世の中ではよく使われているストレスという言葉であるが、Wikipediaを観てもストレスの定義や意味は生物学的なもの材料工学のもの等と実に多様であるが、心理学的なストレスの説明は英語版はあっても日本語版は皆無。日本の心理学的なストレスに対する混乱を何か暗示しているようだ。
生き甲斐の心理学では混乱の多いストレスという言葉より、ストレス曲線という言葉をよく使う(石塚幸雄先生の自己実現の方法 講談社新書がオリジナル)。これは、当事者が感じる暗い感情をモデル化したもので、不安感、怒り、身体的症状、ウツ、錯乱の5つつに分類される。そして、ストレス曲線は当事者の理想(意識されたもの、無意識のもの)と現実(意識されたもの、無意識のもの)のギャップから生じる。ここが単純な公式のようで実に奥深い。このことを知っているだけで、悩みを実感し、それを理論的に解決する大きな鍵となるのだ。
そして、悩みが解決すると、ストレス曲線の対極の幸福曲線(平安感、友好的感情、健康感、幸福感、統御感)に移行するという不思議な現象もあったりする。
眼の前の不安や悩みを解決するのは、日々誰でもやっていることである。ただ、どういう訳か、個人個人によって苦手な分野があったりする。それは人それぞれの生育史に由来したりする。そして、時には、それがもとでストレス曲線の不安が、怒り、さらに身体症状が出たり。ウツ状態になったり拍車をかけていくことも。
そのとき、自分のストレス曲線を感知し、その理解(理想や現実の把握)を深めるなかで、ポンと解決することもある。外にもいろいろ効用があるのだが、少なくともストレス曲線は、決してネガティブなものではなく人の成長を促したり、社会貢献をしたりするポジティブな意味合いが沢山ある(この意味は先の英語版のWikipediaにもあった)。
例えば、土器の発見ということがある。10000年以上前に日本または東アジアで発見された技術であり、縄文文化の基礎になったといっても良いだろう。恐らく、当時の祖先は定住しない不安定な生活をしつつ、比較的恒常的に得られる食べ物の採取(例えばクルミやどんぐり)で、火を通することによって(小規模ながら煮たり、蒸したり)食べられないものが食べられるようになる現象を知っていたのだろう。ただ、それをどう実現するかの技術はなく、苦悩していた。
それが、粘土が火によって(例えば火山などの自然現象や身近なキャンプでの炉辺の現象だったのだろうか)石のように硬くなることを知って、土器を思いついたのであろう。当然ながら無名の祖先の発見により、歴史が変わり、恐らく私たちもその恩恵を被って生まれてきた。実に不思議だ。
もちろん、こうした発見もあるが、無意識の世界、生育史の問題を克服して、大きな仕事をした方もいると思う。昔のことなので当然推測になるが、7-8世紀に現代日本の原型を建設するのに多大な貢献をした持統天皇もそうかもしれない。こうした天才のような人もいるが、無名の私たちもそれぞれの個性の中で、ストレス曲線をヒントにポジティブな何かをする可能性は大いにある。
ストレスを楽しむ 4/10