貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

長石はたまに輝く

2021-11-14 17:21:05 | 単品

長石……ううむ。
昔習った「花崗岩は長石と石英と雲母でできています」というのは覚えている。
陶器の萩や志野が「長石釉」だというのも覚えている。
でも、長石そのものというのは、見たことも意識したこともなかった。
調べてみると、長石というのはとてつもなく巨大なグループらしい。
一体なんじゃこれは。
地殻で最も多い鉱物で、長石を含まない岩石というのはほとんどないと。
石を投げれば長石に当たる、ではなくて、その石も実は長石だ、という落ち。

英名は Feldspar。フェルスパーだったりフェルドスパーだったり。ドスはドスが効きすぎで(つまらん)、ヅかツじゃないかね。
与党立体派(アルミノ・テクトケイ酸塩鉱物)。要するに、アルミとSiO4(シリケート)が網状に結合している。らしい。複雑ですなあ。

それが基本。そこに陽イオンがくっつく。くっつくのは、カリウム、ナトリウム、カルシウム。どれも言ってみれば凡庸な素材。だからどこにでもある。
バリウム長石というのもあるようだけれど、まああまりないようなので省略。

要するにつまんない石かよ、と思っていたら、ちょっと待て。
サンストーン。
ムーンストーン。
ラブラドライト。
アンデシン。
アマゾナイト。
おい、どれもなかなかの役者だぜ。これみんな長石かよ。

長石の世界は広い。基本部分がAlとSiとOで、加わる塩基がカリウムかナトリウムかカルシウムかによって、分かれる。
分かれるけれど、基体が同じなので、溶け合って存在する。固溶体というやつで、天玉(やめなさい)
截然と分かれないので、中途半端な存在もある。長石の世界はその割合のスケールで表現される。どうもこんなものらしい。



和名は、オーソクレース=正長石、マイクロクリン=微斜長石、サニディン=玻璃長石、アルバイト=曹長石、オリゴクレース=灰曹長石、アンデシン=中性長石、ラブラドライト=曹灰長石、バイタウナイト=亜灰長石、アノーサイト=灰長石。さて、覚えられるかい? あちきには無理。
英名も和名も覚えられるわけがないから、長石と言われたらこのアンチョコを見るしかないね。
しかしアルカリ長石の対義語が斜長石って、なんかすっきりしなくない? アルカリの反対だったら酸性長石だろうに。(そういう無体を言うな)

派生名や商品名もけっこうある。
アマゾナイトは青いマイクロクリン=微斜長石のこと。微量の鉛を含むため青い。え? あいつ長石かい。何か別の石のような顔をしてないか?(勝手に思い込むな)
そう言えば、ある所ですごく安く買ったアマゾナイトが、やけに白っぽいので、塩酸に一週間付けたことがある。白さが消えて、強い光だと透き通って、きれいになった。その時、長石で塩酸には溶けないと調べたはずだったけど、忘れていた。

また、アデュラリア、氷長石という美しい長石もある。これはオーソクレース=正長石で、アルプス(スイスのアデュラー地方)で産出する透明な美結晶のもの。こちら参照。なんかこのアデュラリアという響き、とっても美しい感じがするんですねえ。名前だけで欲しい。

サンストーンとは、長石の中にきらきらした鉄鉱物の欠片が入ったものですけど、
《サンストーンは特定の鉱物の名前ではなく、斜長石の中でも光り輝く「アベンチュリン効果」を持ったものを指す名称です。もっとも一般的なものは、南インド産のオリゴクレース(灰曹長石)にゲーサイトが入り込んだものです。近年では、オレゴンから産出する透明度が高いラブラドライト種のサンストーンや、コンゴで産出したアンデシン種のものも出てきて、サンストーンの定義的にどうなの?論争が巻き起こっているそうですが。とりあえず宣伝するための名称と鉱物名を曖昧にするのは良くないと思います。》(「ホシノカケラ」より)

ラブラドライトは、成分の微妙に違う部分が薄くミルフィーユ状に重なっていて、その界面で反射した光が干渉によって黄・緑・青・紫の輝きを生じる。この効果のことを「ラブラドレッセンス」と呼ぶ。またフィンランド産の輝きの強いものをスペクトロライトと呼ぶ。ラブラドライトの多くは石自体の透明性が低いので、だいたい磨いた表面でこの現象が起こる。
カミさんが好きでいくつかあるんだけど、これは原宿産で、青と金が出る。理屈を説明されても不思議ですねえ。

ムーンストーンは、青い輝きのみ。オーソクレース(あるいはアノーソクレス=曹微斜長石)にサニディンが混ざったもの。その薄い層構造による干渉反射光で青が出るらしい。なぜラブラは多色でムーンは青だけなのかは知らない。
石が透明なので、丸いカボッションにすると、青い光が表面を波のように移動して実に美しい。
なぜかおまけの小さいカボッションしか持っていない。そのうちそのうちと思ったまま。
ムーンストーンの名前で多色の輝きが出るもの(レインボームーンストーンとも)はホワイトラブラドライト(ペリステライトだとも)。普通のラブラドライトより透明性が高い。こちら参照。

これはペリステライト「と思われる」標本。正確には分析しないとわからない。わざわざ分析するほどの石ではない、ということね。ごく一部分に青い「ラブラドレッセンス」が出る。これはこれ自体で風情があって美しいと思う。

アンデシンには、反射光は赤いのに、透過光が青くなるものがある。何で? 説明探したけど出て来ない。一部には銅で赤く染めたものもあるらしい。
《市場に出回った当初は無処理の宝石と謳われていましたが、近年アンデシンの大半が【銅拡散加熱処理】されている事が発覚しました。この処理については鑑別機関でも現在の技術では看破できない為に処理の有無をハッキリさせたい販売業者、購入者には敬遠されがちな宝石となってしまいました。》出典
ちょっとほしいんだけどなあ。

こうやって見ると、長石の世界は広くて深いですなあ。どこにでもある石と馬鹿にしてはいけないのです。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿