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山本英一郎さんの「遺言」と、それを邪魔する者の正体

2006年05月28日 | Baseball/MLB

(気宇壮大を絵に描いたような人で、「老害」とは終生無縁だった山本英一郎氏)

今朝の朝日新聞によれば、一昨日亡くなった「日本野球国際化のパイオニア」山本英一郎氏は、持論として①プロ、アマ統一組織 ②五輪での野球競技復活 と並んで、③甲子園大会での「選手村」建設を生涯の目標としていたと言う。

春・夏の甲子園大会に出場する代表校には、主催者である高野連と朝日・毎日両新聞社から旅費・交通費が支給されるが、その一泊あたりの宿泊費は選手一人につき1万円にも満たず、これだけで食べ盛りの高校生を宿泊費が高い関西圏のホテルや旅館に泊めるにはとても足りない額である。現在、甲子園のベンチ入り人数は18人と、全国大会の選手枠としては非常に少ない。トーナメントの長さや野球と言う時間無制限の競技の性質を考えれば、最低でも25人のベンチ入り人数はほしいところなのだが、どうやら少なからず宿泊費負担の問題が関係しているらしい。

もし、甲子園の近辺、あるいは関西圏に練習場も備えた選手村を建設すれば、当然この宿泊費負担の問題は解決するし、選手枠も増やすことが可能だろう。その場合、都市対抗野球と同じような「補強選手制度」を導入すれば、高校野球最大の問題点のひとつである投手の登板・投球数過多に解決策ができるし、また予選で敗れた学校の選手たちにも別の方法で甲子園出場の夢がうまれることになる。

選手村については、もちろん甲子園の開催期間以外は、それこそ修学旅行の宿泊施設として利用してもらうなり、活用方法はいくらでもあるだろう。建設地、そして宿泊施設としての運営・経営については阪神電鉄の協力を仰げばいい。

しかし、例の「村上ファンド」が阪神の経営権を握れば、少なくとも「選手村」建設・運営で阪神の協力を得ることは難しくなる。何しろ、頭にあるのは金儲けのことだけで、社会貢献なんかするくらいなら、海外に移住したほうがマシと考えるような人物が経営する会社だから、短期的に巨額の利益を得られないこうした公共性の高い事業に金や土地を提供するなんてとんでもないと言い出すに決まっている。ちなみに連中がターゲットにしているのは梅田の一等地と並んで、阪神の二軍練習場である鳴尾浜のタイガーデンとも言われている。金を稼がない二軍の練習場に阪神地区の一等地なんか使うより、二軍と合宿所は地方に売り飛ばして、そこにマンションやショッピングセンターでも作ったほうがいいという考え方だ。ちなみに、そういう考え方のもとで球団が売り払われ、球場も解体されて跡形もなくなったのが、阪急ブレーブスと西宮球場である。阪急の総帥だった小林一三は、さぞ草葉の陰で嘆いていることだろう。

山本さんはまた、夏の盛りに甲子園大会が開かれることで、高校のトップ選手が、国際野球連盟主催の「18歳以下世界選手権」に出場できず、それが野球界のレベルダウンにつながることを憂慮していたという。87歳という、本来なら「天寿を全うした」と言っても差し支えない年齢であったが、こうした気宇壮大さを持った人物がプロ、アマ球界を見渡しても見当たらないことを考えても、「老害」などとは終生縁のなかった山本さんを失ったことはやはり日本の野球界にとっては計り知れない損失と言えるだろう。



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4 コメント

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タイトルに (轟鬼)
2006-06-01 09:28:58
惹かれて読んではみましたが、正直がっかりです。節丸さんのブログでもご意見拝聴しましたが、全くと言っていいほど話の中身がないのはどういうことでしょうか?



MLBではではといった事象の羅列だけではNPBにフィードするものが「全く」ありません。具体的なMLBを基にしたNPB改革案を是非お聞きしたいものだと痛切に願うばかりです。
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「ためにする」批判では、「論議」に発展できませんね (Ryo Ueda)
2006-06-01 13:47:35
申し訳ありませんが、貴乃花親方に関するエントリーにお寄せいただいたコメントを読んでもそうですし、節丸さんのBlogに寄せられているご意見を「拝読」してもそういう傾向をお見受けしますが、轟鬼さんのコメントには「ためにする」批判が多すぎますね。私は「MLBではといった事象の羅列だけ」を書いているつもりはありません。球団数拡張の問題にしても、やみくもに「メジャーにならって球団を増やせ」とは主張していませんよね。「野球機構が専門委員会を作って市場調査を行なうべき」「きちんとしたプロ・アマ共通の指導者のライセンス制度を導入して、野球全体のレベルを向上させて、競技としてのベースボールの普及・発展を図るべき」だと、このBlogでも再三論じています。それに、コメントをお寄せいただいた、この山本さんに関するエントリーにはMLBの「M」の字もありません。



貴乃花親方のエントリーでも、「鬼の形相」に話をすりかえていらっしゃるようですが、私があそこで論じているのは力士としての「取り口」と「型」についてです。それと、あえて申し上げれば、私はあの「鬼の形相」を決して(わが国の宰相のように)評価しておりません。双葉山が安藝ノ海に連勝を69で阻止されたとき、知人に当てて打った電報の文面「われ、未だ木鶏たりえず」がまさにそれを象徴していると思うのですが、名力士・大横綱と呼ばれた人ほど、強さをいたずらに誇示せず、まして喜怒哀楽の表情などあらわにしないものでしょう。私は、相手がはるかに格下の平幕で、体もはるかに小さい力士を相手に、立会いと同時にいきなり張り手を食らわせた武蔵丸の行為と同じくらい、あの「鬼の形相」は横綱らしからぬものだと今でも考えております。



この際、私が「轟鬼」さんにぜひおススメしたいのは、節丸さんや私のBlogにいろいろとコメントを書き込むパワーがおありになるのなら(もちろんそれはそれでかまわないのですが、とても常に轟鬼さんと1on1でお相手する時間と労力、そして忍耐力は二人とも残念ながらありませんので=笑)、ご自分のBlogを立ち上げてはいかがですか、ということです。

結局、あなたはご自分で情報の発信や論議の口火を切ることがなく、ひたすら他人の主張や意見に対して「ためにする批判」ばかりを繰り返しているような印象しか受けないのです。「具体的なMLBを基にしたNPB改革案」、ぜひご自分のBlogで、ご自分の「案」として示されたらいかがしょうか? 

あえてきつい言い方をすれば、どうも私はあなたの「あと出しジャンケン」的なコメントの書き方に好感を持てません。

いろいろとご意見はお持ちのようですし、Blogを立ち上げる作業自体は難しいことではありません。当Blogなどにもトラックバックしていただければ、多くの方に閲覧してもらえる機会もあるかと思いますので、ぜひ「轟鬼Blog」の旗揚げを心よりお待ちしております。
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轟鬼さまへ (Ryo Ueda)
2006-06-01 16:12:59
申し訳ありませんが、あまり直接エントリーのテーマに関係のないコメントが重なりますと、当Blogの趣旨から逸脱する危険性もございますので、私宛のご意見等が今後もございましたら、公式サイトIndexページ左上のメールアドレスから直接ご連絡下さい。ご返事が必要だと思われるものについては返信いたしますし、また当Blogにてご意見をぜひ公開すべきだと判断した場合は事前に連絡を差し上げた上で公開いたします。
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コメント削除のお知らせ (Ryo Ueda)
2006-06-02 20:50:26
誠に残念ですが、Blogの混乱と「荒らし行為」防止のため、1件の投稿を私の予告コメントとともに削除いたしました。なお、削除したコメントについては別に保存してあります。



今後もエントリーのテーマや内容と無関係であったり、混乱を増幅させる恐れがあったり、「荒らし行為」が目的であると判断した場合、当方の編集権を行使し、時間を予告し、文面を保存した上で、削除することがありますので、ご了承下さい。



また、それまでのやり取りについても、「不愉快だから削除してほしい」との要望がメールなどで寄せられておりますが、予告前のものに関しては、しばらく様子を見ることにいたします。



今後もぜひエントリーのテーマに沿った投稿をお願い申し上げます。
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