いつもと変わらない梅雨のお昼時。
hananaの父親は新聞紙を読みながらコーヒーカップを口にゆっくりと運んでいる。
hananaがいつもこの時間に家の食料を持ち出していると確信していた母親は、父と共に問い詰めようと食卓から玄関前の廊下に耳をそばだてていた。
父『母さん、俺そろそろ仕事いかないと・・』
母『待って・・』
食卓から壁を隔てた廊下に意識を集中していた母の第六感は的中していた。そのお昼の時間は普段であればhananaも湖乃も二階自室でお昼寝の時間。
しかし案の定廊下に忍び足が聞こえてきていた。
ギシ・・・ギシ・・・
2階のhananaの部屋から一階食糧貯蔵庫、そして玄関へと繋がる一本の廊下道。食卓と壁を介して通っているその廊下は距離こそ短いが慎重に足を忍ばせて玄関出口に向かっているhananaがそこにいるのだった。
・・ギシ・・・・・ギシ・・
hanana『・・・・ソローリ・・・ソローリ・・・^0^;』
食料をローブと腹の中に詰め込み、体半分大きくなっているhananaはつま先立ちでゆっくりと歩いていると、寝ぼけ眼でその様子を階段上から見ていた妹の湖乃は、不思議そうに見ている。
湖乃『・・・お姉ちゃん何してんの(´-`*)』
hanana『・・・・シー・・^0^;湖乃は部屋に入ってて!!』
母『hanaちゃん!?』
hanana『ヒッ^0^;!!お・・お母さん!!』
隣の食卓の父母に聞こえぬよう声を細めて湖乃に力いっぱい訴えるhananaであったがその甲斐もなく、母からの大きな一喝をもらってしまうのだった。
食卓と廊下のドア越しでhananaに一喝する母の声が食卓にいる父まで聞こえてきている。
新聞を目の前にしつつ、横目でその母の剣幕とひきつった顔のhananaの顔を確認した父は心配そうな面持ちでゆっくりとコーヒーを口にしている。
母『hanaちゃんお昼寝の時間じゃないの!!!』
hanana『・・ぇっと・・その・・・あの・・・・^0^;』
ドア越しのその二人の声は十分すぎるほど父の耳まで大きく聞こえてきていた。
母『キャーーーーーーー><!!hanaちゃん!!そのお腹はなに!!妊娠!!妊娠なの><!』
父『;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ぶッw』
母『その歳でなんてことしてるのっ><!!』
慌てて廊下に飛び出してくる父は目を皿のようにそのhananaのお腹を見た。母の言うとおり、hananaのお腹は膨れ上がり、ローブはこんもりと盛り上がっている。
驚きの二人の顔を目の前にしたhananaは観念せざる終えなく、手の力を緩め、少しずつ食べ物を廊下に落としてしまうのだった。
・・ズル・・ガサッ・・・・ズル・・ドサッ・・・ガサドサッ・・・・
hanana『・・ぁ・・はは・・赤ちゃんの正体は・・・食べ物でし・・・^0^;』
母『・・・・お菓子!!!』
父『・・・・フゥ~・・・そういうことか・・・^^;』
安堵の顔を一瞬だした母は尚も顔を厳しくし、問いただし始めている。
母『・・・・どういうことか説明しなさい><!!!!』
hanana『・・ぇっと・・・その・・・><;』
母『ペットね!?駄目よ!うちでは飼えないしそのペットは誰かに預けなさい!!あなたが育てられるわけないでしょ!!』
すぐに心中を察し、hananaに懇願させる暇もなく母は答えた。
話さずともわかってしまい、既にすることもなくなったhananaの口角は無意識に下がっていく。
hanana『・・・ぅ・・・ぅぅ・・(/へ\*)ウゥ』
徐々に顔をしわくちゃに、口をへの字型になっていくhananaの目には涙が溜まってきている。
母『もう食べ物もっていっちゃだめ!!!あげられる食べ物だってうちにはないの!!!』
hanana『・・・・ぅ・・ぅぅ・・・だって・・だって・・もっていかないと><!!』
母『だだっこはいけません!!』
hanana『ぃゃだぃぃゃだぃぃゃだぃ・°°・(((p(≧□≦)q)))・°°・。ウワーン』
母はhananaにできる事とできない事の分別をつける教育の為、強く叱っている。父にはその叱る必要性も、そして相反するhananaの心の優しさもわかっており、致し方ない顔で口をつむっている。
父『・・・・・・。』
hanana『・・ヒック・・・ヒック・・・・だって・・だって死んじゃうもん><!!ゴーレムさん死んじゃうんだもん!!』
父『・・・hanaはゴーレムさんを助けたいんだよね^^父さんはそんな優しい子に育ってくれて嬉しいぞ^^でもね・・・うちは湖乃とhanaのご飯しかないんだ・・』
叱り役の母とは違い、父はなだめる様にhananaに言い聞かせた。
母『あなた稼げるの?無理でしょう。ペットは糞をする。家具を傷める。他所様を咬む。いいことないわ』
たちまち大粒の涙がhananaの頬を伝い、感情を爆発させるhanana。
hanana『ヒック・・ヒック・・。゜゜(>0<)゜ ゜。ビエェーン!!お母さんもお父さんも馬鹿ぁ~』
思いの伝わらない父や母から立ち去る他なく、hananaは勢いよく家を飛び出してしまうのであった。
母『待ちなさい!!hanaちゃん!!』
父『・・・・・。』
・・・・・・・・・
・・・・・
・・
いつもであれば楽しくご飯の時間である昼過ぎのゴーレム隠れ家。
食べるものを持ってこれない苛立ちと申し訳なさで涙ぐんでいるhananaは体育座りをしながらじっと地の一点を見つめている。
hanana『・・・・・グス・・・ごめんね・・ボルケノさん;-;』
『・・・・グゲンゴ・・ゲゴンゴガンゴ!』
涙の止まらないhananaを見ながら力いっぱい顔を横に振っているボルケノゴーレムは、逆に申し訳なさを感じたのか、hananaを元気づけようと洞窟の外に咲いていた小さな花をhananaに差し出した。
『・・ガッゴ・・・・』
ボルケノゴーレムの大きな手と対照的なその小さな花は太い人差し指と中指の間に挟まっており、hananaを元気付けようと力いっぱい純白に輝き咲いている。
hanana『・・・これhanaにくれるの(ρ_;)?』
『・・ガッゴ・・・ガブングゴンゴ・・』
hanana『ありがとう(ρ_;)ごめんね・・お腹すいたよね?』
『ガンググ・・ゲウ・・ゲウガゴ!!』
首を大きく振り、明らかに見え透いた空元気を振舞うボルケノゴーレムであったが、お腹は正直に音を鳴らすのだった。
グーーーーーーーーーーーー
『・・・グゲ・・・・』
思いとは違う生理現象に顔をしかめるボルケノゴーレムは腹を抑えている。
hanana『・・・どうしょぅ・・・』
世話することのできないペットは身寄りがなければ野生へと返す他なかった。そして野生へと返された場合、狩りなどの対象になってしまう。
聞き入れてくれない家以外に頼れる場所がないhananaは途方にくれてしまっていた。
するとその時。
ガサガサッ・・・
洞窟の入り口を囲うように生えている背の高い雑草は、明らかに風とは違う要因で大きく揺れている。
ガサガサッ・・・
ガサガサガサッ・・・・
hanana『!!!』
『グゲ!?』