日も下がり始め、若干夏の日照りは弱まりつつあったが、八角形のオクタゴンを囲む円形の観客席のボルテージは今尚冷めてはいない。hananaとアメルが選手控え室にいき、残りの者達は観覧席にて次試合を待ち侘びていた。
りん『次楽しみだわ~(*´▽`*)』
王様『ほむーωーあの少女がどの程度アメルを翻弄させるのかが見ものじゃのぉ』
オムーが皆の飲料などを買い込み帰ってきた。心なしかその顔には焦りが見えている。
オムー『えっと・・王様ビールだったよな=ω=.?』
王様『ほむーωーすまんのぉ』
りんとトカマクの後ろに座る王様は、後ろから細い手を伸ばすと、りんは邪魔にならぬようトカマクとの間に空間を作った。
手を伸ばせばオムーの手渡すビールまで腕が届くはずである短い距離。しかし王様は必要以上にりんの胸元に腕をかすらせようと不自然な手の伸ばし方をしている。
りん『・・・ん?』
王様の腕がりんの胸先に触れ、若干弾力を感じた腕は尚りんの側へ押してきている。
王様『オムー!ビールをはよくれぃーωー』
オムー『早く取ってくれぉ王様=ω=.俺すぐ行くところあるんだから!』
王様の思惑に気づいたりんは右肘うちを王様の溝落ちにくらわし、鈍い音を響かせた。
ドッ!
王様『・・・ぐ・・・ぐぅ・・・』
オムーからコップを受け取り、うずくまる王様の目の前に静かに置くりんの表情は眉ひとつ動かしていない。
りん『次へんなことしたら毒矢刺すから。』
王様『・・・ぐ・・むむぅ・・・』
そんなやりとりなど構うことないオムーは早々とその場を去っていく。
トカマク『あれ?オムーどこいくのかしら?』
クルス『いつものことだ(゜Д゜)』
王様『父親譲りじゃなーωー』
ニコシア『ん(`ω´.)?』
・・・・・
・・・
・・
観客の騒がしさを見事に遮る分厚い石壁の中にhananaとボルケノゴーレムがいた。広い控え室の中央に置かれている長方形の木机に座っている二人。
hanana『ボルケノさんもう緊張していない^0^?』
ボルケノ『・・グーム・・・グッフグフングッ・・』
hanana『そっか^0^私もまだちょっと緊張してるよ!』
数人分の椅子を使い座っているボルケノゴーレムの横。
岩でゴツゴツとできた大きな体のホコリを取る仕草をしつつ、hananaは寄り添っている。
そこへ突如入室してきたオムー。
肩で息をしている。
バタンッ!!
オムー『ぜぇ・・はぁ・・ふぅ・・間に合ったか≫ω≪.;』
ボルケノゴーレムとhananaは状況が読めず、二人合わせて呆気らかんと両膝に手を当てるオムーを見ている。
hanana『ぁ!オムさん^0^ノ!』
オムー『ぜぇ・・はぁ・・ぁっhanaちゃんか=ω=.;えっと・・あれ?』
見渡せば、広い控え室にいるのはhananaとボルケノゴーレムだけだ。
キョロキョロの辺りを見渡しているオムー。
オムー『あっれっここじゃないってことは・・・んと・・んと≫ω≪.;』
hanana『あは^0^;オムさん何かに必死でし』
オムー『あわかった=ω=.;!!うんそうだ!hanaちゃん頑張れよ!』
一人悩み自己解決したオムーはそそくさと部屋を出ていく。
hanana『ぇ・・ぁ・・はぃでし・・^0^;ハハ・・忙しそうでし・・』
一方、アメルはペット待機所へ出向いていた。
そこにはエビちゅが付き添っている。
エビちゅ『大丈夫だと思いまちゅよ( ̄ω ̄ )』
アメル『ほんと(・w・´)!?いやだってさ、こっちもペット入れないと絶対不利だと思ってさ』
柵越しにエビちゅからもらった戦闘猫が鳴いている。
戦闘猫『ミィーヾ(^-^=)!!!』
アメル『ねぇこの猫引っ掻きが特技(・w・´)?近接攻撃だけなの?』
エビちゅ『違いまちゅよ( ̄ω ̄ )メインは魔法でちゅ』
思いがけない言葉にアメルの開いた口が塞がらない。
アメル『え!?・・そ・・そうなの・・?』
エビちゅ『お~よちよち( ̄ω ̄ )』
柵を開けた途端、猫はエビちゅの胸元に駆け寄り、頭を擦り付けている。
戦闘猫『ミィーミィーミィーヾ(^-^=)!!!』
エビちゅ『エビちゅも最初は普通の猫だと思ったんでちゅけどね( ̄ω ̄ )さすがエビちゅの教育でちゅね。今ではフレアぐらいお手の物でちゅ。』
そういうとエビちゅはペット控え室から廊下を挟んだ中庭に生えている大木を指差し、猫に何やら指示をした。
戦闘猫『・・・ム・・ムムム・・ミミィーヾ(`-´=)!!!』
次の瞬間。
ギガガガガガガッ!!!!
空中に形成された魔法陣から矢の形状をした真っ赤な炎が大木を突き刺し、爆音と共に木々を真っ二つにしたのだった。
ブォーーー!!!
ガガーーーーーーーーンッ!!
アメルの目の前に勢いで葉を何枚も散らした半分の大木が倒れこむ。
ズシーン!!ドドンッ!
アメルの顔には倒れた土ぼこりと葉が目の前を覆うほどに散っている。
アメル『・・・すげ(ーwー´;)これもらったかも』
エビちゅ『フレイアローでちゅよ( ̄ω ̄ )習得に年月はかかりまちたから』
アメル『名前どうしよっかな・・そうだ(・w・´)ノ炎使いぬこ!これにしよっと!』
するとそこへ汗を流し息を切らしたオムーが現れた。
オムー『やっとみつけたぉ≫ω≪.;ぜぇ・・はぁ・・』
エビちゅ『それではエビちゅは観覧席に戻るでちゅ( ̄ω ̄ )』
アメル『うん(・w・´)ノありがとエビちゅ!』
エビちゅと入れ替わるようにオムーが汗を流しペット控え室前中央広場に駆けつけている。息切れと真っ赤になった顔は、数秒まともに話すこともできない。
アメル『大丈夫w?』
オムー『ぜぇ・はぁ・・かっゴホッゴホッ≫ω≪.;』
喉を潤すわずかな唾液も、空回りから肺の気管支に入ってしまい、咳き込んでいる。
オムー『ゴホッ・・ゴホッ・・これ・・これ使ってくれぉ≫ω≪.;』
オムーの手元には足首の飾り輪であるアンクレットが握られていた。
アメル『うわぁ可愛いねぇ(・w・´)ノいいのいいの?』
オムー『これ魔法防御力ちょっと上げてくれるぉ=ω=.;ぜぇ・・はぁ・・』
そのアンクレットは細い一本の太い皮と二本の細い紐からなり、三重になった紐のそれぞれから装飾された紐がぶら下がっている。
装飾された紐それぞれに豪華な石がついており、艶やかなその作りは時代をも感じさせていた。
アメル『ありがとオムー(・w・´)!頑張るねっ!』
恥ずかしさからか、渡すとすぐにオムーは中庭を出ようと走り出すも、すぐに立ち止まり、
オムー『・・・・・。』
アメル『・・・・(・w・´)?』
やや治まった肩の呼吸をそのままに、オムーは背を向けながら話した。
オムー『アメル・・・』
アメル『(・w・´)?』
躊躇いさえも感じさせる間を一瞬置き、話続けるオムー。
オムー『父ちゃんが言ってた・・・あの子・・すげー強いぉ・・・気をつけるんだぉ・・』
アメル『う・・・うん(・w・´;)私も感じてる・・』
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
『わぁぁぁあああああああああぁぁぁぁ』
『ああああああああああぁぁぁぁぁぁ』
観客のボルテージが一気に上がる。司会者が二人の登場を仄めかす登場をしたからだ。
石畳のリング中央に司会者は立ち止まり、徐にしゃべりだす。
司会者『みなさまぁ~大変ながらくお待たせしましたぁ~!!ファンブルグ国、トカマク様主催!国内最強武術大会第二回戦を始めます!!!』
『わぁぁぁあああああああああぁぁぁぁ』
『ああああああああああぁぁぁぁぁぁ』
王様『おっほっビールがうまいのぉ(´ω`*)』
頬を真っ赤に染めた王様は上機嫌だ。
りん『飲み過ぎじゃない?王様』
王様『今日は無礼講じゃよ(´ω`*)』
クルス『今頃アメル緊張してんだろなw』
トカマク『アメルの課題はそれよね・・』
前席に座る頭を交互に避け、選手二人が現れる東西の門を眺める観客達。数万人の観客達は二人の登場を心待ちにしている。
リングに立ち、合図を待っていた司会者がまた360度に座る観客達へ叫び伝えている。
司会者『準備が整ったようです!!さぁ登場してもらいましょう!!』
『わぁぁぁあああああああああぁぁぁぁ』
『ああああああああああぁぁぁぁぁぁ』
会場を包み込む声援を360度から浴びれば、それは誰しも鳥肌を立たせてしまうだろう。その司会者も例外ではない。
これからの壮絶な戦いを思わせる観客達の期待を全身に受け止めた司会者は漲り高ぶらせた声で叫んだ。
司会者『さぁ!その顔をみせてくれ!!第二回戦進出者!アメル選手とhanana選手の登場です!!』