夏の日は長い。大会開催から時間の経過はしており、やや日が暮れ始めているとはいえ、まだ太陽の日は強い。
プルグという砂地にのみ咲く花には、寄り添う大きな葉があることが特徴的だ。夏の暑い日はみなその葉を仰ぎ、ほのかに甘い香りを漂わせ、暑さを凌いでいる。
りん『まだ暑いわね(*^▽^*;)』
エビちゅ『エビちゅはアイス買って来るでちゅ( ̄ω ̄;)』
りん『てら^^』
ニコシア『プハァー(`o.´♯)この酒うまいのぉ』
王様『じゃろう(*´ω`*)ファンブルグの地酒じゃぞ?』
hanana『おじーちゃんお酒くさいでし(>_<)!!モゴモゴ』
慌てて母親がhananaの口を塞いだ。
母親『ご無礼を申し訳ありません><!』
りん『いいんです(*´▽`*)じじぃで』
王様『国王で(ーωー;)』
・・・・・・
・・・
・・
薄暗い闘技場地下の連絡通路に響く一人の足音。
駆け足となるその店舗の持ち主はアメルだ。
アメル『えっと・・(・w・;)もう試合はじまっちゃうかな・・』
東西に分かれた道がアメルを物理的にも悩ましていた。東の道へ行けばクルスの待機している選手控え室へ。西の道へ行けばオムーの待機している選手控え室へ行ける。
一歩東の道へ踏み出すもすぐに止まり、西へ体が向き直る。そして西へ足を踏み出すも、東へ体が向いている。アメルは試合前の応援をしにどちらを先にいこうか迷っていた。
アメル『あれ・・・わたしどっち先に行こうか迷ってる(・w・;)』
どうせなら選手観覧席で待っていれば良かったと後悔するも、どこか不安な気持ちがここまで足を運ばせ、二度三度繰り返し立ち止まってしまっていた。
アメル『クルスくんに負けて欲しくないし、オムさんにも負けて欲しくないぁ~迷う・・なんでわたしって優柔不断なんだろう(・w・`;)試合はじまっちゃう、よしっクルスくんからいこう!』
・・・・・・・・・
・・・・
・・
やや息を切らしたアメルはクルスのいる選手控え室ドアを恐る恐る開けた。
ギ・・ギギィ・・
大きく足を開き椅子に座ったクルスは、肩を大きく上下にさせながら背中を見せている。同年とは思えぬ程のその大きな背中をもったクルスの背中からは湯気が昇っていた。
アメル『ぁ・・クルスくん・・(・w・;)』
吐息と共に、面倒くさそうにクルスは言った。
クルス『俺が負けると思ってか?』
背を向けながらクルスは問うた。
アメル『ぇ・・・・(・w・´;)?』
クルスは近くにあったコップを口へ運び、豪快にそれを飲む喉からは大きな音が漏れている。
ゴキュッ!ゴキュッ!ゴキュッ!
割れるほどの勢いで机に置くクルスは、大きく息を吐き言った。
クルス『俺は負ける気がしねぇ・・・いってやれ、二度と話せなくなるかもしれんぞ?』
戸惑い動こうとしないアメルを諭すようにクルスは闘気を放つ横顔をアメルに見せ促した。
アメル『ぅ(・w・;)うん・・』
すぐにアメルはオムーのもとへ走った。
この焦燥感はいったいなんなのだろう。
剣闘士と呼ばれる闘う者にとり、相手の力量はわかってしまうことが常だ。しかしそれが頂点に達するほどの強さを持った者たちにとり、その概念はあてはまることはないのかもしれない。
アメルはクルスの絶対的な強さを知っている。そしてオムーの絶対的な強さをも知っている。
生か死かという戦いではない武術大会であるため、一定のルールに則った戦いになることは当然なはずであったが、クルスとオムーの戦いには不安が残っていた。
その何某かの不安がアメルを走らせているのかもしれない。大会における優勝をもっと超越した何かを欲している二人を理解していたアメルは、ただでは済まされないものになることを感じていたのだった。
・・・・・・
・・・
・
なんとか間に合ったアメルはオムーのいる控え室ドアをゆっくり開いた。するとクルスとは対照的に、オムーは静かに目を閉じ、椅子の上であぐらをかいていた。
アメル『オムさん(・w・;)』
なぜかそれ以上の言葉は出てこない。
ゆっくりと目を開けたオムーはまっすぐとアメルをみつめ言った。
オムー『ごめん。アメル=ω=.』
アメル『・・・・(・w・;)』
オムー『俺は負けるわけにはいかない=ω=.クルスは・・・生きて返ってくる保障はないぉ』
アメル『わたし何ていったらいいかわからなくて(・w・;)オムさんに負けてもらいたくないし、クルスくんにも負けてほしくないし。』
オムー『アメルらしいな=ω=.』
すると、控え室に地響きと共に歓声が届いてきていた。
『わぁぁぁぁぁああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああぁぁぁぁぁ』
歓喜、狂喜ともとれるその声々はクルスのリングインを暗に知らせている。すっくと立ち上がったオムーは、剣を持ち連絡通路へ歩き始めた。
オムー『俺らは戦う運命にある。いつかクルスとは戦いたいと思っていた=ω=.あいつもそう思っていたはずだぉ。』
暗がりの遠くから眩い光を注いでいる連絡通路へ入って行くオムーは、そう言い、颯爽とリングへ向かって行く。
アメル『オムさん・・・』
・・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
360度からの声援に両手を挙げて応えているクルスの表情は自信で満ち溢れている。
クルス『こい(゜Д゜)オムー』
司会者のオムーの登場を仄めかす仕草をみた観覧席からは、またも声援がリングへ届き始めている。暮れているとは思えぬ程の熱気を帯びている会場観客席。興奮を抑えきれず座っている者はいない。
司会者『続いてぇ~!!オムー選手の登場だぁ~!!!』
『わぁぁぁあああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああああああああぁぁぁ』
王様『はてさて(ーωー*)どうなることやら』
エビちゅ『この予想は難ちいところでちゅね( ̄ω ̄ )』
りん『二人とも頑張ってぇ~(*^▽^*)ノシ』
王様は酒のつまみである豆を一粒口にいれ、転がすように味わいながらニコシアの表情を伺っている。
王様『ふぉっふぉっ^ω^緊張するじゃろ?』
ニコシア『ま・・・まぁのぉ・・(`ω.´;)どこまで修行ができているかじゃな』
王様『クルスは舐めたらあかんぞぃーωー奴は本物じゃ』
ニコシア『わしがいたルルカスの地でもクルスの名は知られておる(`ω.´;)』
王様『奴の強さはのぉ・・』
『わぁぁぁあああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああああああああぁぁぁ』
そう言い始めた王様とニコシアの会話を遮るように会場のボルテージが上がった。
審判の両者を近づけさせる指示をするまでもなく、既に二人はリングインすると同時に近づいている。その二人の目は仲間を見る目ではない。
既に戦闘モードになっている二人の距離が短くなるにつれ、会場のボルテージが断続的に高まっていく。
その互いの距離の詰め方は審判のルール説明のためではないことは明確だ。その二人の勇ましい歩み寄りは制空権の交わりを望むものであった。
『わぁぁぁあああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああああああああぁぁぁ』
ルール説明をするはずの審判は、睨み近づきすぎる二人の胸を抑え、詰め寄りを制止した。両者背の高いクルスとオムーをかろうじて抑え止めている審判は必死だ。
審判『ちょっと待ちなさいっ!落ち着いて!!』
まっすぐとクルスを見つめ直立しているオムーとは対照的に、クルスは体力を持て余すかのように上体を左右に大きく揺らしながら牙を見せオムーを睨みつけている。審判がルール説明などしていたが、二人の耳には入っていない。
オムー『本気で潰しにいくぉ=ω=.』
クルス『上等だ(゜Д゜)こいや』
二人の胸を力強く抑えている審判は、場外にいる審判に制止しきれないことを表情で伝えると、そのやりとりを察知した司会者はすかさず叫ぶ。
司会者『それでは試合開始だぁ~!!!!』
『わぁぁぁあああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああああああああぁぁぁ』
審判は咄嗟に離れると、クルスとオムーの距離は数十センチ。この距離は利き手とは逆にある脇差を抜く余裕はない。二人は各々の左にある脇差しを左手にて逆手でもち、抜くと同時に上体を傾け攻撃をしようと剣を滑らせる。
超至近距離にて可能な零コンマの剣攻撃、力こそないが、瞬時に相手を切ることができるそのタクティクスは両者一致していた。
互いが体を傾け、逆手剣を互いに滑らせ、鋭い音が場内に響き渡る。
ギュィッキィィィィィ~ン!!!!
鍔元をもった左手をそのままに、右手を添えオムーに突きを放つクルス。
クルス『うぉぉぉおおおぉぉ!!!』
逆手剣を滑らせたあと即座に、傾く上体に習うように転がり距離をとるオムーは、寸でのところでクルスの切っ先をかわした。
振りかぶりつつ瞬時に距離を詰めたクルスはすでに振りオムーの頭目掛けて剣を振り下ろしており、順手に持ち替えたオムーは咄嗟に左手を添えるように交差してクルスの剣を受け止めると、乾いた剣と剣の重なる音とともに、
ジャキィィィィィィィンッ!!!!
そのクルスから放たれた剣からの闘気から、オムーの背中後ろの石畳のリングには、クルスの剣に沿ってまっすぐと大きな亀裂が走っている。
ガガガガガガガガガガッ!!!!!
大きくできたリングの亀裂の周囲には掘り起こされたかのように岩や破片が飛び散っている。それはまるで稲妻が落下したかのような破壊力であった。
クルス『受け止めたか(゜Д゜)』
オムー『さすがクルスだぉ=ω=.』
『わぁぁぁあああああああああああぁぁぁ』
『ああああああああああああああああぁぁぁ』
りん『・・・すごぃ・・。』
王様『・・・(ーωー;)』
ニコシア『これほどまでか(`ω.´;)』
アメル『・・・クルスくん、オムさん・・・』
司会者『(なんという戦いだ・・・言葉もでない・・)』