度の予算をどう組ませるかということ。特に、手話通訳事業、要約筆記事業の関係予算をすべての市町村で組ませること。午前中、田村さんは、事業の実施主体は市町村とおっしゃった。市町村が必ずやらなきゃいけないのは予算(確保)。事業をどこでやるかというのは別問題。というのは、情報提供施設、団体が運営する事業体などに委託する方法もあり、直営と委託と方法がある。どちらも予算化しないとできないということ。
 来年度予算に向けて、今年度、まだがんばる時間がある。少なくとも、今日の集会が終えたら、地域で、もう一度、市町村と交渉しよう。担当者に「手話通訳事業の予算を組まなければならない」と思わせて、財政当局に走っていくことが大事。まず、これをやらないと、財政当局は予算化せず、話が進まない。
市町村の担当者には、「やらないのはおかしい」と詰めてもだめかもしれない。なぜかというと、市町村にもそんなに情報が降りていない。市町村は、今、何をするかを考えるだけで手一杯。市町村の担当職員とは手を組もう。本当に忙しい最中、がんばっている市町村職員の身になって発言することも大事なポイントかも。
もし、18年度の予算編成に間に合わなくても、慌てる必要はない。基本的なスタートは18年4月とか10月という施行日はあるが、本質的スタートは19年の4月だと思ったほうがいいのかも。この状況では、十分な体制で、新しい事業をスタートすることはできない。
 もう一つ、障害者福祉計画を作ることになっている。障害者福祉計画は、今まで都道府県や市町村にあった障害者計画、いわゆる障害者プラン。これとは別に、障害者福祉計画を障害者自立支援法では作ることになっている。障害者自立支援法はサービスを提供するための法律。このサービスがどれくらい必要かの数値目標を立てて提供することになっている。障害者計画と違って、障害者福祉計画は義務事業。でも、いま、どこも着手していない。この障害者福祉計画づくりは、18年度中に遅くとも終えることになっている。18年度中に、「手話通訳の必要な人たちの数、必要なサービス量、要約筆記を必要とする人たちの数、必要なサービス量、県内全部の手話通訳ニーズを満たすための手話通訳者の数」とかの目標を立てることが障害者福祉計画。遅くとも、この障害者福祉計画に反映させることが重要。特に、地域生活支援事業は、この障害者福祉計画に基づいて、国は予算査定をするといっている。そういう意味で、とても大事。だから、もし18年度予算に間に合わなかったら、障害者福祉計画に自分たちの代表を送り込む。各市町村でもやるし、都道府県でもやる。その地域に、手話サークルやろうあ協会がなかったら、県の代表がそこに行けばいい。参加させてもらい、自分たちの意見を述べさせてもらう、そういう機会づくりがとても重要。
 ちなみに、国はいくらの18年度予算に概算要求を出したか? 10月から来年の3月までで200億円。1年換算で400億円。田村さんは人口規模別にとおっしゃった。ひとつの指標だが、人口で割ると400億÷1億2000万人で一人あたり333.333…円、ざっと300円という計算。僕のところは人口17万人の市。ざっと計算して5,200万円、5,000万強。これは国から来るお金。都道府県は25%、予算の範囲内で支給することになっているから、2,500万円足すとだいたい7,500万円が地域生活支援事業としてくることになる。市町村が25%出すから、1億円の事業が組めるという考え方。1億円のうち手話通訳事業の予算はそんなに大きくない。そんなにむずかしいことではないということ。
 次に、6ページ。障害者自立支援法の中には、コミュニケーション保障に関しての2つの条項がある(資料に官報あり)。1つは第2条第3項、市町村は、障害福祉サービスを利用するにあたって、情報保障をしなければならないという条項。第77条に手話通訳事業が載っている。これを市町村交渉の時に、性格分けを。それが正しいということではなく、市町村職員にわかりやすく説明するにはどうしたらいいか考えた結果。
 第2条は、市町村が、障害福祉サービスを受ける聴覚障害者に情報保障する必要があると考えると、手話通訳設置事業、手話通訳として設置された人の基本的な仕事と考えたらどうか。第77条は、手話通訳派遣システムを構築する条項と考えたらどうか?第77条は派遣事業、第2条は手話通訳者の設置事業と、単純化して考えてはどうか?第2条は、コミュニケーション保障の条項だから、市役所のバリアフリーではなく、聴覚障害者の人たちのコミュニケーションバリア、障害者福祉のコミュニケーションバリアを取り除こうという考え方。そこで、手話通訳派遣事業と設置事業を両立させていく運動を進めたらどうか。これが、6ページの手話通訳設置事業の説明。設置事業では、障害者自立支援法、介護保険といった障害福祉サービスを利用する聴覚障害者の情報保障の拠点という考え方として整理したらどうか。市町村の設置通訳者が、市町村で派遣事業の予算を組む。設置通訳者たちは、障害福祉のバリアフリーとして機能する。
 もうひとつ、日常的に手話通訳をつけることで社会参加していこうという聴覚障害者の人たちは、派遣事業を中心に組み立てるという理屈で整理している。実際には、そんなにきれいに分けられるものではなく、混在や、機能しあうこともあるが、市町村の職員、財政当局にもそう説明してきている。これは、田村さんいわく「技術的助言」。
 これから、それぞれの地域で、実践、成果の交流が進んでいくと思うので、いい方法を生み出し、ひとつひとつ達成していくことが大切。少なくてとも、すべての市町村が手話通訳事業、要約筆記事業を予算化する、そこに絞って、これからどう説明したらいいかを、一緒に考えたい。以上。 

【司会】討論に入る。意見、質問、こちら(舞台前)に並んでください。

【門倉(石川)】市町村で、地域生活支援事業が必ず始まることになり、自治体職員は、その企画・予算編成について、地元の協会、手話通訳者集団などと話しをする機会も出てくる。自治体職員、手話に関わらない障害福祉の職員が実際に研修できる場を提供できないか。国のガイドライン、プラスα、県の行政サイドと一緒に要綱づくり、システムづくりとかを、お互い提案できる場所を提供できればいい。手話研修センターでもよいし、ブロックレベル、県レベルで形にできないか。活動レベルではなく、行政職員と対等に話すためには、知識がないといいものが生まれない。
 2つ目は、生活支援事業における設置事業。補助金であり、三位一体もからむ中で、一般財源化への不安が出るので、交付税の算定で、市町村の定数内職員として採用することを謳えないか。以上2点。

【司会】今の質問に対して、お答えを。

【川根】全く手話がわからない担当職員に呼びかけても、人が集まらないのでは? やるとしたら都道府県レベルであり、県への働きかけは可能と思う。
 というのは、かなり忙しくなる。たとえば、自分がいる佐倉市(千葉県)には、1,200人の精神障害の通院医療費助成を受けている人がいて、今、支援費を受けている身障・知的・精神の人が700人いる。来年の4月までに精神障害の人たちは、利用の決定手続きを全て終えなきゃならない。支援費を受けている人たちは、来年の4月に利用料が変わり、手続きを全て終えなければならない。終えないと、事業者との契約ができない、病院にかかれない、ということになる。なんとしても、2月中旬までに合計1,900人の手続きをという段取りの中で、手話通訳だけで呼びかけられても、個人的には、行く気にならない。それより、県に働きかけて地域生活支援事業の総体として、全て、義務的な事業をどのように市町村で組んでほしいのかを職員に伝えていくとことを、県に働きかけるほうが得策だろう。
 2つ目。市役所には、市の人口による全体の職員数、福祉部の職員数の定数にもとづいて配置されるのが基本だが、手話通訳設置事業の職員を市役所の職員にすることは、ひとつの運動の方向ではあると思う。ただ、3番目のディスカッションの提言で、手話通訳の定数のことは触れることになっているので、あとで、石野さんからお答えがあると思う。

【井上(鹿児島)】19年度予算について質問。設置事業・派遣事業を、現在やっているところでも、予算確保なかなかむずかしい。そこへ、新たに要望し、行政がやりたいと思っても、なかなか単独ではやれない。広域でやれば、その時は、県が取りまとめしてくれるのか? それとも、近隣市町村が相談するのか、行政ではどういう手続きを踏むのか? もうひとつは、障害者福祉計画をつくる時のニーズ、数量把握という問題があったが、これから掘り起こすニーズがあると思う。具体的に、行政担当が、ニーズの掘り起こしをするのか? 実績で予算をつくるのか? 行政担当がしないのなら、われわれはどういうニーズの掘り起こし、実績づくりをしなければならないのか? 行政は予算づくりに、実績が一番大切だと思う。行政がその数量をいかにして作り、いかにしてつかむかを教えてほしい。

【司会】では、回答を。

【石野】連盟の事務局長の立場だけれども、住んでいる滋賀県の取り組みをご報告したい。運動面の、細かいことは、県の対策本部長にご説明願う。
資料の34ページ。滋賀県では、ろうあ者のコミュニケーション獲得対策支援事業の要綱が記載された。交渉積み重ねてきた結果。11月9日、ろうあ者、関係者団体への県の説明会があり、県の方針は①18年度、全ての市町村に手話通訳、要約筆記派遣事業を実施する②手話通訳は無料ということ。
 市町村が手話通訳、要約筆記派遣をする場合、直営、委託と2つの方法がある。委託は情報提供施設があり、運営を担う(社福)滋賀県聴覚障害者福祉協会がある。社会福祉法人と、市町村が契約をする。対策本部は市町村と交渉を重ね、県内全市町村への説明を全て終わった。市町村との話し合いで担当者が「ろうあ者は書けるし、話せる。手話通訳は不要では」と。要約筆記の団体の派遣についても、難色を示していて、これには反論し、説明を続けている。
 市町村が直営を実施する場合、できないところは、手話通訳・要約筆記・登録通訳者が非常に少ない。対応ができないということ。そこで、委託になる。県で示している単価は1時間3,000円。手話通訳、要約筆記いずれも単価は同じ。
 市町村の予算編成をどうのように獲得していくか。静岡県の例で、市町村に移行する時、拠出しているところの1.4倍をもとにして、手話通訳の派遣事業を行っている。たとえば昨年、手話通訳の派遣、要約筆記の派遣の実績数に1.4倍の予算を組むという方法。そう説明してきている。
 モデル要綱については、資料36、37ページ。実施主体は直営、委託と分かれている。要約筆記も。利用料は無料とはっきり明記されている。問題は手話通訳の設置のないところ、派遣事業だけ実施しているところ、設置も派遣もないところ。もし、市町村から提案があれば、設置、派遣を要綱にそってと要望、提案していく必要があると思う。
 今までの運動の成果の積み重ねがあるわけで、千葉も無料と聞いている。滋賀から、運動の説明があればお聞かせ願いたい。

【司会】滋賀の方、どうぞ、説明してください。

【辻(滋賀)】運動面で、いくつかご説明したい。11月9日、県の障害者自立支援課から、課長補佐と担当者2名が参加してくれた。あと、地域対策本部加盟の6団体(聴覚障害者協会、難聴協会、全通研支部、手話サークル連絡会、要約筆記連絡会、全要研支部)と意見交換した。内容は、先ほどのお話があった通り。
 設置・派遣、やっていないところもまだまだ多い。市の設置はあり、派遣事業は自治体が担っているのは2つの市のみ。他の数市は、先ほど話しにあった法人に委託、契約して実施している。その他の町村は、特に、町村、田舎の人口が少ないところについては、設置も派遣も実施していない。
 市町村それぞれが、たとえば滋賀県全域を対象にできるように、派遣事業も弾力的に運用をするということ、利用料については無料でと強く訴えてきた。通訳技術は、認定試験合格者、手話通訳士資格取得者などを派遣していく定義を要綱に入れられた。
 各地域振興局という県の出先が県全体で6つあるが、そこの福祉担当者に県の説明し、それぞれの振興局が該当する市町村に、先ほどと同じような説明をする。ほとんどは終わっている。詳細は、石野さんから報告あった通り。
 それと、今後、県任せではなく、運動体として、地域対策本部で、市町村に要望行動を先々週から11月いっぱいくらいまでやっている。私自身、一昨日、2つの町交渉に参加した。時間がなかったが、「わかりました。県から話を聞いている。決まったら市町村でやらなければならない。考えはある」というお話。どのような方向になるのか、まだ、見えていないところもたくさんあるという話し。そういうことも踏まえ、点検、しっかりと引き続き取り組みしなければと感じた。交渉後も、一緒に、よりよいものを作っていきましょうと確認した。
 他の例としては、米原市。手話通訳設置事業がなく、派遣事業は聴覚障害者センターに委託している市。が、要約筆記の派遣事業も、来年やりますという返事。
設置、派遣事業のない町から、どうしたらいいか意見が出たら、たとえば、町長の講演どうするのか? 手話通訳が必要じゃないかと、お金はどこから出すのか? と。主催団体、課がそれぞれお金を出すのか、福祉の窓口がまとめて役場内の予算付けするのか、まだ、私たちも検討がいるが、そういうことを考えているんだという話があった。まだまだ、十分ではないところもあるが、話し合いの場所を設けていきたいという点で合意を得た。
 保留扱いになった聴覚障害者のほうでつくったモデル要綱。設置と派遣を一体化した事業を町としてやってくださいと出した。県はすぐにできないと。内容は理解しているが、市町村には理解がまだないと。将来的には統合的ということも考えているが、今回は保留になった。今後、協議し実現していきたい。全国からもご意見いただきながら、よいものにしていきたい。

【石川】先ほど、2つの質問が出た。2番目の、ニーズの掘り起こしは行政がやってくれるかという質問。一言でいうと、行政担当者は住民の暮らしをきちんと見る機会が少ない。見ない限り、住民のニーズをきちんと把握して掘り起こす作業が非常に難しい。ニーズの掘り起こしは、今日、ここに集まった私たち全員の仕事なんじゃないか。ろうあ協会の活動家、手話通訳の活動家が、聴覚障害者のくらしと一緒に実態を見つめ、どういうニーズがあるかをわかっている。それを整理して提起するが一番必要な課題と思う。
 同時に、地域福祉計画づくりに、どう当事者の意見を反映させるか、これが大きな運動課題。その当事者というのは、聴覚障害者であり、手話通訳者であると思う。その意見をきちんと福祉計画に盛り込んでいく。いますぐ実績があがらないにしても、実績をつくりあげていく、大きな土台になっていくだろう。
 もうひとつは、地域福祉計画の委員に当事者が参画する。その計画作りの委員会に参加している委員を、私たち地域全体で支えていく。その委員が地域の実情を反映し、方針化できるような内容を、今日、ここに集まった私たち全員でつくると考えたい。本来的には、行政担当者もきちんと学習し、住民ニーズを把握しなければならない。が、住民側からのニーズの提起という意味で私たちに大きな任務があるだろう。
 先日、東京都の支援法についての行政担当者会議があった。多く語られたのは、自立支援医療の関係だけ。地域生活支援事業は、厚生労働省でもほとんど方針が出ていない。そこで、行政担当者に知ってもらう、各行政が行なう担当者向けの説明会、地域生活支援事業の説明会の中に、コミュニケーション支援事業がきちんと語られる内容づくりと、都道府県に、こういう内容で説明してという提起が私たちの運動ではないか思う。

【司会】次の方、短くまとめてお願いします。

(次に続く)

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