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From Hiron to many NetWalkers♪

『HISTORY OF ZABADAK』

2006年10月12日 08時40分28秒 | 上野洋子/ZABADAK
結成から現在までの20年間が収められたZABADAKのベストアルバム、『HISTORY OF ZABADAK』。たった2枚のDiscにその軌跡を収めるのはかなり無理がある話だと思うけれど、吉良さん自身の選曲である事に安心しました。その一方で、もし上野さんも選曲に携わっていたらどの曲を選んでいたのか興味があったりもします。

このアルバムに感じるのは、手作り感。人のぬくもりを感じられる仕上がりです。のれん分け前の時代、ずっと感じていた温度感の無さ、色味の無さ加減が不思議に心地良くて好きだったZABADAKでしたが、ここにきて感じる人の手の温かさは吉良さんの色が強く出ているからでしょうか。例えばブックレットの吉良さんによる全曲コメント。まるで放課後の教室とか誰もいないスタジオで、一人物思いに耽っているかのような語り口のコメントには一部『Decade』で語られたものもあるんだけど、その曲が作られた経緯だったり感想だったりでとても面白い。

それにしても、上野洋子さんの歌声は何処までも透明ですね。私はあまり歌姫っていう言い方は好きじゃないんだけど、この浮世離れした歌声を他にどう表現していいか思い当たりません。吉良さんが一人になってからのZABADAKを聴いたのも初めてでした。曲が始まった瞬間に吉良さんだと分かりました。まるで何年も会ってなかった友人に、思いがけず再会出来たような気持ちです。

海老名淳さんが手がけられたアルバムジャケットに惹きこまれます。何処までも続く透明な水面。その上に浮かぶ様々な素材の断片は、等間隔で遥か地平線の摩天楼まで続きます。よく見るとちょうど中央で左右対称のデザインになっていて、タイトルロゴの下には”Easy Going”の歌詞が。夕焼け空である事からも放課後とか皆が引き上げた後のスタジオとか、そういうイメージが沸くのかも。何処となく浮遊感のあるZABADAKのイメージそのままで、私は凄く好きです。

自然の摂理を歌いながら人の心を表すZABADAKの音楽は、Hikkiの言葉を借りて言えばいつも私をニュートラルな気持ちにさせてくれるんだよね。歌をもって隣にいさせてくれるHikkiとはまた違って、彼等の音楽は雄大な自然に連れていかれる感覚。ただ一人そこに置かれると人は、生きようとする本能が働くのかな。

誰かに教えたい。でも、誰にも知られたくない。
いつも私のベースにある音楽、ZABADAK。