二人の額にジワジワと溢れ始めた汗。
要因は、この夏の日照り、或いは戦いを前にした緊張だ。
観客たちがリングへ注目する中、王様は酒のつまみ探しに必死であった。歓声に紛れている王様の声が僅かにオムーの耳に入る。
王様『オムー!つまみもっと何かないのかのぉ(ーωー*)』
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
オムー『ん=ω=.??なんだよ王様、今それどころじゃないんだよっ!そこにあるよ!』
王様『つまみがないと落ち着いて戦いもみれんのじゃ(ーωー*)』
オムーはアメルとhananaの試合が始まろうとしている石畳のリングから目を離せず、明後日の方向を指差し示している。
ガサゴソッ
ガサガサゴソッ
よろよろと皆の足元をふらつく王様を心配そうに見ているりんは声をかけた。
りん『王様なにやってんの??アメルたちの試合始まるよ!』
王様『どこじゃ(ーωー*)ゲフッ』
クルス『エビちゅ!アメルにやった猫は近接攻撃だけか(゜Д゜)?』
エビちゅ『それは見てのお楽しみでちゅ( ̄ω ̄ )』
周囲が半ば立ち上がるように中腰でオクタゴンリングを見入る中、一人うずくまり、袋と格闘している王様の鼻息は荒い。
王様『誰じゃ片結びにしたのは(ーωー*)』
ガサゴソッ
ガサガサゴソッ
オムー『アメル油断するなぉ=ω=.!!!』
トカマク『あの猫・・・詠唱をしてるわ・・・まさか』
ニコシア『なるほどのぉ(`ω´.)』
王様『のほ(*´ω`*)これはうまそうじゃ』
酔った王様の手はおぼつかず、手に取った缶詰がポトンと地面に落ち、選手観覧席とリング場を挟む芝生に転がっていってしまっている。
ポトンッ・・・・コロコロコロ・・・・
王様『これ(*´ω`*)なぜ離れる。もっとちこうよれ。』
答えるはずもない缶詰を追い、おぼつかない足取りで芝生へ入っていく王様。元来、リングでの戦いの激しさから観覧席に危険が及ぶことがないよう、距離が設けられた空間だ。
ぎゅうぎゅうに敷き詰められた観覧席とは違い、リングを囲む芝生はある意味特等席である。夏の日照りがあるとはいえ、風の通り道となる芝生は火照った顔を冷やすには丁度いい。
開放感を得た王様は盛り上がる真後ろの観覧席を尻目に、手に取った缶詰を眺め、ドスンと尻を置き、袖で蓋を拭き、満面の笑みを浮かべている。
キュッキュッ
王様『ビールにはやっぱりこれじゃな(*´ω`*)ゲフッ』
オムー『飛ばしていけ=ω=.!!アメル!!!』
エビちゅ『hanana!迷うことはないでちゅ( ̄ω ̄ )全力でいきなちゃい!』
司会の始まりの声が闘技場へ響き渡った。
司会者『それでは試合開始だぁ~!!!!』
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
りん『さぁ!はじまったわよ(*^▽^*)!』
ニコシア『うむ(`ω´.)』
トカマク『ゴーレムに恐怖心はもうないようね』
クルス『さてアメルどうする(゜Д゜)』
hanana『レバッタ・・・ミウデアルテス・・・リガンダリムタ \(-_-)/』
hananaの詠唱により空中に赤い魔方陣がうっすらと見えてきている。
ブァーーーーーンッ!!
と同時ボルケノがアメルへ突進を始めた。
ボルケノ『グワンゴォーーーーー!!!』
ズシンッズシンッ!!
ズシンッ!!
アメル『よしっ!!炎使いぬこ(ーwー´)ノ!!フレイアローだ!!』
炎使いぬこ『ミィーヾ(`-´=)』
ボルケノゴーレムの地響きを伴う突進に合わせ、フレイアローの指示をアメルは猫に飛ばした。
とその時。リング近くにて片手にもったビールを勢いよく開け、続いてもう片方の手に取れた缶詰の蓋を思い切り開けた。
プシューッ!
パカッ!!
王様『のほ(*´ω`*)』
すると、魔法を放出しようとしていた炎使いぬこの頭上にあった真っ赤な魔方陣は、なぜか音もなく消えてしまっていた。
炎使いぬこ『ミィ(・0・=)???』
アメル『ぇ(ーwー´)?』
それに気づくや否や炎使いぬこは一目散にそれの発信源である王様へ飛び跳ねながら駆け寄っている。
スタタッ!!
スタタッ!!!
炎使いぬこ『ミィッミィッヾ(^-^=)!!』
向かうべき敵とは90度垂直に違う方向へ突然走り出す猫にアメルは動揺を隠せない。
アメル『炎使いぬこさん(・w・´;)?どこへ・・・』
司会者『おぉーっとぉ~!!!アメル選手のペットが距離を取ったぁ~!!』
りん『詠唱が止まったわ!』
トカマク『作戦変更?』
オムー『なっなんだ=ω=.;?』
クルス『これはまさか・・・(゜Д゜;)』
エビちゅ『( ̄ω ̄ ;)』
ニコシア『なんじゃ(`ω´.)』
満面の笑みで王様へ駆け寄る猫に気づいた王様もそれに応えるように腕を広げた。
スタタッ!!
スタタッ!!!
炎使いぬこ『ミィッミィッヾ(^-^=)!!』
王様『おぉーどうしたぬこちゃん\(*´ω`*)/我が胸に飛び込むんじゃ!』
大きくジャンプした猫は芝生に着地し、いっぱいに腕を広げる王様を素通りし、足元にあったシャケの缶詰に食らいついている。
シュパッ!!!
スタタッ!!
炎使いぬこ『ガツガツガツガツヾ(^~^=)!!』
王様『・・・・・\(*´ω`*)/』
石畳の八角形のオクタゴンリングは芝生に囲まれ突出している。舞台となるそのリングから降りれば場外負けとなってしまう。しかし躊躇なくアメルの猫は着地してしまっていた。
司会者『おぉ~っとぉ~!!!アメル選手の戦闘ペットが場外だぁ~!!hanana選手の勝利ぃ~!!!』
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
hanana『あれ^0^;何が起こったんでしか??』
ボルケノ『グフ???』
炎使いぬこ『ミィッガツガツッ(^~^=)フミィ!!』
アメル『・・・・(・0・´;)』
意外な展開への驚嘆と呆気のない結果に、大きな歓声の中、笑い声も飛んでいる。
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『あっはっはっはっ』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
戦いを直視できずに両手で目を覆っていたhananaの母親の肩に父の手がゆっくりと乗った。
父『母さん・・・また・・hananaが勝ったぞ・・・』
母『えっ!?』
湖乃『キャハハ!!(^0.^*)ノ彡☆バンバン!! お姉ちゃんまた勝ったぁ~!!』
りん『あんなとこで王様は何やってんの・・・』
王様『・・・・・\(*´ω`*)/』
クルス『www』
トカマク『アメル・・・』
オムー『ま・・まぁ怪我がなかったからよしとするか・・ハハ=ω=.;』
ニコシア『あの猫ちゃんはシャケ缶が好みなんじゃろうか(`ω´.)』
クルス『弱点があったんだなw』
エビちゅ『・・・・・( ̄ω ̄ ;)』
炎使いぬこ『ガツガツガツガツヾ(^~^=)!!』
王様に接近するアメルの表情はまさに鬼の形相だ。
アメル『王様こんなとこで何やってんすか(▼w▼♯)!!猫をおびき寄せちゃってるじゃないすかっ!!』
王様『知らんわ(▼Д▼♯)!!このシャケ缶はオムが買ってきたんじゃ!!』
アメル『オムさぁ~ん(TwT♯)!!』
オムー『俺=ω=.;!?ぁっでもこれは・・エビちゅの調教に問題があるんじゃないのかぉ!』
アメル『エビちゅ~(▼w▼♯)』
エビちゅ『想定外でちゅ( ̄ω ̄;)エビちゅに責任はありまちぇん』
予想外の場外負けを喫し、うずくまるアメルの肩をポンッと叩き、クルスは選手控え室へ向かっていく。
クルス『さすがアメルだ(゜Д゜)おもしれぇもん見させてもらった!ありがとな!』
アメル『見せようと思って見せたんじゃないし(▼w▼♯)!!』
クルスが控え室に向かう姿をみて我に返ったオムーも、そそくさに
後を追っている。
オムー『俺も控え室いかないとっ=ω=.』
りん『二人とも頑張ってぇ~(*^▽^*)ノシ』
ニコシア『それにしてもあの少女が決勝戦に進出か・・いやはや(`ω´.;)』
誰も予想することができなかった無名の少女の決勝戦進出。それは自らも予測などできるはずもなかった。
hanana『なんかよくわからないけど勝ったみたぃだねっボルケノさん^0^ノ!!』
ボルケノ『グンフッ!!』
司会者『それでは~!!時間を入れ、第二回戦!第二試合となります!!』
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
続いて行われるのはトーナメント第二回戦第二試合だ。この勝者が決勝戦にてhananaと戦うことになる。至上最も衝突が激しくなると予想されるクルスvsオムー。
壮絶必至のこの戦いは、ハイクラスな戦いになることは誰しも認めている。そう言わんとばかりに、選手控え室へ向かうオムーとクルスの背へ、既に盛大な期待の声援が送られていた。
『わぁぁぁあああああああぁぁ』
『クルス~!!!』
『オムー!!!』
『ああああああぁぁぁぁぁ』
王様『ぬこちゃん旨かったか(*´ω`*)?』
炎使いぬこ『ミィッヾ(^-^=)』