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眩しい太陽・・美しい月・・そして世の中所詮金でちゅ

伝説の獅子たちが活躍する笑い泣き感動ありのアクションストーリー (c)2008hiyoko.現在原画製作中!

第弐百弐拾壱話

2010-01-17 | 本編








選手控え室から一転し、外では開放的に皆くつろぎ試合間もない時間を楽しんでいた。


アメル『あぁ~いいないいなぁ~(゜w゜*)私もクレープ買ってこよかなぁ』


エビちゅに大会推薦された少女であるhananaがおいしそうに食べるクレープをアメルは羨ましげに見ている。

 


hanana『おいしいでしよ^0^ノ東口のホットドッグ屋さんの隣にありましたでし!』

オムー『アメルもう試合はじまるぉ=ω=.』

 

第二回戦の試合開始直前の会場は熱気で埋め尽くされている。昼時の時間も手伝い、あちらこちらからホットドッグや焼きそばのいい匂いが漂ってきており、アメルの後悔の念は絶えない。

 

アメル『アメさん一生の不覚・・休憩中に買っておけばよかった・・(´゜w゜`)』

エビちゅ『この人ごみで走るのは無理でちゅからね( ̄ω ̄ )次の休憩を待つのが賢明でちょう』

 

すると石造りの席に座る人をかき分け、選手控え室から観覧席に入ってきたりん。手には大量のコーラやビール、焼きそばが抱えられている。

 

りん『みんなー良かったら食べてー^^』

オムー『おぉーwさすがりり!!気がきくー=ω=.!!』

アメル『棚からぼた餅きたぁ~Σ(・w・ノ)ノ!』

王様『すまんのぉ(■ω■.)』

エビちゅ『遠慮なくエビちゅも頂きまちゅ( ̄ω ̄ )』

hanana『おいしそうでし^0^ノ!!』

 

りんは一人一人、飲み物や焼きそばを差し出していると、オムーに渡す際、あることに気づくのだった。


りん『アメルとオムーはまだお酒は無理よね^^?』

オムー『まだまだだぉ=ω=.』

アメル『二十歳になってお酒飲むのはどんなところでなんだろうなぁ(・w・´+)!!』

りん『じゃぁ王様とエビちゅにビールあげる(*^▽^*)!』

王様『うまそうじゃ(■ω■.)』


そんな横で、既にりんの買ってきた缶ビールを豪快に2本飲み干し、勢いよくゲップをしているエビちゅは、なおも3本目を飲み始めている。


エビちゅ『ゲフッ・・グビッグビッグビっ( ̄ω ̄*)』

オムー『エビちゅ遠慮ねぇな・・=ω=.;』

hanana『お酒・・好きなんデシね・・・^0^;』

 

するとそこへ、先程アメルに負けてしまった初老の男、ファランが観覧席に顔を出すのだった。


アメル『あぁー(・w・´)!!おじいちゃん!!!』

ファラン『ふぉっふぉっふぉっ(■ωー)』

 

割れたサングラスと服で覆われていない肌にいくつか見えるアザは痛々しい。しかしアメルの顔を見るや否や、にんまりとした笑顔で頷き、体の無事を暗に伝えている。

 

ファラン『なかなかの攻撃じゃった(■ω^ )お主、師は誰じゃ?』

アメル『はい(・w・´ )ファンブルグ軍師団総統、トカマク様ですっ!!』

ファラン『なるほどのぉ(■ω^ )どうりで剣筋が似ておった』

アメル『へへ(・w・´)おじいちゃんも強かったよ』


今の今まで戦ってはいたが、現役を感じさせることのないひどく老人じみた座り方をしているファラン。相当にアメルの打撃は答えていたのかもしれない。これでもかとゆっくりとした動きで腰を石造りの席に下ろした。


ファラン『やれやれ・・よっこいしょっと(■ωー )フゥ』


3万人が詰め込む大観衆のざわめきの中、エビちゅはりんを挟み、さらに隣に座るアメルに問いかけている。ざわめきに負けぬよう、声はやや大きめだ。


エビちゅ『アメルは、エビちゅからもらった猫は戦闘に参加させなかったんでちゅか?( ̄ω ̄*)ゲフッ』

アメル『調教もしてないし、まだ出会って間もないからさ(・w・´)出場させようか迷っちゃった』


りんは二人の会話を邪魔せぬよう体を後ろに傾けながら、ビールを口にしている。


オムー『お!!トカマク登場だぉ=ω=.!!』


場内の歓声は一挙に大きくなり始めた。

 

『ワァァァァァァアアアアアアァァァァ』

『トカマク様ぁ~!!』

 

アメル『きたきたぁ~(・w・´)!!ワクテカだねっ!!クルスくんも頑張れぇ~!』

 

 

・・・・・・


・・・


・・

 


クルスを見ながら石畳のリング中央に足を運ぶトカマク。既にいるクルスは首骨コキコキと鳴らしつつ、そのトカマクの闘志溢れる視線から目を外すことなく付き合っている。


トカマク
(・・思い出すわねクルス・・あの時の戦いを・・・)


クルス『・・・・(゜Д゜)』

 

『両雄の登場だぁ~~!!!!』

『オオオオオオォォォォォ』

『ワァァァァアアアアアアアァァァァ』

 


観客席からの声援が響いてきているが、審判が両手を挙げ、開始の合図をし始めようとすると、その緊張の一瞬は3万の観客たちを静めさせていた。

 


審判『トカマク選手対クルス選手!!第二回戦!!・・・・』

 

闘技場の外からの木々に住む小鳥たちのさえずりさえ聞こえてきそうなほど、場内は静まりかえっている。

 

審判『はじめぇ~!!!』

 


試合開始の合図と同時、トカマクは威勢ある声を発しながら距離を詰めている。


トカマク『ぃやぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!!!』


電撃魔法を併せ唱えつつ、トカマクは走りながら剣を抜きクルスへ向かっていくその足に迷いはない。

トカマク『サンダーーーーボルトーーーーーーー!!!』

 

空中に形成された電気粒子を基に、連続的にクルス目掛けて落ちる稲妻。

 

カッ!!!ゴゴォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 

クルスは避けることもなくその場で耐えている。鋼の鎧は電撃攻撃からの熱で真っ黒な焦げを肩や胸、足などの各所に造り、鎧で覆われることのない顔や腕の肌はまともに浴び、赤く焼けどしている。

 

オムー『なぜ避けない=ω=.;?』

アメル『避けきれない(・w・´;)?』

りん『いや、クーちゃんなら避けようと思えば避けれたわ』

 

その師団の者達の考えと異なることはない。
トカマクも同じ疑問を感じている。


トカマク
(なぜサンダーを避けない!?)


クルス
(そんな攻撃は俺は待っちゃいねぇ・・・こいトカマク・・あれだよ・(゜Д゜)・・・)

 

 

トカマク『ぃやぁぁぁぁああぁぁ!!!』


初弾の剣攻撃はトカマクの横払いから始まると、クルスは寸ででかわしている。

 

ブンッ!!!


ブンッ!!!!!!

 

トカマクの攻撃は空を切ってはいたが、その剣捌きはまるで演舞を見ているかのように美しい。トカマクはファンブルグを守り続けてきた兵士たちの剣術指南役。そしてそれを教わり習った兵士たちがこの国を守り続けてきた。

その強さの裏づけある剣技は見るものを虜に、その一太刀ごとに大舞台が揺れるほどの歓声がでるのは言うまでもない。

 

ブンッ!!!


『オオオォォォォォ!!』

 

ブルンッ!!!!


『オオオオオォォォ!!』

 

流れるような無駄のない動き。息を飲ませるトカマクのその舞踊はクルスをあっという間にリングコーナーに追い込んでしまうのだった。

 

王様『・・・次で決まる(■ω■.)』

ファラン『じゃな(■ωー)』

オムー『どうする=ω=.;!?クルス!』

りん『トカマク様・・・』

アメル『クルスくん(>w<´)』

 

クルス
(・・俺が一番警戒しているのはな・・トカマク・(゜Д゜)・・)

 


ブンッ!!

 

トカマク『ぃやぁぁぁあああぁぁ!!!』

 


台上になっている八角形のオクタゴンリングは、コーナーに追い詰められれば二つの道を強制的に選択させられることになる。場外負け、もしくは近接攻撃による接触。排水の陣となったクルス。選択迫られていることは必然だ。

 

クルス
(・・おまえの得意技・・・昔俺がやられた・・あの技・・(゜Д゜)・・)

 

その技の名は<燕返し>。頭から腰にかけ真っ二つに切ろうと上から振り下ろす剣筋と思いきや、それはただの罠。相手にかわせたと思わせるや否や、振り切った手を反転し、下から顎にかけて瞬時にして逆切りする刀法である。

かつてクルスはその技で剣を弾かれ、トカマクに負けた過去があったのだ。

伝説の獅子たちのスピードから劣ることはあれど、そのスピードは人間界では比にはならないと言われていたトカマクの燕返し。クルスはそれを待ち続けていた。


零コンマの攻防で、クルスはトカマクの上からの振り下ろす剣の柄の握り手に注目している。


トカマク『ぇぃやぁぁぁあああぁぁぁ!!!』

 

すると申し合わせたかのようにトカマクはあの大技を出す予兆をクルスの目の当りにさせるのだった。

その剣先はクルスの鼻先をかすり、真下へ向かっていく。腰元まで降りたその時。トカマクは鍔元に近い右手を親指と人差し指だけで持ち、柄を握っていた左手の力は緩められている。すばやい切り替えし攻撃をするには、真下に向かった刃を無論素早く反転させる必要があるためだ。

その準備手となる手元をクルスは見逃していなかった。

 


クルス
(・・きたなトカマク!!それだ(゜Д゜)!!!!)

 

と思ったその時。

 


トカマクの左手は急遽再び握り締められ、刃が反転することなく右手も強く握り締められていた。

 

 

クルス
(・・・・・(゜Д゜)・・・・)

 


トカマク『きぇぇぇぇぃぃぃぃぃ!!!!!』

 

切り替えし反転して上方へ刃を進ませるはずであった剣は、無碍にまっすぐとクルスの胸元へ進んでいく。

 

ブスッ・・・

 

クルス
(・・・・(゜Д゜)・・・)

 

クルスの想定していた動きと違ったそのトカマクのブレイドソードの切っ先は、鎧の隙間である左胸元にめり込み、突き刺さり入り込む。

 

ズズズズズズズズズズ!!!!!!


トカマク『きぇぇぇぇぇぇぃぃぃぃぃ!!!!』


長剣であるブレイドソードの半分は、血のりと共にクルスの背中から姿を出している。燕返しと思わせ、突如突き攻撃に変えたトカマクの攻撃は見事にクルスの胸を捉えてしまうのだった。

 

ブシュシュシュ~!!!


剣と胸肉や背肉の隙間から血が吹き出ている。

 


ファラン『なんじゃと(■ωー;)!!』

アメル『クルスくん!!!』

オムー『やべー=ω=.!!!やられたっ!!!』

エビちゅ『下馬評を覆しまちたね( ̄ω ̄ )』

 


『オオオオオォォォォォォォォォ』

『ワァァァアアアアアアアァァァァァァァ』

『さすが師団総統だぁ~!!!クルス選手の胸に突きが命中~!!!』

 

場内は勝敗ではクルス圧勝とよんでいたが、ここにきてトカマク優勢となり、闘技場は熱狂している。

 

『ワァァァアアアアアアアァァァァァァァ』

『ワァァァアアアァァァァァァァ』

アメル『・・・クルスくん・・』

オムー『・・・まずいぉ=ω=.;』

ファラン『これは予想外じゃ(■ωー;)』

 

ところがその闘技場のボルテージとは逆に、クルスは落ち着いているのだった。

 

 

クルス『・・・やるじゃねぇかトカマク(゜Д゜)そうでなくっちゃな』

トカマク『・・・・・・。』

 

 


第弐百壱拾九話

2009-12-29 | 本編









アメルとファランの試合が終わり、次の試合が始まる前までの中時間。hananaとボルケノゴーレムはクレープを買いに闘技場売店に来ていた。

二人の顔の作りは違えど、クレープを前にして無邪気に喜ぶ表情は酷似しており、ボルケノは注文して欲しいクレープを鼻息荒く指し示している。


ボルケノ『グッグフングッ!ゴッホッグンググ!』


しかしメニュー表の大きさとほぼ同等のボルケノの太い指はすべてのクレープを示しており、何を指しているのかわからない。

 

hanana『きゃははっ^0^ボルケノさんどれ指してるかわかんないよ!!』

ボルケノ『・・ググ・・・・』

 

hananaから3m程高い場所にあるボルケノの顔は眉をハの字型に困った表情を作り唸っている。

 

hanana『わかった!!これね^0^!!クリームチーズクレープもくださぁ~い^0^!!』


ボルケノが欲している味がわかったのか、hananaはクリームチーズ味のクレープを必要以上に大きな声で店員に頼んだ。


店員『は~い^^ありがとう~』

 

生地を鉄板に流すと同時に、店員は慣れた手付きで綺麗に円形に伸ばし始めると、hananaたちの鼻に入ってきたのは、小麦粉と無塩バターの生地のこんがりとした甘い香りだ。


hanana『クンクン^0^』

 

実はブルーベリー味を指し示していたボルケノはガックリと肩を下ろしたが、そんなこととはつゆ知らず、hananaはクレープの生地を器用に作る店員の手さばきに夢中である。

シューーーーー サッ サッ  ジュジューーーーーーーー サッ サッ

 

ボルケノ『・・・グフ・・』

hanana『うわぁ~~^0^おいしそ!!!』

店員『おいしいよ~^^待っててね~』

 

目の前にいる店員との距離と不釣合いな大きな声を上げているhananaとボルケノからやや離れた後ろでは、時間を持て余すように道案内役のエビちゅが待っている。

ファンブルグ競技場では多種多様な売店が所狭しと設置されてはいたが、遥かに上回る観戦者の数は全ての店前で長蛇の列を作っており、hananaたちの並ぶクレープ屋も例外ではない。

hananaの元気いっぱいの問答が人ごみの賑やかな音に紛れ、エビちゅのベンチにまで届いた。


『はいでし!!わたしのはホイップクリームいっぱいでお願いしますなのでしっ!!』


やや離れたベンチに座るエビちゅは組んだ足膝の上に肘を立て、頬杖を突きながら貧乏揺すりをしていると、視界には長蛇の列の人ごみと、歩く雑踏に紛れたhananaの後姿が時折目に入る。

チラチラと緑色の服が見え隠れしているhananaに寄り添ったボルケノゴーレムは、人ごみから上半身が抜きん出ており、hananaがいる位置を示すいい目印だ。



エビちゅ『・・・おそいでちゅね・・( ̄ω ̄ )』




・・・・・

・・


一方、選手控え室では戦い終えたアメルや次なる戦いを控えているクルスたちは、各々休憩時間を過ごしている。

次の試合はトカマク対クルス。師団隊長でもあるトカマクではあったが、明らかに自らより上回る力を持つクルスを前に、幾分緊張の色が隠せていない。

第一連隊の者達は選手控え室の中央にある大きなテーブルを囲むように座っていたが、トカマクは部屋の隅にある椅子に深く座り、手を腿上に、背筋をピンと伸ばし目を閉じ、精神を集中させている。

そこへりんがそっとコーヒーを差し出した。


りん『トカマク様・・よろしければどうぞ・・』


目を閉じながら、空気が漏れたような小さい声でりんに礼を言うトカマク。


トカマク『・・ありがとう・・』


戦い前の精神統一を気遣い、りんは黙って会釈をしてその場を離れている。

 

今から数年前。
クルスとトカマクは味方でありながら対峙していた。それはアメルがファンブルグ軍へ入隊して間もない頃。いまだクルスが自らの行く末、運命を受け止めることができていない時代である。


当時クルスはいつものように城内にて暴れていたとき、その揉め事の沈静化をかってでたトカマクは否応なしにクルスと戦うことになった。

クルスは木刀、トカマクは真剣。
初弾の攻撃にて剣刀が交じり合い、押し合いになるとクルスは力を抜き、ベテラン剣士であるトカマクのバランスを見事に崩し、即座の横払いによってトカマクの片腕を負傷させていた。

結果、ツバメ返しによる剣の巻上げにより、クルスの木刀を上空へ弾き飛ばし、トカマクの勝利に終わっていたが、その時トカマクは王様へこう告げていた。


『いずれクルスは私達では把握しきれない力になるでしょう・・』

王様『・・・それは真かーωー』

 

その言葉は見事的中していたのだった。今では伝説の獅子として軍の特攻隊に任命され、先頭をきっているクルス。明らかに戦力差を目の前にしたトカマクは覚悟を決めている。

 

 

・・・・

・・

 

hanana『エビちゅさ~ん^0^ノお待たせでし~!!エビちゅさんのも買ってきたよ~!』

『ゴングッ!!グフング~!!』


体の小さいhananaは、自身の頭と同じくらいあるクレープを両手に満面の笑みでこちらへ向かってきており、横に歩くボルケノゴーレムも同じようにクレープを片手に満面の笑みで歩いてきている。


エビちゅ『・・・・おそいでちゅよ( ̄ω ̄ )』

hanana『だって超並んだんでしよ~^0^;はいっ!!これエビちゅさんのクレープ!』

 


エビちゅの目の前にまっすぐに腕を伸ばしてクレープを差し出すhanana。

 


エビちゅ『そんな子供だましの食べ物なんてエビちゅは興味ないでちゅ( ̄ω ̄ )』

 

エビちゅは180度向きを変えきびすを返すと、スタスタともとあった道へ歩き始めた。

 


エビちゅ『さ( ̄ω ̄ )いきまちゅよ。次の試合がもうすぐ始まるでちゅ』

hanana『え~^0^!せっかく買ったのにぃ~・・もったいない・・ボルケノさん食べる?』

『・・グフング!?ゴッゴガンフッ!?』

 

まるでゴーレム語がわかるかのように返答をしっかりと返すhanana。

 

hanana『これ?カマンベールチーズ味だよ^0^』

エビちゅ『( ̄ω ̄ )!!!!』

 


すると、ボルケノとhananaの前を歩くエビちゅが突如立ち止まった。

 


エビちゅ『・・・・・。』

hanana『ほょ^0^?』

『グフッ?』

 

立ち止まったエビちゅは振り向かず背を向けたままである。

 

エビちゅ『今なんていいまちた・・・?』

hanana『・・カマンベーr』

 







エビちゅ
『もらいまちゅ( ̄ω ̄ )』

hanana『ひぃ><』

『グホッ!!!』


鼓膜が破れんばかりの声で二人に詰め寄り、カマンベール味クレープを奪い取るエビちゅ。興味がないと言ったクレープであったが、酒<いいちこ>の次にエビちゅの大好物であるカマンベールチーズが入っていることに驚き、その場でむさぼり食い始めている。


バクバクバクバクバクバク

エビちゅ『・・なんでカマンベール味って・・・バクバクバク( ̄ω. ̄ )・・・最初にいわないでちゅか・・ムシャムシャムシャ』

 

hanana『・・・・ぁ・・ぁは^0^;;』

『・・・・・グフ・・』

 

次なる戦いはトカマクvsクルス。
軍の剣術指南役でもあるトカマクと伝説の獅子クルスとの攻防。
いかなる戦いが繰り広げられるのだろうか。










第弐百壱拾八話

2009-12-09 | 本編







ファンブルグ国から数千キロ離れた不毛の砂漠地帯。
枯れた木と巨大なサボテンが目立つ大地。
鷹の群が暖かい日差しを浴びながら、岩場にて毛繕いをしている。

すると突如何かを感じ取ったのか、その一時の安堵の時間が奪われたかのように、群は一斉にファンブルグ国のある方角へ鋭い目を向けた。


それは大きな二大パワーの激突を読み取っているかのように。動物の本能からの危機回避能力は、遠い地にある二人の衝突を気にかけている。

 

・・・・

・・

 

オクタゴン闘技場内では一気に空気が張り詰め、周囲の観客はこれから何が起ころうとしているのかわからず、固唾を呑んで見守っていた。

無言のままファランと向かい合い、自らの持つ力を臨界点まで開放させたアメルは、一本の剣を両手で持ち、静穏にその構えを崩していない。


トカマク『・・・アメル・・・』

りん『・・・ゴクッ・・』

オムー『はじまるぉ=ω=.』

クルス『・・・(゜Д゜)』

エビちゅ『・・・( ̄ω ̄ )』

hanana『・・・・。』

対峙した身動きしない二人、アメルとファラン。距離にして15m。


アメル『・・・・・・。』

ファラン『・・・・(■ω■ )』

 

 

その距離からの初弾の攻撃は尋常ではない速さから始まるのだった。

全くの予備動作を見せ付けず、ファランが構えを変化させる間もなく、すでにアメルの膝はファランの鼻っ柱へめり込んでいる。観客達の目にその状況が一瞬目に入ったとき、その衝突音は不思議と聞こえてこない。


それはおよそ制空権という概念さえ覆すほどのスピード。足の踏み込み、接近時間、振り被り攻撃準備動作、披着時間、全てを削除されたかのような瞬間的な初弾スピードを持つ攻撃。

相手のバランスを崩し一気に剣を畳み掛けるアメルの秘技は、『連撃序破』という名として、後の伝説の獅子秘伝書では書かれることとなる。

 

光速と音速のからくりは、ワンテンポずれた衝突音を観客達の耳に送ってきた。


・・・ズガッ!!!!


観ている者たちの目には景色や物体を光として視野に入れ、大脳へ情報として認識されることになる。光の速さに比べて劣る音速は、幾分ずれて観客達の耳に運ばれてくるのだ。

 

 

超高速の攻防。
二人は極限まで研ぎ澄まされた集中力で零コンマの世界を行き来していた。

衝撃でファランのサングラスの片目側は割れてしまい、二人の耳にはゆっくりとその割れる音と鼻骨の折れる音が共鳴している。


パッ・・・・・・リーーー・・・・・ィーー・・・ーーーーン!!
バッ・・・・・・キッ・・・・!!


ファラン『・・・・(■ω☆;)!?・・なんじゃ・・・と・・』

アメル『・・・・・。』

 


通常人ではわからないそのすさまじい速さの予備動作や移動間は、第一連隊の者達にははっきりと見えていた。

 

りん『・・・はやぃ・・・・』

オムー『・・すげぇ=ω=.;』

トカマク『速い!!』

クルス『・・強くなったな・・・・アメル・・(゜Д゜)』

エビちゅ『・・・やりまちゅね・・( ̄ω ̄;)』

 

アメル『連撃!!序破ぁぁぁ~!!!!』


バランスを崩したファランへ追従するアメルの横払いとなる剣攻撃は、
ファランの咄嗟の判断による杖にて弾かれる。


ブンッカキンッ!!


しかし何の予備動作を感じさせないその超スピード攻撃は続くと、その攻撃は徐々にファランに命打されていく。場内に響き渡る鋼と木の高い音は徐々に鈍い鋼と肉体との音へ変わっていった。


バババババババッ!!!

剣筋は観客達には見えていない。一切の中間動作が省かれた動きであり、時折みせるアメルの剣の切り替えしの際の瞬間のみ残像として目に入っていた。


カカカカカカンッ!!

ドゴッ!!!

アメル『はぁぁぁぁああぁぁ!!』

ファラン『・・ウ・・・・』

 

切り上げ、振り払い、兜割り、頭突き、蹴り、籠手。

ババババババババッ!!
ドガガガガッ!!!!

その一撃が決定打ともなる威力を誇るアメルの剣は幾度となくファランは受け続ける。

 

ファラン
(・・ふぉっふぉっ・・それじゃ・・それじゃよ・・一段と強くなったのぉ・・それでこそ第一師団第一連隊前衛隊・・わしはうれしいぞぃ・・)


音速を超える戦いの中に二人の胸裏が交錯した。


アメル
(・・本当の自分を・・・・トカマク様に・・・師団のみんなに・・・・これがわたしの強さ・・わたしの限界・・)


ババババババババッ!!
ドガガガガッ!!!!

 

・・・

 

アメル『・・・・・。』

ファラン『・・・・・・。』


激しい連続攻撃音の直後、再び訪れた静寂。
瞬時にして生まれた動と静。
オクタゴンリング中央に位置している二人を張り詰めた空気が覆っている。

 

オムー『・・・・=ω=.;』

りん『・・・・・。』

エビちゅ『・・・( ̄ω ̄ )』

クルス『・・・・・(゜Д゜)』

hanana『・・・・。』


動かない二人はまるで静止画のようである。
棒立ちのファランとは対称的に、コンビネーションの最後の打撃をやり終えたアメルは、足幅を広げたまま腕はまっすぐに伸ばし、剣は宙にて固定されている。

そしてゆっくりとアメルは剣を鞘に入れた。


ス・・・カコン


直立していたファランの頭は徐々に正中線をずらし、定まっていない目の焦点をそのままに、力なく横に倒れるのだった。

 

バサッ

 

ファランが倒れたのは、その硬い石畳の地面ではなく、アメルの両手。

 

ファラン『・・・・・。』

アメル『・・・・(ーwー´)』

 

所詮戦いに慈悲などは無用。無慈悲こそ相手を見抜き、無情なれば弱点をつける。冷酷なれば完膚なきまでに敵を叩け、非情なれば自らが生き残ることを可能とする。

伝説の獅子とは戦いの申し子。
しかしその惨憺とした心を持たずしてなったアメルは心の温かさも併せ持っていた。相反するその心は、硬く冷たい石畳の地面へは倒れさすまいと手を差し出し、ファランを受け止めている。
最善最良の戦いに終止符がついた瞬間であった。

 


『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉ』

『すごいぞぉぉぉおおおぉぉ』


やっとその状況を把握することができた観客達はその凄まじさ、人智を超える領域に驚愕し、出遅れた歓声を送っている。

 

伝説の獅子を次々と目の当りにしていったトカマクは、初見はアメルで迎えていた。当初のたどたどしい剣さばきに手解きをしたトカマクは、自身の剣殺陣(たて)と酷似したアメルの剣さばきの成長ぶりに涙を浮かべている。

 

トカマク『・・・・アメル・・。』


歓声は今までにない強大な波を作り、ファンブルグ闘技場を埋め尽くしている。実況を忘れていた司会者も声を震わせながらその戦いぶりをアナウンスし始めた。


『戦いとは・・私たちの考えていた戦いとはなんであったのでしょうか・・これこそが真の戦い・・すごぃ・・すごい戦いだぁぁああぁあぁ!!』

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉ』

『おぉぉおおおおおおおおおぉぉぉ』

 

ファンブルグ南町を超え、国内全域に響き渡っている歓声。
人間力を超えた伝説の獅子たちの戦いの序章はもう始まっている。

 

 





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第弐百壱拾七話

2009-11-23 | 本編






激しい攻防に観客たちの歓喜極まる歓声。
アメルの耳にはひどく遠くに聞こえていた。


肩を覆うチェインメイルは粗ぶる呼吸と合わせて激しく上下しており、足を震わせながらかろうじて立ち上がるアメル。ファランのエネルギー弾を至近距離から被った際の生々しい衝撃音からの耳鳴りがその歓声に紛れてている。


キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』


アメル『・・ぜぇ・・はぁ・・・ぜぇ・・・はぁ・・』

 

やや距離を保つように杖を携えている初老の男の姿をぐにゃぐにゃと曲げ、危機回避の合図を送っているアメルの脳視覚野。それは即反撃という選択肢ではなく、むしろ振動からの脳の一時的な安定を優先させるかのごとく目の前を塞げている。


アメル『・ぅ・・・く・・ぜぇ・・はぁ・・(まずぃ・・見えない・)』


薄めで目の前の敵を確認しながら必死に息を整えているアメルを前に、その男はしゃべり始めた。

 

ファラン『お主の今見えている世界は全てが曲線になっておるじゃろう(■ω■ )ふぉっふぉっふぉっ・・そうじゃ、それが真の戦いじゃ』

アメル『・・・ぜぇ・はぁ・・ぜぇ・・』

 

脳震盪の回復を認知し、その休息の時間もあえて与えているととれるその男の会話は続いている。

 

ファラン『・・わしはのぉ・・この国の行く末がみえておるぞぃ(■ω■ )』

アメル『・・・・ぜぇ・・はぁ・・・ぜぇ・・』

 

 


その様子をみているりん達は、観覧席から心配そうな面持ちで見守っていた。


トカマク『・・そうよアメル・・立ち上がって・・』

hanana『すごぃ!!立ち上がったです!!』

エビちゅ『何かしゃべってまちゅね( ̄ω ̄ )』

クルス『油断しやがってあいつ(゜Д゜)』

オムー『ん~俺ちょっと前から思ってたんだが・・あのじーさんて・・=ω=.』

 

アメルとファランの対峙した姿を見ながらオムーは考え込むようにしゃべっている。


りん『・・・?』

オムー『もしかして王様なんじゃねぇのかな=ω=.』

クルス『王様(゜Д゜)?そりゃないだろ』


見れば、服や髪型は違えどサングラスを取れば王様にも見えてくる風貌を持っている初老の男。オムーは控え室からその疑念を抱えていた。

 

りん『ん~身長も同じくらいね・・でも王様って戦闘できるの?』

エビちゅ『魔法学校ではエビちゅの同期でちたね( ̄ω ̄ )』

 

すると一同の後方から軽く咳払いが聞こえてきた。

 

『コホン・・・・(■ω■.)』


肩まであるウェーブのかかった真っ白な髪の毛。
顔を覆い隠すようにはえた立派な髭と日照りを避けるためなのか大きめのサングラス。そして王様の象徴とも言うべき豪華な足元まで長い緑のロングローブ。その胸元にはエメラルドの王家紋章の首飾りが照り輝いている。

紛れもない王様が突如皆の目の前に姿を現すのだった。


りん『あーー!!王様ぁ~!!』

オムー『げw』

エビちゅ『こんなとこにいたでちゅか( ̄ω ̄ )』

トカマク『あっ王様・・』

クルス『やっときたか(゜Д゜)アメルの試合もうはじまってんぞ?』

『・・・う・・うむ(■ω■.)』


懐疑そうにオムーは王様の近くに駆け寄った。


オムー『ん~=ω=.?』

王様『・・・な・・・・なんじゃ(■ω■.;)』

オムー『・・・王様・・か・・俺の気のせいだったか・・・=ω=.』

王様『どうしたんじゃ(■ω■.;)ほれ仲間の試合に集中せい!』

 


・・・・・・・

 

アメルの脳震盪の回復時間と初老の男ファランの話は続いている。

 

アメル『はぁ・・・ぜぇ・・・はぁ・・・(なぜ・・攻撃してこない・・ラッキーっていえばラッキーだけど・・・どんな魂胆が?)』

ファラン『国家が富を求める限り・・この戦争は留まることはないのじゃ(■ω■ )これらを止めることのできるものたちは限られておる・・この時代のうねりがお主にはわかるか?』


アメル『・・・ぜぇ・・はぁ・・・(・・何の話・・)』


ファラン『ふぉっふぉっ■ω■若いというのはいいのぉ・・未来がある・・そして若いが故・・その道を見誤ることもあり得るということじゃ・・お主にこの言葉の意味がわかるか?』

アメル『・・・な・・何の話を・・・はぁ・・・ぜぇ・・』


ファラン『お主はわしの姿で力量を見誤ってしまった(■ω■ )外観からの身長、体重、風貌、武器防具装備品、構え、態度、表情、それがお主の見て取れる情報なのか?甘いのぉ・・人はそれでは見えぬ・・・一流の兵士とは言えんのぉ』

 

初老の男はゆっくりと重心を降ろし、再び構えに入るとそのサングラスの奥に潜む鋭い眼光をアメルにゆっくりと向けた。


ファラン『いつにしても油断は禁物。一枚の葉に囚われてはいかんのじゃ(■ω■ )その枝葉を、一本の木を、森を・・・見るともなく全体を見る・・これこそが戦いの前提・・お主は何が為に戦っておるのじゃ?』


アメル『・・・はぁ・・はぁ・・・(・・この人は・・何者・・)』

 

呼吸が整い始め、三半規管によるバランス感覚も整いだしたアメルは、うっすらと視野が通常通りに戻ってきたことを感じている。

 

アメル『・・・・何の為に・・戦う??・・ぜぇ・・はぁ・・』


ファラン『答えが遅いのぉ(■ω■ )お主の剣には真がこもっておらぬ さすれば人は倒せぬ 人は動かせぬ 時代は動かせぬ・・』

 

大会戦闘最中にして何の目論見か話し続けるファランにアメルは疑問符を掲げながら耳を傾け、自己回復の時間にあてていた。

 

ファラン『言うてみぃ(■Д■♯)!!お主は何が為に戦っておる!!戦いを続ける理由じゃ!!』

アメル『・・な・・なんなのサ(ーwー´;)!!・・何の為って・・プリンのためサ!!』

 


うっすらとリング内で話し合う二人の声が周囲の歓声に乗せて選手観覧席に聞こえてきている。

 

りん『ぶww』

クルス『あいつプリンのために仕事してんのかw』

オムー『アメルらしいな=ω=.;』

トカマク『・・・・。』

エビちゅ『何か考えがあるようでちゅね・・・( ̄ω ̄ )』

 

突如距離を詰めにいくファラン。

 

ファラン
『あむわぁ~い(■ω■ )!!!!!』


俊敏な間の詰めからアメルの顎を蹴り上げ攻撃。

バキッ!!!

いまだ完全な脳震盪回復がおわっていないアメルにはひどく速く感じられた打撃。遠近感覚が回復しつつあるアメルは否応なしに攻撃を受けてしまうのだった。

 

アメル『・・ぐはっ!!!』

『おっとぉぉ~!!ファラン選手攻撃を続けた~!!』

『わぁぁぁぁあぁあああああぁぁぁぁ』


諸に蹴り上げられたアメルは空高く舞ったあと勢いよく地面に叩きつけられた。


ドサッ!!


アメル『・・・ぅ・・』

ファラン『それでも第一連隊か(■Д■♯)!!たわけめ!!』

 

アメルの仕事を始めた理由。そして続ける理由。
今のアメルの頭には咄嗟に思いついた大好物であるプリンしかなかった。

切れた唇の血を手で拭いながらアメルは立ち上がり、何かを諭すように話し続けているファランをみつつ、その何かを思考していた。


ファラン『よいか、良く聞いておくのじゃ・・お主の姿、意志、努力はじゃな、お主のためだけのものではないのじゃ、支えてくれているひとのため、ひいてはお主を見て、憧れ、指針としている者のため、そう(■Д■♯)!!後世のためでもあるのじゃ』

 

アメル『・・・・。』


ファラン『いかにその剣の一振りが重く、そして人へ影響するということを考えるのじゃ(■Д■♯)!!たわけものめが!!』

 

見ず知らずの敵に言われ何かに気づき始めてきたアメル。
当初の戦う目的は違っていた。失った親のため、そしてそういった家族を二度と作らない為、兵士という道という運命を知ったアメル。戦争を当たり前のように、ありふれた毎日に己を失いつつあったアメルは初老の男の言葉に何かが変わろうとしていた。


ファランは心の中で呟いている。

(おみゃーが兵士になりたての頃は違ったのぉ・・・もっと輝いておった・・もっと未来をみていた・・・もっと限界を知ろうと努力を重ねていた(■ω■ )・・わかるかわしが出場する意味が・・・アメルよ・・・)


一国の戦士の中、天才と呼ばれる者たちが数人いた。
それが伝説の獅子と呼ばれる中世の戦争を支えてきた戦士。

兵士数百人、いや、数千人にも上る戦闘能力を持ち、戦争の主軸として国の行く末を決めていくもののふ。その一人の意志が、行動が国を左右するといっても過言ではない。

言わずもがな責任の重さを軽視していたアメルへ一喝を浴びせる初老の男ファラン。アメルの心にもその所懐が徐々に響いて来ているのだった。

 

アメル(・・・敵の戦闘能力を見誤っていた・・敵の強さは全力をもって戦ってこそわかる・・・そしてわたしの目的はプリンなんかじゃない・・二度とわたしのような悲しい思いを子供達にさせない為・・私を育ててくれた人のため・・・・私を支えてくれた仲間達たちのため・・・私を目指す新兵たちのため・・・)

 

うっすらとわかってきた意味。
プリンのためという安易な即答が馬鹿らしくさえ感じ自然と涙が目に溜まっていくアメルは、ふすふすと湧き上がる使命感に満たされ気が開放されていく。



ファラン
(アメルよ・・おみゃーがファンブルグ国の新兵となってから随分と時間が過ぎたものじゃのぉ・・あれから数十年・・・お主は何を思い、戦い続けてきた・・格段に上がったそのスタミナ・・・根性、忍耐、体力、そして耐久力、その成長したずば抜けた力を果たして誰が認知しているのじゃろう・・いやはや・・その戦いっぷりでは誰もわかってはくれんじゃろう・・)

 

ファランに斜めに体を対峙させ、地面を見つめながら悟り始めたアメルはゆっくりと顔を上げた。


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ここからの推奨youtubeBGMです。ctrlキーと一緒にクリックすると別タブが開くと思います。
『Pirates of the Caribbean Remix』
http://www.youtube.com/watch?v=_ilq-Jb7Uc4
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アメル『私は・・間違っていた・・生半可な気持ちじゃ何もできない・・達成できない・・わたしはいちファンブルグ国の兵士・・人を慈しみ・・人を救い・・人を守り抜くことが使命・・』



ファラン
(他のりんやクルス、オムーたちなど常にガチンコじゃ・・伝説の獅子とはなんたるかを知っておる・・おみゃーにあるその心の甘さ、人への優しさは戦いにおいては邪魔じゃ・・全てを取り払えい・・・・この老いぼれも命をかける・・全身全霊の力・・・みせてみよ)

 

アメル
(全力こそが自らの身を守ることに繋がる・・自分のためだけの戦いじゃない・・余力なんて残さない・・手加減もしない・・アメルさんの・・フルパワー・・みせてやる・・・トカマク様・・わたしは強くなったんだよ・・これがわたしの・・全域開放パワー!!!!)


アメル『はぁぁぁぁぁああぁぁぁ(ーwー´ )!!!』


するとアメルは体が爆発したかのような威圧あるオーラを周囲に放ち、本域となる力を一気に解放させるのだった。

ドドーーーーーーーーーーーーーーーーン

科学力では説明のつかない圧力は体の軸を中心に地面に綺麗な円のヒビを作り、その円は球体で押しつぶしたかのように石畳を湾曲に凹ませている。放たれた気圧はかなりの距離があるリング観客たちの前髪を巻き上げ、観客達の目を疑わせていた。


戦争時の伝説の獅子たちの戦いは民たちは無論見る機会もなく、その戦いぶりは旧伝詩文書にしか記載されていなかった伝説の獅子。アメルのその全力開放により、今までみたことのないそのオーラ、気迫、圧力に観客達は言葉を失い、アナウンスも言葉を詰まらせている。

 

アナウンス『・・こ・・これが・・本物の・・伝説の獅子・・・・』

 

ファラン『・・そうじゃ!その目じゃ(■ω■ )!!お主の一撃はただの一撃ではない 全てを支えた一撃と心得よ!!!』

 

選手観覧席にいた者達もアメルのいつも以上の力を感じ、同じように驚き舌を巻いていた。

 

『これはたまげたのぉ・・・(■ω■.)ここまでの者がおったのか・・』

オムー『すげぇ・・アメルここまでになっていたのか=ω=.;』

りん『普段の戦闘時では力を温存していた・・?』

トカマク『・・・力が・・溢れている・・これが本当のアメル・・』

クルス『そうだアメル・・・戦いに情はいらねぇ(゜Д゜)』

エビちゅ『本域の戦いのはじまりでちゅね( ̄ω ̄ )』


銀白色を帯びた透明なオーラは自信に満ち溢れたアメルの肢体を包んでいる。

ファンブルグ国初となる武術大会ワンデイトーナメント。
全開放させたフルパワーのアメルの攻撃が今始まった。


アメル『うぉぉぉぉおおおおぉぉぉ!!』

ファラン『こぉ~い(■ω■ )!!若いの!!!』

 







 


第弐百壱拾六話

2009-10-26 | 本編







アメルの足元で仰向けに倒れているファランのサングラス下にあるその瞳が不気味に光った。下肢を上げ「く」の字型になると、その反動で勢いよく起立したファラン。


ババッ!!


その二人の距離数十センチ。
アメルの目の前には今先程まで倒れていた者が悠然たる態度で佇んでいる。


ファラン『・・・・・・(■ω■ )』

アメル『ほぇ(・w・´;;)!?』

 

身の危険を感じ過ぎた動物は、脳内で有効な選択肢を選ぶことができなくなる。

瞬時硬直したアメルに横向きの老体を見せ付けているファランは力の抜けた肢体をそのままに、どこを見るともなく明後日の方角を向いている。



クルス『あの馬鹿なにやってやがんだ(゜Д゜)!!!逃げろぉ~!!』

りん『アメル回避~!!』

オムー『せめて防御体勢だぉ=ω=.;!!!』

 

次の瞬間、アメルが目の当りにしたのは初老の男のサングラスと大きく刻まれたシワだった。視界の多くをファランの顔に塞がれたアメルは何が起きているのかわからない。

ファランはアメルの顔数センチの所まで顔を近づけた振り向きざまに、杖をもった左手が添えられた右手の平をアメルの腹へ向けていた。

 







ファラン
『ディガ(■Д■♯)!!』

 

 

その手から眩い光と共に、アメルを包み込む程の大きなエネルギー弾が放たれた。


カッ!!!!

ドバーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


空中分子を一瞬にして凝固気化させる熱爆発魔法、ディガ。
エネルギー弾が放たれた特異な反応音と直打されたアメルの体への鈍い衝撃音が混ざり合い、アメルの体を弾き飛ばしている。

 

アメル『・・・・ぅ・・・』

 

司会者『おぉ~~~っとぉ~~!!アメル選手油断したぁ~!!!!』

『わぁぁぁぁああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉ』

 


吹き飛ばされ宙に浮いたアメルの体はファランとの距離を作りながらそのまま地面に転げている。


 

ゴロゴロゴロゴロゴロ・・・・

 

無情にも観客達からは瞬時にして展開された攻防に驚き、歓声を止めていない。

『わぁぁぁぁああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉ』





アメル『・・・・・・・・。』



動かなくなったアメル。
エネルギー弾の余韻の重い音と共に、空中摩擦を起こした電気音がオクタゴンリングに残り、いい様にない立ち煙が上がっている。

ズゥーーーーーーーーーーーーーーーン
ビリビリ・・・・・ビリビリビリ・・・・

オムー『アメル≫ω≪.;!!!』

クルス『まて(゜Д゜)オムー』


心配してリングへ上がろうとするオムーをクルスが制止すると、下唇を噛みながらオムーはゆっくりと腰を下ろした。

 

オムー『・・くそ・≫ω≪.;』

トカマク『・・・アメル・・』

 

吹き飛び転がったアメルを表情も変えずに見ているファランは、
何か言いたげにそのまま直立している。

 

ファラン『・・・(■ω■ )』

 

司会者『・・・ファラン選手の勝~・・・・・・ん?』


司会者が勝利者を言いかけたその時。

動かなかったアメルの体は服や体の焼ける焦げ臭い匂いを放ちながら、手足を動かし始めるのだった。



アメル『・・・ぅ・・く・・・』

 

ガクガクと足を震わしながら渾身の力を込めて立ち上がろうとしているアメル。

 

司会者『おぉ~~っと~!!!アメル選手まだ立ち上がれる!!立ち上がれるぞぉ~!!!!』

『おおおおぉぉぉぉおおおおぉぉぉ』



 

オムー『息があるっ!!!アメル大丈夫か≫ω≪.!!!』

りん『予選では見せてなかったわね・・あの技・・』

クルス『あのじじぃとやりあいてぇなぁ(゜Д゜)』

hanana『すごいでしっ!!立ち上がった^0^ノ!!』

エビちゅ『・・あのエネルギー弾は相当でちゅよ( ̄ω ̄ )軍の壁役アメルが瀕死ということはエビちゅが食らったら即死でちょうね・・気をつけねばいけまちぇん』

トカマク『・・・立ち上がって・・アメル・・・』











第弐百壱拾五話

2009-10-11 | 本編






司会者『最強の猛者は一体誰なのか!!一騎打ち戦闘ナンバーワンは誰なのか!臆することなく集まった勇者たち!!己の真価を問え!!!』

ドドーーーーーーーーーーーーーン

『わぁぁぁぁあぁあああぁぁぁ』

『おおおぉぉぉぉぉぉ』

事実上国内ベスト8となる出場者達への観客の盛大な歓声が反響している闘技場。これから死闘が始まるであろう石畳のリングを舞台にその者たちは立っている。

そんな観客の中、怪訝な顔で出場選手をみているひとつの家族がいた。

 

父『・・・母さん・・・hanaは・・今友達のところへ遊びにいってるんだよな・・?』

母『・・・ぇぇ・・そうょ・・』

湖乃『うわぁ~(^0^,*)あの人すごいお姉ちゃんに似てるよ!お母さん!』

 

階段状になる観客席のかなり後部座席に座っていたが、うっすらと選手の顔形はみえている。まして家族ともなればそのシルエットから見間違えるはずもない。


母『・・あれどう見てもhanaちゃんよね・・・?』

父『・・・ま・・まさか・・はは^^;;・・同姓同名で似てるってことだろ・・』

湖乃『アハハ(^0^,*)そっくりそっくり!!』

 

 

係員『それでは早速第一回戦をはじめますっ!アメル選手とファラン選手以外の方は控え室へお戻りくださいっ!』


オムー『まずはアメルからか=ω=.;』

アメル『イキナシカイ・・コ・・心の準備ガガガガ(ーwー´;)』

クルス『油断すんじゃねーぞアメル(゜Д゜)』

りん『アメルがんばって^^』

エビちゅ『hanana戻るでちゅよ( ̄ω ̄ )出番はまだまだでちゅ』

hanana『ハビ0^;』

トカマク『私達も観覧席からみてるわ!がんばるのよっ』

 

オクタゴンリングにはファランとアメルのみを残し、他選手は選手観覧席へ戻っていくと、入れ替わるように司会者と審判員がリングへ入ってきている。


アメル『・・・大丈夫・・大丈夫・・わたしは勝つ・・・わたしは勝つ・・ナムミョウホウレンゲーキョーウ(ー人ー´;)』

ファラン『・・・・(■ω■ )』


審判員はアメルとファランの等間隔である間に入り、左右に準備の確認をした。


審判員『二人とも準備はいいですね?ルールは予選で説明したとおりです。』

ファラン『わしはいつでもよいぞ(■ω■ )』

アメル『サァテ・・ト・・・スーーーハーーー(-◇-´;)』

 


司会者『整ったようですっ!!それでは世紀の第一回戦!!アメル選手対ファラン選手!!試合開始だぁ~!!!』

 

ドーーーーーーーーーーーン!!!
ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

始まりの大砲隊が鳴るや否や、ついさっきまでの歓声が嘘のように静まり返っている。アメルの緊張だけではない。3万を超える観客たちも固唾を呑んで見守っており、その二人を凝視していた。

 

アメル『・・・・ゴク・・・』

ファラン『・・・・・・・。』

 


互いの出方を見ている為か、10m程の中距離を保ちながら身構えている二人。8角形のオクタゴンリングから近い位置にある選手専用観覧席からはりん達がその様子をみていた。

 

りん『とうとうはじまったわね』

オムー『・・・=ω=.』

クルス『そんな奴チャッチャッと倒しちまえよ(゜Д゜)アメル!!』

 


アメル『・・・・(・w・´;)』

ファラン『・・・・・(■ω■ )』


様子を伺っているアメルと同じようにファランは左手に杖を持ちながらまるで時間が止まっているかのように動かない。



アメル(動かないな(・w・´;)・・・このお爺さん寝てんじゃないのw?)

ファラン『・・・(■ω■ )』

 

一定の間が経過しても動くことのないファラン。
耐え切れなくなったアメルは始めの制空権を破りにいくのだった。


ザザザッ!!!

ブンッ!!

 

ファランの左足脛をすくい払うように放った一太刀。

 

ガキンッ!!


ファラン『あぶっ(■ω■;)』


かろうじてファランは杖で防御しており、受けることで精一杯であると確知したアメルは尚も攻撃を続けた。


ガキンッ!!

ジャキンッ!!!

カンッ!!


ファラン『・・・ウ・・・ク・・・ほいさっ!!よいさっ(■ω■;)』


突如始まった近接攻撃による戦い。
待ち侘びていたかのように観客達は一気に歓声の波を作っていた。


『わぁぁぁぁぁああぁぁぁ』

『おおおぉぉぉぉぉ』

 

クルス『・・いいぞいいぞアメル(゜Д゜)!!ぶっ倒しちまえ!!』

りん『いい調子ね^^』


予想していたより難なく制空権を破り、無手の反撃も受けることなく剣攻撃が繰り出せていた。


アメル(・・・あ・・これいける(・w・´)・・余力残していけるカモ・・)

 

上段面、胴、籠手、突き、ありとあらゆる剣術の攻撃を繰り出し圧倒しているアメル。予選で行われていた無手も使えずにファランは杖での受けで手を出すことはできていない。

 

アメル『たぁっ(・w・´)!!』

ファラン『なに(■ω■;)!?』

 


バコッ!!!

 

するとファランの受けがとうとう間に合わなくなり、アメルの剣が勢いよくその男の胴にめり込むのだった。


その見事なまでの攻撃に酔う観客は歓声のボリュームを唐突に上げている。


『うぉぉぉおおおおおおおおぉぉぉ』

『わぁぁぁぁあああああああああああああぁぁぁ』

 

一瞬宙に浮き、飛ばされるファランは地面に仰向けに倒れた。

 

バタッ!!

 

ファラン『・・・・ウ・・・ク・・・や・・やるのぉ・・(■ω■;)』

 


アメルは仰向けに倒れているファランを横に剣を掲げ言った。

 


アメル『・・・おジイちゃん(・w・´)降参しないと攻撃しちゃうよ?』

ファラン『・・・ウ・・・ク・・・・致し方あるまい・・(■ω■;)』

 

 


クルス『・・よっしゃーーーー(゜Д゜)!!ぶっ倒しちまえ!!』

りん『アメルっ!とどめよ!!』

エビちゅ『おいしい試合でちたね( ̄ω ̄ )』

 


観客のボルテージも選手観覧席の者たちも勝利は確信している。するとそんな中、一人の相反する掛け声が場内に響き渡るのだった。

 

オムー『アメル油断すんじゃねぇ!!そのジジイ!!ただもんじゃねぇぞ=ω=.;!!』

 

アメル『ぇ(・w・´)?』


アメルが意外な掛け声を耳にし観覧席に目をやると同時に、仰向けに倒れたファランの口角が僅かに上がったのは誰も確認できていない。

 

ファラン『・・・フ(■ω■ )』










第弐百壱拾四話

2009-10-03 | 本編






選手入場に合わせてファンブルグ国オーケストラ団が勇ましい演奏を始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全選手入場BGM推奨youtube音楽。
『パイレーツオブカリピアン』
http://www.youtube.com/watch?v=ZOuMEEsEyBA
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『わぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

 

連絡通路を歩き終え、出口にて待機している一同は一人ずつ呼ばれていく。

 


係員『アメル選手!!前へ!!』

アメル『げっ一人ずつ出るのカ(ーwー´;;)』

 


あまりの外の熱狂ぶりに物怖じして足の進まないアメルに業を煮やして手招いている係員。

 


係員『アメル選手!!早くっ!!!』


ファンブルグ国軍の今や先頭に立つべき第一連隊として、国軍の代表隊として堂々として欲しいというトカマクの思いは自然とアメルの背中を一押ししている。

トカマク『何をしてるのアメル!堂々としなさいっ!』

アメル『・・・(ーwー´;;)』

 


アナウンス『トーナメントAブロック 第一回戦出場の!!アメル選手だぁぁぁぁああぁぁ!!!』


ドドーーーーーーーーーーーーーーーーン


大砲隊の音が城外にも響き渡り、より一層観客席のボルテージは上がっている。


『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ』

怒涛のように押し寄せる歓声に圧倒されつつも外に出たアメルは驚愕した。そこは数時間前の予選会場とは全く違い、360度人の顔がぎっしりと並んでいる。観客は総立ちで選手を歓迎しているのだった。

トンネルから石畳の壇上リングまでの一本道を威風堂々とした演奏隊の音楽と同じリズムを刻むように、アメルは歩いている。

アメルのその道を歩き始めた頃合をみてアナウンスが場内に響き渡り始めた。


『・・・19××年。訓練兵としてファンブルグ国軍へ入隊。入隊から数ヶ月し、剣術師範代となるウコンを倒した偉業から正式に兵員となった逸材。』



『その後の対国家戦争での活躍は目覚しい・・壁ともいえるその特化した体力はもはや人智の及ぶところではない・・いったいどのような戦いをみせてくれるのか!』

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

アメル『・・あぁ・・なんでわたしこんなとこいんだっけ・・・(ーwー´;)』


石畳でできたやや高まった壇上へ歩いていくアメルは緊張しているためか、その手と足はぎこちない。ガチガチになったその後姿を他一同は通路出口で見守っている。


クルス『・・・あいつもしかして緊張してんのか(゜Д゜)』

オムー『手と足が同時にでてるぞ=ω=.;』

りん『人の振り見て我が振りなおせね・・わたし気をつけないと・・・』


係員『それではクルス選手!!よろしくお願いしますっ!』

クルス『あいよ(゜Д゜)』

アナウンス『続いてクルス選手の入場だぁ~!!!!』


ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ』


歓声に応えるように両手の拳を空へ突き上げるように挙げ、リングまでの一本道を堂々と歩いている。


クルス『俺がNO.1てとこみせてやんよ(゜Д゜)』


アナウンス『入隊後間もなく階級特進・・その有り余る粗暴な振る舞いから一時はエリート隊である第一連隊から除隊・・しかしその後の活躍から第一連隊へ復帰・・魂を込めたその剣術捌きと一撃に特化したその力は見るものを圧倒する!』

 

既に国内では優勝候補と認知されており、アメルとは違う熱狂的なファンが黄色い声援を上げている。

 

次々とリングへ進んでいく一同たち。

 

『りん選手の入場だぁぁぁ~!!!!』

ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


りんは出口をでるとすぐに左右、前後に礼儀正しく一礼をし歩き始めた。

 

『過去・・王族専属木こり師・・・しかしその正体は違っていた・・真実は裏社会を根底から無くそうと一人戦い続けてきていた孤高の弓師!その容姿からは想像を絶する天才的弓術は国内で知らない者はいない!』

 


続いて出てきたのはオムー。
照れ臭そうに頭をポリポリと掻きながら怒涛のごとく押し寄せる歓声の波に乗りながらリングへ歩き始めた。

 

『続いてオムー選手の入場だぁぁぁ~!!!!』


『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


オムー『めんどくせぇなぁ・・人が多いところは苦手だぉ=ω=.;』


『18××年。我々国家を救ったあの伝説の獅子であるバルタルト・ニコシアの一人息子。代々受け継いだその魔法と剣術の連携殺法により、現代でもまた軍の危機的状況を救ったのは記憶に新しい!国宝級のその戦術は芸術の域に達っしている!!』

 

次に歩き始めたのはエビちゅ。
顎を上げたいつもの高慢な態度は崩れていない。
小さい歩幅ながら緊張など全く見せていないその颯爽とした歩行はモデルウォーキングにも見えてしまう。


『エビちゅ選手の入場だぁぁぁ~!!!!』

 


『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


エビちゅ『歓声はいいちこより気持ちよくさせてくれまちゅね( ̄ω ̄ )』


『年齢不詳!!性別不詳!!全てが異質!!先日の激戦での我が国家の救世主!!その絶大な魔法威力は常軌を逸している!!現在では聖マリアンナ・デ・フェリス魔法学院講師を務めている生きる伝説魔法師!!』

 


エビちゅに続き、歩き始めたのはhanana。
人生の全てが意想外であるその幼い歳では難儀とも言える行進。引きつった顔と振るえた足で一生懸命に歩いている。


『hanana選手の入場だぁぁぁ~!!!』


『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


hanana『・・・カ・・カエリタイデシ・・(T-T)』


『若干五歳!信じられません!幼き少女はなぜこの戦いの場に来たのか!?そしてその力とは!?その疑問は本戦が全てを答えてくれるでしょう!!』

 

そして腰に手を当てながらゆっくりとリングへ歩を進めていく初老の男。臆することないその歩き振りには自信が伺える。


『続いてファラン選手の入場だぁぁぁ~!!!』

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


ファラン『・・・いい冥土の土産になるのぉ■ω■』

 

『この男も一切不明だ!!無所属!!過去のデータが全くありません!!腰紐に携えた魔法杖は予選試合では使われていなかった!!』

 


『最後にトカマク選手の入場だぁぁぁ~!!!!』

 

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


トカマクは片手拳を肩まで軽く挙げ辺りを見回し、観客に微笑み返しながら石畳までの道を歩いている。


『もはや紹介することはないでしょう・・・今大会主催者!我が国家ファンブルグ軍総統!!第一師団第一連隊隊長!!その剣術を目の当りにできる至福の時間はもうすぐだ!!!』


『わぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』


『全八名!!ここに集結!!!!』








第弐百壱拾参話

2009-09-27 | 本編







ぬかるんだ細い通路からもう一人の係員が急ぎ足で選手控え室に入ってきた。その男は会場内の熱気を伴い、興奮した面持ちで肩を激しく上下させている。


『それではみなさん!そろそろ入場の時間ですのでスタンバイお願いしますっ!!』


トーナメント表を書き終えた係員もくるくるとその紙を丸めながら大きく頷く。


トーナメント対戦表のくじ引きから急激に慌しくなった選手控え室。
一同は押されるように武器防具を持ち、出支度を始めた。


急ぎ足で鎧を着、チェイングリーブを履いたアメルは、薬などが入った鞄と兜を慌てて持った為、兜の紐を掴みきれていなく地面に落ちてしまっている。


ガランッ!!
ガラゴロッ!!!


アメル『あっ(・w・´;)』

オムー『大丈夫かアメル=ω=.?』

アメル『ぁ・・・ぅ・・ぅん・・なんか緊張してきた(・w・´;)』

 

他選手も自身で心臓の鼓動がわかるほどに心拍数は上がっており、緊張しているのはアメルだけではないことは必然だ。

 


エビちゅ『hanana。これを着なちゃい( ̄ω ̄ )』


それはエビちゅがかつて着ていた魔法服。
緑がかった上下繋がっている布に白い腰紐がついている。襟には茶のアクセントがついており、落ち着きと可愛らしさを共存させたローブであった。

 

hanana『これを着て・・闘うんでしか?』

エビちゅ『エビちゅが小さい頃に着ていた服でちゅ( ̄ω ̄ )文句ありまちゅか?』

hanana『ぁそんな文句なんてありません^0^;!』

 

ボルケノゴーレムを救うため交換条件として出場することになってしまったhanana。いよいよ本格的に自身の戦う場が作られていくことを実感し始めており、不安に思っていることをエビちゅに問い正すことを意に固めた。


hanana 『ぁ・・あの・・勝っても負けても・・出場したことになるんですよね?』

エビちゅ『そうでちゅね( ̄ω ̄ )』


hanana(・・戦ってるふりして逃げるしかない・・(-_-;))

 

先導する係員から列をなして控え室をあとにする一同。考え事で立ち止まり一足遅れたhananaをエビちゅが振り返りながら促している。


エビちゅ『hanana!こっちでちゅよ( ̄ω ̄ )』

hanana『ぁ・・・・ぁは^0^;・・・はぃ・・・』

 


出場選手たちは連絡通路を歩きながら各々様々な事柄を頭に浮かべていた。今までとは一味も二味も違う戦い。戦う相手のレベルはさることながら、純粋に戦う技術や力の比べあいとなる。


そこには国を守る使命感や相手国への怒りや悲しみ、悲壮感や憎悪などは伴っていない戦い。この戦いは今まで培ってきた技術を公の場に見せ、日頃から鍛え上げたその心技体をエンターテイメントとして賞賛されるもの。マイナスの感情などない。

国内初となる催しを前に、それぞれの選手が期待や不安を混ざ合わせた複雑な心境でその暗く長い連絡通路を歩いている。

 

ジャッ・・ジャッ・・ジャッ


ジャッ・・ジャッ・・

 

りん『ん~ドキドキしてきた^^;』

オムー『今までの力出せばいいだけだぉ・・といいつつ俺も緊張してきたんだが=ω=.;』

アメル『あぁ・・もっとプリン食べておけば良かった・・(ーwー´;)』

クルス『入場選手紹介とかいらねぇ(゜Д゜)早く戦わせて欲しいぜ』

hanana(・・ドキドキ・・・・試合始まってすぐ逃げたらやっぱエビちゅさん怒るかな・・(-_-;))

 

 

ジャッ・・ジャッ・・ジャッ


ジャッ・・ジャッ・・

 

湿っているトンネルの向こうには光がうっすらと見えてくる。
予選試合のときに通った同じ道。
しかしその先は明らかに違っていた。

出口に近づくにつれて徐々にその大きな興奮と期待を入り混ぜたどよめきが地響きと共に一同の足元に伝わってくるのだった。

 

ドドーーーーーーーーーー

ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『わぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁ』

『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ』

 

薄暗いその道には想像を絶する歓迎の挨拶の地響きが足元から肩へ伝わっている。

オムー『ちょ・・・すげぇ歓声だな=ω=.;』

 

先導する係員は落ち着いた表情で歩きながら振り返らずに応えた。


係員『この歓声は今から登場する皆様への歓声ですよ。収容人数2万4千人。普段の対モンスター戦では満席になることはありませんでした。今日は満席かつ立ち見客の当日券で道に溢れているそうです。推定観客数は3万人近いですね。』


りん『うわぁーすごいね^^;』

トカマク『国中のひとたちが注目してるわ^^はりきっていきましょう』

 

塗れた砂利を蹴る皆の足踏みはトンネル出口までの距離を縮めている。外からの歓声と司会者らしき人の声の音量を上げる役目を果たしていた。

眩しい光が近づくにつれ徐々にその歓声と司会者の声は大きく、そして明瞭に聞こえ始めてきている。

 

 


『・・・レディース エーーン ジェントルメン!!ウェルカーーーム トゥーアルティメットファイティング!!チャーーーンピオーーーーン・・・シーーーーーーーーップ!!!!』


併せるように大会の盛り上げ役となる大きな爆発音も鳴り響いており、観客は総立ちで拍手と歓声を送っている。

 

ドドーーーーーーーーーーーーーン!!!!

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ』

 

歓声冷め遣らぬまま、司会者は本戦開会の言葉を続けた。

 

『誰が一番強いのか・・・どう戦えば一番強いのか・・・』


歓声の波に乗りながら司会者らしき人の低い声が合わせて競技場全体に響いてきている。

 

『古代パンクラチオンの時代より続く強さの限界を求める戦い・・・攻撃を回避し・受け・拳で打ち・地面に投げ落とし・間接を極め・剣で切り裂く・・そこにルールなどはない・・人間という獣のもつほぼ全ての闘争術を駆使した戦いの勝者は、いつの時代も称えられる尊敬の対象であり続けられた・・・』


静かに語りかけるその声は場内の観客たちに暫しの沈黙を与えると、司会者のボルテージも徐々に上がっていく。

 

『そして現代にも最強に魅せられ、極限の戦いに身を投じる者達がいる・・・実戦の戦争の中にて生き残り、様々な技を身につけ、数千万人の我が大国から集結した
選ばれし現代のグラディエーターたち・・・トカマク様主催!!ファンブルグ国・・最強武術大会・・・・開幕!!!!』

司会者が言い終えると同時にこれでもかと盛大な大砲隊の花火が空に打ち上げられている。

ドドーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!


『おおおおぉおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁ』


『選ばれし8名!!!武士(もののふ)中の武士(もののふ)!!!全選手入場~!!!!』












第弐百壱拾弐話

2009-09-09 | 本編






第一連隊のメンバーらは皆選手控え室にて待機していた。
アメル、エビちゅ、オムー、クルス、トカマク、hanana、りん、初老の男ファラン。
大会直前の過ごし方は様々だ。


クルスは時間を持て余し、宙を見つめながら貧乏揺すりをしている。

 

クルス『・・・まだか(゜Д゜)・・・』

 

待ちわびているその重そうな長剣の切っ先は鞘から出ており、クルスの肩の上でリズミカルに弾んでいる。

暇を持て余して控え室をぶら歩きするアメルはクルスの肩から後ろへ突き出ている剣に今にもあたりそうになり、バランスを崩した。

アメル『わわわわわわわわわわわ(ーwー´;ノ)ノ』

クルス『あ(゜Д゜)?』

 

突如後ろから聞こえる声に悪気もなさそうにクルスは振り向くとアメルが腕を宙に泳がせている。

 

アメル『わっとっ・・・よっと・・・おっとっとっとっとっ(ーwー´;ノ)ノ』

クルス『何やってんだ(゜Д゜)?』


やっと倒れずに済んだアメルは説明するのも面倒臭そうに応えた。


アメル『・・・ふぅ・・・危ないなぁ~もぅ・・・なんでもないよ・・もぅ(ーwー´;)』

クルス『ずいぶん珍しい準備運動してんだなぁ(゜Д゜)』

アメル『・・・(ーwー´;)』

 

 

りんは戦いを控えた皆にコーヒーを出そうとポットのお湯を人数分注いでいる。




りん『ぇっと・・・いち・・・に・・さん・・8名分でいいのかな・・』


オムーは周りのライバルでもある仲間達を見渡しながらりんに近づき、問いかけた。


オムー『なあ、りり=ω=.王様はいないのかぉ?』

りん『そうじゃない?会場入りしたときからチラチラみかけてたけど・・忙しいんじゃない?』

オムー『そっか・・=ω=.』

 

りんの何杯か入れ終わったコーヒーカップを早々とお盆から手に取り、コーヒーを口に運びながらオムーは本戦枠に残った8名の顔ぶれをそれとなしに眺めている。

熱いコーヒーを冷ますために吹きかけるオムーの吐息は香りある湯気をかき消し、オムーは頭に引っかかる何かを模索しながら口を尖らせ、おいしそうにすすった。

 

オムー『・・・ズズ・・・=ω=.』

りん『おいしい?』

オムー『・・・んー・・・・=ω=.』

 


予選の戦い直後、そして本戦試合の前という緊張状態からコーヒーによってブレイクされたオムーの頭は何かを疑問視していた。そしてその目はある一点で止まっている。

コーヒーを飲みながらそのオムーの視線に気づいたりんは、追うようにその先を見ると初老の男へ向けられていることがわかるのだった。


りん『・・・どうしたの?』

オムー『・・・ぃゃ・・・=ω=.』


その初老の男はテーブルに深く座り、こっくりこっくりと居眠りをしており、オムーは何か言いたげな言葉を詰まらせ、だんまりをきめこんでいる。


少し目をずらせば、隣のテーブルで行儀良く座っている少女がいた。その少女の座る目の前には柱時計がかかっている。

秒針をじっと見つめている少女はリズムを刻むように意味もなく首を左右交互に傾け、暇つぶしをしているようだ。


hanana『チックタックチックタックチックタック(^0^ 彡 ^0^)』

 

その無邪気なまでの動作は余計にオムーたちを不可解にさせている。



りん『わたし今日ここくるときあの子に道案内したのよね・・ちょっと話したけど・・・まるで子供よ・・・予選試合どうやって通ったのかしらね^^;』


オムー『嘘だろ=ω=.;・・・気がかりなことが多すぎる』

りん『はぁ~い^^みんなぁ~コーヒー入れたよ~!どうぞ~!』

 

りんは緊迫した控え室の空気を一掃するように爽やかな声でコーヒーを注いだことを告げると、皆は緊張の解れた顔で手にとっていく。


トカマク『ありがとう^^』

クルス『お(゜Д゜)サンキュ』

hanana『ありがとうございますっ^0^ノ!!』

エビちゅ『さすが気が効く女は違いまちゅね( ̄ω ̄ )毒でも入ってないか心配でちゅが』

りん『そんなことしないから^^;』

 

その初老の男も目の前にコーヒーを差し出されると気持ちの良い湯気に起こされ、驚いた表情で礼を言った。

 

りん『・・良かったらどうぞ^^』

ファラン『・・・ぉお・・・すまんのぉ■ω■』

りん『大会がんばりましょうね^^』

ファラン『ふぉっふぉっ■ω■そうじゃのぉ』

オムー『・・・=ω=.』

トカマク『・・・オムーもあの男の人・・気になる?・・わたしもあの人・・気になるのよね・・』


しきりとファランというその男を気にしているオムーに気づいたトカマクも、その胸の内を明かした。


オムー『予選試合はどういう戦いぶりか見ましたかぉ=ω=.?』

トカマク『魔法杖を持っているのに攻撃は無手だったのよね・・』

オムー『・・・・・無手=ω=.?』

 


アメル『ぉ!コーヒーじゃん!あり~りん(・w・´)ノこれでレアチーズケーキもあれば完璧だよね』

りん『ないないw』

オムー『チーズケーキはベークドだぉ=ω=.』

アメル『ぇぇーーレアだよー(´゜д゜`)』

オムー『ベークドのこってりしたほうが旨いぉ=ω=.』

アメル『だってベークドってペトペトしてるよぉ(´゜д゜`)』

オムー『そのペトペトがいいんだぉ=ω=.』

りん『まぁまぁ^^;』

 

取り留めのないいつもの会話の間に一人の男の声が割り込んだ。

 

係員『それでは皆様!予選枠お疲れ様でした!今からくじ引きにて対戦カードを決定させて頂きます!お一人ずつどうぞ引いてください!』


その声は皆の視線をいってに引き受け、注目を浴びたその視線はすぐに手元の大きな筒に移された。大筒の中には番号の記された紙が入っている。それはトーナメントでの場所決めになるのだ。

 

オムー『第一回戦の相手はくじ引きか・・・ドキドキするなぁ=ω=.;』

りん『そうね^^;』

アメル『どうかクルスくんにあたりませんようにぃ~(ー人ー´;)ハンニャーラーワーミーターセー』

エビちゅ『アメルが般若心経をどこで憶えたのかが疑問でちゅね( ̄ω ̄ )』

 

一日で終わるワンデイ(一日)トーナメントはいかに第一回戦で余力を残すかが要だ。このくじ引きにより第一回戦の相手が決まってしまい、それによって優勝できるかも決まってしまう重要な局面である。
本戦枠8名は係員を囲み物怖じしており、先に引こうとしていない。


クルス『なんだみんな引かねぇのか(゜Д゜)?俺引くぞ?』


そんな中、一人胆の据わったクルスはズンズンと前に進んでいく。








エビちゅ
『待つでちゅ( ̄ω ̄ )』


クルスの耳元で突如大きな声を上げたエビちゅ。


クルス『おわwなんだよいきなりw鼓膜破れんだろこのやろw』

エビちゅ『エビちゅが先でいいでちゅか( ̄ω ̄ )?』

クルス『だったら早く引いてくれw』

 

そしてエビちゅが先陣をきってくじを引きにいくのだった。


係員『どうぞ』

 


・・・・ゴソゴソ・・・・・・・・・・

・・・・ゴソ・・・

 

一枚の紙を大筒から取り出したエビちゅ。
そして皆に見せるように番号を伝えた。

 


エビちゅ『エビちゅは7番でちゅ( ̄ω ̄ )』

 

するとエビちゅは係員に詰め寄り、何やらこそこそと話している。


エビちゅ『わかってまちゅね( ̄ω ̄ )?』

係員『ぁ・・はい^^;』


係員は大筒に仕掛けをほどこすように何やら手を動かし、再びくじ引きを再開するのだった。

 


クルス『俺は3番だぜ(゜Д゜)』

オムー『俺は5番だぉ=ω=.』

 

アメル『わたし2番だ・・・って・・・誰と戦うんだろ(・w・´)』

 


りん『私は6番だ・・・』

トカマク『私は4番よ』

ファラン『わしは1番じゃな■ω■』



次々にトーナメント場所を決める番号が告げられていく。
残るはhananaだ。

係員『ということは・・残りは8番のみですので・・hanana選手は8番になりますね^^』

hanana『はぁ~い^0^ノ!!』

 


それぞれバラバラの数字を引き当てていく一同たち。
係員は大きな紙を広げ、トーナメント表を完成させていった。
油性マジックペンの音が緊迫した静かな控え室に響いている。

 

 

キュッ・・・・キュッキュッ・・・・


キュッ・・・キュッ・・・・・・・・・・

 


            【Aブロック】


             優勝決定戦へ
                |
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
        |                |
                       
      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |       |      |        |
 ①ファラン   ②アメル  ⑦エビちゅ  ⑧hanana                                    
              
 
             【Bブロック】


             優勝決定戦へ
                |
        | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
        |                |
                      
     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    |       |      |        |
  ⑤オムー    ⑥りん     ③クルス   ④トカマク   
                           



第一試合 ①アメルvs②ファラン

第二試合 ③クルスvs④トカマク

第三試合 ⑤オムーvs⑥りん

第四試合 ⑦エビちゅvs⑧hanana

 

オムー『初っぱな、りりとだ・・・やべーなーおぃ=ω=.;重装備していくかな・・』

クルス『俺の第一回戦はトカマクとか(゜Д゜)やり合いたかったぜ』

トカマク『(・・・ふぅ・・・来るべきときが来たようね・・)』

りん『オムーか・・・距離が問題よね・・・』

アメル『(やったぁ~(・w・´)ノ!!!ついてるねっ!!クルスくんと違うブロックだっ!!準優勝いけるかもっ!』

ファラン『・・・・・■ω■』

エビちゅ『楽しみでちゅね( ̄ω ̄ )』

hanana『(・・・これって逃げてもいんでしよね^0^;?)』






静かな選手控え室とは対称的に観客席は満席。
席を買えなかった立ち見客もぎっしりと道に埋まっており、その国中の熱狂ぶりは今だかつてなかった対人戦の期待を伺わせている。

夏の強い日差しは観客たちの喉を潤すビールなどの飲料の売り上げを上げており、もはや祭りのようにボルテージは高まっていた。

世紀の一戦。武術大会のゴングはもう間もない。












第弐百壱拾壱話

2009-08-02 | 本編


 


構えさえもせずに杖を片手に棒立ちになっているその初老の男の名はファラン。臆しているわけでもないその構えはどこか異質な空気を漂わせている。

背中の丈ほどもある大きい両手剣大きく振りかぶりながら突進するウコンは、第一連隊の中でもトカマクに匹敵するほどの剣術の持ち主である。

雄叫びと共にその初老の男との間合いを詰めていった。


ウコン『どっしゃあぁ~~!!!』


すると制空権に入る寸前。
ファランは緊張した場面には程遠い殊の外大きなくしゃみを突如するのだった。


ファラン『;`;:゛;`(■Д■♯)ブワックショォ~ィ』


背けずに相手に向けられた鼻汁はまっすぐにウコンの顔面に飛んでいく。


ウコン『・・・くっ・』


寸前での以外な異行にウコンは面くらい、かつ大きく見開いた目にしぶきが入ってしまっていた。


ウコン『・・・ぅ・・・くっ・・目が・・><』


兜の僅かに開いた目元の隙間に指を入れて目を抑えているウコンの片手は塞がり、うっすらと霞んで見える視界をたよりに、剣を闇雲に振るっている。

 

ブンッ!!

ブンッ!!!!

 


元来、両手剣は重さ故に両手にて振り上げるものであり、スピードこそないが攻撃力を特化させた剣である。

片手のみで振り回すウコンの剣は、大きくぶれており、ファランは足をふらつかせながら杖で剣を受け止め、紙一重でよけていた。


ファラン『おわっ(■Д■♯)!!あぶっ!!あぶなっ!ひぇ~!』

 

ブンッ!!!

カンッ!!!


ブンッ!!!!!

カンッ!!!!


オムー『危なっかしぃじーさんだな・・・=ω=.;』

りん『きゃノノ!!危ない!!』

ウコン『・・うっ・・くそっ・・目がぁぁ・・うぉぉぉ><!!!』

ファラン『ひょぇぇぇ~■ω■;』


必死で逃げながらよけるファランと必死で剣を振り続けるウコン。乱雑な戦いが暫く続くと、ファランは自らの杖を捨て、やっとの思いでウコンの振っていた右手甲を掴んだ。


ガシッ!!

カランッカランッ


寸でのところでよけているその剣呑な動きは予選通過決定戦とは思えない程に未熟なやりとりであり、その戦いに観客たちも茶化しながら応援している。


『じーさんwがんばれよ~w』

『あっはっはっはっ』

『無理すんな~w』

 

ファラン『ふぅ・・・あぶなかった・・■ω■;』


振り回されていた剣の猛攻をやっとの思いで凌ぎ、よろけつつもファランはウコンの剣の鍔際を持ち、剣の奪い合いがはじまった。


ウコン『ぅっ!!・・くっ!!!・・・』

 

ウコンは徐々に視界を取り戻してはいたが、以前わかるのは相手の気配のみである。もはや剣の奪い合いのため目に当てられていた左手も使い、剣を奪われないよう必死に鍔元を掴んでいる。


ウコン『・・く・・手を・・離せ・・貴様・・・ぅ・・ぅう・・』

ファラン『むむ・・・■ω■;』


互いにバランスを崩さぬよう奪い合い、鍔元を中心にぐるぐると回っていたが、年老いた筋持久力は長続きはできない。徐々に剣はウコンが奪い取れそうになっていた。

 

ウコン『・・力なら・・負けんぞ・・・』

ファラン『・・ふぬぅ・・・うおぉぉ■ω■;!!!!』

 

グルンッ!!


グルルンッ!!!


傍から見れば、そのやり取りはまるで両手を持ち合い、楽しそうに踊っているようにも見えており、幾分滑稽にさえ見えていた。

 

トカマク『まるでダンスしてるみたいよね^^;』


奮闘して戦っている二人とは対称的に観客席からは笑い声も聞こえてきている。


『あっはっはっはっw』

『ぶっはっはっなんて試合だw』

 

しかし一方で、伝説の獅子であるオムーやりんはその試合を直視しつつ、不可解に感じているのだった。


オムー『・・ん?・・これは・・・=ω=.』

りん『・・・まさか・・目が見えなくなったウコンを操作している!?』

オムー『・・そんな気がするぉ・・=ω=.;』

トカマク『そうなの!?』

 

そして奪い合いを制したのはウコン。
鍔元からファランの手が抜け、グルグルと回っていた二人は大きな遠心力から相反するように大きく吹き飛ばされた。

 

バシッ!!!


ウコンの視力は回復しており、互いの心体的ダメージはなかったが、ファランの杖は右手甲を掴んだ際に落としており、そのやり取りは最終的にファランが魔法の要となる杖を手放す結果となってしまっていた。

 

ファラン『・・・■ω■;!!!』


ファランも後ろに大きく吹き飛ばされながら優勢を確信している。

 

審判員『おぉーっと!!ファラン選手!杖を手離したままウコン選手と距離を作ってしまったぁ~!』


ウコン『丸腰!もはや魔法は使えまい!!!』

 

尻餅をつくファランと同じようによろめきながら体勢を整えようとした時。

 

ズルッ!!

 

ウコン『なっ!?』

 

ズッテーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 

六角形で作られている石畳のリングは地面から人の背丈ほどの高さの壇上に作られている。

ぐるぐると剣の奪い合いの攻防により、いつの間にか端まで来ていたことに気づけなかったウコンは足を滑らし、なんと見事にリング外へ落下してしまっているのだった。

 

審判員『おぉーーーーーっとぉぉ~!!!ウコン選手!!場外だぁ~!!この勝負!!ファラン選手の勝利ぃ~!!予選通過決定ぃ~!!』


ウコン『・・くそっ><!!運のいい野郎だぁ!』

ファラン『おぉ!!ラッキーじゃな!だっはっはっはっは(■Д■♯)』

 

くしゃみから始まり、ダンスにも見える剣の奪い合いからの足をもつらせた場外転倒による勝敗決着。観客からはその低レベルな戦いに失笑が起こっている。


『わっはっはっはw』

『運も実力のうちだw頑張れよじーさんw』

 

そんな野次など気にする様子もなく、リング内にいたファランは涼しい顔でローブのホコリを落とし、ブツブツと独り言を言いながら選手控え室に帰っていく。


ファラン『・・・久し振りの戦いじゃった・・熱い茶が飲みたいのぉ・・■ω■ブツブツ』


その観客席とは対称的に、第一連隊の者たちは恐れ慄いていた。


オムー『あれは運なんかじゃねぇぉ=ω=.;』

りん『何者なんだろう・・』

トカマク『・・・・ということは・・やはりあの人は・・・。』

 

審判員『それでは残り一枠となった本戦行きのトーナメント出場枠!!どちらが手にするのか!!ボンボヤージュ選手!アメル選手!出場願いますっ!!』


オムー『お=ω=.!アメル出番だぞ!!』

りん『きたわよっ!アメル!』

トカマク『アメル!』


皆が一斉に振り返り、先程まで後ろで準備運動をしていたアメルに応援の熱い眼差しを送るため振り返ると、最後の晩餐を思わせる勢いで大好物のプリンを食べているのだった。

 

アメル『ムシャムシャ(ーw.ー´)むぁ?・・・呼んだ?』

トカマク『ww』

りん『ぶwはwwwwwwポーン(  Д )⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒...。....。コロコロ』

オムー『直前になに食ってんだw』

アメル『だって・・・(ーw.ー´)ムシャムシャ』

 


・・・・・・・・・

 

・・・・・


・・・

 

依然変わらずクルスと同室しているhananaは今だ連絡通路の端で起立しており、そんな中エビちゅが戦闘を終えて選手控え室に帰ってきたのだった。


エビちゅが入ってくるや否や、安堵感からか明るい顔になるhananaは元気よく挨拶をした。


hanana『あっ!エビちゅさん^0^ノ!!!おかえりでしっ!!』

エビちゅ『ちゃお( ̄ω ̄ )』


紫のローブには敵の剣を避けて接触したのか、一筋の切り込みが残っていた。


hanana『あっ!!右肩のとこ服が切れてる!!』

エビちゅ『そんなことより、次にこっちにくるでちゅ( ̄ω ̄ )』

hanana『ほよ^0^?』

 

エビちゅは控え室に立ち止まることなく通り抜け、hananaをどこかへ案内しようとしており、反応のないエビちゅの後を必死に早歩きで歩いていくhanana。


hanana『今度はどこいくでしか^0^?』

エビちゅ『・・・・・( ̄ω ̄ )』

 

暫くすると、ペットたちの控え室に到着するのだった。
所狭しと動物が檻の中から鳴いている。


『ニューー!!ニューーーー!!』

『ガルウルルルルルルr・・・』

『ピギャーーーーーーーー』

 

hanana『あー^0^ノ!!!ペットがいっぱいだぁ~!!』

 

すると聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。


『ゴッフゴッフ!!!』


それはエビちゅに飼うことをお願いしたボルケノゴーレムが檻中でhananaとエビちゅに気づき、重い体を揺らしながら鳴いている声であった。

 

エビちゅ『ただいまでちゅ( ̄ω ̄ )』

hanana『うわわわわ^0^ノ!!!ボルケノさんだぁ~!!やったまた会えたぁ~!!!』

 

ボルケノゴーレムはhananaから視線を外すことなく格子を両手で持ちながら弾んでいる。

 

『グンフゴッフ!!!グゲンガゴッフ!!』

hanana『きゃはははは^0^ノ元気そうだねぇ~!ボルケノさん!』

エビちゅ『本戦トーナメントではペットの加勢が認められていまちゅ( ̄ω ̄ )ボルケノと一緒なら勇気づくでちょう』

hanana『え・・ボルケノさんを?』

エビちゅ『そうでちゅ( ̄ω ̄ )いいでちゅね?』

 

 


・・・・・・・・・・・

 

・・・・・・・

 

・・・

 


『勝負ありぃ~!最後の本戦行きキップを取得したのはアメル選手だぁ~!!!!』

『わぁぁぁああぁぁ!!』

『おおぉぉぉ!!!』

アメル『・・・ふぅ・・・なんだ・・案外簡単に勝てた(・w・´;)』



予選最終試合が終了すると同時にリング脇やコロシアム闘技場場外から一斉に花火が打ち放たれた。



ドドーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!

ドンッ!!!ドドーーーーーーン!!!!



まだ昼の時間とはいえ、その大きな花火は色鮮やかに太陽と対抗し眩く輝いている。本戦を間近に控えた観客席からは黄色い声が飛んでいる。




アメル『ブイブイ(・w・´)v』

オムー『余裕勝ちじゃねぇかぉ=ω=.』

りん『アメルおめぇー(*´▽`*)ノ!』

トカマク『当然よ^^!!』

 

 

全メンバーが本戦行きを決定したファンブルグ軍第一連隊の精鋭たち。初夏の暑さを忘れさせてくれるその郡を抜いた戦いぶりは、早々と予選試合に会場入りした観客たちを魅了していた。


審判員『それでは本戦出場決定者の方々は控え室にお戻りくださぁーい!!』


オムー『おしっ=ω=.戻ろうじぇ』

りん『そうね(*´▽`*)ノ』

トカマク『また見事に第一連隊のメンバーが残ったわね^^』

アメル『当然でしょ(・w・´)』

りん『さっきと随分違うのねw』

オムー『・・・まぁ・・本当の戦いはこれからだぉ=ω=.;』

 


司会者『以上を持ちまして、大会予選試合を終了致します!!!続いて申の刻より武術大会!!本戦試合を開始致します!!!!』


ドドーーーーーーーーーーーーン!!!

ドドドーーーーーーーーーーン!!!!!


『わぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!』

『おおおぉぉぉぉ!!!』



本戦試合がもう間もなく始まるとアナウンスが流れると、コロシアム外で日除けしていた客たちがどっと入り口に押し寄せてきていた。一気に闘技場は埋め尽くされていく。

アメル、エビちゅ、オムー、クルス、トカマク、hanana、りん、そして謎の老人ファランの計8名によるトーナメント。

計り知れない強さをもった者達が残った本戦枠。観客の誰もが見たことのない常軌を逸した真の死闘が始まるのは今まさにこれからだ。






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第弐百壱拾話

2009-08-01 | 本編




 

膝下より高い横長の椅子に座っているhananaは足を前後にぶらつかせながら、ただ言われるがままにそこで待ち続けていた。


hanana『・・・・・・ボー・・^0^』


見るともなく天井を見ると、石と石の隙間から小さい砂がこぼれてきていることが確認できる。


パラパラパラ・・・

パラパラ・・・


どこからかの強い振動がそうさせていることに気づくと、戦いの舞台へと続く暗い連絡通路に目が徐々に引き寄せられていくhanana。

 

パラパラ・・・・

パラパラパラ・・・


hanana『・・ぁ^0^・・あっちからだ・・』


ぶらつかせている足に勢いをつけて前に飛び降り、幾つかのテーブルをよけて振動の主の方角へと歩いていくと、まっすぐに伸びている長い通路に辿り着くのだった。明らかにその振動の元はその先からである。


『わぁぁあぁぁぁ』

『ぉおおおぉぉぉ』

 

hanana『・・ほわ^0^?』


長く伸びた暗い道の向こうからかすかに歓声が聞こえてきている。その喜びと驚きが入り混じる今まで聞いたことのない無数の人々の声は不定期にどよめき、hananaを釘付けにさせていた。

待つように言われた選手待機室。一方で興味深いその声々の誘惑。幾分迷っていたが、光が僅かにしか入っていないその暗がり道の怖さも手伝い、歩を進めることもできずに立ち往生してしまっていた。


hanana『・・・なにやってるんだろぅ・・でも待つようにいわれたしなぁ・・^0^;』

 

そうこうしていると、一人、鎧に身を包んだ男がその連絡通路をこちらへ向かい歩いてくる姿が視界に入ってくるのだった。

その男の履く鉄のプレートグリーブは地面のぬかるんだ砂利を激しく横に跳ね除け、およそ暗い道の恐怖など一片たりとも感じてはいないであろう勇ましい足踏みで進んできている。


ジャッジャッジャッ!

ジャッジャッ!


hanana『・・ぁ・・ひとがくるでし・・・^0^』

 

ジャッ!!


あっという間に目の前まできたその男は歩を止め、道の中央に立っているhananaをみている。

 

クルス『・・あ(゜Д゜)?』

hanana『・・・・ぁ・・^0^;』


それは予選を難なく通過したクルスであった。

若干の返り血と汗の香りを漂わせているクルスの鎧からは湯気が立ち上っており、今先程まで戦っていた闘気が放出されていた。そのオーラと迫力ある佇まいを見たhananaはすぐに連絡通路の端へより、道を開けている。

 

hanana『・・・ぁは・・ど・・どど・・どうぞでし・・^0^;』

クルス『・・・ここはガキの来るところじゃねぇぞ(゜Д゜)』

hanana『・・・ぇっと・・・その・・待つようにいわれたんです^0^;アハハ・・ハハ・・』

 

そう聞くとクルスはまっすぐと待機室中へ進み、気だるくなった重い体を椅子のクッションに勢いよく沈め大きな音をたてて座った。


ドカッ


クルス『・・ふぅ・・・(゜Д゜)』


連絡通路入り口の道の端に立ったままのhanana。
広い待機室とはいえ、戦いを終えたばかりの闘気を身にまとうクルスと同室しているhananaは緊張状態が続いている。

hanana『・・・こ・・・怖い・・・エビちゅさん早く帰ってこないかな・・^0^;』

 

・・・・・・・


・・・・


・・

 


そして予選会場では言うまでもなく、第一連隊の者たちが圧倒的なまでの強さを誇り、予選を勝ち進めていた。

 

審判員『りん選手!!予選通過!!』

『わぁぁぁああああぁぁぁぁ』


予選試合とはいえ、徐々に埋まりだす観客席。
その歓声も時間が経つにつれ大きくなりだしていた。

 

オムー『お=ω=.!!りりも予選通過決定したな!』

アメル『おぉ(・w・´)!!やったねっ!』

トカマク『みんなやるぅ^^』


石畳のリングをあとにするりんは軽快なステップでリングを後にし、駆け寄ったアメルの高く差し出しされた手にタッチをして仲間に迎えられている。


アメル『おめぇーりん(・w・´)ノ!』

オムー『りりおめ=ω=.ノ!』

トカマク『おめでとう^^』

りん『ありがと^^あれ?クーちゃんは?』

オムー『敵の弱さに落胆して待機室帰ったぉ=ω=.』

りん『クーちゃんらしいねw』


クルス、オムー、りん、トカマク、次々と予選通過していく第一連隊。それは下馬評通り、トーナメントを色飾っていくメンバーが揃っていくのだった。


オムー『第一連隊としてはあとはアメルだけかな=ω=.?』

アメル『・・・サ・・・サァテ・・・ト・・・(ーwー´;)・・フー・・』


次々と仲間が予選通過していくのを目の当りにしたアメルは緊張の為か、ロボットのような不自然な動きで伸びをしている。


オムー『ガチガチじゃねぇかぉw』

りん『がんばってね^^アメル!』

アメル『ぅ・・ぅん・・(ーwー´;)』


すると壇上からは聞き覚えのある声が聞こえてくるのだった。

 

****『サブクラフト( ̄◇ ̄ )!!』


その紫のローブに身を包んだ女の頭上に浮かび上がった七色の魔法球は相手選手へと向かっていき、鈍い音をたててふきとばしている。

 

ドドーーーーーーン!!!

『ぐはぁぁあぁぁっ!』


他選手にはない攻撃の威力は、第一連隊の引けをとらないエビちゅ。観客席の注目の的になっている。


『ぉおぉぉぉぉおおぉぉぉ!!』


審判員『エビちゅ選手!!!予選通過ぁ~!!!』


『わぁぁあああぁぁぁっ!』


エビちゅ『エビちゅの真の攻撃は連撃魔法にあるにも関わらず一撃で終わりでちゅか( ̄ω ̄ )なんの面白みもない敵でちゅね』

 

観客席と壇上のリングの合間にいるりん達もその戦いを確認していた。


オムー『ぉ=ω=.!!エビちゅだ!』

りん『さすがね^^』

アメル『エビちゅも本戦行き・・・(ーwー´;)アメさんガンバラナイト』

 

いまだぎこちない準備運動をしながら自身の予選試合の順番を待つアメルを横に、次なる予選試合が始められようとしていた。

 

審判員『続いてファラン選手~!!ファラン選手いらっしゃいませんかぁ~!?』

ファラン『おぉ~!すまんすまん!待たせたのぉ■ω■』

 

審判員が何度か呼び、やっと壇上に姿を現したのは初老の男。くすぶった茶のローブを着込み、杖をつきながらリング中央へ歩いている。

 

りん『兵員ではないようね・・・』

オムー『いい歳してグラサンかぉ=ω=.』

トカマク『・・・あのひと・・・まさか・・』


第一連隊のものたちが予選試合を見ている中、一人落ち着かないアメルは横で柔軟体操を続けている。

 

アメル『・・・イッチニ・・・サンッシッ・・・もうひとの試合なんて見てられないよ(ーwー´;)あ~ドキドキしてきた・・・』

 

その初老の男と対峙しているのは、ファンブルグ軍兵士訓練所の教官であるウコン。かつてアメル入隊時に死闘を演じた猛者である。


トカマク『あっ!!ウコンじゃない^^!!ウコーン!がんばんなさいよー!』

 

 


審判員『準備はいいですねっ!?』

 

審判員はまずウコンに準備が整っているか問いただした。

 

ウコン『・・・・。』


無言で対峙した相手を睨みながら頷くウコン。
目と口元だけを残して兜で覆われているその顔からの強い眼光は初老の男に向けられている。

 

審判員『準備はいいですねっ!?』

ファラン『いつでもよいぞ■ω■』

 

審判員『それでははじめぇ~い!!』

 

ウコン『しゃぁっ!!』


審判員の声と共に距離を詰めるウコンとは対称的に、その男は杖を持ったまま微動だにしない。

 

ファラン『・・・さて・・いくかのぉ■ω■』







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第弐百九話

2009-07-27 | 本編




闘技場は、観客席とリングがある上部階、選手控え室や食堂がある下部階と二段階層で建造されている。

続々と今大会出場者が選手控え室に集まってきていた。

 


アメル『うわぁ~結構たくさんいるね(・w・´)』

オムー『ほとんどがファンブルグ軍の兵士じゃないか=ω=.?』

王様『そうだのぉーωー』

トカマク『軍兵以外の人はごく僅かって聞いてるわよ』

クルス『お(゜Д゜)りんがきた』

 

りんは珍しくやや遅れて選手控え室に入ってきた。

 

りん『ふぅ^^:間に合った・・』

クルス『りんが遅刻ぎみなのは珍しいな(゜Д゜)』

りん『あは^^;ちょっとね・・・ふぅ・・あつい・・』


迷子の世話などをしていたりんはあえて説明することもなく、化粧落ちしないよう流れた汗をハンカチで押すように顔に当てながら返答している。

 

オムー『まずは予選試合か=ω=.』

トカマク『トーナメントに出れるのは8人だけよ!私たちがみんな残ればおもしろいわよね~』


大会出場選手は第一難関である予選試合にて勝ち進まねばならない。そして上位8名が本大会トーナメント参加となるのだ。狭き門を前に皆緊張した面持ちで口数は少なくなっている。


アメル『本大会出場ってたった8人か(ーwー`;)う~む・・わたし大丈夫かな・・・』

りん『少ないよね~^^;』


皆の勇ましい顔を確かめた王様は荷物をまとめ始めながら言った。

 

王様『ではわしはそろそろ観客席に戻るぞぃ^ω^』

オムー『応援しててくれぉ=ω=.ノ』

アメル『わたしの生き様みとけぇ~(ーwー´;)ノシ』

りん『またあとでね~^^ノシ』

王様『ほむ^ω^ノシ』

クルス『まぁ予選なんてつまんねぇのすっとばして早く強ぇ奴と戦いてぇぞ(゜Д゜)』

 

風通しがよい建物とはいえ、戦う前の熱気ある選手たちを収容している控え室は熱く、初夏の日照りがまるで直射しているように皆の体を滾らせていた。

 

係員『出場選手の方々~!これより予選を開始いたしま~す!外のリング横へお集まり下さ~い!』

 

 

・・・・・・・・


・・・・


・・

 

 

一方、第一連隊の者たちと別れた王様はなぜか観客席には行かず、廊下すぐ脇にあるトイレに向かっている。


王様『ちと遅れてしもうたのぉーωー』


王様はトイレ奥に進み、誰もみていないことを確認すると目の前の個室を軽くノックした。

 

・・コンコン・・・

 

王様『わしじゃーωー』

****『おせぇーぉw!!便所でまたせおってw!!』

 

トイレ個室の扉を挟み、二人は話し始めた。
溜息交じりのその大きな返答は幾分疲れをみせた声にも聞こえる。

 

王様『いやぁあはは^ω^勘弁じゃ』

****『あははじゃねぇぉw!熱いわ臭いわで!!まったく!!』

 

ガコンッ ギギーーーーー


便所個室の扉が開けられると、すぐに王様はサングラスをその男に渡している。

 

王様『これをかけてくれぃーωー』

****『・・・まったく・・ブツブツ・・・・こうか?これでいいのかぉ■ω■.?』


長時間便所で待機させられたその男はブツブツと文句を言いながら王様の言うがままにサングラスをかけた。


王様『おぉーふぉっふぉっ^ω^似合うのぉ』

****『この埋め合わせはなんか頼むぉ■ω■.!?』

王様『ほむほむ^ω^いくらでも埋め合わせるわぃ』

 

 


・・・・・・・・・

 

・・・・・

 

・・

 

 


第一連隊の者たちはやや暗がりの長い廊下を歩いていた。


ジャッ・・ジャッ・・・・ジャッ・・・・
ジャジャッ・・・・ジャッ・・・・


何人もの出場選手は黙って係員に従い道を進んでいる。


ジャッ・・ジャッ・・・・ジャッ・・・・
ジャジャッ・・・・ジャッ・・・・

 

アメル『なんか気持ち悪いね(・w・`;)ここ』

クルス『うむ(゜Д゜)』


その道は2万4千人の観客が見守るリングへと続く選手控え室からの連絡通路。モンスターと戦う前の闘獣士が覚悟を決めて歩いていたその場所は、じんわりと血と何かが混ざった不快な匂いが充満していた。

行く先の出口からは眩い光が入ってきており、その一本道は戦闘前の緊張を一層に高めさせている。


アメル『早く抜けたぃな~この道・・(ーwー`;)』

りん『長く感じるわね^^;』


じめじめと床がぬかるみ、壁も湿気で濡れており天井も低い。
するとクルスは進みながら自らの足にうごめく何かを見つけたのだった。

 

クルス『お・・ムカデだ(゜Д゜)』

 

オムー『うわああああああああああムカデとかやめてえええええ≫ω≪.;!!!』

 

それを聞いたオムーは飛び上がるように道脇に逃げている。


りん『オムーww』

アメル『あはは(・w・´)ノ!!オムさんムカデきらい?』

クルス『オムームカデきらいなんか・・・(゜Д゜)』

オムー『多足類は基本的にだめだぉ=ω=.;』

 


続々とリング周辺に出て行く予選出場者たち。
その流れにのり第一連隊の者たちも、選手入場口に差し掛かっている。

今まで暗がりにいた為、突如現れた昼の太陽は一同の瞳孔を急激に収縮させていた。

 

アメル『まぶし(ノwノ)』

オムー『うわ・・≫ω≪.』

クルス『わくわくするぜ(゜Д゜)』


徐々に光に慣れてくると、360度観客席で覆われている広場にでてきたことが確認できたのだった。

 

りん『・・すごい・・・』

トカマク『中央広場は結構広かったのね』

クルス『すげーなwこれ全席人が埋まったらきもちわりぃなw』

オムー『本大会でてぇぉ=ω=.!!』

 

いまだ本大会が開始されてはいないとはいえ、予選試合を見ようと観客席は徐々に埋まり始めており、中央リングでは係員が選手たちを整列させている。


係員『それでは出場選手の方々ぁ~リング横の受付にお並びくださ~い!対戦相手を決めて頂きま~す!』

トカマク『さぁっ!まずはくじ引きで出場ブロックを決めるの!』

りん『ブロックトーナメントで勝ちあがらないといけないのね』

トカマク『そうよ^^みんな同じブロックにならないといいわね』


整列しながらアメルは一人念仏を唱えている。

 

アメル『クルスくんと同じブロックになりませんようにぃ~人(>w<´)ナンマンダブ』

クルス『ナンマンダブって使い方違う気がするがな(゜Д゜)』

 

 

・・・・・・・・・・・

 


・・・・・・・・

 

・・・

 

一方、エビちゅはhananaに待機室に招き入れているところであった。

 

エビちゅ『・・・・それでここが選手控え室でちゅ。この建物の作りは単純でちゅ。迷うことはないでちょう( ̄ω ̄ )』

hanana『はい^0^ノ』

エビちゅ『ちなみにhananaは予選通過してまちゅのでここでゆっくりしててくだちゃい( ̄ω ̄ )エビちゅは予選試合にいってきまちゅから』

hanana『はひ^0^?』


状況が全く飲み込めていないhananaは空気の漏れた返事を返した。


エビちゅ『それではまたあとででちゅ( ̄ω ̄ )あんまりそこから歩き回っちゃだめでちゅよ?』

 


エビちゅが颯爽と予選会場のリングへの連絡通路に歩き始めると、ぽかんと口を開けたままhananaは目でエビちゅの背中を追う他できないでいる。


hanana『・・・わたし・・予選通過^0^;?なんかよくわからないでし・・・』

 

 



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第弐百八話

2009-07-26 | 本編

 

国内初である対人最強武術大会。
普段はモンスターとの戦いで賑わう特設コロシアムは、今だかつてないイベントへの期待からか異様なまでに盛況であった。
まっすぐに進めない程の人ごみでごった返している。

ファンブルグ南町に位置するその巨大施設にやっと到着したhananaは大きな地図を目の前に広げ、一人挙動不審に辺りを見渡していた。


hanana『う~ん・・キョロ・・□_(-_- 彡 -_-)_□ キョロ・・・』


ボルケノゴーレムを救うため、エビちゅとの約束を破るわけにはいかない。
親にも相談できないhananaは、梅雨から夏に変わりかけた強い日照りを浴びながら地図と睨めっこを続けている。

その背の低さは見事に人ごみを視界の障害物にしており、見えるのは大人の動く腰ベルトだけである。

 

hanana『・・・あっ・・ごめんさい><!』

通行人『・・あっ!ごめんね!お嬢ちゃん!』


思いがけないところにいる子供にぶつかった大人も驚き、幾度となく同じやりとりが繰り返されている。

 

hanana『もう巳の刻になっちゃう><!!どうしよぅ・・』


すると優しげな声が後ろから耳に入ってくるのだった。

 

**『・・地図が逆さまよ^^・・・ほぉら・・こうやってみるの』

 

hananaの小さい頭の両側から手が伸び、間違った見方をしていた地図の向きを直してあげている。


**『・・地図のこの場所が・・あそこの尖った屋根の建物よ^^』


少女と視線を合わすように後ろにしゃがみこみ、地図と建物を照合させるために指で示した。

hananaはうしろにいる優しげな顔をした女性を見ると、そのままその女性の指し示している指先、そして行く先の尖った屋根を順繰りに見ている。


hanana『・・あっ!!あそこなんだ!!ありがとうございますっ!!あの建物の隣のに行きたかったでしっ><!!』

**『そう^^良かったわね。お母さんやお父さんは?』

hanana『あ・・ぇっと・・今日は一人で・・』


一瞬うつむいたhananaは、すぐに明るく向き直っている。


hanana『わたしhananaっていうの!!お姉さん優しい人^0^ノ!!なんていうひとなの!?』

 

話に夢中になっている為か、hananaは片手に持っている大きな地図が地面についている事に気づいていない。

目の高さを合わせ話しているその女性は、通る人が何度もぶつかり破れそうにもなっているhananaの地図を持ち、コンパクトに見れるように畳みながら話し続けた。


りん『私はりんよ^^へぇ~一人なんだ!えらいね~!気をつけてね!』

hanana『はいでしっ^0^ノ!!』


元気のいい挨拶をし、大人の足と足の隙間を縫うように器用に進んでいくhanana。心配そうに少女の姿が見えなくなるまでりんは目で追っている。


りん『あんな小さな子がおつかい^^;・・迷子にならなければいいけど』

 


ドドーーーーーーーーーーン!!!


ドンッ!!ドドーーーーーーーーーーーーーーン!!

 


大会始まりの火薬の合図音がファンブルグ南町全域に響き渡っていた。
コロシアム闘技場に集まっている無数の人達の耳に入ったその爆音は、これからの大きなイベントへの期待から自然と人々の顔に笑みを浮かべさせている。

周囲の騒がしさもより一層強まった中、hananaは目的地らしき入り口を見つけていた。


hanana『あっ!!あそこだ!あそこが入り口だ><!!』

 

石材を何重にも組み合わせ、1800年代当初に作られた闘技場。
人の持つ力とモンスターの力を日夜ぶつけ合い戦わせており、神聖にして国内最大の施設である。

オクタゴンと言われた六角形でできた石畳のリングを中央に、収容人数2万4千人にも上る観客が囲むことになる。

東西南北からの風の吹き抜け道が観客席への連絡通路になっており、夏になり始めた熱くさわやかな日照りは石でできた椅子をこれでもかと熱していた。

施設入り口には長い階段、左右の太く大きい柱の上には石造りのシーサーが入る者を睨みつけ、今にも飛び掛りそうに大きい口と鋭い目で威嚇している。


hanana『・・ひっ^0^;・・・こわい・・・』


屈強で怯むことのないそのシーサーの強い眼光は、子供を慄かせるには十分すぎるほどである。

その門番とも言うべき化け物は覚悟がある者だけを招き入れる為に造られたのかもしれない。子供の鳴き声があちらこちらから聞こえてきている。



巳の刻は当に過ぎている。
覚束ない足取りでやっと入り口階段を上り始めたhanana。
すると目の前に突如知っている顔が現れるのだった。


エビちゅ『遅いでちゅよ( ̄ω ̄ )まったく・・さぁっこっちきなちゃい』

hanana『あぁ~^0^;エビちゅさん!!』




 


第弐百七話

2009-07-05 | 本編




 

王様『・・・で、どこまでいったんじゃーωー?』


大会まであと数日。
梅雨の時期も終わりかけ、大会日には快晴と予想される雲行きを青空が示唆している。王室のベランダとその青空が見える窓からは強い日差しが部屋に入ってきていた。


トカマク『はい、あとは特設コロシアムの設営のみとなっています^^』

王様『こんなワクワク久々じゃぞ^ω^トカマク』

トカマク『そうですね^^』


気持ちのよい日差しを浴びながらトカマクと王様は武術大会の打ち合わせをしていると、門番の衛兵と何某かの話し声が王様とトカマクの耳に入ってきてくるのだった。


王様『おっ^ω^来たようじゃのぉ』

トカマク『来客ですか?』

王様『ほむ^ω^おみゃーも驚くじゃろうて』

衛兵『王様!いらっしゃいました!』

王様『ほむーωー!!通せ!!』

衛兵『ははっ!!』

 

ゆっくりと王室入り口が開かれた。


ギギーーーーーーー

 

トカマク『あ・・・あなたは!!』


王室の扉からゆっくりと表したその男の背は高く、腹や腕には何重にも細かく重なった鋼の鎧の一部がマントの中から見え隠れしている。
その井出達は見るものを敬服させるほどのオーラを放っていた。


トカマクにとっても過去に面識のある偉大な人物。
トカマクはあまりの驚きに鳥肌が立ち、開いた口も塞がっていない。


その人物は王様を暫し見つめた後、謹みの気持ちを表しているかのように堅苦しく姿勢を正し会釈した。

****『お久しぶりです。お元気そうですね。』

王様『おぉー^ω^ふぉっふぉっ久しぶりじゃのぉー!!元気そうじゃ!』


それとは対称的にフランクに挨拶をしている王様は笑みを浮かべ手招いている。

 

****『お蔭様で・・あやつは・・元気でしょうか?』

王様『ここに来ていることを知っておったか^ω^さすがじゃ。』


生唾を飲み込み、驚きのあまり起立してしまった後に座ることもできずにその二人のやりとりを聞き入っているトカマクは、会話に入っていくことができていない。

 

王様『おみゃーたまには会いにいってやらんとーωーぐれるぞあやつ』

****『いえ。戦いの申し子には試練を与えるのみですぉ。』

 

あまりに挨拶の遅いトカマクに王様は促しの目線を送っている。

 

王様『・・・・・ーωー』


それに気づいたトカマクは我に返り、すぐ様直立の姿勢からその人物に向かい挨拶を始めた。


トカマク『・・も・・申し遅れました!!ただいまファンブルグ軍の総指揮をやらさせて頂いております。トカマクと申します。』


深々と礼をするトカマクにその人物は表情を崩す事無く礼で返した。


****『わたしは今は軍兵でも傭兵でも騎士でもない。頭を上げられて下さい。』


いつまでも礼の姿勢を直していないトカマクにその人物は楽にするよう願い出ている。

 

王様『今度トカマク主催で国内武術大会が開催されることになってのぉーωー知っておったか?』

****『噂には聞いておりました。』

王様『そこでちょっと頼みがあってのぉーωー聞いてくれんか?』

****『元は共に戦った戦友です。それにわたしは一国の王の前の市民に過ぎません。』

王様『おみゃー堅くなったのぉーωー;もっとフレンドリーにいこうぞよ』

****『なにぶん・・・あやつを久々に見れることができると・・緊張しているのかもしれません。』

王様『なるほどのぉ^ω^』

****『できる範囲で力になりますぉ。』

 

すると王様は二人だけの内密な話をしようと、トカマクに席を外す事を命じるのだった。

 

王様『トカマクーωーちょっと外してくれんか?』

トカマク『ははっ』

トカマクはいささか慌てるように机に広げられていた資料を手で抱え、すぐに部屋を後にした。

 

ギーーーーーーー  バタンッ

 

トカマクが王室を出たことを確認できた王様はそっとその人物の耳元で話し始めた。

 

王様『お願いというのはじゃな・・・ゴニョゴニョゴニョ・・・ーωー』

****『なんですとっ!!』

 

 

王室の廊下にて警備を続けている衛兵の横にて、息を荒げているトカマク。
急いで部屋を出たトカマクは今にもこぼしそうになるくらいに資料を抱え、視点の定まらない面持ちで立ち止まっている。

 

衛兵『・・・・トカマク様・・・どうされました?あの方は・・?』

トカマク『・・・・・ゴクッ・・・すごい人がきたわ・・』

 


王様の所思、そしてエビちゅの思惑・・・。
幾人もの期待と希望を抱えたファンブルグ国での初となる一大イベントはもう間もない。国家を挙げてのその大会はもはや国民の誰一人知らないものはいない程大きな催しとなっていた。

この先どのような死闘が繰り広げられていくのだろうか。












第弐百六話

2009-07-04 | 本編




ガサガサッ

ガササ・・・・ガサッ・・・・


ゴーレムとhananaを釘付けにさせているその草の音は徐々に洞窟入り口に
近づいてきている。


ガサッ・・・


ガサガサッ・・・・

 

ガササ・・・ガサガサッ・・

 


hanana『・・・こっちに来てる・・・こわぃょぅ・・・』

『グフン・・』

 

怖さからhananaはボルケノゴーレムの腕にしがみついており、元来気の小さいゴーレムも恐怖はあったが、自身の腕に掴まっているhananaに応えようと半身を前に出し構えている。

『・・・ゴング・・・』



すると・・その音を出していた主は、背の高い雑草をのれんのようにかき分け、ひょっこりと洞窟内に顔を出すのだった。

 

エビちゅ『フゥ~( ̄ω ̄ )こんなところにいたんでちゅね・・・さがちまちたよ』


記憶にあるその顔はhananaに感嘆の声を上げさせた。

 

hanana『あぁー^0^ノ!!』

『・・グフ??・・ガガングゲンゴ?』


エビちゅ『ゴーレムなんて大きいペットは家で飼うのは難ちいでちゅからね・・まちて外は雨が続く梅雨どきでちゅ。人里離れたこの山奥の洞窟だとよんできたら的中しまちたね( ̄ω ̄ )』

 

hanana『ボルケノさん!この人はあの時助けてくれた人覚えてる^0^?』

『ガーグウンフ!グウンフ!!!』


思い出したゴーレムは大きく首を振りあからさまに緊張の解けた顔をして喜んだ。

 

hanana『この前はありがとうございました・・死んじゃうとこでしたでし・・』

エビちゅ『いいんでちゅよ( ̄ω ̄ )エビちゅもいいもの見させて頂きまちた』


二人は会話を模索するように一旦の空白を保つと、申し合わせたかのように声を揃えて話し始めるのだった。

 

hanana『このボルケノさんを助けてあげ・・・><!!』

エビちゅ『なぜエビちゅが探しちていたか・・・( ̄ω ̄ )』

 

二人の懇願する思いは引けを取らない程強い。
hananaはボルケノゴーレムを助ける思いを、そしてエビちゅには少女に眠る力の開花を。


hanana『・・あっ・・・ぇっと・・・先にどうぞ^0^;』

エビちゅ『いいんでちゅよ( ̄ω ̄ )そちらからどうぞでちゅ』


同時に言葉を発してしまい、お互い譲り合っている小さな間。
その沈黙の譲り合いを謹受したhananaは話し出した。


hanana『ぁの・・・このゴーレムさん・・住むとこも・・食べるものもないんです!!どうか助けてあげてください><!!』

エビちゅ『いいでちょう( ̄ω ̄ )そのゴーレムはエビちゅが責任を持って育てまちょう』


そう聞いた途端、hananaの塞ぎこんでいた目は輝き、エビちゅを一心に見つめだした。


hanana『ほっほんとですかっ!?やったぁ~^0^ノ!!きゃはははっやったねボルケノさん!』

『グウング!!ガンフグゴッゴ!』


しかし即座に承諾したエビちゅは、ジャンプして喜ぶhananaと地響きを伴う足踏みをしているゴーレムを見つめながら条件を差し出すのだった。 

 

エビちゅ『条件がありまちゅよ( ̄ω ̄ )人生ただでものが頼めると思ったら大間違いでちゅ』

hanana『・・・ぁは・・^0^;はい』


両手を繋いでいるゴーレムとhananaは、ひきつった顔で条件の内容を聞こうとエビちゅへ顔を向けた。


エビちゅ『なぁーに( ̄ω ̄ )簡単なことでちゅよ』


エビちゅはポケットから一枚の折りたたまれたチラシを取り出し、丁寧に広げている。


そのチラシは徐々に目の前で広げられていく。

hanana『ほよ^0^;?』

『・・グゲ?』


hananaには裏面らしき白色と表面らしき派手な青や赤の色使いが目に入ってきていた。

 

エビちゅ『これでちゅ( ̄ω ̄ )』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ファンブルグ国  第一回  トカマク主催 国内最強武術大会



日時:7月▲日 巳の刻

場所:ファンブルグ南町 特設コロシアム(収容人数2万4千人)

参加:ファンブルグ国 軍兵(一般参加 可能)

賞金:
優勝 200mG
準優勝 50mG
第三位 10mG

ルール
1:気絶、もしくはKO決着。
2:相手が戦意喪失した場合やタップ(ギブアップ)した場合も決着がつく。
3:ペット一匹加勢可能。
4:武器、魔法に制限なし。
5:薬などの持参は規定量まで許可。
6:六角形のオクタゴンリングの壇上から出た場合は失格。


最強の猛者は一体誰なのか!!
一騎打ち戦闘ナンバーワンを決める大会開催決定!!
来たれ!!勇者たち!!己の真価を問え!!!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


hananaの前に広げられている一枚のチラシ。

 

エビちゅ『これに参加さえすればいいでちゅ( ̄ω ̄ )』

hanana『・・・・ほょ^0^;?』

エビちゅ『一回戦で負けようが勝とうが構いまちぇん( ̄ω ̄ )』

 

小さいながらも戦闘という意味はわかっているhananaであったが、受けざるを得ないその状況もわかっていた。


hanana『・・・・ぅ~ん・・・・』

『・・・・ゴンフ・・・』


hanana『参加すればいいだけなの・・??』

エビちゅ『そうでちゅ( ̄ω ̄ )簡単なことでちょう』

 

申し訳ない表情でゴーレムに見つめられているhananaは、うつむいたままエビちゅを上目遣いで見つつ、ワラをもすがる気持ちで小さく頷いた。


hanana『・・・ボルケノさんが助かるなら・・』

エビちゅ『決まりでちゅね( ̄ω ̄ )』

『・・・グフング・・・・』


エビちゅ『ではエビちゅが責任を持ってこの子を養ってあげまちょう( ̄ω ̄ )』

hanana『よろしくお願いします><!!』

 

エビちゅは視線を高くボルケノゴーレムの顔位置まで移した。


エビちゅ『・・・あなたにはエビちゅのマネージャーになってもらいまちゅよ( ̄ω ̄ )』

『グウング!!』

 

これから先の大会の不安。
ボルケノゴーレムの身寄りができたことによる安堵感。

入り混じった笑顔とも呼べない笑顔で二人のやりとりを聞いているhananaであったが切り替えも早く、すぐさまいつもの笑顔に戻り、自慢げにボルケノゴーレムが字を書けるようになったことを語っている。

 

hanana『ボルケノさん文字書けるよ^0^ノ』

エビちゅ『それは期待大でちゅね( ̄ω ̄ )』

hanana『カタカナも書けるんだよ^0^ノ』

エビちゅ『そうでちゅかそうでちゅか( ̄ω ̄ )これからよろしくでちゅよ』

『ゴンゴゴンゴ!!グウンフ!!』


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ファンブルグペット収容所。
エビちゅはボルケノゴーレムの隣に立ち、一連の経緯を王様に話し終えた。


エビちゅ『・・・とまぁこんな具合でちゅ( ̄ω ̄ )』

王様『ふぉっふぉっ^ω^なるほどのぉ・・そのゴーレムがそやつか』




王様はエビちゅの隣に行儀よく立つゴーレムを何度も頷きながら見ていると、自身の話をされていることがわかっているゴーレムは力こぶを見せるようにポーズを取りながらしゃべった。



マネージャー『グッフッ!!ゴワンゴ!!ガッグガゴ!』

王様『しかしその少女・・たいそうな優しい子じゃなぁ^ω^』

エビちゅ『できればエビちゅと第一戦目にお願いしまちゅ( ̄ω ̄ )』

王様『ほむーωー何か考えがあるのだな・・よいだろう』

 

アメル『ほ~(・w・´)その少女も参戦なんだ・・』

 

エビちゅとその少女、そしてボルケノゴーレムとの馴れ初め話を横から聞いていたアメルは、もらった猫とじゃれ合いながら片耳でそれとなしに聞いている。


王様『・・・久しぶりじゃのぉ・・しかし・・ーωー』

アメル『なにがですか(・w・´)?』

王様『大会なんぞ初めてじゃからのぉ^ω^・・・なんかこう・・わくわくするんじゃ』

アメル『わたしは出場するからドキドキですよ(ーwー´;)いいなぁ王様は』

王様『頑張れ頑張れ^ω^若いの』

 

訓練所からの主人の帰りを待つペットたちの雄叫びが三人の会話に割り込んできている。ペット収容所での3人はそれぞれの思いを胸に、大会開催日を待つことになったのだった。