聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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(2010年4月16日付で、名称を変更いたしました)

■パブリックコメントを提出しました!

2008年12月26日 | 報告
「障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制並びに自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本指針の一部改正」に関して、全日本ろうあ連盟と全国手話通訳問題研究会が、2008年12月17日付けで下記パブリックコメントを厚生労働省へ提出いたしました。
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■財団法人全日本ろうあ連盟
基本指針の一部改正については、次のことをお願いします。
 相談支援体制の充実・強化のため、市町村自立支援協議会を地域における相談支援体制の中核としていくこととされています。委員の構成には当事者も入れられていますが、三障害からなる様々な障害当事者団体から、どのような方法で自立支援協議会の委員に就任するかが曖昧です。市町村によっては障害当事者団体が存在しない地域もあるかと思います。「三障害」を機械的に括るのではなく、すべての障害者が平等に自立支援協議会に参画していくことが必要です。
 聴覚障害者(団体)は、コミュニケーションの保障がなくては参画できません。ともすれば、情報から除外される懸念も大きく、当事者の委員就任にあたって、聴覚障害者(団体)が、蚊帳の外に置かれることがないように施策を講じて下さい。
 特に、障害福祉計画の審議会など障害者関係の議論の場においては、身体障害者団体一つのポストではなく、肢体障害、視覚障害、聴覚障害それぞれのポストを確保することが望ましいと考えます。また市町村の聴覚障害者団体が存在しない場合は都道府県聴覚障害者団体と連携を取られることを望みます。

第2期障害福祉計画作成にあたって、次のことをお願いします。

①手話通訳設置事業にあっては「実設置見込み者数」を記載するよう改正される予定ですが、これは低い実施率に留まっている手話通訳設置事業の実施率向上へ大きな前進と評価します。 しかし、現状では手話通訳者設置事業の約70%が非常勤採用であり、劣悪な労働条件に置かれていることを改善することが必要です。また、設置された手話通訳者の役割・業務についての理解が各地域で格差が見られることから、勤務している場所においての手話通訳業務、手話通訳者派遣事業のコーディネート業務、勤務している場所を離れての手話通訳業務、その他、相談支援事業とも密接な関わりがあります。これらの業務を行うものであることをガイドラインとして記載され理解を図られるようお願いします。 
 また、市町村での手話通訳設置事業が進めば、都道府県手話通訳設置事業のニーズはなくなるという考えが生まれるのではないかと懸念しますが、都道府県庁や聴覚障害者情報提供施設、聴覚障害者団体等に配置されることは有用であり、市町村事業のスーパーバイザーとしての役割、広域における役割等重要なものがあります。設置手話通訳者の絶対数が不足している現状をみても、都道府県手話通訳設置事業は必須事業化されるべきではないかと考えます。当面、都道府県手話通訳設置事業は堅持されるよう配慮してください。

②手話通訳者派遣事業、及び要約筆記派遣事業にあっては、「実利用見込み者数」を記載することとされています。 これとともに、手話通訳者の登録にあたっては、聴覚障害者の居住地により受ける情報保障内容に差があってはならないことから、全国手話研修センターの手話通訳者全国統一試験合格者(厚生労働省策定カリキュラムに基づいた養成の試験)及び厚生労働省認可の手話通訳士資格を持つ者の数値目標を入れて下さい。

2.市町村コミュニケーション支援事業の実施にあたっては、各市町村の域外(例:総合病院への通院)、及び都道府県外(例:遠隔地に居住する親の入院、旅行時の急病)における手話通訳ニーズに対応することが困難であるとの現状があります。これを解決するためには都道府県派遣事業を必須事業扱いとする必要があると考えます。これが難かしい場合は、各市町村及び都道府県外における手話通訳ニーズに対応するための施策を都道府県障害福祉計画に記載するようにして下さい。

3.必須事業であるコミュニケーション支援事業の完全実施と安定した運営のためには、その担い手を養成する「手話通訳者養成事業/手話奉仕員養成事業」が不可欠です。現在は、「手話で会話ができる」人を養成する手話奉仕員養成事業と、「手話通訳ができる」人を養成する手話通訳養成事業の2階建てのカリキュラムで養成講習会が行われるようになっています。この現状を踏まえて下記の実施方法とこれに基づく数値目標(手話奉仕員養成事業にあっては「修了」見込み、手話通訳者養成・研修事業にあっては「登録」見込み数)を記載するものとして下さい。 ①手話奉仕員養成事業(入門・基礎課程)については、市町村で実施し、修了見込み数を記載するものとする。 ②手話通訳者養成・研修事業については、都道府県で実施し、登録試験合格者による登録見込み数を記載するものとする。登録試験については、コミュニケーション支援事業の内容に地域格差があってはならないことから社会福祉法人全国手話研修センター実施の手話通訳者全国統一試験に準拠するものとする。 ③政令指定都市においては、これまでの実績がある場合は、都道府県及び聴覚障害者団体とよく協議の上で、手話奉仕員養成事業と手話通訳者養成事業の両方を実施できることを明記する。 4.コミュニケーションの特徴は双方向であり、コミュニケーション支援事業の受益者は全国民であることから聴覚障害者だけに負担を求める「利用者負担導入の禁止」を記載して下さい。 5.相談支援事業については、各種給付事業の利用計画を作成するにあたっての相談支援という範囲だけでなく、福祉サービスをはじめとして生活、就労、医療、教育などの各分野にわたって聴覚障害者の相談支援のニーズに対応する必要があります。特に手話等により直接、障害当事者とコミュニケーションをとって相談支援するためには、相談支援事業に従事する手話通訳者、またはろうあ者相談員が必要です。市町村相談支援事業では対応できない市町村が多いと思われますので、障害福祉圏域、または都道府県相談支援体制整備事業等において、手話通訳者・ろう者相談員を配置することを記載して下さい。の数値目標とともに、設置の方法について一定のガイドラインを設けて下さい。
以上
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■全国手話通訳問題研究会
1 障害者自立支援法の評価
 障害者自立支援法が施行されて2年半経過しました。応益負担の導入を障害者福祉分野に初めて導入した同法は、「提案から実施までの手続きが拙速」「障害者の福祉制度利用の抑制による社会参加の後退または暮らしの困窮を招く」「重度障害者ほど多くの負担が必要」などの問題点が指摘され、施行前から多くの障害者関係団体からの反対を受けました。 また施行後は、自己負担の重さや施設運営の苦しさが具体化したことから全国的に厳しい批判を受け、「特別対策」「緊急対策」と二度にわたり特に利用者負担を軽減する方向で運用内容が改訂され、同法の施行時の内容が、その名称とは裏腹に障害者の自立支援を阻害するものであったことが明らかになりました。 私たちは応益負担を原則とする現在の障害者自立支援法には特に下記の2点の大きな問題点があり、わが国の障害者の生活条件を悪化させたことは明らかであると考えます。

(1)収入の低い障害者に過大な負担を課した結果福祉制度利用の抑制による社会参加の後退や暮らしの困窮を招いた。
(2)障害者福祉施設の収入低下をもたらした結果職員の雇用条件悪化や事業水準の低下を招いた。

 今後、現在の障害者自立支援法の内容を抜本的に見直し、応益負担の撤廃や障害者福祉施設の安定収入確保など、国が責任を果たし、障害者が安心して暮らすことができる真の意味での「障害者自立」支援法を実行することが必要です。

2 聴覚障害者や手話通訳者に関わる問題点
 障害者自立支援法により、(1)コミュニケーション支援事業の市町村における必須事業化(同法第77条)、(2)地域生活支援事業実施要項における、市町村の「手話通訳派遣事業」「手話通訳設置事業」「奉仕員養成事業」、都道府県の「手話通訳養成研修事業」「盲ろう者通訳・介助員養成研修事業」「手話通訳設置事業」「盲ろう者向け通訳・介助員派遣事業」「奉仕員養成研修事業」等の実施が定められました。
 これらの事業の実施に関連して、現在のところ下記の問題点があります。

○コミュニケーション支援事業が必須事業とされているのに全市町村で実施されていないため、聴覚障害者に対する公的な情報保障がない市町村がある。
○市町村で雇用された手話通訳者は聴覚障害者住民の暮らし全体を考慮しながら支える役割を持つが、手話通訳設置事業を実施している市町村数は少ない(聴覚障害者「自立支援法」対策中央本部2008年9月調査では約40%)。
○手話通訳設置事業の実施(手話通訳者の雇用)にあたり、勤務時間・業務内容・雇用条件等が各市町村でばらばらであり、聴覚障害者の情報保障・福祉向上・専門職としての身分保障が十分に保障されていない状況にある。
○手話奉仕員養成事業は、聴覚障害者の日常生活を支える手話奉仕員の養成という大切な役割があり、また手話通訳養成事業の前段階として大きな意義があるが、同事業を実施している市町村数は少ない(聴覚障害者「自立支援法」対策中央本部2008年9月調査では約40%)。
○コミュニケーション支援事業が市町村単位で同市町村住民を対象に実施されているため、居住地域以外の都道府県や市町村で発生する情報保障ニーズに対応する公的な制度的保障がない。
○コミュニケーション支援事業の担い手である手話通訳者の登録にあたり、現行の地域生活支援事業実施要綱によると「手話通訳士」「手話通訳者」「手話奉仕員」のいずれでも可となっていることから、各市町村により登録手話通訳者の技術水準がばらばらで聴覚障害者の情報保障に格差が生じている。
○コミュニケーション支援事業の対象となる情報保障分野が狭く、職業、教育等の聴覚障害者の生活の中で重要な部分が対象とならない市町村が少なくないことから、聴覚障害者の暮らし全体を支える公的な制度的保障がない状況になっている。
○本来「受益者」が特定できないコミュニケーション支援事業(手話通訳派遣事業)の実施にあたり、聴覚障害者に利用者負担を課している市町村がある。

3 このたびの「指針」の改訂内容について
 「1」「2」の指摘を踏まえると、今回の「指針」の改正については、上記の問題点の改善につながるような改正になることが必要である。
 具体的には、下記の諸点が記載されることを要望する。
○「各市町村の域外(例:総合病院への通院)における手話通訳ニーズ」「県外(例:遠隔地に居住する親の入院、旅行時の急病)における手話通訳ニーズ」に対応するための施策の都道府県障害福祉計画への記載
○各市町村が独自の判断で実施することからコミュニケーション支援事業の内容に地域格差が生じている実態があるが、聴覚障害者の居住地により受ける情報保障内容に差があってはならないことから「手話通訳派遣事業・手話通訳設置事業の実施基準の統一」に資する目標(例:都道府県内の登録手話通訳者は統一試験合格者を基本とする)の設定
○コミュニケーションの特徴は双方向であり、コミュニケーション支援事業の受益者は全国民であることから聴覚障害者だけに負担を求める「利用者負担導入の禁止」の記載
○コミュニケーション支援事業の対象となる情報保障分野が狭く、職業、教育等の聴覚障害者の生活の中で重要な部分が対象とならない市町村が少なくないことから、聴覚障害者の暮らし全体を支える公的な制度的保障がない状況になっている。
○本来「受益者」が特定できないコミュニケーション支援事業(手話通訳派遣事業)の実施にあたり、聴覚障害者に利用者負担を課している市町村がある。
○各市町村が独自の判断で実施することからコミュニケーション支援事業の内容に地域格差が生じている実態があるが、聴覚障害者の居住地により受ける情報保障内容に差があってはならないことから「手話通訳派遣事業・手話通訳設置事業の実施基準の統一」に資する目標(例:都道府県内の登録手話通訳者は統一試験合格者を基本とする)の設定
○コミュニケーションの特徴は双方向であり、コミュニケーション支援事業の受益者は全国民であることから聴覚障害者だけに負担を求める「利用者負担導入の禁止」の記載
○コミュニケーション支援事業は必須事業であるので、その担い手を養成する「手話通訳者養成事業/手話奉仕員養成事業」について、高いレベルでの数値目標の設定