聴覚障害者制度改革推進中央本部ブログ

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■10/25 衆議院厚生労働委員会記録(その3)

2005年10月25日 | 【速報】10/25衆議院厚生労働委員会
(相澤参考人続き)自立支援というなら、障害者本人が親兄弟に気兼ねなく独立できなければなりません。ところが法案は、精神障害者法では「親たちの世帯収入を含みて定率の負担を負わせる」としています。で、「応能負担」は「応益負担」へと原則の大転換がなされようとしています。これは、障害者の自立、つまり独立を原理的に侵すものだと考えます。ただでさえ、親兄弟に大いに気兼ねして生きている精神障害者に、ますます大きな負担と気兼ねとを課すものになると心配しています。また、乏しい年金で暮らす老いた親に、障害者本人が40歳、50歳になっても経済負担を負わせ続けるということは非人道的です。
「利用者の応益負担」といいます、その「利用」を広辞苑で引くと、第1義は「それを使うことで利益・儲けを得ること」と読めます。第2義は「活用する」です。障害者福祉での「利用」は「活用」であるべきです。さて、利用に当たっては、公平の原則から「応益負担」といわれていますが、しかし、それは原理的に公平にはならない、矛盾するのです。イギリスでは「公平 FAIRフェア」の意味は「必要に応じて給付を受け、能力に応じて負担すること」であることが定説になっております。現在の法案における国会説明は、この国際的な「フェア」の原理に反するものと思います。当面は1割だけの応益負担とされていますが、しかしそれでも定率負担は、大方が低所得者である障害者の生活を損ないます。特に重度の障害者には、命綱の医療と福祉を断ち切る危険があります。生活保護需給世帯への負担の免除、年収80万円つまり障害者年金と同額程度以下の収入しかない世帯には月額1万5000円に負担軽減措置を講ずるから大丈夫、といわれています。しかし、それは変です。生活保護基準をはるかに下回る収入でも「収入がある」と負担を課せば、生活保護需給世帯と逆転するわけです。つまり、そのような段階的な負担措置を講じなければならないということ自体が、「応能負担」の原則が必要だと認めているのだと思います。このような矛盾は、先ほども言ったように本人の負担能力だけでなく、同一世帯の収入を勘案して負担を課すということに由来しているのです。本人が独立して暮らせる「応能負担」にしなければなりません。そして気兼ねなく医療と福祉が使えなくてはならない。親兄弟の経済負担撤廃を求めます。稼動できない障害者には、今述べたような観点からの所得保障が必要です。しかし、低所得者から定率の負担を差っ引くということは、人間として最低限の生活ができないということになります。それを避けようとすると、医療も福祉も受けられず、病気は重くなり、社会生活ができなくなり、却って社会的損失が増えるということを心配しています。
定率負担という原則を、全ての分野に適用するとなると、例えば精神障害者の福祉分野で圧倒的な役割を果たしております小規模作業所はどうなるのでしょうか? 福島県ではAレベルの作業所さえ、県・市町村両方から併せての600万円程度の補助で活動しています。水・光熱費などの運営費は、別に調達しなければなりません。私のところでは、一人月額1,000円、1500円程度の負担をお願いしています。スタッフはボランティアのようなもので、通所施設の工賃では、多くて1万円。近年は仕事もなく、いくらにもなりません。議員の先生方には想像できないでしょうが、通所者にとっては1000円の負担は、とても大きな額なのです。ただでさえ、今は収入が月1万円を下回ります。そうすると、通所する意欲をなくし、引きこもり、病気を再発させてしまいます。今法案で運営費や人件費の1割を通所者に負担させるようになれば、通所意欲を失い、病状が悪くなる恐れがあります。通所施設にはこの定率負担の影響は大きいのです。また、生活支援センターなどは期間限定で現行の補助を続けるといわれておりますが、その先のことは全く見えません。どうなるのでしょう? 低賃金でも熱意を持って、生活をかけて頑張っている職員の意欲と将来の生活はどうなるのでしょうか。大変心配でございます。
もちろん心配だけでなく、私どもも自発的に日夜創意工夫を凝らしております。例えば仲間同士のピア・ヘルパー事業を4月から始めるために準備をしておりますし、ピア・サポート、家族や本人たちによる活動も始めており、事業としても本格化させていきたいと考えております。そのような努力をしながら、ただ1点、審査をお願いし、私の意見陳述といたします。失礼しました。
(拍手)

鴨下委員長/ありがとうございました。次に、水谷参考人にお願いをいたします。

水谷/全国心臓病の子どもを守る会の水谷と申します。先生方にはなにかと心臓病児者とご家族のために、これまでご支援ご協力いただきまして、ほんとに感謝申し上げます。また、本日はこのような機会を設けていただきましたことに、厚く御礼申し上げます。私は全国の数多くの母親や心臓病児者の思いにそいながら、今日は自立支援法案、その中の自立支援医療、その中の育成医療にしぼって発言させていただきます。不慣れなためにあらかじめ原稿を用意してまいりましたので、読むことになると思いますが、お許しください。私たちの会は今から42年前、1963年11月に結成されました。育成医療制度は1954年に創設しておりますが、結成当時はまだ心臓病には適用されていませんでした。まだ国内で初めて心臓にメスを入れる手術ができるようになってから10年にもならない時期でした。手術を受けられる病院は限られており、また、健康保険制度も家族は5割給付という時代でした。そういう中で当時のお金で50万、100万という負担が直接心臓病児者にかかってきたのです。当時の親や心臓病の本人たちは、手術を受ければ助かるという思いと、どこに行けば助けてくれる病院があるのか、手術のためのお金をどう工面すればよいかとの悩みをみんな持っていました。結成総会では、手術を受けるために内職をしてお金を貯めたとか、土地や家まで売ってしまって工面したという話が涙ながらに語られました。そして、会として初めて取り組みました陳情が「育成医療に心臓手術を適用して欲しい」でした。小さい子の手を引きながら、あるいは乳児を背負いながら、当時の厚生省や国会議員の先生方にお願いをして歩きました。そして、翌年の1964年、多くの先生方の賛同とお力添えをいただき、先天性の心臓手術にようやく育成医療が適用になったのです。その後40年以上にわたり、本当に多くの心臓病児たちがこの制度により命を救われました。心臓病児の多くは、適切な時期に手術をすることで、健常者と同等の社会参加ができることになり、たとえ重症の心臓病児であってもこの制度を利用して、障害の程度を軽くすることで、ある程度自立した生活を送れるようになっています。しかし、今回の自立支援法案で示された育成医療の見直しは、私たちがいわば心臓病児者の命を守る要の制度として作っていただいた制度にもかかわらず、大幅に縮小され、心臓手術には事実上適用されなくなってしまうということがわかります。とくにグランドデザイン案ではまったく配慮がなく、心臓病は初期のうちに手術をすれば治るというイメージで、いわゆる所得負担の中間層と呼ばれる対象からもはずされていました。その後、私たちも具体的な事例を示しながら繰り返し厚生省にお願いして、少し理解していただいた。法案提出の時点では、若い親の世代の医療費負担の激増に一定の緩和策がもりこまれました。また、今国会においても、参議院の審議で、大臣がさらなる緩和策として負担上限を設定してくださいました。この緩和策のためにご尽力、ご努力くださいました諸先生方、厚生労働省の担当の方々にはこの場をお借りして心から感謝申し上げたいと思います。しかしながら、この障害者自立支援法案には依然として納得のできない問題点、疑問点がございます。その第1は、1割の定率負担による負担増の問題です。お手元の資料をご覧いただきたいと思います。レジュメの1枚目、自立支援医療になった場合の現行制度と見直し後の負担額の一覧表です。2枚目は、医療費の実額と負担額との関係を表した資料です。3枚目以降は、私たちが試算した影響額をしめしてございます。育成医療でDの1ランク、所得税年額4800円以下の世帯で、緩和策をとっていただいたとしても、なお12.1倍の負担増。これはその月内の負担上限でありますから、翌月にまたがると負担は20.9倍にもなります。このような負担増は非常に問題だと私たちは思います。資料の最後に、私共の会報、『心臓をまもる』からのコピーがあります。この方の娘さんは今年二十歳になりましたが、小さいころに手術をして以降数回の治療を繰り返して、この8月に大動脈弁の置換手術を行い、人工弁を装着しました。手術代は約400万円かかっております。今は、更正医療で2万円くらいの負担ですみますが、これが自立支援医療の案で計算すると、月にまたがる入院なので、月ごとの計算になり、新たに食費が加わることになりますと、約14万という金額になります。長野の病院で治療を受けておりますので、今後定期的に長野まで通わなければいけない。医療費以外の負担も大変になってきます。このように育成医療で緩和策をとったとしても、なおかなりの負担増が残る。私たちの多くは、一回の手術ではすまず、何回も手術を繰り返します。また、手術のために遠くの病院まで行かなければならないケースもめずらしくはありません。福岡の病院で出産をして、ご主人が何度もその間東京との間を往復したという母親は、育成医療のおかげで助かったということで、こう話しています。「我が子に手術入院など、つらい思いを本当はさせたくありません。でも、この子達は手術をしなければ生きていけないのです。心臓病で今後どうなるかわからないという不安の中、ただ我が子がみんなと同じ普通の生活をしていけるよう望んでいるだけなのです。一番弱い立場の病児の医療費を削減したりしないでください。育成医療をこのまま存続していただけることを強く願います」
 第2の問題点は負担増による受診抑制の影響です。私たちだけでなく、心臓病の医療に携わってくださっている循環器の先生方もこのことを一番心配しています。しかも医療費の抑制という点でも、むしろ後になって医療費を増加させる可能性が高いのではないかというふうに考えます。心臓病の場合、応急に処置をした後、何年か経過をみながら適切な手術時期を判断して処置をするのが通常です。その際に受診抑制がおきれば、適切な手術時期が遅れてしまいます。この点を大変危惧しております。重度化すれば命にかかわることはもちろんですが、それだけたくさんの医療費や、支援のための費用がかさむことになります。また、適切な医療が与えられなかったことで障害の程度が重くなり、社会的支援を多く必要とする障害者となってしまいます。そのような状況を考えると、今、わずかばかりの医療費を抑制することが将来の医療費負担や福祉的費用の負担増につながりかねない問題だというふうに思います。
 第3の問題点は、厚生労働省が負担軽減策として提案している重度かつ継続についてです。現在までのところ、重度かつ継続の適用範囲については、育成医療の場合、腎臓機能、小腸機能、免疫機能と障害種別によって定めています。毎月確実に治療がかかせず医療費もかかる疾患というのがその理由です。確かに、心臓病の場合には手術を初めとする治療の時期と、経過をみる時期とがありますが、この割合は病状によってかなり違います。医学の進歩によって、昔なら亡くなってしまっていた重症の子供たちも外科的内科的な治療の組み合わせで生き長らえるようになり、学校にいったり、社会参加ができるようになっています。先天性心疾患のうちの生育歴の全国的な統計というのはありませんが、重症者の割合が増えていることだけは確かです。むろん、そういう人たちほど社会的支援を必要としています。手術を何度も繰り返しながら大きくなり、大人になってからも手術が必要になる人は今後も増えていきます。なぜそういう人たちが、重度かつ継続に属さないのでしょうか。厚生労働省は育成厚生医療については詳細なデータがない、2年以内に実証的な研究を行った上で考えるとしていますが、それならば少なくとも数回以上手術をしていて将来も手術の可能性があるという患者については、まず対象にしていただく。そして、実証データが出たあとで、外すのであれば外してもらうというのが、すじではないでしょうか。この点についてもこの委員会でよくご審議をいただきたいというふうに思います。  
 第4には、理念の問題です。現行の育成医療は児童福祉法に基づく制度で、障害者対策とは異なります。児童福祉法は「国民は児童の健全な育成に努め、また児童は等しく生活を保障される」との理念の元に、現在は、育成医療は身体障害者時代に放置すれば将来障害を残すおそれがある児童を対象にしております。胆道閉鎖症など先天性の内臓疾患児や口唇口蓋裂などの外科的治療にも適用されていますが、障害者自立支援法案では、法案のなかにそれを担保する規定がどこにもありません。このことは指摘しておきたいことです。 
 そのほかにもあらたに食費が自己負担になる問題、厚生労働省の公平、不公平という考え方への疑問、育成医療の緩和措置が低所得者層への軽減策などの恒久措置でなく、なぜ経過措置になっているのかという問題。自立支援医療が給付されない場合の高額療養費の立替払いの問題、さらには心臓病を含めた内部障害者への理解と社会的支援策への検討が立ち遅れている問題など審議していただきたい様々な論点があります。これからも衆議院でも十分な審議をしていただけると期待しています。自立支援医療の場合、生活の向上を目的としている福祉サービスと異なり、命を救うための医療を障害者自立支援法案に踏み込んだことにそもそも無理があると考えます。自立支援医療の3つの公費負担医療制度についても目的も対象も違う制度をひとくくりにするのはあまりにも拙速で無理があったのではないか。前の国会で問題になった基礎的データ資料の誤りや自立支援医療制度運営調査検討会で精神の障害範囲についても異論が出ていることが端的に表しているのではないかと思います。
 今、日本は国を挙げての少子化対策、子育て支援に取り組んでいます。若い人たちが安心して産める環境を作っていく。心臓病児を授かっても育てていける。その環境作りのひとつが医療費への負担軽減策だと思います。内閣府の最近の調査でも少子化対策として何が大切かという設問で、保育、教育、医療費への補助など経済的支援をあげた人が70%で、最も多かったという結論が出ています。育成医療の見直しをするなら制度拡充の方向で医療制度ともからめた政策作りが必要と考えます。
 最後に1通のメールを紹介します。厚生労働委員の先生に直接送られたものですのでお読みいただいた先生も多いかと思います。
『息子は今まで3回の手術を受けました。赤ちゃんのころは乳児医療、5歳のときは育成医療で手術費用を助成していただき命を助けていただきました。思いもかけず病気の子供が生まれ、子供が生きるか死ぬかの状況のなか、親は不安でいっぱいになります。そんなとき手術費用の心配をしないでいられて、なんて日本は良い国だと思い、たいへん感謝しました。息子は近々4回目の手術を受けることになっています。東京に住んでいますが、病院は関西にあります。交通費、親の滞在費もかかります。私の知る限り、心臓病の多くの子供たちは複数の手術を受けるし、先端医療を受けるので、遠方の病院に通院、入院することも珍しくありません。子供たちは手術を受けるという選択をするのではなく、生きるためにリスクを承知しながらも何回も手術を受けるのです。その子供たちとその子供を守る親たちがいることを知っていただきたい。どのような境遇に生まれた子であっても命を助けていただける育成医療の存続を希望します』
心よりお願い申し上げます。衆議院では審議が始まったばかりです。拙速な結論を急がず、慎重な審議をして私たちの不安や疑問に丁寧に答えてほしい。そういう国会、委員会であってほしい。ご静聴ありがとうございました。

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