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眩しい太陽・・美しい月・・そして世の中所詮金でちゅ

伝説の獅子たちが活躍する笑い泣き感動ありのアクションストーリー (c)2008hiyoko.現在原画製作中!

第弐百参拾六話

2010-12-19 | 本編


hanana music
http://www.youtube.com/watch?v=GCs0Nq_Aa2o






オムー『はじまるぞ…=ω=.;』

アメル『・・・ゴク・・(・w・´;)』

ファラン『はて、どれほどの力があるかーω■』

クルス『楽しみだな(゜Д゜)』

 


3万の観客に囲まれたhananaたちは既に威風堂々と構えに入っている。もうそこに迷いは微塵も感じられない。互いの伝説の獅子としてのプライドを懸けた戦いである。

 

今までにない動きをみせている少女。それは何十年と修行を積み続けた僧侶のように、背筋をピンと伸ばし、寸分狂いもない詠唱とその手捌き。hananaもエビちゅと同じく、魔方陣を自らの手で空中に作り上げていく。

 

hanana『リンダ・・・ダルタ・・・リカブロ・・』

 

シューーーーーーーーン・・・

ピピピピッ

 

エビちゅの攻撃詠唱を表す真っ赤な魔法陣とは違い、その魔方陣は青く輝き、頭上に幾つも浮かび上がっている。

 

変装王様『おっほっ(■ω■.)!陣を描いておる!』

トカマク『間違いない。クレリック、回復魔術師だわ。』

りん『あの子の魔方陣・・すごく綺麗・・・』

 

と同時。石畳のリングを踏みしめながらエビちゅへ猛突進するボルケノゴーレム。その地響きは会場だけではない、南町一帯まで響いている。獲物を慄かせるには十分すぎる眼光だ。

 


ボルケノ『グワンゴォォォォォ!!!!』

 

ズシーン!ズシーン!ズシーン!!

 

顎をあげた表情を崩さぬまま、エビちゅは両手を挙げ攻撃詠唱を放つ。


エビちゅ『レグレッファイアッ\( ̄◇ ̄ )/!!』

 

ドゥルドゥドゥルドゥル!!!

 

エビちゅがいるやや後方空中に浮かぶ無数の魔法陣から形成され、一瞬にして頭上に放たれた魔法火炎。360度敷き詰められている観客席の頭を舐めるように大きな弧を描き、hananaへ向かっている。

 


ギュイーーン ギュギュギュイーーーーーーーン

 


エビちゅの炎の進む勢いにより、りん達の髪も巻き上げられる。

 

 

オムー『ぐぉっ≫ω≪.!』

クルス『危ねっ(゜Д゜;)』

アメル『うぁっ(>w<´;)』

 

 

リングから発されたのは気迫あるゴーレムの声。会場の観客席に決して飲み込まれない強い気組みある掛け声は、hananaの士気をもあげる役目だ。

 


ボルケノ『グフーーーングッ!!!!』

 

エビちゅの体を覆うほどの大きな手が握り締められたボルケノの拳は大きい。一挙にエビちゅへ距離を詰めたボルケノと後ろを走るhanana。上方からエビちゅへ押し潰すように向けられたボルケノのパンチがエビちゅへ向かうと、


ボルケノ『ファガァァァァァーーーッ!!!!』

 


ドゴーーーーーーーーーーーーン!!!

 

煙と共に石畳のリングを粉砕し辺りに破片を撒き散らせた。

 

アナウンス『ボルケノ選手の攻撃ぃ~!!!』

 

観客は今までとは違う攻防に興奮冷めやらず、歓声の声が止まることはない。


『わぁぁぁぁああああぁぁぁ』

『ああああああああああぁぁぁ』

 

 

 

エビちゅ諸共粉砕するはずだったボルケノの拳は空を斬ったようだ。ボルケノ自身にもその感触はわかっていた。

 

ボルケノ『ゴフッ!?』


hanana『ボルケノさん!!右だ!!!』

 

ボルケノの右腕の横にかわしたエビちゅがいる。

 

エビちゅ『フンッ( ̄ω ̄ )くらいなちゃい』

 


ギュギュギュギュイーーーーーーーーーーン!!!

 

すると観客席を大きく迂回した無数の炎が既にhananaを捉えていた。

 

ドゴーーン!!ドゴドゴドゴドゴーーーーーーーーーン!!!!

 

リング一帯に黒煙が大きく出来上がる。


アナウンス『おぉっとぉ~!!!エビちゅ選手の火炎があたったぁ~!!』

 

 

 

オムー『はぇぇ=ω=.;』

アメル『やられた(・w・´;)!?』

りん『焦げ臭いわね・・ダメージがあったのかも・・』

 


闘技場を十字に切る通路からは吹き抜けとなる風がリングを吹き込んでくる。作られた黒煙の煙はすぐに掻き消され、魔法火炎の直撃した様子が見えてきた。

 

そこには、丸くなり、hananaから魔法攻撃から守るボルケノの姿があるのだった。怒涛のように会場を渦巻く歓声は尚大きくなる。

 

アナウンス『またもボルケノが身代わりになったぁ~!!』

『おおおおおおおおおおおおぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁああああああぁぁぁ』

 

またもその体は致命傷を負っていたが、作られた青く輝く魔方陣のひとつを操りすぐさま詠唱をするhanana。

 

hanana『キュアエクストリーーーーームッ><!!!』

 

今までに聴いたことのない心地のよい高鳴りと共に、青い濃霧を走らせ、みるみるうちにボルケノの傷が癒えていく。

 

ボルケノ『ゴフ・・・グフンガ・・ゴワ・・ゴワゴワ!!!!』

hanana『このまま攻撃だ!ボルケノさん!!』

ボルケノ『ガッフッ!!!』


避けて距離を取るエビちゅを追うようにボルケノはジャンプをした。その両手は鉄槌攻撃の振りかぶりを空中にてしている。


ボルケノ『グォーーーーーーーーーッフッ!!!』


突如エビちゅの真上に太陽の光を大きく遮り現れたボルケノの姿に、余りの防御から攻撃への展開の速さにエビちゅは驚きの顔を隠せない。

 

エビちゅ『( ̄ω ̄ ;)!?』

 

バゴーーーーーーーーーン!!!!

 

hanana『やったっ!!』


しかしそこにあるのはエビちゅの残像。ボルケノの目は必死にエビちゅの姿を追っている。


ボルケノ『ゲグングッ!!』

hanana『!?』

 

シュパッ


一瞬、hananaの横に乾く弾いた音が僅かに聞こえた。

 

hanana『ぇ?』

 

それはエビちゅの素早いステップによる地面との接地音。時既に遅し。エビちゅはhananaへ間近へ接近しているのだった。

 


エビちゅ『チェストォッ( ̄◇ ̄ )!!』


決して長いとはいえないエビちゅの突き上げの蹴りがhananaの顎を捉える。

 

ガコッ!!

 

hanana『ぐぁっ><!!』

 

その状況に気づいたボルケノも後ろを振り向き、大きな拳を振り上げ、荒々しい声でエビちゅへ振り下ろした。

 

ボルケノ『グアガァァァァ!!!!』

 

エビちゅ『く( ̄ー ̄;)』


皮一枚でエビちゅの体の数倍の大きさをもつ拳を避けるエビちゅ。

しかし慣性による首から下げられていた装飾品は、いまだ元いた位置に残り、ボルケノの制空権に触れていた。


ブンッ!!


ピッ!!

 

粉砕された地面と共に、エビちゅの首輪が地面一帯に散らばる音を残している。

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!


バラッ パラパラパラパラ・・・・

コロコロコロコロ・・・・

 

尻餅を付きやっとの思いで避けたエビちゅは首跳ね返り起きにて体勢を立て直した。

 

ドテンッ!

シュパッタタッ!!

 

エビちゅ『まだまだでちゅ( ̄◇ ̄ ;)ノ!!』

 

 


次なるエビちゅの火炎が四方八方から飛んできたが、ボルケノは手の平、足、全身にてhananaから炎を防いでいる。

 

ボルケノ『グンゴォーーーーーーーーーーー!!!!』

 

ギュイーーーーーーーーーーン!!


ドゴーーーーーーーーーーン!!


アナウンス『ボルケノ選手!足で防いだぁ~!!』

 

ギュギュギュイイイイーーーーーーーーン!!


ドゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーン


アナウンス『腕!足!胴体!顔面!!全て防いでいるぅ~!!』


hananaを守る為にダメージを負い続けるボルケノと自身への回復魔法の手をhananaは休めていない。


hanana『・・・キュアエクストリーーーーーーーーーームッ><!!』

 


瞬時に回復させる今までにない術に会場は我を忘れて歓声を送っている。hananaたちはエビちゅの攻撃力により押されていたが、時間と共にエビちゅは距離を縮められ、ボルケノの拳に捉えられてきていた。

 

hanana『そのままパンチだ><!!ボルケノさん!』


ボルケノ『ガングォォォォ!!!』


バコーーーーーーーーーーーーン

 

ボルケノの豪腕の攻撃に、石畳のオクタゴンリングは徐々に原形をなくさせており、かろうじて避けるエビちゅの息は荒い。

 

エビちゅ『とっ・・・はぁ・・はぁ・・( ̄◇ ̄;)』

 


クルス『つぇぇじゃねぇかあいつら(゜Д゜)』

りん『すごいコンビネーションね!』

アメル『エビちゅと互角(・w・´)!?』

オムー『いや、むしろ押してるな=ω=.;』

変装王様『やるのぉ(■ω■.)』

 

アナウンス『先程の少女が!少女とゴーレムがエビちゅ選手を圧倒している~!!!!』

『おおおおおおおおおおおおぉぉぉ』

『わぁぁぁぁぁああああああぁぁぁ』

 

hanana『・・はぁ・・はぁ・・ボルケノさん・・あと一息だよ!』

ボルケノ『・・グフゥ・・・グフゥ・・・』

 

 


王様『世の道しるべとしてあの少女に受け継がれたのじゃろう。天は清き心を見極めたりーωー』

母『すごぃわ・・すごすぎる・・』

父『hanaが、伝説の獅子なんて・・これ夢じゃないよな?』

湖乃『お姉ちゃんかっくいぃ~(^0,^♯)!!!』

 


ファラン『エビちゅめーω■さすがじゃ。覚醒させたか・・よく見定めた・・あの少女こそ第六の伝説の獅子クレリックの使い手じゃな』

 

 

 

エビちゅ『はぁ・・ふぅ・・やりまちゅね・・( ̄◇ ̄;)』

 

息を整えつつ、hananaたちへ話しかけるエビちゅにhananaは意気揚々と答えている。

 

hanana『ボルケノさんをいじめる人は許さないでしっ!!!』

 

 

エビちゅ『エビちゅのシナリオでは覚醒させることだけでちた( ̄ω ̄;)決して・・決してエビちゅが負けるなんてシナリオは存在しまちぇん( ̄◇ ̄;)!!!。』

 

hanana『わたしは・・ボルケノさんを守る!!!』

ボルケノ『グフッ!!』

 


エビちゅ『しょうがないでちゅ( ̄ω ̄;)禁じ手を使いまちゅか・・・。』

 


エビちゅは徐に袖中に隠されていた数珠を取り出し、両手にぶら下げ詠唱を唱え始めた。

 

エビちゅ『フンダラバンダビオ~~\( ̄ー ̄ )/~ブヂダラバダラアビオ~エガビガバラダビオ~デダラバダランバビバラバビオ~・・・・』

 

エビちゅ『!?』

ボルケノ『!?』

 

アナウンス『両者体勢を立て直しているぅ~!!おぉ~っと~!エビちゅ選手またも詠唱を続けたぁ~!!』

 


熱狂している観客席に紛れたファランと偽名を使っている王様は、その何かに気づくのだった。

 

ファラン『ん!?・・・・おぃ・・うそじゃろ・・・ーω■;?』

 

一方、王様に変装を依頼された男もその何かに気づき始めていた。

 


変装王様『むぁ(■ω■.;)!?・・な・・なにをしておる!!あやつ!!』

 


前の観客を押しのけ、リングにいるエビちゅへ見入っている変装王様。その狼狽えにトカマクも動揺している。

 

トカマク『ど、どうされたんですか!?王様!?』

 

エビちゅ『リガンダウルデルアバラビオ~・・・覚醒ができれさえすれば国の為にもなるでちょう・・ただ・・エビちゅのプライドは誰にも踏み躙れまちぇん・・さっさと降参すれば良かったんでちゅ・・・~\( ̄ー ̄ )/~』

hanana『!?』

ボルケノ『!?』

 

 

他の者達も二人の様子の変わりぶりが解せていない。


クルス『どうした(゜Д゜)?』

オムー『なんだ=ω=.?』

アメル『(・w・´)?』

りん『まさか・・あの呪文は・・・』

 

エビちゅ『ドテンドアバラビオ~・・思い知るがいいでちゅ・・・・~\( ̄ー ̄ )/~』








第弐百参拾五話

2010-11-29 | 本編












優雅に積み重なる雲々が佇む青い空。
人間ではない。龍でもない。その何某かの目に映る物。それは巨大な山。

空中にある山脈ともいうべきその峰は行く手を阻むように、計り知れない速さで近づいてくる。風を切ることによる自身の奏でる低い音はいくつもの高い雲らにより、まるで山彦を轟かせるように何重にも響いていた。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

その音が、熱い太陽光を反射させているたくさんの巨大な雲の中にて共鳴していく。空全体を覆う雪山のような入道雲に躊躇いもなく衝突する。

 

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーン

 


次から次へと雲が目の前に押し寄せて来ていたが、避けることもなく全てに衝突していく。雲の飛沫を残しながら、その動きは幾度なく繰り返され、緩まることはない。

 


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

音速を超えたとき、物体は衝撃波を発する。凄まじい速度で雲に減り込んだそれは、本体を上回る大きな穴を作っている。

 


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 


凄まじい速さで探し求めていた何かを見つけることができたのか、目的地を見据えたその突進は大気を揺さぶり、その衝撃からは疾進の迷いは感じ取れない。またひとつ、またひとつと雲山に大きな穴を開けていく。

 

 

ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ドッゴーーーーーーーーーーーーン

 

 


そして突如、雲の残骸を尻尾に速度を緩めた。今まで空気を劈くように突き進んでいたのが嘘のように、まるで一面の雲と同化するかのように、暖かい日差しを浴びながらゆっくりと優雅に浮遊している。


盛り上がるようにできた入道雲に暫くゆっくりと入ったそれは、やっと顔を出し、全身を出し、尚ゆっくりと進み続ける。表情があるようでないその顔は穏やかだ。

 

そして、僅かに浮き上がるように顔を上へ向けたかと思えば、それらは次なる超加速の為の引き金でしかなかった。

やや上昇し勢いを付けたそれの次なる方向は真下。急転直下という言葉しかあてはまらない程に、上へ向けられた顔は間逆の地上に向かい、ある一点を目指し、再び超高速にて猛突進し始めるのだった。

 

 

ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 


真下にある分厚い雲の絨毯を一瞬にしてかき分け、視界にはその先の大きな大陸を覗かせていた。それは大きく二分されたエステンブルグ国とファンブルグ国。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーー

 


瞬く間に深緑の森に囲まれたファンブルグ国上空が見えてくる。

 

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

その頃、闘技場には尚も歓声が鳴り止むことなくリングへ注がれていた。砂ほこりで汚れ、泣き腫れたhananaの頬に涙の通り道が作られている。気持ちのいい香りをかぐように目を瞑ったまま空を見上げているhanana。

周囲の者達はエビちゅやhananaに目が向けられている中、りんはいまだ上空を見ている。

 


りん『・・きた・・・』

オムー『=ω=.!?』

 

オムーはりんの視線を習うように見上げてみるも、目新しいものは何一つ目に入ってこないのだった。

 

ゴゴゴーーーーーーーーーーーー

 

急降下しているそれの視界には、既にファンブルグの都市が目に入ってきている。

 

その視界は徐々にその一点へ。

 

 

 

ゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

視界は都市から城下町へ。

 

 

ゴゴーーーーーーーーーーーーー

 


南町全体を見渡しせる高度へ。

 


ゴゴーーーーーーーーーー

 

 


闘技場へ。

 


ゴゴーーーーーーーーーーー

 

 

その目的地は他でもない。
リングにいた少女、hananaの元へ。

 

 

 

ドドーーーーーーーーーーン!!!!

 


姿は見えども、着地の爆風だけは辺りに圧力を与え、周囲の観客にその衝撃が伝わっている。

 


実況『おぉっと~!!何が起きたぁ~!!!』


辺りの土砂、地面に転がる全ての物を闘技場外へ吹き飛ばすように風が巻き起こった。


ゴオォーーーーーーーーー


アナウンス『爆発だ!!これはエビちゅ選手の攻撃かぁ~!!』


今まであった歓声は消え、張詰めた空気から一挙に緊張が高まり、ざわめきが一切やんでいる。目を瞑っているhananaの耳には、遠く離れた小鳥のさえずり、馬車の行き交う音、木々の葉のかすれる音が鮮明に聞こえてきていた。


オムー『これは・・=ω=.?』

クルス『なんだ(゜Д゜)?』

 

 

 

hanana(体が・・軽い・・・・)

hananaは心地よい光に包まれ、
まるで水中から辺りを見回しているかのように周りを傍観していた。驚き自身を注視している観衆。第一連隊の者達。対峙して詠唱を続けているエビちゅ。そして意味不明の言葉がhananaの頭に強引に入り込んでいくのだった。

 

zpoiud azauu 
owwuuu  ryry    ryry ukll

 


hanana(・・・これはなんでしか・・・)

 

 

次々とhananaの頭に数千年前の言語が敷き詰められていく。

 


kpppzzz   koad   ki   pwev   pawei  apb         ia
  g   oaiudo    dt       tbai  ckjoi  dasoqqz

 


耳鳴りと共に頭へ強引に放り込まれる感覚がhananaを襲った。

 


hanana(・・・ぅぁ・・・ぁ・・・頭が・・)

 

 z poiu        oi zpo    iufak   js  aso
papa rouach  naothing   kualelele  i

 

 

神々しいまでの光が辺りを包み込み、360度全域にその圧と共に闘技場の吹き抜けを主に強い風が流れている。

 

ビュオーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

トカマク『う・・く・・これはなに!?』

変装男『なんじゃ(■ω■.;)何が起きた!?』

クルス『・・・・エビちゅの魔法か(゜Д゜;)?』

りん『これは違うわ』

アメル『ほわわわわ(>w<´)!!』

オムー『なんだお(≫ω≪.)眩しいぉ!』

 


りん達と離れた観客席にいるhananaの家族やファランたちも目の当りにし、暫し言葉を失っていた。

 

父『・・これは・・。』

母『・・・・。』

湖乃『まぶし(>0<♯)!!』

ファラン『・・・・これか・・・これなのか・・ーω■;』

 

神々しいまでの光の正体は空気中に舞う粒子。空一杯に、闘技場一杯にも浮かぶそれは人々の目の前を浮遊し、観客席を、リングを、闘技場を優しく包んでいた。

 

アナウンス『いったい・・何が起きてるいるのでしょうか!!!』

 

いい様にない風を伴侶に輝きを放つ球体を纏い僅かに宙に浮かぶhanana。何が起きているのなか解せない観客は何度も辺りを見渡している。

 

変装男『これは・・まさか・・ダイヤモンド・・・ダストか(■Д■.;≡;■д■)』

りん『はい・・その様です・・。』

アメル『ダイアモンドダスト(・w・´)??』


ファラン『この霧・・・旧伝詩文書にあった通りじゃ・・ーω■;』

母『・・hanaちゃん・・。』

湖乃『キラキラきれい~(^0,^*)!!』


エビちゅ『・・・予想以上でちゅね・・・この力・・( ̄ー ̄ )』

 

闘技場の吹き抜けとなる直線階段から強い巻き戻しの風がhananaの球体に纏わりつき、するどい風はhananの周りを縦横無尽に動く。

 

ギューーーーーーゴゴーーーーー


ギュギュギューーーーーゴゴゴーーーーーーー


hananaミュージック


小さな体を覆う光の風の中。広げた腕を取り巻く何重にも巻きつく輝く霧。hananaの涙跡の残るあどけない顔は凛々しく引き締まっている。

 


ファラン『天空より龍音を奏でし一筋の光。いつくしみ深き 友なる主。罪とが愁いを 取り去りたもうーω■;』

 


大きな悲しみは少女に変化を与え、言い知れぬオーラを放っていた。そしてその同種同類の匂いは、少しずつ獅子たちへ伝わっていく。

 


オムー『・・おいおい・・ほんとかぉ=ω=.;』

 


こころの歎きを包まず述べて、
などかは下さぬ、負える重荷を。

いつくしみ深き 友なる主は、
われらの弱きを 知りて怜れむ。

 


りん『あの子が・・・。』

クルス『あのガキが・・(゜Д゜;)』

 

悩み悲しみに沈めるときも、
祈りにこたえて 慰めたまわん。

いつくしみ深き 友なる主は、
かわらぬ愛もて導きたもう。

 

 

変装男『第六の・・・(■ω■.;)』

 


世の友われらを 弃て去るときも、
祈りにこたえて 労りたまわん。

天光の眩い輝きと共に現れ。
天より舞い降りる全知全能の神。
ファンブルグ国 否 世界を救わん。

 

 

ファラン『伝説の・・・ーω■;』

アメル『獅子(・w・´;)!?』

 


突如hananaは息絶えているボルケノゴーレムへ手の平を翳し、

 

hanana『・・リガーロ・・・。』

 

一言呟けば、瞬く間に周囲の空気中からhananaの手へ風音と共に何かが集約され、


サーーーーーーー!!!!

 

青白い濃霧がボルケノを包み込む。

グオゴゴーーーーーーーーーーーーー!!

 


灰色の生気のないボルケノの体がみるみるうちに褐色の元あった肌に変わっていく。砕けた体は戻り、焦げた体も治癒され、呼吸から大きな肩が動き始め、


ボルケノ『・・・・グ・・・』

 

ボルケノゴーレムのつま先や手足の指が自身の生を確かめるようにビクビクと動き出し、ゆっくりと目を開けるのだった。

 

ボルケノ『・・・・グ・・ゴフ?』

 

未だかつてないその技に3万の観客は驚喜し、雪崩のような歓声がリングを囲む。

 

アナウンス『し・・信じられないことが起きたぁ~!!!!』

『わぁぁぁぁああああああああぁあぁ』

『ああああああぁぁぁぁぁぁあああぁぁ』

 


トカマク『・・すごぃ・・・』

父『・・・生き返った・・』

母『・・あの子が・・あの子が・・本当に・・・天才回復魔術師・・・。』

湖乃『うわぁ~(^0,^*)ノ!お姉ちゃんかっくぃ~!!』

 


数千年前より受け継がれていく聖なる力が宿った少女。無意識な手腕の構え、さりげない足の配置。自然に任せた呼吸。見るともなく見渡す目付け。古から継がれる回復魔術の士術。体の中に、心の中に眠り続け、支えているその本能は天空より光臨した。

 

クルス『すげぇな・・生き返らせやがったぞ・・あのガキ・・(゜Д゜;)』

オムー『あれか・・あれが伝説のリバイブっていう回復魔術か=ω=.;』

アメル『ほぇぇぇ(・w・´;ノ)ノ』

りん『あの言葉・・・紀元前の言語ね・・』


トカマク『生き返っただけじゃないわ・・完全回復してる』

変装男『こりゃたまげた(■Д■.;)』

 

前髪を風に漂わせながらゆっくりと顔をエビちゅへ向けるhanana。

 

hanana『わたしの前に死はなし。そして、血はなしなのでし!ボルケノさん!一緒に戦おう!!』


仁王立ちになったボルケノゴーレムは仰け反り、大きな拳を思い切り自らの胸へ何度も叩き、咆哮した。


ボルケノ『グワンゴォォォォォオオオォォォ~~~!!!!!!!!!!!』

ドンドンドンドン!!!!!

 

予想だにしないその少女らの迫力により一層観客のボルテージは上がっている。


アナウンス『言葉にならない!!驚くべき戦いだぁ~!!!!』

『おおおおおおおおおぉぉぉぉ』

『わぁぁぁあああああああああぁぁ』


空中にいくつもの魔方陣を作っていたエビちゅも準備はできていた。ファイティングポーズをとり臨戦態勢に入ったエビちゅは指だけを曲げ、挑発するように手招いている。

 

エビちゅ『いいでちょう・・・きなちゃい・・洗礼をあげまちょう・・・クイクイ щ( ̄ー ̄ )』

 


解法されたhananaの真の力が今放たれる。

 

hanana『うあああああああああ!!!!』

ボルケノ『グフンゴォォォォォォォォ!!!!!』

 

 


第弐百参拾四話

2010-10-12 | 本編









体の各所から煙を出し、震えながら手をいっぱいに広げ、仁王立ちにてhananaを守っていた。


プシュ~~・・・・


・・シュシュ~

 


ボルケノゴーレムの赤黒く岩のかたまりとして強固な鎧のような肌。しかし今は、黒ずみ崩れ、爛れている。

hanana『・・ぇ・・ボルケノさん・・』


倒れ起き上がることにできないhananaの目には、太陽光が邪魔した真っ黒な陰影をもつボルケノの姿が見える。

 

ボルケノ『・・・・グ・・グギ・・グギギギ・・・』

 


しかしその姿は、しっかりとhananaには見えていた。歯を食いしばり満身創痍のその体は、今まで魔物にも、そして人間にさえも、全てに怯えてきた弱い姿を払拭させていた。今先程まで丸まり慄いていたゴーレムの勇猛果敢な姿から、溢れんばかりの喝采が一挙にリングを包み込む。

 

実況『ゴーレムが少女を防いだぁ~!!!』

『わぁぁぁああああああぁぁぁ』

『ああああああああああぁぁぁぁ』

 


種族ゴーレム。その元来の生き方は、自らを壁に主を守ることに命を掛け、自らの生涯を終えていく。宿命とも言うべきその生き様は、hananaという大切な少女の危機を救うべく、本性が呼び出されたのだった。

 


トカマク『主を守ろうとしている・・。』

りん『ですが・・もう瀕死です・・』

 


ボロボロになったhananaもその姿に驚き、半身を起こしながら手を伸ばし、ボルケノを呼んだ。

 


hanana『ボルケノさん・・・』


ボルケノの焼け焦げた体からたつ煙も太陽光を薄く遮断し、ちらちらとhananaの顔に陰影が映る。ガラ声のボルケノの声が、歓声の中、微かに耳に入ってきた。

 

 

ボルケノ『・・グ・・ガング(大切な人)・・・』

 

体力もなくなりつつあるボルケノの体は直立することがやっとだ。全身を震わせながら尚も体を仰け反らせ、歯を食いしばりながら喋っている。

 

ボルケノ『・・フ・・フグ(ぼ・・ぼく)・・グング(守る)・・・』


ボルケノ語が理解できるhananaの目。
かすれた空と、原形を留めていない体を見せているボルケノの影が映り込み、その目にはより一層の涙が溜まっている。

 


エビちゅ『・・・フ( ̄ω ̄ )おもしろいでちゅね!!なかなか楽しませてくれまちゅ!!』

 


エビちゅは歩幅を広く取り、魔法陣を空中に作るかのように腕で後円を、前円を描いている。ゆったりと纏われた魔法服は腕輪などの装飾品と共に激しく振り回され、腕に先導されたそれらは風を切り、


ババッバババババッ!!


攻撃魔法詠唱の構えを再び作った。

 

エビちゅ『二人揃ってちになちゃい( ̄◇ ̄ )!』

 

火炎詠唱の構えから、前後に作られた手の平に浮かぶ球体は上空へ勢いよく舞っていく。

 

ギーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


ギギギーーーーーーーーーーーーン

 

hanana『エビちゅさんもうやめて><!!ボルケノさん死んじゃう!!』

 

青空を真っ赤に燃やし、再び無情なる炎がリングへ落下する。


オムー『ちくしょう!見てらんねーお≫ω≪.;!!』

りん『・・・く・・』

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

実況『またも直撃ぃ~!!!』

『わぁぁぁあああああぁぁ』

『ああああああああぁぁぁ』

 


大きな衝撃を伴ったファイアーボールはボルケノゴーレムの体を捉え、胸に減り込み、その穴からは火花が吹き出ている。


ジュゴゴゴゴゴゴゴゴゴ~!!!
バチバチッ!バチバチバチッ!!!


ボルケノ『・グ・・・グギギ・・ギギギ・・・・』

hanana『ボルケノさん><!!』

 

クルス『全うしたな(゜Д゜)』

アメル『かわいそう(>w<`)』

変装王様『・・・むむむ(■ω■.;)』

 

攻撃を受けきり、身が続く限り主を守ったゴーレムは微動だにしない。

 

プシュ~・・・

シュシュ~・・・・・

 

ボルケノ『・・・・・グ・・・・・ググ・・・。』

エビちゅ『ほぉ( ̄ω ̄ )受けきりまちたね・・』

 


精根尽き果てたボルケノの体は灰色に、尚も仁王立ちの体を続けているも、とうとう自らの重い体を支えきれなくなり、前のめりに倒れてしまう。

 

ズシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 


実況『戦闘ペットが倒れたぁ~!!!』

『わぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ』

『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』

 

ただの盛り上がりを、激しさを求めているだけの観客達にとり、hananaの感情を推し測る事さえできるはずもない。

hananaは倒れたボルケノにすぐに駆け寄り、手の平をかざした。


hanana『ボルケノさん><!!!』


青白い光を放ちながら少女の手からは何某かが放出されている。


変装王様『・・あれはなんじゃ(■ω■.;)?』

りん『回復魔法??』

クルス『いや、あのガキ・・詠唱はしていないぞ(゜Д゜)』

オムー『詠唱もしていないのになんであんなエネルギーが出てるんだぉ=ω=.;』



同じく、りん達とやや離れた位置で観戦しているhananaの家族とファランも目の当りにしていた。


湖乃『パパなにあれなにあれ!』

母『あれは・・』

父『なんだあれは・・』



ファラン『詠唱も唱えず回復させているーω■;これか・・エビちゅが見たのは・・』




今まで見たことのない回復術に会場もざわつき始めている。



アメル『でも・・・あの回復・・ゴーレムの体力消耗には勝ってないよ(・w・`;)』

トカマク『あの回復術は前代未聞だけど・・回復が微力すぎるわ』

変装王様『しかし・・あの青白い霧のようなエネルギー・・・どこかで聞いたことがあるのぉ(■ω■;)』



ファラン『あの力を持っているからこそ・・真の眠る力があると・・・そう言いたいのじゃなーω■;エビちゅ』



うつ伏せに倒れてつつも、顔を横に見せたボルケノは、二人にとって不釣合いである会場のボルテージの中、涙が止まらないhananaの顔を見つめている。


ボルケノ『・・・ガフグン(hanaちゃん)・・・』


hananaは一生懸命持てる力で回復させてみるも、見る見るうちにボルケノの体が、顔が灰色を帯び、生気を失いつつあるのが手に取るようにわかった。


hanana『ボルケノさん!!ボルケノさん!ボルケノさん><!』




呼び起こそうとhananaは必死にエネルギーを照射し続けている。

 


hanana『ボルケノさん!死んじゃいやだぁ~。・゜゜・(>_<;)・゜゜・。ヤダヤダヤダァ~!!』

 

ボルケノゴーレムとの思い出が走馬灯のようにhananaの頭を駆けめぐっている。ボルケノは自らの死期を悟ったかのように全ての力を振り絞り喋り続けた。

 

ボルケノ『・・ガフグン・・グフガッグ・・ゴグンゲ・・グッグ・・(hanaちゃん、みじかい間だったけどうれしかった・・優しくしてくれて・・ありがとう)・・』

 

焼け焦げ、全身から煙を放つゴーレムはゆっくりと目を閉じ、体は完全に灰色になり、生を全うしたことを暗に知らせるのだった


hanana『。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 ウワァーン!!』


顔をしわくちゃにし、脇目も振らず思い切り泣きじゃくる少女を尻目に、会場の決着への期待からのボルテージは上がっている。

 

実況『エビちゅ選手怒涛の攻撃ぃ~!!』

『わぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁ』

『おおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』

 

トカマク『もう勝負はついたわ』

オムー『くそっくそっこんなのってありかぉ≫ω≪.;!!』

クルス『これも戦いだ(゜Д゜)』

変装王様『もう勝負はついておるじゃろ(■ω■.;)試合は終わりじゃ』

りん『・・・・・。』

 

母『・・・・hanaちゃん><』

父『本当に・・これでいいのか・・』

湖乃『お姉ちゃん><!!』

ファラン『・・・く・・ーω■;』

 

とその時。


hananaの耳に今まであった騒音であった歓声が聞こえなくなっていた。歓声が鳴り止まぬ中、hananaひとりの耳には、突然耳鳴りがする程の静寂が訪れている。


目の前には果てたゴーレムの顔。リング場外にてはしゃぎ騒いでいる観客達。リングの状況を叫び実況する者。再び空中に魔方陣を作り、次なる攻撃魔法を唱えているエビちゅ。虫の鳴き声さえも全く耳に音が入らなくなった今、無味乾燥とした景色がhananaの目に入り込んできていた。

 

突如りんは空を見上げた。


りん『オムー・・あれ・・見える・・・?』

オムー『また空か?何もみえねーお!もうこんな試合みたくねーぉ≫ω≪.;!』

 

オムーには見えず、りんには見えていた何か。
そして他の者達はhananaの周囲を取り囲む空気を敏感に察知するのだった。

 

変装王様『ん(■ω■.)?』

クルス『なんだ(゜Д゜)?』

アメル『(・w・`;)?』

 

泣き張れた瞼を閉じ、先程とは打って変った落ち着いた表情にて、ゆっくりと顔を天へ向けるhanana。

 

hanana『・・・ぁ・・・きた・・・』





第弐百参拾参話

2010-09-13 | 本編






照り輝く太陽は、流れ行く入道雲に見え隠れしている。
風に靡かれゆっくりと変形していたそれは、無造作に固められた巨大なわたあめのようだ。

そして未だ、何者かがその大きな入道雲の中でうごめいている。

 


ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 


未確認飛行物体。その速さは尋常ではない。
雲の中を今もぐんぐんと突き進み、

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーー

 

 

雲から勢いよく顔を出した。


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

有り余る勢いは雲を弾き掻き消し、まとわりつく雲の残骸を一瞬にして振り切り空中を尚突き進んでいく。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーー

 

 

またも雲の中へ。

 

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

巨大なそれは幾度となく宙を舞う。必死に何かを探している。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーー

ドゴーーーーーーーーーーーーン

 

 

・・・・・

 

・・・

 

 

りん『・・・・あ・・・』


皆がリング上のhananaたちを見ている中、りんが一人空を見上げている事に気づいたオムー。


オムー『ん=ω=.?またかぉ、何かいるのか?』

 

それは見える人と見えない人がいるのかもしれない。人を選び姿を見せるそれは、今はりんの瞳にだけ映りこもうとしているようだ。


りん『・・・・・何かを・・・探してるわ・・・』

オムー『探してる=ω=.?』

 

 

エビちゅの攻撃は依然続いている。

 

ズゴーーーーーーーーーーーン!!!!

 

前試合にて修繕した石畳のリングは、遥か上空より舞い降りるエビちゅのファイアーボールにより砕け散っている。

 

ドドドドドドドドーーーーーーーーン!!!

 


よろけながらも前へ進み、ボルケノと共に逃げ惑うhanana。その足はもう限界に達していた。父と母は、歯を食いしばりながらその様子を見ている。

 


エビちゅ『レインファイアー( ̄◇ ̄ )!!』

 

ドヒューーーーーーーーーン

ドドドドドヒューーーーーーーーーーーン

 

エビちゅは尚も上空へファイアーボールを飛ばした。身動きが取れないhananaはガクガクと膝を震わせながら立ち上がろうとしている。

 


hanana『・・・ぅ・・っぅ・・』

ボルケノ『グ・・・グウフ・・・』


しかし、幾度となく火炎弾に直打されている体の自由は効いていない。もはや完全に足に力を入れられなくなった体は重心を捉えることはできず、再び転げ倒れるhanana。

 

バタッ!

hanana『ぐぁっ・・・はぁ・・はぁ・・ぅ・・ぅぅ・』

 

焼け焦げた服はまっすぐと太陽へ向けられ、その横にも膝をつきうずくまるボルケノの姿がある。


母『はなちゃん><』

父『・・・そんな・・』

 

雨のように第二段となるファイアーボールはもう目前。hananaの耳には大きな歓声が鳴り響いている。

 

『わぁぁあああああぁぁ』

『あああああああああぁぁぁぁ』

 

ふと横を見ると、眉も口も、これでもかとへの字型に泣きそうな顔をしたボルケノが頭を抱えながらしゃがみこんでいる。汗と涙、血、何某かの理由かは定かではないが、その視界はぼやけ、崩れかけたリングには真っ赤に反射された光が照らされ、徐々にその濃さは増していく。hananaにとり正面である空を見れば、いくつもの火の玉が落下してきていた。


オムー『・・おい・・・この試合・・いいのかよ=ω=.;』

りん『・・・・・。』

クルス『あのガキ・・・死ぬな(゜Д゜)』

アメル『だめだ(>w<´)わたし見てらんないよ!』

 

太陽の子供であるかのように眩しい光を放つ真っ赤なファイアーボールが闘技場を強烈に照らし、観客席のもの達は目を凝らしながらリングを見ている。

 

ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

エビちゅ『これも運命( ̄◇ ̄ )!ちになちゃい!!!』

王様『・・・ふぬぬーω■;』

 


音速が破られ、衝撃派を伴うファイアーボールがhananaに当たるその時。

 


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


ドドドドドドドドーーーーーーーーーーーーーン

 

リングいっぱいに焦げる匂いをたち込ませながら、煙で全てを覆っている。


司会者『直撃ぃ~!!!』

『わぁぁぁぁぁああああああぁぁ』

『おおおおおおおおおぉぉぉぉ』

 

徐々に煙が薄れる中、周囲の一心の視線はリングへ集められている。


りん『・・・?』

オムー『おぉ=ω=.!?』

王様『ぬわんじゃとーД■!』

クルス『ほぉ、やるじゃねぇか(゜Д゜)』

アメル『・・・どうなったの(ノwノ)?』

 

吹き抜ける強い風により煙が拡散されていく。
hananaに当てられたはずのファイアーボールは、

 

ボルケノ『ウ・・・ウウ・・・ウ・・・ウグ・・・グフ・・・』

 


倒れたhananaを下に、仰け反らせた大きな体のボルケノが全身にて受けているのだった。

 

『わぁぁぁあああああああああぁぁ』

『おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ』

司会者『おぉ~っと~!!ゴーレムが防いだ~!!!!』

 

 

その胸、肩は焦げ、砕け、致命傷を負っている。


hanana『・・ぇ・・・ボルケノさん』







第弐百参拾弐話

2010-08-23 | 本編




タバコをふかしながら周囲の観客達の白い目も省みず、ふてぶてしい顔でいる男。闘技場には、ボルケノを役立たずとして虐待をしていたあの男も来ていた。


男『んぁ?俺のゴーレム!あのガキも!あの魔術師もいるじゃねぇか!!』

 

 

hanana『ボルケノさん!今だ!!!』

ボルケノ『グフングッ!!!』

 

試合が始まるや否や、ボルケノと共にhananaは一直線にリング外へ走り出した。
歩幅の小さいhananaを横に、大きな足を地面に減り込ませているボルケノの足音は闘技場内歓声に混じっている。


ズシーン!ズシーン!ズシーン!

『わぁぁぁぁああああああぁぁぁ』

『ああああああぁぁぁぁ』

アナウンス『おぉーっと~!hanana選手ら距離をとったぞぉ~!』

 

まさか逃げているとも知らずに観戦している者達とは別に、エビちゅはその作戦も、その取り得る策も頭に入っており、顎を上げた無表情な面持ちは変わっていない。


エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』

 


hanana『やった!場外に出れる!!』

ボルケノ『グフングッ!!!』

 

とその時。

 

エビちゅ『ファイアクラフト( ̄◇ ̄ )!!』


一瞬にしてエビちゅの手の平から形成されたエネルギーは、手元から上空へ浮かび上がり、

 

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン


hananaたちの目の前に落下してくるのだった。

 


ドゴーーーーーン!!!

 

hanana『ひぃ><!!』

ボルケノ『ゴッゴフッ!!』

 

立ち止まったhananaたちの足元前には、一瞬にして焦げ上がった石がプスプスと煙を出している。

 

エビちゅ『逃げられるとでも思ったでちゅか( ̄ω ̄ )』


hanana『・・・ど・・どうしよう・・』

ボルケノ『・・・・グ・・グフ・・・』

 


トカマク『え・・・』

クルス『あいつら逃げようとしたんじゃねぇのか(゜Д゜)?』

りん『うん。そう見えたわ。』

アメル『やっぱりあの子・・・戦闘力はもってないんじゃないのかな(゜w゜;)心配になってきたんだけど』

オムー『どういうことなんだ=ω=.』

変装王様『ほむ(■ω■.)あのペットも戦闘用ではないようにみえるのぉ』

 


エビちゅ『さぁ( ̄ω ̄ )ショータイムの始まりでちゅよ。』

 

エビちゅは重心を下げ、左右の手の平に虹色の艶やかなエネルギー弾を作り上げた。その目は既に狩りの対象を見る目となっているも、それとは対照的にhananaはボルケノの足にしがみつき、ボルケノもまたhananaの肩に抱きつき震えている。

 


hanana『・はわ・・はわわわわ><』

ボルケノ『・・・・グ・・グフ・・・・グフ・・』


エビちゅ『レインファイアー( ̄◇ ̄ )!!!!』

 

エビちゅの手の平からは、いくつもの火の塊が空高くへ飛んでいく。

 

ドヒューーーーーーーーーーーン

ドヒューーーーーーーーーーーーーーーーン

ドヒュドヒューーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

 

闘技場最上階を越えた幾つもの火の玉は、エビちゅの頭上にて何度もクロスしながら雲にも届くほどの頂きまで登っていく。

 


変装王様『おっほっ(■ω■.)あの技は久々に見るのぉ!』

 


王様に変装した男は、興奮した鼻息をさせながら言うと、それを知りたげなトカマクは即座に聞いた。

 


トカマク『ご存知なのですか!?』

変装王様『あの技はわしが昔みた技じゃな(■ω■.)まさに雨のごとく火を降らす技でのぉ』

クルス『おもしれぇじゃねぇか(゜Д゜)』

アメル『大丈夫なのかな・・あの子(゜w゜;)』

 

 


大きな弧を描き、第一弾となる火の玉が石畳のリングへ戻ってくる。落下スピードは尚速く進んでおり、音速を打ち破り衝撃派を伴うその火の玉は長い尾を作りながらhananaたち目掛けて落ちてきていた。それはまさに火の雨。

 

hanana『あっ危ない><!!』


空高くより光落ちる玉を目で追っているhananaの目の良さは折紙付きだ。hananaはボルケノの手を引っ張り、落下されるであろう地点から必至に離れ走ると、今いたその場所に、非常なる勢いと熱さをもった物体が落ちてくるのだった。

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

質量をもった火の玉の勢いは凄まじいエネルギーを持っており、石畳は弾け飛び、黒焦げになり砕け散った石がhananaたちの体に幾つも飛んできている。

もし避けていなければ、大惨事になっていたことは必然。その外れた事実を予測したhananaたちは尚も震えが止まらなくなっている。


hanana『はわわわわ><!!エビちゅさん本気だっ!!』

ボルケノ『・・・ホ・・・・ホフ・・グ・・・グフ・・・』

 

と同時。再び次なる火の玉がhananaたちを襲ってきていた。

 

ヒューーーーーーーーーーーーーーーン


hanana『ボルケノさん!!こっちだ!!!』

ボルケノ『グッグフッ!!!!』

 

ズシーン ズシーン ズシーン!!


すると寸での所でまたも避けたhananaの足元へ落ちた。

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーン!!


hanana『ひぃ><!!』

 

するとまたも上から空気を切り裂く音を伴いながら落下してくるのに気づくhanana。

 

hanana『ボルケノさん!!今度はこっちだ><!!』

 


エビちゅは余裕の表情で空中の火の玉を操っている。

 


ドゴーーーーーーーーーーーーーン!!


観客達にとり、この状況を未だ見ぬ戦いであり、hananaたちの逃げ惑う姿である真意を捉えてはいなく、hananaの逃げる姿を戦いの一部として、戦略の一部として見ていた。

 

『わぁぁぁぁぁぁあああああああぁぁぁ』

『おおおおおおおぉぉぉぉぉ』

 

そして大きな歩幅を持ったボルケノを引き連れて逃げていたhananaの足はとうとう限界を向かえ、つまづいてしまうのだった。

 

ズシーン ズシーン ズシーン

hanana『あっ!!』

 

ズテーン!!!

 

ボルケノ『ゴフッ!!』

 

りん『危ない!』

アメル『(>w<;)』

オムー『当たるお=ω=.!!』

 

 

無情にもその火の玉は幼い体を捉えてしまう。

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

hanana『・・・が・・!!!』

ボルケノ『!!!!』

 

母『は・・・hanaちゃん><!!!』

父『そんな・・』

湖乃『お姉ちゃん!!』

 

家族にとり辛辣な状況になるも、観客席は盛り上がっている。

 

『おぉっとぉ~当たったぁ~!!!』

『おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』

『わぁぁぁぁああああぁぁ』

 

 

 

倒れたhananaの背中に直打した火の玉は掻き消えるも、そのエネルギーはhananaの背を焦がし、強い衝撃から少女はバウンドするように宙へ僅かに浮かんでおり、地面にある石の飛び散り方がその衝撃を物語っている。

 

hanana『・・・ぅぅ・・』


hananaが倒れているのを横で見ているボルケノも、泣きそうな顔になりながら、自身の力ではどう仕様もないその状況に困惑していた。


間髪入れず、再び上空から無情なる火が降ってきている。


エビちゅ『さぁどうしまちゅか( ̄◇ ̄ )!倒れてる場合じゃありまちぇんよ!』

 

ヒューーーーーーーーーーーーン


ドゴーーーーーン!!!

 

hanana『ぐぁああぁぁっ!!!!!』

 

再びhananaの背中を火の玉が襲った。
腰が抜け動けぬボルケノも何もできないでいる。

 


オムー『おい=ω=.;!死んじまうぞ!あの子!』

りん『・・・・・・。』

 

 

 

王様の旧伝詩文書の話。家族の動揺を鎮めるように詳細が語られていく。hananaへ心配な面持ちで見ている家族は、王様の話に耳を傾けていた。闘技場の歓声は、会話の中にて現れる兵士達の荒ぶる声と重なり合う。

 


『わぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ』

『あああああああああああぁぁぁあああぁぁ』

 


・・・・・・・・・・・


・・・・・・


・・

 


『うぉおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ』

『ひるむなぁぁぁああああぁぁ』

『おおおおおおおおぉぉぉぉ』

 

数え切れない程の兵士たちが倒れ、壊滅状態と見て取れる戦況に一人の女が現れる。

 

兵士『ぐふっ・・・ゴホッゴホッ・・き・・・君は・・・?なぜここに・・・?』


その女は答える素振りも見せず、辺りを見渡した。女のすぐ目の前は、命の奪い合いをしている戦時の最前線。場違いな羽衣を来た綺麗な女は、落ち着き優しくもありながら、意を決した目で兵士にしゃべった。

 

女『・・大丈夫・・・心配しないで・・』

兵士『・・早くっ・・・ゴホッゴホッ・・逃げなさい!こんなところにいたら危ない!』


そこにある絶対的な自信が、兵士の会話をすることすら不毛であると感じていたのかもしれない。戦場にて不釣合いな女と兵士の会話は、成り立っていなかった。

 

 

今から遡ること2000余年前。
時は大戦乱時代のファンブルグ国。

世界を手中へ治めようとエステンブルグ国の横暴が蔓延り、貧困に、飢餓に、大苦戦を強いられ、歴史から消え去ろうとしていたファンブルグ国に一筋の光が見えてくる。

 

それは、ごく普通にありふれた毎日を送っていた牧場の女性に何かが舞い降りたつことから始まった。彼女の手は瞬時にして兵士の人々の傷を癒すことはおろか、死人の息を瞬時に吹き返させる。

最古にして最高の伝説の獅子。未だ見たことの無い力をもったその人物を。大衆はこの者を。国はこの女性を。

回復神、アルテマと呼んだ。

 


突如その女は片膝を抱えるように、幾万もの頭が敷き詰められた地上から飛び上がった。そして威勢にて清らかなるその声が兵士達へ飛ぶ。


女『ピーーーーーーース!!!!ファーーーーーラーーーーーーー!!!』


飛び上がった空にて、腕は扇がれ陰陽を空中に作り、ひねられた腰を戻すと同時。空中を泳ぐようにその手は宙を舞い、青白い濃霧を解き放つ。

兵士達の間をすり抜け、傷を求めその青白い光を伴った風は行き渡る。両手は相反する陰陽を空中に何度も形成し、幾度となく仰がれたその両手からは眩い塵の光が流れていく。強い風と共に。


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーー!!

ゴゴゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

空中にて太陽を乱反射させている輝く塵は周囲に拡散し、幾万もの頭が連なる兵士達のもとへ運ばれるや否や、みるみるうちに傷が癒えていく。折れた骨は繋ぎ、切られた肉は元へ。


『・・・う・・うぐ・・?・・なんだこれは・・』

『これは・・・・すごい・・・傷が・・・癒えていく・・』


倒れていた兵士。絶命していた兵士が再び息を吹き返していく。通常では考えられない出来事がファンブルグ軍の中で起きていた。

 

『・・ぅぅ・・・・・・ぅ?・・・治った・・・治ったぞ~!!!』

『まだ戦える・・・全隊!!前進!!!!』

『うぉおおおぉおおおおおおおおぉぉぉぉ!!』

 

数万兵の傷が一挙に癒えてしまう驚くべき事実であった。敗戦必至と言われたその激突は、エステンブルグ20万兵余りと戦う5万兵のファンブルグ軍の大勝利を収めるに至る。これが後の戦いに大きな影響を及ぼす発端となる出来事である。

 


再び前進し押し進む兵士達の中、その女は一人立ち止まり両手を広げ目を瞑り、ゆっくりと天へ顔を上げた。


アルテマ『我が前に死はなし。そして、血はなし。』


・・・・・・・

 

・・・・


・・

 


ファラン『信じて下さいーω■』

母『は・・・はい・・・』

湖乃『お姉ちゃんは・・・本当は強いの?』

父『・・・・・。』


ファラン(伝詩文書が正しければ・・エビちゅの先見の明が正しければ・・・ )




 


第弐百参拾壱話

2010-08-02 | 本編






暗いトンネルの先から目に飛び込んでくる眩い光。トンネルの高さに合わせ中腰になりながら歩いているボルケノの横には、手を繋いだhananaもいる。

 

hanana『いい!?ボルケノさん(^ー^;)合図出すからすぐ逃げるんだよ』

ボルケノ『グフッ!!!』

 


ジャッジャッジャッ

ジャッジャッ

 

戦闘が始まったあとの作戦を幾度となく確認し、不安から半ば泣きそうになりながらリングへ向かう二人。ぬかるんだ砂利をずっているボルケノの大きな足とhananaの小さな足どりは重い。その二人の大小際立った足跡がトンネルの一本道へ作られ、出口の門をくぐると同時、

 

hanana『うわ(><)眩しい』

ボルケノ『ゴグ・・・』

 

じりじりと肌を熱する強い太陽光と共に、予想だにしない歓声が送られているのだった。

 

『わぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁ』

『あああああぁぁぁぁぁぁあああぁ』


『東門からエビちゅ選手!!!西門からhanana選手の登場だぁ~!!!』

 

ひきつった顔で辺りを見渡し、足を震わせ極度に緊張したボルケノの大きな手は、小さいhananaの手をより一層強く握り締めている。

 

ボルケノ『・・・ガ・・ガガ・・・・』

hanana『ボルケノさん・・・わたしもこわいょ・・・』

 

かつてエビちゅが着ていたその魔法服は、今のhananaには僅かに大きい。足膝まである緑がかった布地。腰は白い紐で結わかれ、襟には茶のアクセントがついている。

落ち着きと可愛らしさを共存させたローブは今の観衆の的となり、360度見渡せば、数え切れない程の顔が期待に胸躍らせhananaたちを観ていた。

 

hanana『・・・・。』

ボルケノ『・・・ガ・・ガガ・・・』

 

西門からたどたどしく登場したhananaたちに比べ、東門からはいつものように顎を上げ、お決まりの勝気な表情で登場したエビちゅ。

歓声を浴びつつリングまで歩き始めたその姿は、いつもより明るみのある衣装を纏っている。いくつもの装飾品を携え、エキセントリックかつ優雅な雰囲気を醸し出すエビちゅの視線はhananaへ向けられている。

 

エビちゅ『・・・・・( ̄ω ̄ )』

 

『両者リングへ到着だぁ~!!!』

 


『わぁぁぁああああああぁぁぁ』

『ああああああああああああぁぁぁぁ』

 

リング中央に集まった両者。hananaとボルケノの前にいるエビちゅの表情は氷のように冷たい。その顔は既に敵を倒すことだけに特化した獅子となっていた。審判員はエビちゅにペットの使用がないのか再度確認している。

 


審判員『相手は戦闘用ペットを連れてきているが、あなたはペットは連れてきていないんだね?』

エビちゅ『愚問でちゅ( ̄ω ̄ )さっさとはじめの合図をしなちゃい』

 

 

・・・


・・

 

 

 

ごった返した観客席。立ち上がった前の客を避けながら、りん達はエビちゅの様子を見ている。

 


オムー『おぉーきたきた=ω=.!!エビちゅいつもより衣装凝ってるなぁ』

りん『あの子の服かわいい(*´▽`*)』


アメル『エビちゅにはペットついてないね(・w・´)』

トカマク『そうね。あの子の隣にいるおっきいのはボルケノゴーレムね。』

 

リングでは、エビちゅとhananaが審判のいる中央へ歩み寄っている。体が大きく主を守るはずのボルケノゴーレムは腰が引けており、それに連なった持ち主であるhananaも逃げ腰になっていることに皆気づいていた。

 

オムー『あれ戦闘用ペットなのか?おびえてるじゃねぇか=ω=.;』

変装男『あの子は何かの間違えでここに来ているのではないのか(■ω■.)?』

クルス『そうかな・・・俺はあのガキが気になって仕方ねぇ(゜Д゜)』

 

 

全員がリング中央の二人を注視していたが、りんはふと何かを気にするように上空を見上げた。

 

 

りん『・・・・・。』


一人空を見上げるりんを見たオムーは、その視線に気づき、何某かを見ているのか視線の先を合わせた。

 


りん『・・・・・・。』

オムー『・・・・・=ω=.?』

 

りんが見ているであろうその先には、綺麗な入道雲が空いっぱいに広がっており、何を気にしているのか解せぬオムーは質問を投げかけた。

 


オムー『りん=ω=.どうした?』

りん『・・・あそこに・・何かいるような気がして・・』

 

オムーは再度見上げてみるも、気配すら感じ取れない。

 

オムー『何かいるのか=ω=.?』

りん『もしかして・・・私たちの想像を超えた何かが始まるのかもしれないわ・・・』

 

周囲の歓声の中、りんの小さな声は掻き消され、オムーの耳に入ったのは語尾のみだ。

 


オムー『なんだって=ω=.?今なんて言った?』

 

 

そして司会者の闘技場に響き渡るその声は、歓声のボルテージを寄り一層高らかにさせている。

 


司会者『それでは第一回戦!!第四試合~!!エビちゅ選手とhanana選手の~試合開始だぁ~!!!』

 

『わぁぁぁぁぁぁああああああああぁぁぁ』

『あああああああああああぁぁぁあああぁぁ』

 

エビちゅ『選びなちゃい。運命の道か・・・・死か・・( ̄ω ̄ )』






第弐百参拾話

2010-07-12 | 本編








青空を背景にした雲の上。輝く太陽は原形がわからないほどに眩しい。夏にできた芸術品である入道雲は、ひとつの別世界を構築していた。

いくつもの小さな山、大きな山が真っ白な絨毯の上に優雅に作られ、太陽の暖かさを楽しみながらその造形物は、風に靡かれゆっくりと変形している。

 

父『あなたは・・出場選手の・・ファラン選手ですね?』

ファラン『いかにもーω■』


突然目の前に現れ、何か言いたげなファラン。呆気に取られつつも、hananaの父と母はその発言を待った。


母『・・・・?』

父『・・・・・。』


hananaの妹である湖乃は父親の膝元にしがみつき、アイスキャンデーをしゃぶりながらファランを見ている。


湖乃『さっき戦ってた人だ(^-,^*)』

ファラン『突然のお願い。恐縮ですが・・今から言うことをお守り下さいーω■』


母『・・??』

父『・・・何を・・でしょうか・・』


 

一層に目的のよめない父は懐疑そうにファランを見ながら聞いた。




ファラン『間もなく御宅のお子さんがリングにて戦うことになりますーω■』

母『やっぱりうちの子なんですね!?』

父『この冊子に載っているのはうちの子なんですね!?な・・なぜ!?なぜうちの子が!?』

 

いまだ五歳になったばかりの子供が、壮絶な闘技場に顔を出すという解せない状況は、父母にとり、他人が思う以上に困惑極まりない。その父母の同時質問などに聞く耳を端から持っていなかったファランは話を続けた。


ファラン『そして何が起ころうとも、止めに入らないで頂きたいのですーω■』


そして尚、止めには入るなという依頼は、余計に混乱させている源だ。

 

母『・・・・・。』

父『・・・・。』


我が子の安否を思う気持ちはうまく言葉にならない。
疑問、怒り、そんな二人の前。ファランは話し始めた。


ファラン『これは我々が生まれる・・さらに数千年前の話です。古文書である旧伝詩文書に書かれていることなのですが、昔、アルテマという女性がおりました。当時ファンブルグ国は連戦敗退し、兵士たちは傷が絶えなかった・・。』

 

一連の事情を説明し始めたファランという偽名をもった王様は、アゴ髭をゆっくりと上からなめし、空高く上にある入道雲を見つめながら話し始めた。

 

ファラン『そう・・ちょうど今日のような・・・夏日だったらしいのです。』


・・・・・・

 

・・・


 

時間をいたずらに刻んでいる青い空、真っ白な雲、そして照り輝く太陽。時間という概念さえも忘れさせるその美しさは、今日という日も地上から離れた上空にある。

 

すると、何者かがその大きな入道雲の中でうごめいているのだった。

 


ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 


およそ人間では推し測ることさえできないその速さは、雲の中をぐんぐんと突き進んでいる。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーー

 

 

次の瞬間、その何かは雲から勢いよく顔を出すのだった。


ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

まるで雲の表面が水面であるかのように、その何かの有り余る勢いは雲を弾き飛ばしつつ飛び出し、まとわりつく雲の残骸を一瞬にして振り切り空中を尚突き進んでいく。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーー

 

 

と思いきや、再び雲の中へ。

 

 

ドゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

巨大なトビウオが水面を上下するかのように幾度となく宙を舞う。その何かは何ものなのか。それは龍ともとれる。人ともとれる。

何ものであるかを探ることさえも儚ませる程に不確かなそれは縦横無尽に空を飛んでいる。先端にある人の顔らしきものは必死に何かを探しているようだ。

 


ゴゴーーーーーーーーーーーーーーー

 


雲をかき分け、太陽の強い光を浴びながら、何かを探していた。

 

・・・・・

 

・・・

 

 

 


ファラン『・・・・ということが書かれておりましたーω■』

 

一頻り話し、間を置いたファランは、放心状態の父母の前、手元を髪の毛を持っていった。

 


父『・・・・。』

母『・・・・・。』


そして今あるその髪の毛を取り、割れたサングラスも取り外したファラン。


バリバリバリバリバリ・・・チャ・・・


父と母の前にいたのは、紛れもない一国の王であった。

 

王様『どうか見守っていて頂きたいーωー』

父『ぁ・・・あなたは!!』

母『王様!!!』

 

民へ向かい、王様は深々と頭を下げている。とても信じたい事実を受け止めれずにいた父と母ではあったが、一国の主のその礼は、不安を少なからず払拭させる要因となっていた。

 

父『・・・か・・かしこまりました。し・・信じます・・・。』

母『・・・・・・。』

 

泣きそうになり、何も言えずにいる母の肩を寄せ、父は涙を溜めながら王様へ礼を返している。

 

とその時。一気に観客のボルテージが上がるのだった。

 

『わぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁ』

『ああああぁぁぁあああああああぁぁ』


王様と父と母、そして湖乃。
四人を残し、ほぼ全ての観客が総立ちとなっている。

 

司会者『両選手登場しましたぁ~!!!!エビちゅ選手とhanana選手だぁ~!!!』

 


 


第弐百弐拾九話

2010-06-24 | 本編








hanana『ほょ^0^;?なんでしか?』

 

控え室にて、唐突にエビちゅから一枚の紙を渡されたhanana。戸惑いつつも受け取った。


エビちゅ『さっき渡すの忘れまちた( ̄ω ̄ )時間がないでちゅ!早く書きなちゃい!』

 

渡されたその紙にはいくつかの質問事項が書かれていた。それは今大会の本戦出場選手のプロフィールとなる記入用紙だ。

しかし無論、今のhananaには読めもしない漢字ばかりが並んでおり、何を書いてよいのかわからないでいるのだった。

 

hanana『うーん(-_-)』

 

エビちゅは紙を渡すと、控え室に置いてる鞄から戦闘用のローブや布服などを出し身に着けている。

 

hanana『ボルケノさん^0^;?これなんて読むかわかr・・』

『グフッ?ゴフングガッゴガッゴ』

 

ボルケノゴーレムの文字書きの先生であるはずのhananaからの質問に困ったボルケノは大きく首を横に振った。

 

hanana『ぁそっか^0^;私が文字教えてたんだもんね』

『ゴフング』

hanana『エビちゅさ~ん^0^;これなんて読むんでしか?』

えびちゅ『今忙しいでちゅ!そんなの適当でいいんでちゅよ!』

 

必死に防具などを揃え、半身で応えているエビちゅ。

 

hanana『え~^0^;ちゃんと書きたいよ~一番上のふたつってhanaの名前と歳書けばいいんでしよね?』

エビちゅ『うるさいでちゅね~( ̄ω ̄;)・・・一世一代の晴れ舞台でちゅよ今日は・・ファッションを決めないと一生の恥じなんでちゅよ・・・』

hanana『・この上から三番目のってなんでしか^0^;?なんて書けばいいんでしか!?』

エビちゅ『・・やっぱりイタリア製のベルトをつけるべきでちゅね・三番目?・・・・hanaはどこに住んでるんでちゅか?』

hanana『ほょ^0^;?あっちでし』

エビちゅ『じゃぁそう書きなちゃい( ̄ω ̄ )ん~と靴はやっぱり夏を意識したあれでいきまちゅかね~・・・ブツブツ・・』


hananaの潔いマジックペンの音が鳴っている。


キュッキュッ・・・キュキュキュ・・


hanana『エビちゅさ~ん^0^;その下は・・』

エビちゅ『好きな食べ物でも書いておきなちゃい( ̄ω ̄ ;)!その下は嫌いな食べ物でちゅ!!!』

hanana『は~い^0^;エビちゅさん忙しそう・・』


するとエビちゅは鞄から写真機を取り出し、無造作にhananaに向けてた。


エビちゅ『そういえば顔写真も撮らないといけないんでちた( ̄ω ̄ )はいhanana!にっこり笑って!ピース!』

hanana『・・・v^0^・・・なにがなんだか・・・』

 

パシャッ!!!

 

撮りおわり、服も着替え終わったエビちゅは颯爽と控え室をでていく。


エビちゅ『それでは今度はリング上で会いまちょう( ̄ω ̄ )』

hanana『ぁっ待って!コメントってなんでしか^0^;?』

 

質問を無視するかのように背を向け歩き始めたエビちゅ。

 

エビちゅ『コメント?思いついたことを書くだけでいいんでちゅよ!それ書き終わったら後で来る係員に出すんでちゅよ!?あとでリングで会うときは敵でちゅからねっ覚悟しておきなちゃい!』

hanana『ぁ~・・いっちゃった^0^;ん~思いつくことを書けばいいのか・・・』

 

 

 

 

 

・・・チックタック・・・・チックタック・・・・


・・・・・チックタック・・・・

 


エビちゅが去った控え室。
何かしゃべるわけでもなくじっと座っているhananaとボルケノゴーレム。

 

hanana『・・・フー・・ット・・・^0^;』

『・・・・・・。』

 

人間よりも数倍ある大きな体をもったボルケノのお尻は、三つ並ばせた椅子からまだ尚はみ出ていた。

器用に腰掛けたボルケノの横に寄り添うように座っているhananaの背丈は、より一層ボルケノの大きな体を強調させているようである。

 


・・・チックタック・・・・チックタック・・・・


・・チックタック・・・・


賑やかな闘技場観覧席から長いトンネルを隔ててある選手控え室では、時計の音だけが響く静寂な部屋だ。


ボルケノの机に置かれた太い腕の指にはhananaの小さな手が乗っている。いくつもの岩が埋め込まれているかのようなゴツゴツと四角く大きな岩が露出している腕。肌触りこそ良くないが、今のhananaにはそのいつもの感触を要した。


それとなしに控え室の壁を見つつ、不安を拭い取るようにhananaは話しかけた。

 

hanana『・・・もうすぐだね・・私たちの番^0^;』

 

冷や汗をかいたhananaの顔に合わせるように、赤くゴツゴツとしたボルケノの顔の口角は不自然に上がった。

 

『・・グ・・・グフ・・・・』

 

体は赤茶色の皮膚で覆われており、ゴツゴツとしたその体は人間とは比べ物にならないくらいに硬い。元来戦闘での護衛として先陣に立ち、主を守る壁役として重宝されるペットだ。

しかし、その主であるhananaの横にいるゴーレムは違っていた。岩で包まれているその屈強そうな体とは裏腹に、足をガクガクと武者震いをさせている。

 

hanana『・・・・ハハ・・・ボルケノさんも震えてるね^0^;』

『・・グ・・・グフ・・・・』

 

ついさっきまでの空き時間とは打って変わった緊迫した空気が周囲を取り囲んでいる。


・・・・

・・

 

 

第一回戦、第四試合までの空き時間。真夏日となる太陽の日差しは、今最も高い位置にあり、ジリジリと熱い日照りを浴びた闘技場には、日傘を差した人々も目立っている。


今まで行われてきた、もはや超人ともいうべき戦いを見終えた満足からか、そして今後も同等の戦いが繰り広げられる期待感からか、その強い日差しなどお構いなしに、いつになく高揚している観客達。

祭りのように賑わった観客席に囲まれた八角形のリングでは、先程の戦いでの修復作業が急ピッチで行われている。

 

父『ふぅ~熱いなぁ~。母さ~ん!ビールもう一杯いいかな?』

 

hananaの父、母、妹である湖乃も大会観客として観に来ていた。父の顔は、外気の熱さも手伝い、酔った顔がさらに赤く染まっている。

 

母『今日は無礼講よ^^』

 

日傘に隠れるように置いてあったその鞄にある缶ビールを手に取り、いつになく上機嫌にビールを手渡した。


湖乃『湖乃もそれ欲しぃ~(^0^,*)』

父『大人になってからだ』

湖乃『ムー(-.ー,*)』

 

膨れた顔になった湖乃をあやす様に、すかさず母はジュースを出した。

 

母『はぁ~い^^湖乃ちゃんはこれよ』

湖乃『あぁ~!!これ湖乃の好きなグレープジュースだぁ(^0^,*)ノ!!』


父は今大会の出場選手の紹介雑誌を片手に、グビグビと喉越しの良い音を立てながらビールを飲んでいる。

 

父『グビッ・・グビッ・・・・グビビッ・・・』

 

座った腿の上にて広げられ、片手間でページをパラパラと捲られている冊子。横目にて出場選手たちの顔絵を眺めていたその時。

 

父『;`;:゛;`(;゜;ж;゜; )ブフッ』

 

驚いた拍子、ビールを噴水のように撒き散らしてしまうのだった。

 

湖乃『キャッキャッ(^0^.*)』

父『ゴホッゴホッ><』

 

はしゃぐ湖乃の横では、眉間にしわを寄せた母は急いで周囲を吹いている。

 

母『ちょっと~お父さん!?何やってるの~も~』

父『・・かっ・・母さん・・ゴホッゴホッ><』

 

何か言いたげではあったが、気管支に入ったビールが邪魔していた。

 

父『・・・今・・hanaゴホッゴホッ><』

母『落ち着いて・・どうしたの?』

 

一生懸命に唾を飲み込み息を整えつつ、持っている冊子をあるページを叩き、それを見るよう促している。

 

父『・・ゴホッゴホッ・・・今・・はなは幼稚園だっけか?』

母『何言ってるの~今日は幼稚園はお休み。今はお友達のとこへ遊びいってるわよ』

父『これみてくれ・・・』

 


冊子を開き、半分にさせたそのページを急かす様に、母の目の前まで持っていった父。

 

母『ちょっと・・何・・なんなの・・』

 

相応しくない冊子と目の距離を嫌がるように顔を遠ざけた母は横目でそのページを見ると、同じように言葉を失うほど驚いてしまうのだった。


母『・・ぇ・・・』

父『これは、間違いない・・』

 

ファンブルグ国にとり初となる武闘大会では、時の人となる本戦出場選手を紹介するための特別な冊子が頒布されていた。そして父の開いていたそのページには、満面の笑みでブイサインを作っているhananaの顔が写っているのだった。

 




~~~~~~~~~~~~~~~~~

選手No.3469

選手名:はなな

年齢:ごさい

出身:あっち

戦闘職種:いちごしょーとけーき

過去戦績:ぴーまん

コメント:せめんと


選手顔写真:   v^0^

~~~~~~~~~~~~~~~~~




 

 

母『・・・これ・・・hanaちゃんじゃない・・』

父『どういうことなんだ・・なんでhanaが・・』

 

友達と出掛けているはずのhanana。
しかし実情は、家族が観戦しにきている武闘大会の選手である。

すると、わけもわからず呆然とする二人の目の前にある男が現れるのだった。

 


ファラン『初めましてじゃなーω■』

母『・・・・・?』

父『あなたは・・?』

 

 


第弐百弐拾八話

2010-06-13 | 本編






気組みを入れなおした両雄。


オムー『アイスフロスト!!!』

 

空気中の水分子を一挙に集め凝縮させ、氷を形成していく。その作られた場所は、オムーの足元。すかさずオムーは唱えつつジャンプした。


ピーーーーーーーーーカカカカカカカカカッ!!!!

 

飛び上がったオムーの下には瞬く間に氷の床が作られ、その範囲は拡大していく。

 


カカカカカカカッ!!!カカカカカカカカカカカッ!!!!

 

実況『おぉーーー今度はなんだぁ~!!リングが・・リングが氷で埋め尽くされていくぞぉ~!!』

 

りん『・・な・・・これは・・』

 

足元まで来るや否や、共に凍ってしまわぬよう同じように飛び上がるりん。そしてオムーもりんも氷で覆われたリングに着地した。

 

アメル『今度は何が始まるんだろ(・w・´;)?』

トカマク『・・・・もしや・・・』

クルス『なるほどな・・・最後の掛けにでたか(゜Д゜)』

 

つるつると滑るリングに覚束無い足取りで構えるりん。戸惑いを隠せぬ表情は拭い取れない。


オムーは、すかさず剣を天へ振りかざした。

 


オムー『いっくぜ!!!!』

りん『・・・・・!?』

 


オムーは高々と両腕を挙げた。

 

エビちゅ『あの構えは・・・( ̄ω ̄ )』

ファラン『ほむーω■』


それはオムーにとり、最高峰の威力を持つ土攻撃魔法。メテオノヴァを唱える構えだ。

 

シュシュシュシューーーーーーーーー


ゴゴーーーーーーーーーーー

 


竜神のごとく黒い煙がオムーの魔法杖とも言える剣から放出され、空高く舞い上がると同時、上空に低い響きと共に暗雲を形成している。

 


りん『・・ぁ・・・』

 


すると、溶岩のごとき燃え上がる巨大な岩石が次々と落ち始め、空は真っ赤に染まり、赤黒く燃えた岩々が隙間のないほどぎっしりと頭上を覆い、リングへ向かっているのだった。

観客にとって、その光景は今だかつてみたことがないことは必然。駭然とした顔が無数に並んでいる。

 


実況『これはすごい!!!空から何かが降ってくるぞぉ~!!!』

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉ』

『わぁぁぁぁぁああああああああああぁぁ』

 


ドドーーーーーーーーーーーーーーー!!!

ドドドーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
ドドーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 


りん『・・・まずい・・・・・』

クルス『・・どうする・・・りん(゜Д゜)』

hanana『・・・あれだとオムーさんもあたっちゃうでしよ^0^;?』

ファラン『リングを覆うほどの溶岩攻撃・・オムーは何を考えておるんじゃ(ーД■♯)!!』


エビちゅ『オムーは体力差を利用したんでちゅよ( ̄ω ̄ )』

アメル『自爆覚悟(・w・´;)?』

トカマク『・・僅かにりんよりオムーの方がHP体力は上・・・だから最後の賭けにでたのよ』

 


エビちゅ『床に氷を張ることで地中への回避も無理でちゅからね( ̄ω ̄ )』

変装男『りんがリングを出てノヴァを避けたら場外負け・・・か・・考え追ったのぉ(■ω■.)あの男』

クルス『王手飛車取りだな(゜Д゜)どうする!りん!』

 


実況『これはすごい!!!空から降ってきたのは溶岩だぁ~!!!』

『おおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおぉぉ』

『わぁぁぁぁぁああああああああああぁぁ』

 


ドドーーーーーーーーーーーーーーー!!!

ドドドーーーーーーーーーーーーーー!!!!!
ドドーーーーーーーーーーーーーー!!!!

 


みるみるうちにリングへ到達しようとしている溶岩。
燃え上がった炎を羽織ったそれは、見上げたりんの顔を赤く染め始めている。

 

りん『・・・・・・。』

オムー『うぉぉぉぉおおぉぉ!!!』

 

暫く考え、りんは威迫、かつ剛気なる気合を発した。

 

 

りん『やぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!!!』

 

りんの右手は右肩にある弓筒へ運ばれていった。
その手は弓筒にある一本の矢へ。

 

 

ファラン『やはり逃げぬかーω■』

アメル『りんは逃げない!?』

クルス『何か考えがあるんだろう(゜Д゜)』

 

 


そして、流れるような手捌きで矢を射るりん。

 

サッ・・・ビシュンッ!!!!!

 


その素早い射打ちは、剣を振りかざしていたオムーに避ける余裕さえ与えなく、オムーの右胸に勢いよく刺さった。

 


グザッ!!!!

 

その矢の勢いは、オムーの足を地面から軽々と別れさせ、吹き飛ばしている。

 


オムー『・・・・ぐ・・ふ・・・ガハッ!!!』

 


矢と共に背後へ吹き飛ばされる瞬間。オムーは気づくのだった。この勢いはリングへは納まらない。必ずや場外の地へ足をついてしまうだろうと。

 

オムー『・・やべーーー≫ω≪.!!!』

 

実況『おぉーーーーーっとぉ~!!りんの選手の最後の攻撃矢にてオムー選手が吹き飛ばされたぁ~!!』

 


場外負けか、体力差による敗北という究極の選択を迫られたりんの出したひとつの答えは、より早く相手を場外負けにすること。勢いよく矢を射ることでオムーを矢ごと場外へ葬り去るという、さらに上をいく術を選ぶのだった。

 

 

変装男『ぬわんだとっ(■Д■.)!!』

クルス『見事だ(゜Д゜)』

アメル『あぁ!!オムさん場外になる(>w<`;)』

エビちゅ『・・・体力差で確実に負けると予想したりんは最後に場外勝ちを狙ったんでちゅね( ̄ω ̄ )』

ファラン『イタチの最後っ屁じゃなーω■』

 

自らの胸に刺さった矢を握り締め、否応なしに観客席の仕切り壁に飛ばされたオムーは、叩きつけられるように壁に当たり止まった。

 


バコーーーーーーーーーーーーン!!!!!


オムー『ぐへっ≫ω≪.;』

 


実況『・・これは・・・オムー選手の場外負けにて、りん選手の勝利だぁ~!!!』

『おおおおおぉぉぉぉおおぉぉ』

『わぁぁぁああああぁぁぁぁ』

 

すると間もなく、溶岩はりんを含め、リング全体へ着弾していく。

 

アメル『あたる(>w<´;)!!!』

hanana『キャッ><』

クルス『・・・・(゜Д゜)』

 

 

ヒューーーーーーーーーーーーーー

 

りん『・・もう間に合わないや・・・南無(*´▽`*)・・』

 

ドドドドドーーーーーーーーー
ドドドドドーーーーーーーーーーーーーーー

ドドドドーーーーーーーーーーーーーーー

 

全てリングに直撃した真っ赤に燃え上がるその岩はリング石を粉砕し、熱く解けた溶岩が八角形のリングを変形させるほどに押し潰していた。無論その中にりんがいる。

 

トカマク『りん><!!!!』

アメル『りん(>w<´;)』

クルス『・・・・もろだな(゜Д゜;)』

 

止め処なく落ち続ける溶岩は非情にも全て的を外していない。

 


ドドドドーーーーーーーーー
ドドーーーーーーーーーーーーーーー

ドドドドーーーーーーーーーーーーーーー

 

地面に直打したことによる熱を帯びた爆風の余波は周囲の観客達にも熱く強い風圧を感じさせている。

 


ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーーーーーー

ゴゴゴゴゴーーーーーーーーーー

 

リング石は外へ溶け出し、クレーターにも似た大きな穴や溶け切れぬ岩々などが残り、一瞬にして焼け野原となってしまっていた。

 

 

溶けきったリング石はもはや原型を留めていない。あちらこちらで細く白い煙を立ち上らせている。

 


スーーーーーーーーーーー


プスプス・・・・プスプス・・・・・

 


その中央。りんが立っている。

 

トカマク『りん!!』

ファラン『(ーД■♯)!!』

変装男『(■ω■.)!!』

アメル『りん(>w<´;)!!』

 

暫く立ってはいたが、諸に直打したその体はもうボロボロだ。力なくゆっくりと床に倒れこんだ。

 

りん『はふん_ノ乙(、ン、)_』

 


バサッ・・・

 


実況『りん選手倒れたぁ~!!!しかし、若干オムー選手の場外が早かったぁ~!!!りん選手の勝利だぁ~!!!』

『わぁぁぁぁあああぁぁぁ』

『おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ』

 

矢に刺さったまま、壁に貼り付けられたオムーは悔しそうに唇を噛んでいる。

 

オムー『・・ガハッ≫ω≪.;・・・ちっくしょぉーーー!!』

 


ファラン『すさまじい戦いじゃったのぉーω■;』

アメル『オムさん頑張ったね(・w・´)!!!』

トカマク『りんの底知れない強さを知ったわ^^;』

 

りんは駆け寄った審判員たちの肩を借り、立ち上がった。

 

クルス『なんとか立ち上がったみたいだな(゜Д゜)』

アメル『無事でよかった(・w・´)』

 


りんの耳には割れんばかりの拍手、歓声が送られている。


『わぁぁぁぁあああああぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおぉぉ』

 


りん『・・・ぁ・・れ・・・私・・・勝てたのかな・(*´▽`*)・・?』

 

肩を貸している審判員は、驚愕する戦いを見たことによる興奮からか、鼻息混じりに答えた。


『えぇ!そうですよっ!あなたが勝ったんですよっ!!すばらしい戦いでしたっ!!』

 

『おおおおぉぉぉぉおぉぉ』

『わぁぁぁぁあああああぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおぉぉ』

 

りん『ウフ(*´▽`*)これで欲しい服が近づいたわ』

 

 


すると、hananaは目を瞬かせながらオムーが持たれかかっている姿を見つつ言った。

 

hanana『はれ・・・オムーさん足地面についてないデシよ^0^?』

エビちゅ『hanaは目がいいんでちゅね( ̄ω ̄ )エビちゅには何もみえまちぇんよ』

hanana『はい^0^ノ両目4,0デシ!!!』

トカマク『すごいわね^^はななちゃん』

アメル『4,0wwマサイ族か(ーwー´)!!』

 

言われてみれば、その足は地面にはついていなく、オムーの足は宙に浮いているのだった。徐々に観客達がざわつき始め、それに気づいた審判員たちは、オムーの様子を見に行っている。

 

クルス『なんだなんだ(゜Д゜)どしたんだ?』

変装男『どうやら審議があるようじゃのぉ(■ω■.)』

 


すると、ざわつき始めた闘技場を宥めるように司会者がしゃべり始めた。

 


実況『・・ぇー皆様!!訂正いたします!!なんとオムー選手に刺さった矢は体を貫通し、背中から出た矢はさらに場外の壁に突き刺さっている状態です。そしてオムー選手は、その矢に体がぶら下がった状態でありまして、地面に足がついていないことが判明いたしました。よって、始めに気絶したりん選手の負けとさせて頂くことになりました!!』

 

『おおおおぉぉぉぉおぉぉ』

『わぁぁぁぁあああああぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉおぉぉ』


りん『ポーン(  Д )⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒...。....。コロコロ』


体を難なく貫通したりんの矢の切っ先は、場外壁を突き刺し、まるで虫ピンで刺されてしまったかのように、その矢にてオムーは壁に張り付けられている。

場外負けを差し向けたりんの矢は皮肉にも、メテオノヴァの弾幕を避けさせ、尚且つ場外負けからも救う羽目になっているのだった。

 

りん『洋服が・・イタ飯が・・・エステが・・・旅行が・・(  Д )』

 

地面とオムーのつま先の差は僅かに在る。
オムーの体はその矢にて支えられていた。


オムー『いてて≫ω≪.;・・運も・・・じ・・実力のうちだぉ・・』

 

 

アメル『なんという悪運の強さw』

クルス『ぶwww』

トカマク『オムーは地面に足ついてなかったの?』

ファラン『まぁ・・運も実力のうちじゃからのぉーω■;』

変装男『まったく、運で勝ってどうする!それでもバルタルトの血を引いているのか(■Д■.)たわけめ!父さんは悲し・・ゴホンッゴホンッ』

アメル『バルタルト?父さん(・w・´)?』

変装男『ぁいや(■ω■.;)タルトケーキを作っている会社が倒産してしまったと言ったのじゃ』

アメル『・・・・(ーwー´)』

 


両雄の壮絶な激突は幕を閉じた。
戦いというたったひとつの言葉で表されてはいたが、その攻防はひとつの言葉では表し様がない。その頂上はあらゆる技術。あらゆる戦略。あらゆる戦術が交錯する戦い。


場外負けというルール設定があるからこそのオムーの作戦。それでさえりんの矢により場外負けを喫してしまいそうになるが、運よく勝つことのできた試合。

ルールのない実戦では勝敗は違っていたのかもしれない。それを一番解せていたのは、紛れもないオムーだ。

 


オムー『強い奴って・・いっぱいいるんだなぁ・・=ω=.;』

りん『あーん。+゜(ノД`)゜+。力み過ぎた・・・』

 

退場間際、足を引きずり、りんへ歩み寄っていくオムー。解っていた。己の実力を上回る存在を。それは言葉ではなく、そのまま行動で表していた。

 

審判員に肩を借りたりんは、オムーが退場間際にこちらに近づいてきていることがわかり、顔を上げた。


りん『・・・・・?』

 

オムーは何も言わず、りんの片方の手を取り、高々と腕を挙げさせた。それを観客達が見るや否や、またも盛大な歓声が怒涛のように鳴り響いている。


『わぁぁぁぁああああああああぁぁぁぁ』

『あああああぁぁぁぁああぁぁ』

 

死闘を演じるも、そこには深い絆があり、そして戦いによりまた育まれていた。そのオムーの計らいに対し、そして二人への敬いは観客達の声援をより一層大きくさせている。


りん『・・・きーちゃん(*´▽`*)』

オムー『・・・・・=ω=.』


両者がリングを去っていくその背には、戦いを終えた友誼なる情が見えている。今だかつてなかったその戦いは人々に感動を与え、闘技場内いっぱいにこだました歓声は、二人が闘技場から見えなくなるまで続いていた。







次々とトーナメント第一回戦の戦いは終わっていく。
今まで勝ち上がったのは、第一試合勝者であるアメル。
第二試合勝者のクルス。そして今試合、第三試合勝者のオムーだ。

そして次なる戦いは、トーナメント第一回戦、第四試合であるエビちゅとhananaの戦いだ。果たして誰が勝ち進み、覇権を手にするのだろうか。




第弐百弐拾七話

2010-06-04 | 本編









今から数年前。

都市郊外にある広大な森林。
弓筒を背負い、一人佇んでいるりん。左手に弓をもち、脱力させた腕をそのままに、静かに目を閉じた。


りん『・・・・・。』

 


これから夏を控えた春の終わり目。
周囲の草木は青々と生い茂り、数え切れないほどの大木が周囲の景色を阻むように密度高く立ち並んでいる。しかし、その一郭だけは伐採された残骸となる木目が足元の地面を埋めていた。

木こりとしての一仕事を終えた後、必ず立ち寄るこの場所。汗により、こめかみからの髪の毛は火照った顔に着いている。目を瞑ったりんの耳に入ってくるのは鳥のさえずりと木々を避けた風の音だ。

僅かにあけた口にて呼吸し始めたりん。
いつもの場所にて、いつもの事柄が始まる。

 

りん『・・・スー・・・ハー・・・・。』

 

 

反動もなく、バック宙返りをするように飛び上がり、天地を逆に背軸にて高速回転を続けざま、矢筒から弓矢を一瞬にして取り出し弓を射った。

 

ババッ シュシュシュッ!!!

 

宙返りをし終えた体は屈伸しつつ、音も立てずに地面にゆっくりとした着地。すると何百メートルも離れた場所にて矢が木々に着弾する音が響き渡ってきた。

 


カッ・・・・カカッ!!!

 

この場所はりんのいつもの訓練場。
木こりとしての、女としての顔を忘れる瞬間。
修羅の顔を出す場所である。

 

りんの修行の最たる由縁。それは父母の仇打ち。そして、いつの日か敵討ちという目標と並び、最強という称号に憧れをもっていたりん。たった一人、修行に励む毎日。現状に満足することのない日々。くる日も、くる日も、追求し続けた弓術。斧殺陣、爆轟攻撃。

 

ババッ シュシュシュッ!!!

 


カッ・・・・カカッ!!!

 


りん『・・・違う・・・こうじゃない・・・もっと早く・・もっと強くなれる・・・』

 


幾度となく切磋琢磨されたその技術。肉体にある傷跡はその壮絶な修行を物語っている。

 


ババッ シュシュシュッ!!!

 


カッ・・・・カカッ!!!




りん『・・惜しい・・こうじゃない・・・』


 

ババッ シュシュシュッ!!


カッ・・・カカッ!!

 

りん『・・・・・こうでもない・・』

 

 

まだ上がある。まだ遠い。まだ惜しい。頂上が近い。常に上をみたその心技体。日々精錬された体は、およそ人と呼べる代物ではない。野生とも言える、しなやか、かつ磨かれた筋肉の密度は高みを増していた。

 

・・・・・・

 

・・・


 

そんなある日。何かが起きた。
いつもの毎日。いつもの場所にていつもの特訓をしていたある日。

 

りんの顔に一枚の葉が落ちてきた。ひどくゆっくりと。いつもの落ち葉がやけにゆっくりと落ちてくる。

 


りん『・・・・・?』

 


木漏れ日を避けるように、りんの顔前をゆっくりと。研ぎ澄まされた集中力による遅時間感覚。揺れる木々の葉が風に揺れる姿が考えれないほどに遅く見えている。

その頃はまだ冬にならぬ、枯葉が埋もれた地面。枯葉に混ざろうと一枚の葉が目の前を優雅に着地した。


風に刃向かうこともなく、ただ優雅に。風に流され、ただその体を委ねた動き。りんはそれを習うように矢筒へ手を運び、


サッ・・・・・

 


瞬時にして目標物である木に矢を射った。

 

ババッ シュシュシュシュシュッ!!!

 


カッ・・・・カカカカッ!!!

 


森に響き渡った今までにない音。

 

りん『・・・・・・・。』

 

 

その費やしていった日々に間違いはなかった。指の位置、形、流れ、呼吸、その全てが有無を言わさないものに。

 

りん『・・・これ・・・これだわ・・・・』

 


一切の無駄のない流れるような手捌き。申し分ないスピードとその矢の力。それはまるで弓が体の一部に、矢が伸びた拳のように感じられる。

 

執念という血を流した果て、磨かれていったその体に備わったもの。最強とは何か、自然から学び取った瞬間であった。

 

 


『わぁぁぁあああああぁぁぁ』

『ああああぁぁぁぁああああぁぁ』

 

そして今いるこの場所は3万人の観衆が見守る闘技場。耳にこれでもかと歓声が飛び込んできている。そのりんは自らの技術の、精神の、肉体の力比べとしてオムーと対峙していた。あの頃と同じ。目をゆっくりと閉じ、精神を集中させている。

 


実況『両者!!息を整えている!!!』

『わぁぁぁぁぁああああああぁぁぁ』

『おおおおぉぉぉぉぉぉおおおぉぉ』

 


りんのしなやかな脚線はジリジリと広げられ、重心を低く保ち、弓と斧をもつ鳳凰の構えを再び作った。そしてゆっくりと目を開け、呟いた。

 

 

りん『・・父さん・・母さん・・・見てて・・・この戦い・・・負けられない・・』

 

 

 

そしてオムーもこの極まった戦いの中。昔の記憶が頭を過ぎっていた。

 

 


今から数年前。日照りが肌を容赦なく熱す夏の暑い日。オムーは父から戦いの手解きを受けている。

 

バッ   カンカンカカンッ!!

 

重い鎧を着せられ、少しでも立ち止まり休みたい、そんな気持ちを如実に表情として顔に出しているオムーは、息を切らしながら必死に父の教えを受けている。

 

 

ニコシア『ほい(`ω´.)!それどうした!』

オムー『うりゃぁ~≫ω≪.!!』

 

カカンッ!!

 


少しでも風が吹いて欲しい、少しでもこの暑さから抜け出したい、父の厳しい教えの対価などを考える暇もないほど扱かれている毎日。

 

 

ニコシア『あまい(`ω´.)!』

 

 

振りかぶられた大降りの剣を操るオムーの手元目掛け、父の剣が向かった。

 

ガキーン!!


オムー『ぐぁ・・・・』

 

籠手をされたオムーは剣を手放し、音を立て剣が地面に落ちてしまっている。

 


ガランガランッ!

 

ニコシア『たわけめ(`ω´.)!!』

 

それは日常茶飯事。またも父からの洗礼を受けていた。剣の腹を使い、オムーの頬をこれでもかと勢いよく打ち放ち、転げるように倒れてしまうオムー。

 

バシッ!!!


オムー『ぐはっ≫ω≪.!!』

 

ゴロゴロゴロゴロッ!!!

 


ニコシア『立てぃ(`ω´.)!!!』

 

激しすぎる運動をし続けると、足の裏の絶え間ない機械刺激や打撃の体への痣による皮下出血が加わり、毛細血管の赤血球の破壊と溶血により、血液中に鉄イオンを含むヘモグロビンが放出される。

その濃度があがると唾液中にもわずかにでもヘモグロビンが出され、かつ、強度な運動後の筋肉破壊による、赤血球のヘモグロビンの一種と言われている高ミオグロビン血症が起こる。これらは、口に鉄イオンの味を感じさせる原因となっているという説がある。

オムーの乾いた口には、その錆びた鉄に近い味が無論している。乾きすぎた喉はうまく言葉を発することができない。


オムー『・・・はぁ・・・ぜぇ・・はぁ・・と・カッ・・ゴホッゴホッ・・父ちゃん・・・もう勘弁して・・』

ニコシア『ふん(`ω´.)今日はここまでじゃ!!』

 

 


・・・・・


・・



そんなある日。オムーに何かが起きた。
いつもの父との特訓。いつもの厳しい扱き。

 

ニコシア『うぉぉりゃぁ~(`ω´.)!!』


ブンッ!

 

父の剣がゆっくりと見える。
左斜め上より自らの腰下に向かう太刀筋を予測できたオムー。

 


オムー『・・・ぇ・・?』

 

それに合わせ、父に背を見せ回転しつつ、父の剣筋を受け流すように斜めに剣を即座に置いた。

 

グルッ・・ササッ・・

 

 

ニコシア『りゃぁ~!!・・・・ぉ(`ω´.)?』

 


そのオムーの無駄のない動き、流れるような速さは、父の既に打ち放たれた剣を止める余裕を与えさせてはいない。父はそのオムーの動きは気づきはすれど、体は対処出切る筈もなかった。降り下ろされた剣はオムーの斜めに置かれた剣にあたり、何もない場所へ流されていく。

 

ガキツズルルルル・・・・・

 

ニコシア『・・・むぉ(`ω´;)』

 


体勢を崩したニコシアは前のめりに倒れそうになっており、オムーの連続攻撃である剣軌道は見事にニコシアの下を向いた首を捉えるのだった。

 

オムー『うりゃぁ~≫ω≪.!!!!』

 


ガコーーーーーーーーーーーン!!!

 

ニコシア『・・(>ω<.)オホッ!!!!』


オムー『・・・・ぁ・・・=ω=.;』

 


首後ろにある兜の余鉄に見事に直打したオムーの剣。師匠である父は弟子である子の攻撃により、初めて地に両手を着いた瞬間であった。

 

 

ザザッ!!

 


日々続いていた修行により得た技術、りんと同じように、オムーも何某かの戦いの真髄を極めていた。最適な連鎖した攻撃。複合されたその戦術は高みを得た。

 

 

ニコシア『ゴホッゴホッ・・よくぞやった・・免許皆伝じゃな・・・(`ω´;)』

オムー『父ちゃん・・・・大丈夫=ω=.;?』

 

オムーは父に駆け寄ると、咳き込む背を向けながら勢いよく父は立ち上がった。

 

ニコシア『この程度で手は要らん(`ω´.;)!!』

オムー『・・ぁ・・・ぅん・・・』

 


剣を杖代わりに、体重を支えている父は肩を上下にしながら遠くを見つめた。

 


ニコシア『よいかオムー・・・世の中には、どんなに強くなっても、もっともっと強い奴がおるもんなんじゃよ(`ω´.;)』

 


太陽光の逆行により全身黒くなった父に目を向け真剣に聞いているオムー。遠くを見つめつつ話している父の顔は、心なしか嬉しそうだ。

 

 

オムー『・・・うん・・・・』

ニコシア『最強と言えど、むしろそう思っていた方がよいしのぉ・・』

 

 

オムーは唾を飲み込み、生半可に喉を潤した。

 


ニコシア『・・・・無論、そやつと対峙したとき。負けるじゃろう』

オムー『・・・負ける?・・・』

ニコシア『ただ負けるのではない。全てを駆使してまけた方が気持ちいい(`ω´.)』

オムー『すべてを駆使・・・=ω=.』

ニコシア『必ずその場にはルールがあるものなんじゃ・・それを利用しない手はない。小道に阻まれていたか、地は固いか、風の向きは、太陽の位置は、壁になるものがないか、相手の弱点、こちらの強み、全てを合算して戦略で活路を見出すのじゃ(`ω´.)』

 


・・・・・・・・


・・・・


・・・

 


『わぁぁぁああああぁぁぁ』

『あああああぁぁぁぁぁああぁぁ』

 

 

そして今。オムーはこの闘技場にてりんと対峙している。極限状態の一瞬。まるで走馬灯の一部が流れたかのように、オムーの頭に映されていた。

 

オムー『へへっ=ω=.;・・父ちゃん・・・ぜぇ・・はぁ・・父ちゃんだったら・・こんなに強い奴を相手にしたとき・・どうするんだい?』

 


互いに呼吸を整え、次なる戦略を練っていた。独特な呼吸法を得とくしていたりんは幾分息を整えるのが早い。

 


りん『・・フゥ・・ハァ・・負けるわけにはいかない・・・・・』

オムー『ぜぇ・・はぁ・・・考えろ・・考えるんだ・・・俺は勝つ・・・俺は勝つぉ・・・』

 


りんが既に構えに入っている。
ふと目を周囲に向けてみれば、オムーの目の前に広がったのは狂喜乱舞している観客達。

 


オムー『・・そうだ・・ここは実際の戦闘じゃないんだ・・・。これは大会・・・ルールがある・・・。そうか・・・これだ!!この方法しかない!!』

 

強敵と対峙したオムーのタクティクスとりんのハンターとしてのプライド。互いに譲れない戦い。積み上げた全てを掛けた二人の最後の衝突。

 

オムー『速さを封じるには・・体力はまだ俺の方があるはず・・・・・これしかねぇ!!!いくぜ!りり!!』

りん『やぁぁああぁぁ!!!』







第弐百弐拾六話

2010-05-08 | 本編





信じられない光景が観客達の視野に入った。
崩れかかった分厚い石床を激しく吹き飛ばしながら、地中から泥や土にまみれたりんが突如飛び出してくるのだった。

 


ガコーーーーーーーン!!!

 

 

飛び出した体は、付着した土を振りほどさんばかりに背軸を中心に回転し、勢いよく地面に降り立ったりん。回転を止めたその足場の石が散っている。

 

ザザッ!

 

左手に弓、右手に片手斧を持った手は翼のように広げたまま、広く置かれた足の重心は低い。360度を対峙する鳳凰の構えにて身構えている。まとめ上げられていた髪の毛は全て肩までおろされ、急激な停止からの回転の余韻を表しているのは、土に塗れたプラチナプロンドの髪の毛だ。

 

りん『はぁ・・・はぁ・・・フー・・・』

 


地中からの鈍く重い音は以前続いており、荒い息を呼吸法にて整えつつ、その音を追うかのように地中にいる何かを追っているりんの鋭い目。

 


ズーーーーーウン!!!

ズンッ!!

 

トカマク『嘘でしょ・・・地中での戦闘?』

ファラン『奴らを舐めたらあかんぞよーω■』

hanana『ほょょょぉ^0^;;すごいでし!!』

エビちゅ『そんなことで驚いてるようじゃだめでちゅ・・・獅子たちは皆できる芸当でちゅよ( ̄ω ̄ )』

hanana『エビちゅさんもできるんでしか^0^!?』

エビちゅ『も・・・もちろんでちゅ( ̄ω ̄;)』

アメル『アメさんにも本当にできるのかな(ーwー;)』

 

すると一瞬にして地面が焼け付くように蒸気を発し、真っ赤に染まったかと思えば、地上に勢いよく炎の玉が飛び出し、りんの顔面へ向かっている。

 


ジュゴゴーーーーーーーーー!!!!


りん『!!!!』

 


低く構えた体をそり返すように尚も曲げ、横に倒れ掛かるように寸でのところで避けるりんは体勢を崩した。飛び出した炎の玉は湾曲した最上階の観客席の頭すれすれの所を飛び空高くへ消えていく。

 

ゴゴーーーーーーーーーー!!!!

 

ファラン『フレアじゃなーω■』

エビちゅ『フレアが土と混ざってメテオみたいになってるでちゅ( ̄ω ̄;)初めてみまちゅね』

 

 


零コンマの攻防。りんは避けきった勢いで倒れつつも、その右手は片手斧を小指と薬指のみで瞬時にして器用に持ち替え、残る3本の指は背中の弓筒へ運ばれている。その瞬間的な動作が見えているものは少ない。

地面に体側面があたる直前、すでに射る準備が整った左手の弓と右手の弦はりんの気組みの入った声と共に撃ち放たれた。

 

クルス『斧をしまった(゜Д゜)?弓か!?』

変装男『ほむ(■ω■.)』

りん『ぃやぁぁあああぁぁ!!!!』

 

ビシュンッ!!!!

 


狙った場所は無論リング地下。地中にたやすくめり込み突き進んでいった矢は、地中奥深くまで進む鈍い音がリング上にも響いてきている。


ズズズズズ!!!!

 

するとりんが射ったその弓穴から、オムーが周囲の石々を跳ね除け地上に飛び上がってくるのだった。

 

ガコーーーーーーン!!!!

 

その左足大腿部には矢が刺さっている。
両手には魔法剣がすでに振りかぶられていた。

オムー『うぉぉおぉぉ!!!』

 


ブンッ!!!

 

オムーの真一文字切り。脳天から股下までを目指した直線の太刀筋は、りんの素早いフットワークにより、頬から数ミリを通り空を切っており、その場にはりんの前髪を僅かに残した。

しかしそれはオムーにとり連続技の初弾に過ぎなかった。避けられると同時、オムーは振り下ろされた魔法剣の剣先を不自然にりんへ向けた。

 

りん『・・・・?』

オムー『スペッナズボルト!!!』

 

スペッナズボルト。
人間の体には微量な電気が流れており、筋肉の収縮などを担っている。
体内の電気を増幅させ、秒速150kmにて魔法剣により空気中へ雷電を発生させる大技。

 

カッ!!!

ゴゴーーーーーーーー!!!!

 

りん『・・・ぅ・・・・・』

 

意表を突かれたこともあり、右肩を犠牲に残像を残し咄嗟に避けたりん。

 


オムー『・・・嘘だろ・・・避けやがった・・』

 


右肩の破れかかった服の隙間からは血を滲ませた肩が見えている。
離れ間際、親指だけで弦をもった手は他四本の指を広げながら オムーへ置き土産を置いていった。手の平から何かが離れ、オムー目の前に残された小型カプセル。

オムーから離れるりんの速度とカプセルを投げたその速度は等しい。
顔元でゆっくりと回転しているカプセルは訝しげなあの音を出している。

 


ジーーーーーー


オムー『=ω=.!!!!』

 


歓声の中、微かに導火線の音をとらえたオムーの耳は魔法壁を唱えるきっかけとなった。

 

オムー『アイスフロストバリア!!!』

 

空気中の水分を瞬時にして凝固させ、両手をクロスしたオムーを包み込むように瞬時にして作られたのは球体の氷壁だ。

 

ビーーーーーカカカカカカカカッ!!!

 

 

と同時、またもあの爆発が闘技場を襲った。

 


ドゴーーーーーン!!!

 

氷は砕け散るも、オムーの体にはダメージが蓄積されている。
爆圧にてリングを転げるように吹き飛ばされたオムーは止まると同時、

 

ゴロゴロゴロゴロ~ザザッ!!!


左足に刺さった矢を今になって抜き、よろけつつも周りをキョロキョロすると、りんの位置を確認するや否や、持っていた魔法剣を強く握り締め身構えた。構えたその剣先はまだぶれていない。

 

 

 

オムー『ぜぇ・・・はぁ・・・≫ω≪.;』

 

やや離れた場所にて体勢を整えるりんも息を整え、ポケットから出した薬草を肩へ塗っている。

 

りん『ぅ・・・・く・・・肩にあたった・・』

 

 

 

オムー『・・ぜぇ・・・はぁ・・・ぜぇ・・はぁ・・・』


りん『・・はぁ・・はぁ・・・フー・・・はぁ・・・。』

 

今までの歴史の中でなかった目を見張るその戦いは観客たちを虜にしている。

 


『すごい!!思い当たる言葉がありません!!どこまで驚かせてくれるんだぁ~!!!!』

『わぁぁぁあああぁぁぁぁぁ』

『おおおおおおぉぉおぉぉぉおおぉぉ』

 

 

クルス『奴らも本物(゜Д゜)油断できねぇ奴らだな』

ファラン『これこそが獅子の戦いじゃなーω■』

エビちゅ『hananaしっかり見ておくでちゅよ( ̄ω ̄ )』

hanana『・・はい!』

変装男『まったく修行不足じゃ(■Д■.)たわけめ!!それでもバルタルトの血を受け継いで・・・』

アメル『ん(・w・´)?バルタルト!?』

変装男『ゴホンゴホンッ(■ω■.;)ぁいや・・バルサミコ酢が食べたいなぁと思ってな』

アメル『・・・・(・w・´)』

 

 

りんとオムーの息は互いに荒い。
いまだ対峙したことのない強さを目前に、二人は驚きを隠せないでいるのだった。

 

オムー『やべぇ・・早い・・ぜぇ・・はぁ・・早過ぎる・・あたらねぇ・・ど・・どうする・・』

りん『近接では勝てない・・・やはり弓でいくしかないわね・・・でもあの剣魔法はをどうすれば・・・』






 


第弐百弐拾五話

2010-04-26 | 本編









石畳のリング中央にいる3人。
オムーとりんは審判員からルール説明を受けているようだ。


その様子を見守る変装男とファランは歓声にかき消されそうなか細い声で話し始めた。

変装男『しかしまたなぜこのような戦いを・・・我々伝説の獅子にはその種の特徴があります。その種なりの戦い方がある。そこであえて力量を測り、優劣をつけることに何の意義があるのか・・・。私には解せませぬ(■ω■.)』

 

二人の男の視線は依然りんとオムーたちへ向けられたまま。
興奮冷めやらぬ観客席の中、王様に変装しているその男は、偽名ファランを持つ真の王様へ問いかけた。すると暫く口をつむっていたファランは緩慢に返答した。


ファラン『桜梅桃李じゃーω■』

変装男『(■ω■.)?』

 






とその時。



 

ドゴーーーーーン!!!!

 

リング中央にて突如起きた爆発。
観覧席に座るトカマクらの体を後部座席に牽引させたのはその強い衝撃派だ。鼓膜が破れんばかりの爆音と共にリング一帯は一瞬にして白煙で包まれてしまっていた。

 

アメル『キャッノwノ』

クルス『なんだ(゜Д゜)何がおきた!?』

 

実況『何がおきたんだああぁぁぁ~!!!もう戦いははじまっているのかあああぁぁぁ~!!』


『わぁぁぁあああぁぁあぁぁ』

『おおおぉぉぉぉおおおぉぉ』


一気に歓声は高まっていく中、耳鳴りをそのままに目を細めながらリングの様子を見守る一同の鼻には、強い火薬の匂いがまとわりついている。

 


変装男『この爆発は・・・(■ω■.;)』

ファラン『この香り・・火薬じゃな・・・魔法爆発ではないーω■』

トカマク『りんだわ・・・りんは斧と弓の使い手であると同時に爆薬にも精通している』

 

爆発と同時、アメルの膝元に見覚えのある何かがリングから飛び散ってきていた。

 

ビタッ

 

アメル『・・・ん(・w・`)?』

 

やや湿気を伴ったその物はアメルの言葉を失わせた。

 


アメル(これは・・・オムさんにあげたブレスレットだ(>w<`;)!!)

 


爆発物の脅威。爆薬が爆轟現象を起こす化学反応。超音速で未反応部分へ伝播していき、この爆轟波は爆薬を急速に高圧・高温のガスへと変化させる。
 
内部から発生した爆轟波が爆薬の表面に達するとガスの急激な膨張を生じ、周囲の空気や構造物、人体へ強大な衝撃波を超音速で伝達し破壊していく。


その音速を超える物体の移動により発生された衝撃派は、ある物をアメルの膝に一瞬にして運んできていた。それはかつてアメルがオムー入隊時に譲ったブレスレットだ。その湿り気の正体はうっすらと滲んだオムーの血であることは間違いない。


アメル『オムさん(>w<`;)!!』

 


闘技場一帯、急激な熱膨張を起こした空気はまだ気圧が低く、周囲から空気を呼び込み、言い知れぬ風鳴りを起こさせている。

 


フヒューーーーーーーーーーーー・・・・・ヒューーーーーーーー・・・

 

石畳のリングと観客席の間に用意された実況席では、強い衝撃を間近に味わったと言わんばかりの乱れた髪の毛で実況者は鼻息荒く叫んだ。

 

実況『いまだ二人の姿が見えません!!煙がリングを覆っています!!』

 

 


風鳴りだけを残し、暫し訪れる静寂。

 


フヒューーーーーーーーーーーー・・・・・ヒューーーーーーーー・・・

 


クルス『りんも爆発の巻き添えを食らったんか(゜Д゜)?』

トカマク『いや、りんのスピードは獅子の中でも郡を抜いて早い・・・りんならあの距離でも避けているわ・・』

アメル『・・・・(>w<`;)』

エビちゅ『オムーは、まともに食らいまちたね( ̄ω ̄ )』

hanana『ボルケノさん><』

 

hananaは怖さのあまりリングを見ることもできず、ボルケノの太い腕に抱きつき、震えながら顔を埋めている。


ボルケノ『・・グフ・・』

 

 

そして徐々に煙が薄まり始めると、重苦しい音が場内に響き渡り始めるのだった。

 

 


ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 

 

 

実況『・・・・?何だ・・何かが聞こえる・・何の音だ?』

 

 


ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!

 

 

 

 

・・・・・・ドンッ!!!

 

 


白煙は呼び込まれた風に混じり、うっすらとリングの姿を出し始めた。それは爆破により破壊され、はげかかった石畳のリング。しかしそのリングには、二人の姿はなくなっているのだった。

 

 

クルス『いねぇ(゜Д゜)』

ファラン『はて・・・ーω■』

アメル『ほぇ(・w・´)りんとオムさんがいないよ!!』

エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』

変装男『どういうことじゃ(■ω■.;)』

 

 

煙が完全にリングを出し終えた頃、観客たち全員は辺りをキョロキョロと見回している。今そこにいた二人の姿はない。がしかし、異様な音は以前続いているのだった。

 

 

ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!

 

 


実況『・・・これは・・これはどういうことだぁ~!!不気味な音だけが響いているぞぉ~!!!』

 

二人の姿はなくとも低く鈍い音が続く闘技場。
観客なども一体その音の主はどこなのかを見極めるため辺りを見回している。

 


エビちゅ『・・・( ̄ω ̄ )』

トカマク『これは伝説の獅子たちは見えているの!?これが超光速の戦いなの!?』

エビちゅ『違いまちゅ・・・これはスピードによる隠れ蓑ではありまちぇん( ̄ω ̄ )これは本当にここにはいないようでちゅね』

アメル『えぇ!?二人はどこ(・w・´;)!?』

hanana『どういうことなんでしか^0^;』

変装男『むむむ・・・私にもわかりませんぞ(■ω■.;)』

ファラン『未熟者めがーω■わかっておるのは一人だけか』

 


選手観覧席に座る中、その戦いに気づき始めたものが一人。
それは顔に冷や汗を流しているクルスだ。

 

 

クルス『・・やるじゃねぇか・・あいつら・・』

 


はげかかったリングの一部、石畳の一マスとなる正方形の分厚い石が震えている。

 

カタタ・・・カタカタカタカタ・・・

 


hanana『石が震えてるでし・・・』

 

 

すると、突如その石は遥か上空へ舞い上がり弾け飛ぶのだった。
それはまるで反重力により空へ落ちていくようにまっすぐと。


バココンッ!!!!!


アメル『ほぇ(・w・´;)?なんだあれ』

トカマク『どういうこと・・・石が弾け飛んだわ』

 

りんとオムーが見当たらない今。3万の観衆の目はそのたったひとつの震える石に目を向けていた。そして一瞬にして舞い上がる石。観衆は後頭部を背中に着かんばかりに折り曲げながら見上げ、今ある状況を読み取ろうとしている。

 

実況『リング石が突然舞い上がったぁ~!?これはどういうことだぁ~!!!』

 

肉眼で見え辛くなる程の高い位置へ飛ばされた石は一瞬止まったかに見えたが、次なる動きは引力に従い徐々に勢いをつけ地面に向かい落ちていく。

何が起きているかわからぬまま、その石の落下に合わせ首の角度を緩めていく選手たちも同じ疑問を抱いていた。そして地面まで到達した石は勢いよく叩きつけられ、

 

ガコンッ!!!


粉砕された破片はバウンドして再び地面に落ちている。

 

・・・ガララン!ガラン!!

 

実況『これは一体・・』

 

そしてまた隣の石が同じように空へまっすぐに飛び上がっていく。

 

バココンッ!!!

 


変装男『またじゃ・・(■ω■.;)』

トカマク『・・・超光速でもない?それじゃぁ・・りんとオムーはどこにいるっていうの?』

 

ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!

 

 

エビちゅ『この音は・・・( ̄ω ̄ )』

アメル『オムさんは無事なの(>w<´;)!?』

クルス『心配すんなアメル(゜Д゜)奴らは戦っている』

ファラン『・・・・ーω■』

 

そして再び飛び上がった石がまだ落下しないとき、そのまた近くの石が弾け飛び空へ舞い上がっていくのだった。

 

バココンッ!!!!

 

間髪入れずにその隣の石もまた飛び上がっていく。


バココンッ!!!

 

その三つ目の飛び上がりを合図に、リング上の石は順に空高く弾け飛び、まるで上空にて石の階段をつくるかのように綺麗に段差を作り舞い上がっていくのだった。

 

ババババババババババババババココンッ!!!!!!

 

もはや観衆も実況者も、そして選手たちも何が起きているのか把握できていない。

 

実況『・・・・これは・・・』

アメル『ほわわわわわぁ(・w・´)!!!なにあれなにあれ!!』

エビちゅ『・・・・( ̄ω ̄ )』

トカマク『いったい何が起きているの?』

クルス『・・・・(゜Д゜;)』

 


そしてまた最上部へ到達した石は順に落下体勢に入っていく。
落下状態では逆向きに階段を形成し、またも綺麗にリングへ落ちていく石。

 

バラバラバラバラバラバラバラッ!!!!


階段上に落ちていっていた石たちは激しい音を立て、元あったその場所へ戻ってきている。

 


そしてまた、

 

ババババババババババババココンッ!!!!!


バラバラバラバラバラバラバラバラバラッ!!!!

 

まるで見世物の噴水のように空中に石の階段を造り、芸術的、かつその不可思議な現象は立て続けに起こっていた。あの得たいの知れない音と共に。

 

ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!

 


バババババババババババババココンッ!!!!


バラバラバラバラバラバラッ!!!

 

その石が壊されるラインは八角形のオクタゴンリングを二分するような直線を何本も作り、リングの石畳が全て弾け飛んでしまうほどに飛び跳ねては空から落下してきている。

 


実況『説明が・・・つきません!!!いったい何が起こっているのでしょう><!!!』

 


アメル『クルスくんはわかってるの(・w・´;)?おしえてよ!?どうなってるの?』

エビちゅ『・・・・超光速でもなく・・石が飛び散る衝撃・・・( ̄ω ̄ )』

トカマク『クルスは見えるの?』

クルス『あ(゜Д゜)?俺にだって見えねぇよ』

変装男『見えないじゃと(■ω■.;)ではわからんも同然ではないか』

クルス『見えていないが・・奴らのやってることはわかる(゜Д゜)』

hanana『みえなくても・・わかるんでしか?』

 

 


ファラン『桜は桜なりに桜の花を咲かせ、梅は梅なりに梅の花を咲かせる。
獅子たちもあてはまるーω■互いに強さを極めておる・・』

 

ファランは変装男に向かって呟いた。

 

 

変装男『・・・(■ω■.;)』

ファラン『種は違えど、強さを追求をする道は測り合いが筋道・・・それが獅子たちが戦う理由じゃーω■』

変装男『・・・交じり合うのが運命ということですかな(■ω■.;)』

ファラン『ほむーω■』

 

桜には桜の良さがあり、梅には梅の良さがある。
桜前線が列島を漸次北上し、人々に癒しを与えていく。桜ならではの癒しを。
桜以外では代替できない、桜ならではの癒しを。

 

 


ズ~~ウン!!ズンッ!!!!

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!

 


アメル『ねぇ教えてよ(>w<´)!なにがどうなってるんかさっぱりだよわたし!!』

エビちゅ『もしかして・・遥か上空で戦っているということでちゅか( ̄ω ̄ )?』


その声と共に空を見上げ、目を凝らしてみる一同。
しかし何も見えてこない。

 

 

クルス『まだわからねぇか!!上じゃねぇ・・・・下だ!!!!』

アメル『えぇ(・w・´)!!』

エビちゅ『下( ̄ω ̄;)!?』

hanana『!!』

変装男『なんじゃと(■ω■.;)!?』

 


ズ~ウン!!!・・・・・ズンッ!!


ドドンッ!!!

 


ファラン『桜梅桃李じゃ・・・だからこそ力を試しあう・・・最強は一人にのみ与えられる称号じゃからなーω■』

 

 

とその時。数百年という長い歴史をもつ闘技場にて、今だかつてない光景が観衆たちの目の前に現れるのだった。




ガゴーーーーーンッ!!!





















第弐百弐拾四話

2010-03-04 | 本編










後にも先にも、このような戦いは行われることはないであろうと観客達は心なしか感づいていた。いったい我々に何を見せてくれるのか。それは僅かな時間を待つことで確実に訪れる、驚嘆に値する紛れもない事実。

それを目の前にした観客達は、これから行われる世紀の一戦に身を乗り出してみており、止まることなく二人に向けられ続けているのは歓喜極まる声援や歓声だ。


『わぁぁぁあぁぁあああぁぁあぁ』

『おおぉぉぁぁぁあああぁぁ』

 


エビちゅ『hanana( ̄ω ̄ )』

hanana『はい!!』

 

歓声に包まれた中、唐突にhananaを呼ぶエビちゅは、りんとオムーのいるリングを見つめながら隣にいるhananaに話し始めた。

 

エビちゅ『この戦いをよく見ておきなちゃい( ̄ω ̄ )』

 

hananaはエビちゅのいつにない真剣な表情を読み取ると、すぐにりんとオムーのいるリングへ視軸を変えた。

 

今そこにいるりんとオムーは、先ほどとはうってかわった別人となっているのだった。
和の皮切りとなる笑顔からかけ離れた氷りつくような目つき。人間の持つ特有の表情である笑みはそこには微塵も感じ取れない。もはやそこにいるのは、相手を打ちのめすことだけに特化した獅子である。

 

hanana『・・・さっき・・ここにいた人たちでしか?』

エビちゅ『あの二人から感じ取るでちゅ( ̄ω ̄ )感覚を呼び覚ますのでちゅ』

hanana『・・・呼び覚ます?』

エビちゅ『・・・・古来の意志を( ̄ω ̄ )』

hanana『・・・・・・。』

 


互いに目を合わさずにうつむき、既に戦闘モードに入っているりんとオムー。その間に立っている審判はルールの確認の為、二人に話し続けている。


『・・・相手が戦意喪失したと取れる場合や、気絶、またはこのリングから出たとき・・・』


すると、説明がまだ終わらない状態であるにも関わらず、オムーは突拍子もないことを言い出すのであった。

その顔は下へうつむいたまま、微動だにせずただ口を小さく動かしたオムー。
審判に聞こえる必要最小限の小さい声だ。

 


オムー『審判・・・早く離れな・・』

審判『!?』


本来戦いというものにゴングなどは無用。獣のもつ闘争本能はいつ爆発するかはわからない。道にて塞がれたとき、餌の奪い合い、縄張り争い、雌の奪い合い。その要因は実に様々なものだ。

そして闘うことを常とした二人の間にも何某かの理由が生まれていた。強さという唯一無二のプライドの中で生き、日々切磋琢磨し自らの技を磨いてきた伝説の獅子たち。己の強さの確認、否、優劣の為の戦いである。そこに妥協の文字はない。

二人の制空権が触れた瞬間、既に戦闘は始まっているのだった。

 

オムー『・・・もうはじまってんだよ・・』

審判『・・・・・ゴク・・・』

 

審判の生唾を飲む音が緊迫した空気を振動させた。

 

オムー『・・・・そうだろ?・・りり・・』

 

太陽の光を綺麗に反射したりんのブロンドの前髪は目を覆っており、どこをみているかはわからない。そしてうつむいたりんの口からは返事がない。


りん『・・・・・・。』

オムー『・・・そういうことだ・・・』

 

オムーは直立したまま、左手は腰にある魔法剣の鞘を掴んでいる。そして剣の柄を弾き、僅かに鞘から刃が見えるようにさせたのは左手の親指だ。その指の長さの分だけ鈍い輝きを持つ剣が顔を出し、審判の目に入った。

 

ジャッ


数センチの抜かれた剣の刃を確認した審判は身体を仰け反らせ、転げるようにリングを後にしている。


審判『ひぃ~><!!』

 

その頃合をみてか、脱力したりんの腕の手元から見たことの無い金物が地面に転がり落ちてくるのだった。

 

ス・・コンッ!コロコロコロコロ・・・

 

りんの足元からオムーの足元へコロコロと転がっていく。

 


オムー『・・・・・=ω=.;?』

りん『・・・・・・・。』

 


よくみるとそれは導火線らしきものが物体から見え隠れてしており、小さく火花が散っている。

 

ジーーーーーーー

 

オムー『・・・・イクスプロシブ=ω=.;!!』

 

その瞬間。

 


ドゴーーーーーン!!!!

 


耳をつんざく爆音が闘技場を襲うのだった。
周囲の観客たちを吹き飛ばさんばかりの衝撃波をとどろかせいるその爆発は、リング全体に白煙を一瞬にして広げ、その煙は闘技場観客席最上階の高さまで上がり、オムーとりんの姿を隠している。















第弐百弐拾参話

2010-02-21 | 本編







 

クルスとトカマクの試合が終わった小休憩の時間。
武術大会にてファランと偽名を名乗る王様はトイレにきていた。

普段は広々とした専用のトイレを使っているが今日は違う。20人程が横に並び、立小便ができる闘技場施設トイレだ。王様は狭さを感じながらも開放感に満たされ、情けない声を漏らしている。

 

ジョボジョボジョボ・・・・・

ファラン『・・ぁふぁ・・・ふぁは・・ーД■』

 

込み合っている公衆トイレは長蛇の列を作っており、用足しの早い男のトイレは人の移り変わりが激しい。

小便の長い王様の隣は次々と人が移り変わっていく。次に王様の隣に来たのは変装をするよう依頼された男である。催尿感から腰紐を緩めパンツを脱ぐ手はいささか急かされている。


『・・・このローブはめんどくさいのぉ・・いくつ紐があるんじゃ(■ω■.;)』

ファラン『おろ(-ω■ )?おみゃーもか』


左からの聞きなれた声を聞いたその男は二度見して顔を合わせた。

 

『お(■ω■.)?・・こんなところで・・』

ファラン『どうじゃ?我が王国の兵士達は(ーω■ )』

 

二人の目の視界にあるのは、石が敷き詰められた灰色の壁。まるで自然が研磨したように磨かれているその石造りの壁は光を反射し照っている。

開放感に満たされつつその男たちは、壁を見つめながら会話を続けた。

 

『わしの予想を遥かに超えておりますわぃ』

ファラン『まだまだアメルやクルスは全力を出し切っておらん相手が伝説の獅子というわけではないからのぉーω■』

『わしはあやつの成長ぶりが気になりますわぃ(■ω■.)』

ファラン『わしの戦いは終わったのでお主もう皆に正体ばらしてええぞぃーω■』

 


少し間を作ったその男は溜息混じりに答えている。

 


『う~む・・・いざとなると照れくさいですのぉ・・(■ω■.;)』

ファラン『ふぉっふぉっ^ω■変わっとらんのぉ』

『もう暫く考えてみます(■ω■.;)』

ファラン『好きにせいーω■』


その男は小便を出したことによる急激な体温低下からブルッと身体を震わせ、チラリと左にいる王様の下半身を見る仕草を見せると、その視線に気づいた王様はひどく怪訝そうにその男を睨んだ。

 

ファラン『なっなんじゃーω■;こんにゃろめっ』


見終えたその男は誇らしげな、やや小馬鹿にしたとも取れる僅かな鼻息を漏らすと、笑みを浮かべながら元の正面の壁に目を移し落ち着いた口調でこう言い放った。

 


『・・フッ・・・勝った(■ω■.)』

ファラン『・・・ぐ・・・きさま・・(ーω■;)』

 

 

一方、エビちゅたちはまたも購買店に買いに来ている。
エビちゅのお目当てはカマンベールチーズ味のクレープである。

買い物に付き合っているボルケノの地響きは、余計に周囲の者達の視線を集める恰好の要因だ。


ズシーン!ズシーン!ズシーン!
ズシーン!ズシーン!


hanana『ぁっ・エビちゅさん待ってくださいでし~^0^;』

『グフングッ!!グフング~!』


ズシーン!ズシーン!


エビちゅ『売り切れたらどうするでちゅか( ̄ω ̄ )』

 

 


hananaとボルケノがエビちゅを追いかけるように突き進む雑踏の中、小休憩時間がもう間もなく終わるアナウンスが闘技場内に聞こえてくるのだった。


『もう間もなく~第三回戦がはじまりまぁ~す!!!ご来場の皆様~・・』

 

・・・


・・


 


買い物をエビちゅたちに頼み、選手観覧席にてゆっくりと次なる試合を待ち座っていたアメルとクルスの耳にも、そのアナウンスが届いてきている。

 

アメル『ぁ!そろそろかな!楽しみだなぁ(・w・´)りんとオムさん・・どっちが強いんだろう・・』

クルス『俺にはわからん(゜Д゜)』

 

胸に包帯を巻き観覧席に戻ってきているクルス。
完治しているかのようにアメルと平然と話している。

ファンブルグ国の初めてとなるこの催しは試合の合間であるとはいえ、国民たちの高揚感は抑え切れていない。祭りの様に賑わった闘技場の空気は明るく、燦々と照っている太陽の光は気持ちのいい眩しさだ。


第三回戦のはじまりの時間に合わせ、休憩時間終了と共にちらほらとまた席が埋まり始めていく。観覧席を二分するようにできた一本の細い通り道から、トカマクが試合の療養を終え帰ってきた。


アメル『あっ(・w・´)ノ!!トカマク様ぁ~!!おかえりなさいっ!お疲れ様です!』

トカマク『ただいま^^』

なぜかトカマクは化粧をしていた。しかしその口紅は唇から大きくはみ出ており、耳にまで届きそうなほどである。頬のファンデーションはこれでもかと分厚く塗りたぐられ、油絵のように施されているのだった。



アメル『ちょwどっどうしたんすか(・w・´;;)?トカマク様!!』

クルス『・・・・(゜Д゜;)』

トカマク『これ?お化粧したの^^』

 

今だかつて軍総指揮に全力を注ぎ、仕事にのみ生きてきたトカマク。化粧などはしたことがなかったのは言うまでもない。女になることを忘れかけた女は、何某かの理由で化粧をしだしていた。


トカマク『似合う^^?』

クルス『アメルに聞いた方がいい(゜Д゜;)』

アメル『・・・ぁ・・ぃゃ・・その・・あの・・(・w・´;;)』

 

そして次に観覧席に帰ってきたのはエビちゅとhananaとボルケノゴーレムだ。皆に頼まれた飲み物などを3人は持っている。

 

エビちゅ『ちゃお( ̄ω ̄ )』

hanana『ただいまなのでし^0^ノ』

『ゴッホッ!ムグング!』


アメル『エビちゅたちおかえり(・w・´)ノ!』

 

食べることを我慢させられていたのか、移動中のボルケノの口からはコブシ程の大きなヨダレが滴り落ちており、地面にて水溜りとなったそれは歩いてきた道を示すいい印だ。

 

アメル『うはぁ~(ーwー´;)ボルケノのヨダレがものすごいことになってるね・・闘技場のなかマーキングしまくりだね・・』

エビちゅ『いつものことでちゅ( ̄ω ̄ )はいこれアメルのでちゅ』


アメルは前もって頼んだオレンジジュースをエビちゅから受け取りつつ、何の気なしにボルケノの手元を見てみるとボルケノは両手に食べ物の入った大皿を抱えており、その皿にはどっぷりとそのヨダレが溜まってしまっているのだった。


アメル『げwwボルケノさん(・w・´;;)中に入っているポテチが・・おつまみが・・』

『ゴフ?』

 

大皿にたんまりと入ったヨダレはポテトチップやおつまみなどを浮かせている。

 

hanana『キャハハバ0^ノボルケノさんお腹減ってたんだねぇ~』

アメル『きゃはははでなくて(ーwー´;)食べれないじゃん』

クルス『俺のわさビーフが(゜Д゜;)』

 

そんなところへファランと王様に変装した男が帰ってくるのだった。

 

ファラン『ふぅ~ただいまじゃーω■;道迷ってしまったぞぃ』

王様『ただいまですぞ・・ゴホンゴホンッ!ただいまじゃ(■ω■.;)』


王様になり切るはずが、つい自身の口調である敬語になってしまい、咳でごまかしつつその男も観覧席に到着した。

 

アメル『王様(・w・´)!エビちゅがビール買ってきてくれたよ』

王様『おーすまんのぉ(■ω■.)かたじけない』

 


そんな観覧席を包み込むように大きな歓声が突然と一同の耳に入ってくるのだった。

 

『わぁぁぁあああぁぁぁぁ』

『わぁぁあああああああああぁぁぁぁ』

『ああああああぁぁぁぁぁああぁぁ』

 


津波のように押し寄せ、鼓膜が破れんばかりに闘技場に響いている歓声。


アメル『(・w・´)!?』

クルス『(゜Д゜)?』

トカマク『!?』

王様『(■ω■.)!?』

ファラン『ーω■!?』

hanana『^0^?』

エビちゅ『りんとオムーのリングインでちゅね( ̄ω ̄ )』

 

威風堂々とオムーとりんは八角形のオクタゴンリングに入場している。

 


ファラン『楽しみじゃのぉーω■』


二人の勇ましい姿を目にしながらビールを飲んでいるファラン。
おつまみ目当てか、自然と隣にいるボルケノゴーレムが持っている大皿に手が伸びた。

 

アメル『げw・・・おじいちゃん・・そのおつまみは・・・(・w・´;;)』

ファラン『んーω■?・・ポテチってこんなにスープにヒタヒタになっているものなのか?』

エビちゅ『最近スープカレーとか城下で流行ってるんでちゅよ( ̄ω ̄ )そんなことも知らないんでちゅか?』

ファラン『ほほぉーω■そうだったか・・・ふむ・・モグモグ・・これいけるのぉ^ω■うまいうまい』

アメル『・・・・・・。』

 

トカマクは自慢げに自身の化粧をエビちゅにも見せている。


トカマク『ところでエビちゅ^^この化粧、似合ってるかしら?』


暖かい日差しからトカマクの頬に分厚く塗られた化粧は表面は乾き、どす黒い色に変色しており、やや剥がれ落ちた塗料の所々は汗により垂れ下がってしまっていた。それはまるで溶解された肌のようにドロドロと各所が垂れ下がり、口紅も口裂け女のように広がっている。より一層人間離れした顔に変貌しているトカマクの顔は見るに堪えない。


エビちゅ『ぶwwww・・な・・・なかなかのセンスだと思いまちゅよ( ̄ω ̄;)トクシュメイクかとおもいまちた』

トカマク『いいセンスしてる^^?ありがとう!今度エビちゅにもしてあげるね!』

エビちゅ『断固お断りしまちゅ( ̄ω ̄ )』




審判はリングインしたりんとオムーの距離を詰めさせ、ルール説明を始めている。

いにしえの力として戦乱を纏め上げ、地の混乱を沈めるべくして生まれた伝説の獅子。よもや神でさえ獅子同士の力の比べ合いを予測することはなかったであろう。言わば禁じられているとされる戦いが、人間の手によりこの闘技場にて実現することとなる。


ファラン『さぁ・・見せとくれ・・若いのたち・・いい冥土の土産になるわぃーω■』











第弐百弐拾弐話

2010-01-30 | 本編










アメル『裏の裏?』

ファラン『そうじゃ■ωー』

オムー『トカマク様は燕返しが必殺技で、クルスがその攻撃待ちであることがわかっていたんだ。その待ちの体勢を逆に利用して即座の突き攻撃をしてきたってことだぉ=ω=.』

王様『なんとも・・さすがじゃ・・あの小娘(■ω■.;)』

アメル『燕返しの返し技返しってことか・・もうアメさん頭パンクだわ(-w-´;)ヤヤコシ』

エビちゅ『通常人では間違いなく一番強いのではないでちょうかね( ̄ω ̄ )』

 

依然クルスにはトカマクのブレイドソードが胸から背へ突き刺さったままだ。通常であればブレイドソードを胸奥深くまで突き刺した者が優勢ととれるはず。否、それは勝利を決したともとれる戦況であることは間違いない。

しかしその状況はクルスという推し測ることのできない強さを認知したものにはわかっていた。


りん『・・・トカマク様><・・逃げて!!』

 

トカマクはすぐさまブレイドソードの柄を下へ切り込みながら抜こうと握り締めた。

すると・・

 

 

トカマク
(・・なに!?)

 


クルスに刺さっているその剣は微動だにしない。

 


トカマク『・・ふんっ!!・・ふん><!!』

クルス『・・・・・。』

 


トカマクのブレイドソードは鉄柱さえも一刀両断できる諸刃の名刀であったが、上下揺さぶりながら勢いをつけて動かそうにも、クルスの体を切り裂くことも抜くこともできないでいる。まるでクルスの体の一部のようにぴくりとも動かせない剣はいまだ左胸に刺さったままである。

クルスの体へ入り込んだ剣は今やクルスの分厚い筋肉で包まれている。その筋肉はしっかりとトカマクの剣を包み込んでいるのだ。歓声は一段と大きくなった。


『わぁぁぁぁあああああぁぁ!!!』

『ああぁぁぁあああああぁ!!トカマク様ぁ~!!』

 

顛末を読み取ることのできない観客達の喝采を博し、無我夢中で剣を抜こうとしているトカマク。その賛美は雑音にしかならなく、トカマクにとり、その戦局は既に見えていた。


トカマク『・・・・ここまでか・・』


伝説の獅子の中、最も強さを追求した猛者であるクルスの制空権内にて囚われの身となっているトカマク。それは蜘蛛の巣に捕まった蝶々とも、蛇に睨まれた蛙ともいえる。

剣は抜けず、丸腰で立ち向かうという暴挙に挑むことになってしまったともとれるその状況。トカマクの額の冷や汗は止まらない。


トカマク
(さすがクルス・・相手にならなかったか・・)


クルスは剣を持つ右手を高々と上げ、振りかぶっている。

 

クルス『・・・・(゜Д゜)』

 

覚悟した死を目前にしたトカマクは、何万もの歓声の中、うっすらとクルスの体の隣に映るアメルやりんが目に入っていた。心配そうに見ているアメルやうつむきこちらを直視できていないりんの姿がある。


りん『・・・トカマク様><・・』

アメル『・・・(>w<;)』

ファラン『逃げんか・・・あやつ承知で挑んだか・・(■ωー)』

オムー『・・・・=ω=.;』

 

戦士として、自らの命を国へ捧げてきたその勲章は、戦いの場にて死に逝くこと。自らが教えた剣術を天才たちは意図も簡単に習得し、己を超えていった。その国を支える強さである部下の剣にて死するその一瞬は、トカマクにとり、この上ない恍惚感に満たされていくのだった。
歓声の中、心の中で呟いている。

 

『わぁぁぁああああぁぁぁぁ』

『わぁぁあああぁぁ』

トカマク
(・・・りん・・みんな・・・あとは頼んだわ・・・)

 


動くクルスの剣から反射された眩しい太陽を感じたトカマクは、強くなった部下を思う喜悦した感情から、笑みをこぼしたまま目を瞑った。


『わぁぁぁぁぁああああぁぁ』

『わぁぁぁあぁぁぁぁあぁ』


しかし、すぐに鳴り止み聞こえなくなるはずの歓声は一向に鳴り止むことなくトカマクの耳に聞こえてきている。

 

トカマク『・・・・・?』

『おまえは女だ』

 

突拍子もないその不為な台詞が耳に入ってくる。訝しげにトカマクは目を開けると、振りかざしたはずのクルスの剣は、右手になく、背負われた鞘に戻っているのだった。


トカマク『!?』


ファンブルグの豪腕と評されたクルスの左手はトカマクの髪の毛を掴み、突如トカマクの首筋を嗅ぐように自らの体へ引き寄せている。


ガシッ!!

トカマク『・・・ぅ!!』


トカマクの髪の毛を無造作に掴んだまま、再び距離を作ったクルスは睨むように見つめながらこう言葉を発するのだった。

 

クルス『・・・おまえは指揮官や戦士である前に、女だ(゜Д゜)』

トカマク『・・・!?』

クルス『どんなに強くなったにしろ、お前は男でも伝説の獅子でもねぇ(゜Д゜)おまえのその華奢な肩、膨らんだ胸、括れある腰、女の香りは戦うために作られてるんじゃねぇんだ、身篭る体だ』

強くなることに全てを掛け、冷酷無情の猛者と呼ばれたクルスの口から出た思いがけない台詞。トカマクは呆気に取られている。

そして今までの剣術の攻防の意味をなくすかのようにクルスはトカマクの髪の毛を引きちぎる程の強さで投げ飛ばした。

 

ブンッ!!!


トカマク『くぁっ!!』


バコーーーーーーーーーーーーーン!!!

 

遠く離れた観客席の目の前にある壁に勢いよく叩きつけられてしまったトカマクは、一瞬何が起こったかわからないでいる。無論観客達もだ。

 


トカマク『・・・ぅ・・・く・・・』

クルス『・・・・(゜Д゜)』


静まり返る闘技場。
クルスは何事もなかったかのように胸に刺さった剣を右手で引き抜いている。

 

ギギ・・


およそ痛みという感覚神経などないのか、その刺さった剣の柄は持たず、両刃を思い切り掴み引き抜いているクルス。指骨まで達するまで強く握り締められた右手は尚も強く握り締められている。


・・ギギギギギギギギギ
ブシュッブシュシュ~!!!!

カランカランッ!

まだ主がいる喜びを感じているように石畳の地面にて跳ねて落とされたトカマクの剣。クルスの傷は出血量こそひどいが心臓へのダメージはなく、クルスは血を滴り落としながらリングを平然と降りている。

会場内の沈黙を破ったのは、審判員。

『じょ・・・・場外ぃ~~!!!トカマク選手の場外でクルス選手の勝利ぃ~!!!!』


剣が刺さったままの胸をものともせず、トカマクを投げ飛ばしたクルスへワンテンポ遅れるように歓声が闘技場を包み込んでいる。


『おおおぉぉぉおおおぉぉぉぉぉ!!!』

『おおおぉぉぉおおおおおおぉぉぉ!!!』

 

りん『クルスが・・・戦いの場で殺生をしなかった・・』

ファラン『あやつにとって伝説の獅子を目の前にしたときだけが戦いだといいたかったのかもしれんのぉ■ωー』

りん
(・・・そうなのかしら・・)


りんは感じていた。何かメッセージがあったのではと。部下への敗退による死を捧げる覚悟あるトカマクへ、クルスは何を伝えたかったのか。命の大切さであろうか。

思っても見ないその戦いぶりにりんだけではない、トカマクも場外へ投げ飛ばされた壁への衝撃を堪えながら放心状態でいる。


トカマク『・・・クルス・・・』


『クルス選手!ものすごい剛力だぁ~!準決勝なんなく進出~!!!』

『わぁぁぁぁああああぁぁぁ!!』

『あああああああぁぁぁぁぁぁあぁ!!』


アメル『ぁ・・・試合おわった(ノwノ )?』

オムー『おわったぉ=ω=.』


直視できなかったアメルも薄目をあけリングの様子をみている。


アメル『あぁ!!トカマク様無事だっ(;w;´)ノ!!』

王様『えがったのぉ(■ω■.)』

エビちゅ『勝敗は場外で決まりまちたよ( ̄ω ̄ )』

オムー『戦うのは獅子である俺たちだけで十分っつーことかな=ω=.』

 

第一師団の衛兵たちに抱えられながらトカマクも通路へ戻っていく。ハンカチを手にし目元へそっと持っていくりんは、歓声の中通路へ消えていくクルスが涙で滲んでみえない。


 

アメル『あれ・・もしかして次の試合ってオムさんとりん(・w・´)!?』

オムー『そうだぉ=ω=.』

りん『・・そうだったりする(*^▽^*)』

王様『楽しみだのぉ(■ω■.)』

ファラン『まったくじゃ■ωー』

 


この世の平安を取り戻す為に生まれてきた天才戦士たちである伝説の獅子たちは、敵対する国からファンブルグ国を守る戦いだけに徹してきた。しかし今大会の目的は違う。己の強さを証明するためだ。

真価を問うべく集まってきている勇士あるものたち。
それはトカマクのように、全てを、生死を掛けた戦いなのである。

そして次なる試合は、未だかつてなかった伝説の獅子と呼ばれた者同士の戦い。魔法剣を使いこなすオムーと弓術の天才りん。

その戦闘は本物と呼ぶにふさわく、壮絶極まりない戦いになることは避けて通れない。今の今まで観覧席にて仲間として話し合うオムーとりんも、その数分後には死闘を演じていることになる。

 

オムー『・・さて・・いくかな=ω=.』

りん『・・・そろそろね^^』

 

百戦錬磨として無敗を誇ってきた伝説の獅子である二人。
軍配が上がるのはどちらなのであろうか。
本当の戦いは、これからだ。