(後半76試合の出場ながら、驚異的な打棒でヤンキースを逆転優勝に導いたジョー・ディマジオ)
6月29日現在、アメリカン・リーグ東地区で首位レッドソックスと2位ヤンキースとのゲーム差は4ゲームに開いている。最近10試合のヤンキースは6勝4敗とまずまずだが、とにかく宿敵レッドソックスは現在怒濤の12連勝中。しかもア・リーグ中地区ではタイガース、ホワイトソックスがともに6割を超える勝率で熾烈な首位争いを演じており、あくまでも現状での見方だが、ワイルドカードでのポストシーズン進出も難しい状況になりつつある。
ついにロビンソン・カノウまで15日間のDL入りをしてしまったヤンキースとしては、7月末がデッドラインとなるトレード期限までに、何とかマイク・ムッシーナ、ランディー・ジョンソン、王建民に次ぐ4、5人目の先発投手を加えたいだろうし、崩壊状態の中継ぎ投手も補強したいはずだ。打線に関して言えば、今季中の復帰が微妙なゲイリー・シェフィールドに代わる大物外野手、たとえばケン・グリフィーjr.やアルフォンゾ・ソリアノの獲得も現実的なテーマになってくるだろう(ただ、そのためにファームのトッププロスペクト投手であるフィリップ・ヒューズを放出する可能性があるのは惜しいのだが)。
しかし、打線で「8月反攻」の鍵を握るのは、やはり松井秀喜のカムバックだろう。
故障者リスト入りするまでの成績は32試合出場で31安打、21得点、8二塁打、5本塁打、19打点、打率.261(詳細なスタッツはhttp://newyork.yankees.mlb.com/NASApp/mlb/mlb/stats/mlb_individual_stats_player.jsp?playerID=425686&statType=1)。連続試合出場も途切れ、シーズンの半分を欠場する重傷を負ったいま、当然打撃タイトルや2年連続3割(規定打席以上)などの個人的な目標は復帰後の松井には存在しない。
ただ、ラインナップに戻ったあと、かなり具体的な目安、そして目標になる数字を、1949年にチームの偉大な先輩が残している。「ジョルティン」ジョー・ディマジオだ。
ちょうどケイシー・ステンゲル監督が就任したこのシーズン、ディマジオは前年のオフに受けたかかとの手術からの回復が思わしくなく、キャンプで痛みが再発し、開幕から欠場を続けていた。しかし、6月に故障が癒えてラインナップに戻ったディマジオは、それまでの故障がウソだったかのような八面六臂の大活躍を見せ、76試合の出場ながら、272打数94安打で打率.346、58得点、14本塁打、67打点と少ない出場機会ながら打ちまくった(詳細なスタッツはhttp://mlb.mlb.com/NASApp/mlb/stats/historical/individual_stats_player.jsp?c_id=mlb&playerID=113376)
この年のヤンキースはディマジオ以外にも故障者が多く、本塁打数で彼を上回ったのはトミー・ヘンリック(24本)とヨギ・ベラ(20本)だけ。ディマジオ以上の打点を稼いだのもこの二人だけで、100打点以上のバッターは皆無だった。しかし、ステンゲル監督は師匠であるジョン・マグロー監督直伝の「プラトーンシステム」を駆使して百通り以上の打順を組んでこの苦境をしのぎ、また21勝のビック・ラッシーをはじめ15勝以上4人、5人が二ケタ勝利を記録した投手陣の踏ん張りもあって、大打者テッド・ウィリアムズらを擁するレッドソックスとのデッドヒートを制して1946年以来のリーグ優勝を果たし、ワールドシリーズでもドジャースを4勝1敗で下して、ここに空前絶後のシリーズ5連覇が幕を開けたのである。
さて、DL入り前の数字でスタートする松井だが、49年のディマジオが残した主要スタッツまでは安打数で63、本塁打数で9、打点で48、得点で37の差がある。8月上旬とも中旬とも言われる復帰時期にもよるが、2ヶ月あれば本塁打、打点、得点は十分に上回る可能性があるし、1ヵ月半なら同じレベルの数字を残すことも困難さは伴うが不可能ではないはずだ。また、松井が49年のディマジオに匹敵する成績を記録できれば、当然チームにも好影響を与え、レッドソックスへの追撃ムードも高まるだろう。
現役時代のディマジオの背番号は、永久欠番にも指定されている「5」。その栄光の番号を二つ分背負っている男には、ぜひ倍近い大活躍を期待したいものだ。
※渡米中の店主日記、及び帰国後の空白日についてはおいおい追加更新いたします。お楽しみに。