タバコをふかしながら周囲の観客達の白い目も省みず、ふてぶてしい顔でいる男。闘技場には、ボルケノを役立たずとして虐待をしていたあの男も来ていた。
男『んぁ?俺のゴーレム!あのガキも!あの魔術師もいるじゃねぇか!!』
hanana『ボルケノさん!今だ!!!』
ボルケノ『グフングッ!!!』
試合が始まるや否や、ボルケノと共にhananaは一直線にリング外へ走り出した。
歩幅の小さいhananaを横に、大きな足を地面に減り込ませているボルケノの足音は闘技場内歓声に混じっている。
ズシーン!ズシーン!ズシーン!
『わぁぁぁぁああああああぁぁぁ』
『ああああああぁぁぁぁ』
アナウンス『おぉーっと~!hanana選手ら距離をとったぞぉ~!』
まさか逃げているとも知らずに観戦している者達とは別に、エビちゅはその作戦も、その取り得る策も頭に入っており、顎を上げた無表情な面持ちは変わっていない。
エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』
hanana『やった!場外に出れる!!』
ボルケノ『グフングッ!!!』
とその時。
エビちゅ『ファイアクラフト( ̄◇ ̄ )!!』
一瞬にしてエビちゅの手の平から形成されたエネルギーは、手元から上空へ浮かび上がり、
キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
hananaたちの目の前に落下してくるのだった。
ドゴーーーーーン!!!
hanana『ひぃ><!!』
ボルケノ『ゴッゴフッ!!』
立ち止まったhananaたちの足元前には、一瞬にして焦げ上がった石がプスプスと煙を出している。
エビちゅ『逃げられるとでも思ったでちゅか( ̄ω ̄ )』
hanana『・・・ど・・どうしよう・・』
ボルケノ『・・・・グ・・グフ・・・』
トカマク『え・・・』
クルス『あいつら逃げようとしたんじゃねぇのか(゜Д゜)?』
りん『うん。そう見えたわ。』
アメル『やっぱりあの子・・・戦闘力はもってないんじゃないのかな(゜w゜;)心配になってきたんだけど』
オムー『どういうことなんだ=ω=.』
変装王様『ほむ(■ω■.)あのペットも戦闘用ではないようにみえるのぉ』
エビちゅ『さぁ( ̄ω ̄ )ショータイムの始まりでちゅよ。』
エビちゅは重心を下げ、左右の手の平に虹色の艶やかなエネルギー弾を作り上げた。その目は既に狩りの対象を見る目となっているも、それとは対照的にhananaはボルケノの足にしがみつき、ボルケノもまたhananaの肩に抱きつき震えている。
hanana『・はわ・・はわわわわ><』
ボルケノ『・・・・グ・・グフ・・・・グフ・・』
エビちゅ『レインファイアー( ̄◇ ̄ )!!!!』
エビちゅの手の平からは、いくつもの火の塊が空高くへ飛んでいく。
ドヒューーーーーーーーーーーン
ドヒューーーーーーーーーーーーーーーーン
ドヒュドヒューーーーーーーーーーーーーーーーン
闘技場最上階を越えた幾つもの火の玉は、エビちゅの頭上にて何度もクロスしながら雲にも届くほどの頂きまで登っていく。
変装王様『おっほっ(■ω■.)あの技は久々に見るのぉ!』
王様に変装した男は、興奮した鼻息をさせながら言うと、それを知りたげなトカマクは即座に聞いた。
トカマク『ご存知なのですか!?』
変装王様『あの技はわしが昔みた技じゃな(■ω■.)まさに雨のごとく火を降らす技でのぉ』
クルス『おもしれぇじゃねぇか(゜Д゜)』
アメル『大丈夫なのかな・・あの子(゜w゜;)』
大きな弧を描き、第一弾となる火の玉が石畳のリングへ戻ってくる。落下スピードは尚速く進んでおり、音速を打ち破り衝撃派を伴うその火の玉は長い尾を作りながらhananaたち目掛けて落ちてきていた。それはまさに火の雨。
hanana『あっ危ない><!!』
空高くより光落ちる玉を目で追っているhananaの目の良さは折紙付きだ。hananaはボルケノの手を引っ張り、落下されるであろう地点から必至に離れ走ると、今いたその場所に、非常なる勢いと熱さをもった物体が落ちてくるのだった。
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
質量をもった火の玉の勢いは凄まじいエネルギーを持っており、石畳は弾け飛び、黒焦げになり砕け散った石がhananaたちの体に幾つも飛んできている。
もし避けていなければ、大惨事になっていたことは必然。その外れた事実を予測したhananaたちは尚も震えが止まらなくなっている。
hanana『はわわわわ><!!エビちゅさん本気だっ!!』
ボルケノ『・・・ホ・・・・ホフ・・グ・・・グフ・・・』
と同時。再び次なる火の玉がhananaたちを襲ってきていた。
ヒューーーーーーーーーーーーーーーン
hanana『ボルケノさん!!こっちだ!!!』
ボルケノ『グッグフッ!!!!』
ズシーン ズシーン ズシーン!!
すると寸での所でまたも避けたhananaの足元へ落ちた。
ドゴーーーーーーーーーーーーーーーン!!
hanana『ひぃ><!!』
するとまたも上から空気を切り裂く音を伴いながら落下してくるのに気づくhanana。
hanana『ボルケノさん!!今度はこっちだ><!!』
エビちゅは余裕の表情で空中の火の玉を操っている。
ドゴーーーーーーーーーーーーーン!!
観客達にとり、この状況を未だ見ぬ戦いであり、hananaたちの逃げ惑う姿である真意を捉えてはいなく、hananaの逃げる姿を戦いの一部として、戦略の一部として見ていた。
『わぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁ』
『おおおおおおおぉぉぉぉぉ』
そして大きな歩幅を持ったボルケノを引き連れて逃げていたhananaの足はとうとう限界を向かえ、つまづいてしまうのだった。
ズシーン ズシーン ズシーン
hanana『あっ!!』
ズテーン!!!
ボルケノ『ゴフッ!!』
りん『危ない!』
アメル『(>w<;)』
オムー『当たるお=ω=.!!』
無情にもその火の玉は幼い体を捉えてしまう。
ドゴーーーーーーーーーーーーーーン!!
hanana『・・・が・・!!!』
ボルケノ『!!!!』
母『は・・・hanaちゃん><!!!』
父『そんな・・』
湖乃『お姉ちゃん!!』
家族にとり辛辣な状況になるも、観客席は盛り上がっている。
『おぉっとぉ~当たったぁ~!!!』
『おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』
『わぁぁぁぁああああぁぁ』
倒れたhananaの背中に直打した火の玉は掻き消えるも、そのエネルギーはhananaの背を焦がし、強い衝撃から少女はバウンドするように宙へ僅かに浮かんでおり、地面にある石の飛び散り方がその衝撃を物語っている。
hanana『・・・ぅぅ・・』
hananaが倒れているのを横で見ているボルケノも、泣きそうな顔になりながら、自身の力ではどう仕様もないその状況に困惑していた。
間髪入れず、再び上空から無情なる火が降ってきている。
エビちゅ『さぁどうしまちゅか( ̄◇ ̄ )!倒れてる場合じゃありまちぇんよ!』
ヒューーーーーーーーーーーーン
ドゴーーーーーン!!!
hanana『ぐぁああぁぁっ!!!!!』
再びhananaの背中を火の玉が襲った。
腰が抜け動けぬボルケノも何もできないでいる。
オムー『おい=ω=.;!死んじまうぞ!あの子!』
りん『・・・・・・。』
王様の旧伝詩文書の話。家族の動揺を鎮めるように詳細が語られていく。hananaへ心配な面持ちで見ている家族は、王様の話に耳を傾けていた。闘技場の歓声は、会話の中にて現れる兵士達の荒ぶる声と重なり合う。
『わぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ』
『あああああああああああぁぁぁあああぁぁ』
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・
『うぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ』
『ひるむなぁぁぁああああぁぁ』
『おおおおおおおおぉぉぉぉ』
数え切れない程の兵士たちが倒れ、壊滅状態と見て取れる戦況に一人の女が現れる。
兵士『ぐふっ・・・ゴホッゴホッ・・き・・・君は・・・?なぜここに・・・?』
その女は答える素振りも見せず、辺りを見渡した。女のすぐ目の前は、命の奪い合いをしている戦時の最前線。場違いな羽衣を来た綺麗な女は、落ち着き優しくもありながら、意を決した目で兵士にしゃべった。
女『・・大丈夫・・・心配しないで・・』
兵士『・・早くっ・・・ゴホッゴホッ・・逃げなさい!こんなところにいたら危ない!』
そこにある絶対的な自信が、兵士の会話をすることすら不毛であると感じていたのかもしれない。戦場にて不釣合いな女と兵士の会話は、成り立っていなかった。
今から遡ること2000余年前。
時は大戦乱時代のファンブルグ国。
世界を手中へ治めようとエステンブルグ国の横暴が蔓延り、貧困に、飢餓に、大苦戦を強いられ、歴史から消え去ろうとしていたファンブルグ国に一筋の光が見えてくる。
それは、ごく普通にありふれた毎日を送っていた牧場の女性に何かが舞い降りたつことから始まった。彼女の手は瞬時にして兵士の人々の傷を癒すことはおろか、死人の息を瞬時に吹き返させる。
最古にして最高の伝説の獅子。未だ見たことの無い力をもったその人物を。大衆はこの者を。国はこの女性を。
回復神、アルテマと呼んだ。
突如その女は片膝を抱えるように、幾万もの頭が敷き詰められた地上から飛び上がった。そして威勢にて清らかなるその声が兵士達へ飛ぶ。
女『ピーーーーーーース!!!!ファーーーーーラーーーーーーー!!!』
飛び上がった空にて、腕は扇がれ陰陽を空中に作り、ひねられた腰を戻すと同時。空中を泳ぐようにその手は宙を舞い、青白い濃霧を解き放つ。
兵士達の間をすり抜け、傷を求めその青白い光を伴った風は行き渡る。両手は相反する陰陽を空中に何度も形成し、幾度となく仰がれたその両手からは眩い塵の光が流れていく。強い風と共に。
ゴゴーーーーーーーーーーーーーーー!!
ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
空中にて太陽を乱反射させている輝く塵は周囲に拡散し、幾万もの頭が連なる兵士達のもとへ運ばれるや否や、みるみるうちに傷が癒えていく。折れた骨は繋ぎ、切られた肉は元へ。
『・・・う・・うぐ・・?・・なんだこれは・・』
『これは・・・・すごい・・・傷が・・・癒えていく・・』
倒れていた兵士。絶命していた兵士が再び息を吹き返していく。通常では考えられない出来事がファンブルグ軍の中で起きていた。
『・・ぅぅ・・・・・・ぅ?・・・治った・・・治ったぞ~!!!』
『まだ戦える・・・全隊!!前進!!!!』
『うぉおおおぉおおおおおおおおぉぉぉぉ!!』
数万兵の傷が一挙に癒えてしまう驚くべき事実であった。敗戦必至と言われたその激突は、エステンブルグ20万兵余りと戦う5万兵のファンブルグ軍の大勝利を収めるに至る。これが後の戦いに大きな影響を及ぼす発端となる出来事である。
再び前進し押し進む兵士達の中、その女は一人立ち止まり両手を広げ目を瞑り、ゆっくりと天へ顔を上げた。
アルテマ『我が前に死はなし。そして、血はなし。』
・・・・・・・
・・・・
・・
ファラン『信じて下さいーω■』
母『は・・・はい・・・』
湖乃『お姉ちゃんは・・・本当は強いの?』
父『・・・・・。』
ファラン(伝詩文書が正しければ・・エビちゅの先見の明が正しければ・・・ )