第壱百八拾七話の推奨youtube動画BGM。
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王様は遠くを見つめたまま昔の出来事を話し始めた。
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60年前のある日のこと。
聖マリアンナ・デ・フェリス魔法学院。
桜が咲き、艶やかに学校全体を色飾っており、卒業式間近の校舎の真上を見上げれば、そこには気持ちのいい青空が広がっている。
ファーレン『・・・・・^-^』
ファーレンはピンと背筋を伸ばしながら校庭のベンチに座り、その日も本を読んでいた。ほのかな風も気持ちよく、ページを一緒にめくってくれている。
大好きな本を読み始めるとすぐにその世界に入り込んでしまい、あっという間に日が暮れてしまうことは日常茶飯事であった。
校門が閉まるぎりぎりの時間。
時間など忘れて読み耽っている。
ファーレン『・・・・・^-^』
しかし突如ファーレンの世界は閉ざされ、現実の世界に引き戻されてしまうのだった。
ファーレン『・・ぁれ・・・^-^;』
本が目の前から消え、強制的に目覚めさせられてしまったファーレンは、手元から無くなった本の行方を探している。
ファーレン『・・・どこ・・・だ・・^-^;?』
バリス『ははははははっ^△^ノ■何読んでんだよ~!!!』
ダック『おまえ何が楽しいんだよ!こんなの読んでて』
集中して読んでいることをいいことに、学校の不良らが後ろから本を奪ってしまい、一日中本を読んでいるファーレンにケチをつけている。
ファーレン『・・ぁ・・・返してよー・・・^ー^;』
バリス『返してほしけりゃ取ってみろよぉー^△^ノ■』
ダック『はははははっ^^!!』
こういったイジメもファーレンにとってはごくありふれた日常の一部。バリスとダックはファーレンをいつも標的にしていた。
体の大きいバリスは本を持ち手を伸ばし、ファーレンの手が届かない位置までかざして高くあげながら煽っている。
ファーレン『ぁぁー!!返してよぉ~>_<!!』
なんとかして取り返そうとファーレンは一生懸命その本に向かって何度もジャンプをしている。
バリス『ははははっそんなに大切なのかよ^△^ノ■こんなもん!!』
するとバリスはファーレンの頭の上で本を開くと、引き裂くように両手で左右に力を入れ始めた。
ビリ・・・・ビリビリ・・・・・
徐々に冊子が音を立て破れていく。
ファーレン『あぁーーーー>_<!!!!』
ダック『あはははははっ^^!』
ビリ・・・・ビリビリ・・・・
ファーレン『あぁ・・・・ぁぁ・・><』
ビリ・・・
みるみるうちにその本は二つに引き裂かれていき分断されていく。
バリス『・・・・・^△^』
ダック『・・・・・^^』
ビリバリリリリリッ!!!!
そしてとうとう真っ二つに裂かれ、見るも無残な姿になってしまうのだった。
ファーレン『・・・ぅ・・・ぅぅ・・・><』
バリスは半分に引き裂かれた本を両手に持ち、ファーレンの困る顔をみて満面の笑みを浮かべている。
バリス『こりゃ悪かったなぁ~!!力入りすぎたわ^△^!あははははっ!』
ダック『いーひっひっひっ><腹いてぇ~!!』
ファーレン『・・・・・・・。』
悔しさで涙がいっぱいに溢れ落ちそうになったファーレンは渾身の力を振り絞り、叫びながらバリスへ向かっていく。
ファーレン『うわぁぁぁああぁぁぁぁ><!!!!!』
バリス『?』
ダック『!?』
破れかぶれで突っ込んだファーレンの頭は見事にバリスの胸に辺り、突き飛ばしている。
ドガッ!!!!
バリス『ぐはっ><!!』
ダック『てめぇ!!!』
砂煙を出しながらバリスはファーレンと共に転がっていく。
ゴロゴロゴロゴロ!!
勢いに任せて転がり、止まるとバリスがファーレンの上に馬乗りになっていた。
バリス『おまえぇ!!!いい度胸してんじゃんか!!』
ファーレン『・・ぅ・・・ぅぅ・・・><』
ダック『ファーレンのくせに!!』
バリスは上から力任せにファーレンを殴りつけている。
バリス『このやろっ!!このやろっ!!』
ドガッ!!バキッ!!
ドガッ!!!バキッ!!
下になったファーレンは必死に上からの拳を防御している。
ファーレン『・・ふぁっ・・・ぐぁっ・・がはっ・・』
ダック『そうだもっとやっちゃぇバリス!!』
バリス『っのやろぉ!!!俺に!!立て付くなんて!10年早いんだよっ!!』
ズガッ!!バキッ!!!!
受けきれなくなった拳はファーレンの顔面を捉えていき、流血していくファーレンは意識が飛びそうになるほど殴られ続けている。
ドカッ!!!バキッ!!
バリス『・・・はぁ・・ぜぇ・・』
ファーレン『・・・ぅ・・ぅ・・・・』
そしてとどめを刺すように大きくバリスは拳を振り上げた。
バリス『・・・後悔しろよっ!!』
『やめなちゃい!!』
バリス『!?』
ダック『!?』
ファーレン『・・・・・。』
ファーレンは意識が朦朧としながら、声の主の方へ目をやった。
するとそれは・・・
自身と正反対である優等生、エビちゅであった。
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
腫れ上がったファーレンの目から見える涙にまみれた視界には、ぼんやりとその雄姿が写っている。
バリスはファーレンを下に立ち上がり、エビちゅへ向き直っており、続くようにダックも後をついていった。
バリス『・・・なんだおまえ?』
ダック『おまえもやられたいのか!?』
バリスはエビちゅの胸倉を掴んだ。
エビちゅ『・・・・・( ̄ω ̄ )』
やや離れた場所でエビちゅの様子を見ているファーレン。
ファーレン『・・・ェ・・・ビちゅ・・・。』
ファーレンのその顔は血と泥と涙に覆われている。
ダック『おまえ!知ってるぞ!エビちゅだろ!?推薦腐るほど貰ってる奴だろ!?』
バリス『はっはっはっ^△^俺達に手を出したら・・・どうなるんだろうな!?』
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
名誉溢れるこの学校では特に規律を重んじている。
不祥事だけでなく、揉め事を起こしただけでも推薦に響き、特に他校や今後の就職先などに対して注目され、影響力を持った者への処罰は厳しい。
エビちゅは、魔法学院の優等生。
例え友達を助ける為とはいえ、暴力で解決したとなればその対象になってしまう。
しかしそんなことはお構いなしに魔法詠唱を始めているのだった。
エビちゅ『・・・リーズ・・・デルタ・・・( ̄ω ̄ )』
胸倉を掴まれたままのエビちゅは両手をいっぱいに左右に広げ、その手の平には褐色の色をした玉が浮かんでいる。
・・・ブーーーーーーーーーーーン・・・
攻撃されるやもしれないその状況に慄きながらも、まさかするはずはないと高をくくって威勢を張っているバリスとダック。
バリス『・・・へへ^△^;・・・やってみろよ・・・』
ダック『・・・ゴクッ・・・・^^;』
エビちゅ『遠慮なんてしまちぇんよ( ̄ω ̄ )』
ズドーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!
手の平に浮かんだ二つの褐色の玉は躊躇いもなくバリスとダックへ飛んでいき、一瞬にして丸焦げに焼いてしまっていた。
・・プスプス・・・・
バリス『・・・・・・・。』
ダック『・・・・・・。』
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
ファーレン『・・・・ェ・・ビちゅ・・・ありがとぅ・・』
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りんと王様は留置所前の通りでしゃべっている。
王様『・・・・そしてエビちゅは退学になってもうたんじゃ・・・ーωー』
りん『・・・・退学に!?』
王様『奴はわかっておった・・・天秤にかけたんじゃろうな・・・名誉と・・・・友達と・・・・どちらが大切かをな・・・ーωー』
りん『・・・・・・。』
言葉を詰まらせたりんの横で、王様は話し続けた。
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あれから数日後。
バリスとダックはまだ入院しており、学校側は責任を負うこと恐れ、この傷害事件と共にエビちゅを切り離したのだった。
エビちゅらの言い分も聞けず、一方的に退学処分とした魔法学院。全推薦を取り消して退学とし、エビちゅの学校通学歴さえも抹消していた。
学校から近い公園にて、顔に絆創膏を貼ったファーレンが泣きながらエビちゅに訴えている。
ファーレン『・・・エビちゅ馬鹿だよ!!!!』
エビちゅ『・・・・・・( ̄ω ̄ )』
涙でしわくちゃになった顔で話し続けるファーレン。
ファーレン『あの時そのまま帰っちゃえば良かったのに><!!いろんな就職先あったのに!!魔法学院の首席だったのに!!馬鹿だよ!!・・・ぅ・・ぅ・・・』
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
暫く沈黙のあと、エビちゅは真意を話すことが照れくさかったのか、他の話しで誤魔化そうとしている。
エビちゅ『まったく・・・あの程度で退学の在学履歴抹消だなんて・・生徒よりも学校は面子を大事にしているんでちゅね・・・見損ないまちた( ̄ω ̄ )』
ファーレン『・・・・・・。』
エビちゅ『魔法使いなんて糞くらえでちゅ( ̄ω ̄ )』
ファーレン『・・エビちゅは才能があるのに!!』
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
ファーレンの言葉を無視するようにしゃべり続けている。
エビちゅ『エビちゅを見縊るでないでちゅよ( ̄ω ̄ )!?魔法の世界なんていなくても、独立して一世を風びしてやりまちゅ!』
ファーレン『・・・・・。』
まだ塞ぎこんでいるファーレンにエビちゅは溜息をもらした。
エビちゅ『・・ふぅ・・気にするでないでちゅよ( ̄ω ̄ )エビちゅはそんな柔な人間でないでちゅよ・・・知ってまちゅか?ファーレン!世の中はロマンだけでないんでちゅよ!』
ファーレン『・・・グス・・・・。』
エビちゅ『眩しい太陽・・美しい月・・そして世の中所詮金なんでちゅ( ̄ω ̄ )』
本当に申し訳ないことをしてしまったと後悔するファーレン。その落ち込みを励まそうと強がるエビちゅを見て、尚また優しさを感じている。涙と共に流れている鼻水をすすりながらエビちゅの方へ向いた。
ファーレン『・・グス・・・・エビちゅは・・・優しすぎるんだょ・・・。』
エビちゅ『見てるでちゅよ!大人になったとき・・・お互い大きくなって会うんでちゅ( ̄ω ̄ )!』
ファーレン『・・・・大きくなって?』
エビちゅ『・・・・ファーレンは・・将来・・この国の王ちゃまでちたね( ̄ω ̄ )?』
ファーレン『・・・・ぅん・・』
エビちゅ『じゃぁエビちゅはファンブルグ一の代表取締役!金持ちになってるでちゅ( ̄ω ̄ )』
ファーレン『・・・ハハ・・・ぅん^-^』
やっと笑顔が戻ったファーレンを横目で確かめながら、エビちゅは立ち上がった。
エビちゅ『・・・さ・・そろそろエビちゅはいくでちゅよ( ̄ω ̄ )』
ファーレン『・・・ぅん・・・・』
ファーレン『・・・きっとだよ!!エビちゅ!!』
エビちゅ『任せておきなちゃいでちゅ( ̄ω ̄ )!!』
ファーレン『そしたら・・この前のタイムカプセル一緒に開けようね^-^!!』
エビちゅ『了解ちまちた( ̄ω ̄ )ノでは・・・さらばでちゅ・・』
ファーレン『・・・ぅん・・・』
無情にももう振り返ることはなく、一度背を向けたエビちゅはそのまま
その場を去っていくのだった。
それから暫くの間、涙が止まらないファーレンはその場で立ち尽くしていた。
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二人は留置所前の通りで話している。
りん『・・・・そうだったんですか・・・・』
王様『わしはさっき奴に恩赦を提案したのじゃ・・きっと・・・この次の防戦で加勢しにきてくれるはずじゃ・・・わしは信じておる・・・悪の道など奴には似合わん・・』
60年も昔の出来事を話しているりんと王様の頭上には、あの頃と同じ青く綺麗な空が広がっている。