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縄文小説家・森裕行のブログです。身近な縄文を楽しみ生き甲斐としています。「生き甲斐の心理学」の講師もしています!

若いころ愛を見通したとき・・隠れた地味なもの (7/10 真善美に触れる・・今も縄文も)

2021-08-15 | 第九章「愛」

23歳から34歳までをエリクソンは愛の時代としているようだ。親密性や孤独感も愛と同様にキーワードだ。そのころ身体の成長もピークを迎え人間として一人前になる時期である。人間は身体と心(生育史)と魂(哲学・宗教の領域)からなるとすると、この時期に一定の成長のもとに結婚をしたり、仕事で一人前になったりする。もちろんそれは表面だけの問題ではないかもしれない。

さて、自分のことを振り返ると20歳代の終わりの頃に結婚をする。当時は関西で親元を離れ一人住まいをしていたので、20歳代も後半になると相手はいないものの結婚したいなと思うようになった。しかし、結婚は一人ではできないもので神秘的ともいえる出会いと、人生を見通しつつ結婚を受容していく過程が必要だ。それにはそれまでの生育史も絡むだけでなく、周りの人たちとの大事な繋がりも大切である。

今日は、どのような愛のイメージを当時抱いていたのか、過去の生育史の関係はどうか、将来の関係(もうあれから40年くらい経っている)があり、ちょっとした年寄りの楽しみとして見てみたい。

28歳の初秋だったと思う。京都の知恩院周辺だっただろうか、二人で青蓮院から丸山公園に向かう舗道だったと思う。当日は乾燥していたが曇天で折り畳み傘を手にしていた。なんとなくウキウキした気分で、歩きながら折り畳み傘の手元のひもの輪に人差し指を入れ、よせばいいのにくるくると回した、すると傘が指から離れ側溝に落ちてしまった。結構深い側溝だったが干上がっていたので飛び降りて拾い上げた。それだけのことであるが傘のひもの感触や側溝での足元の感覚、自分の挙げた甲高い声などと結びついた嬉しい感情が忘れられない。

ところで何故、その場面が記憶に残ったのだろうか。もっと楽しい場面もあった筈なのに。つまり、心の深層はどこに繋がっているのだろう。

7歳の時。温暖だと言われていた南東アラスカの海沿いのシトカに住んでいた。冬の朝。高緯度なので登校する時間は暗かった。隣の家の少し年上の女の子Bさんと雪道を歩いて小学校に向かっていると、突然、雪で見えなかった側溝に片足が嵌り、そのままずり落ちた。うまく途中で止まったが、下には水が激しく流れ恐ろしい状態。その時一緒だったBさんが手を出し、うまく捕まり引き上げてもらった。恐怖と一転しての手で引き上げてもらった嬉しさが、一つの愛の原形として記憶されたのだろう。

そんな、過去の記憶とどこかでつながる折りたたみ傘。そして、少しは7歳のころから成長した私は、伴侶にたいする終生の責任をどこかで予見したのだろう。

もう一つ、私の今の課題である縄文のことについて。

2014年の秋だったと思うが私が縄文に嵌った日のことだ。町田の田端遺跡の見学会があり京王線多摩境駅から5-6分の地で説明員の詳しい解説を受けていた。冬至に丹沢山系の最高峰蛭ケ岳山頂に入日が入る景色が見える場所。そこには何百年にわたって祭儀をするストーンサークルが築かれ、今は埋め戻されているもののレプリカを見ることができた。ストーンサークルの話題は楽しかったが、私の記憶に不思議に残ったことが一つあった。ストーンサークル建設に伴い造成工事がなされたことであり、溝まできちんと作られていたことだった。どのような側溝かはわからないもののあったという説明に何かを感じたのだろうか。

私は時々なぜ縄文に嵌ったかを問われることがあるが、自分でもよくわからなかった。しかし、この田端遺跡が一つの契機であったことは間違いはなかった。しかし、何故惹かれたかはここ一つ定かでなかった。ただ、今いろいろ思索をしていくと、心の深層で側溝が蠢いていたもしれない。

縄文後晩期(4000年前から2800年ころまで)には、中期からの敷石住居の文化の流れからか、河原の石を大量に使う時代となる。その膨大な量の石は、住居や、ストーンサークルづくりなどにこころを込めて使われた。たぶんひとつひとつの石ころには縄文時代の先輩一人一人の何らかの想いが込められていたのだろう。そして、その表舞台を実現するために側溝。隠れた地味なものも作られている。そこには私のささやかなエピソードのような記憶があったかもしれない。

写真は多摩モノレール沿いの道の傍らに咲いていた百合の花。

7/10 真善美に触れる・・今も縄文も

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