貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

ブルー・タイガーアイ

2024-03-16 09:23:37 | 単品

水晶です。

は?ですね。んなわきゃねえよと。

タイガーアイ、正しくはタイガーズ・アイ。
鉱物学的には「クロシドライト仮晶石英」。「シュードモルフ・クォーツ・アフター・クロシドライト」。石英なのか水晶なのか。結晶しているのだから一応水晶でしょうね。
クロシドライトは、リーベカイト(リーベック閃石)の繊維状の結晶で、「青石綿」と呼ばれる人体への危険性が非常に高い鉱物。それが石英および褐鉄鉱に交代されてできる。もうこれは石綿ではありません。
また仮晶ですか。わけわからん。平たく言えば角閃石が姿を変えずクォーツに変化したもの、か?
リーベカイトは □[Na2][Fe2+3Fe3+2]Si8O22(OH)2。これがどうやって石英 SiO2 や褐鉄鉱 FeO(OH)・nH2O になるのかさっぱりわからん。熱や高圧の変成作用でナトリウムや鉄の一部が脱落するのか。

本来は青白いもので、酸化すると青色の Fe2+ が褐色の Fe3+ になる。青のものをホークアイ、金色のものをタイガーアイと一般に呼んでいる。アメリカではホークアイではなくファルコン(隼)アイと言うらしい。まああくまで商品名です。白っぽいイーグルアイというのもある。ペンギンアイというのはない。(いいよ蒸し返さなくて)
タイガーアイはけっこう出るらしくて、わりあい安く、金運を呼ぶということでアクセサリーもたくさん売られている。石屋さんのおまけなんかにも使われるし。おかげで少し安っぽいイメージ。美しいものは美しいのですけどね。
うちの虎君たち。右はキャッツアイ的なシラーが出る。左は高圧変成したのかぐにゃっと歪んでいて、ラブラドライトのような光を見せる。


これのおかげで少しばかり金運が上がったかもしれないけど、石沼民はだいたい持ってるでしょう。皆お金持ち……か。

これはホークアイ。黒っぽい青にシラーが揺れて、なかなか美しい。好きな石です。

イーグルアイというのは、掘りたての、青になる前の白銀色のものを言うという説がありますけど、ちょっとよくわからない。あまりない。前に上げたのはピーターサイトに近いんじゃないかという変わり者。
これはイーグルアイと名付けられていたお安いブレスレット。

石英化が強く進んで白くなったのではないかとも思える。

     *     *     *

ずいぶん前にツイッターですごく美しく澄んだホークアイを見たことがあって、いいのないかなあと思っていたら、ヤフオクでちょっととんでもないものが出た。えらく惹かれて、やや高くなったけど落札。それが最初のやつ。どーん、とでかい。最大長約15センチ。789グラム。
この出品者さんはこういう大きな原石をたくさん出していて、タイガーアイ、ホークアイ、ミックスアイ(は?)のほかに「ブルーアイス」なんてのもある。ちなみにこのブルーアイス、スラグ(鉱滓)ではないかと言われているけど、出品者さんは「中宇利石」ではないかと言っている。写真を見るとタイガーアイと同じく角閃石系の石のようにも見える。はて。
それはともかく、ホークアイは青に金が若干まざったのがいくつも出ているのだけれど、これは青一辺倒。虎なし。ちょっと珍しいのではないかとも思った次第。
断面はこういう繊維状。

角閃石は複鎖イノ珪酸塩で、鎖状の結晶が2本絡まっている。いかにもそれらしい姿。ぐにゃっと曲がっているのは圧力を受けたためでしょう。輝いて美しい。

けれどその繊維状結晶がみっちり詰まっていて、あまり「石英」っぽくない感じ。はて、熱や圧力が足りなくて、融け方が少なかったか。
出品者さんは「青虎目石の原石は探すとなかなか無いですよ。丸磨きしたら素晴らしい宝石置物になりますね」と書いている。あちきにはそういうノウハウはないし、これを磨いてしまうのももったいないような気がする。しかしこのままでは緑の角閃石、アクチノライトとあまり変わらない感じではある。



それともタイガーアイ、ホークアイは本来こういうもので磨くとよくある姿になるのだろうか。

もっと解せないのが上と下。鉄分を含んだ粘土状の層がある。どういうこと? 角閃石成分を含んだ熱水が堆積岩の層状の隙間に入り込んだということ?
本体の中にも層状の構造があるのも不思議。結晶化が何度かにわたって繰り返されたということなのか。



あちきのヘボな頭で推理してみると、
①玄武岩マグマからどういうプロセスか不明だけど角閃石成分の熱水が分離。
②それが堆積岩の層の隙間に入り込み、リーベック閃石ができる。
③それが高圧で変成し、カルシウム、鉄、水などが脱落し、結晶構造はそのままで石英に変わる。
④残った鉄分によって青や金に発色する。
ということでしょうかね。
ともかく謎だらけ。いいですね、こういう不思議な姿は。

     *     *     *

(まだ続くの? なげー)
どうも最近は中国産とおぼしき「パープル・タイガーアイ」とか「レッド・タイガーアイ」というのが出ているけど、どうも着色っぽい。これはそれを承知でちょっと買ってみたもの。

どうですかね。色が自然ではないような。
まあはっきり言えば、何にせよ中国産のものはパチもんが多くて警戒が必要。市場が荒れるというか、危なくてかなわんというか。困ったものだ。

     *     *     *

と、こうやってみると、いろいろ持ってますね。アイ系統がけっこう好きなんかな。
こういう角閃石系というのはあまり美しいものがなくて美結晶の世界には入らないけど、何せ地殻を構成する巨大な軍勢。よくわからないことが多いけど、なかなか面白い領域ではないでしょうか。
そのうち青く澄んだホークアイにも出会えるといいなあ。


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