貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

水が石を作る ②熱水鉱床など

2023-02-05 12:02:53 | 岩石生成論

プレート沈み込みによって地殻深部にもたらされた水が花崗岩を造る。そして花崗岩ができる際に放出された水が熱水鉱脈や晶洞鉱物を造る。というのが前回。
この熱水、どんなもんなんでしょうか。

《熱水の温度は水の臨界温度である374℃以下とされている(それ以上の温度では水は気体(ガス)と液体の区別があいまいな流体であるが,一般にガスと呼ばれている)。一般的に約250℃以下は低温の熱水とされ,約350℃以上は高温の熱水とされる。低温の熱水は地表近くの熱水であり,それから生成した熱水鉱床は浅熱水鉱床といい,高温の熱水は地下深部の熱水で,それから生成した熱水鉱床は深熱水鉱床という。また,その中間的な熱水鉱床は中熱水鉱床ということがある。》倉敷市立自然史博物館 「熱水鉱床」

液体とも気体とも言えない曖昧な流体。ふうん。「気成鉱物」という概念があるようですけど、温度の高い水からできる場合、気成なのですかね。いずれにしても普通の頭ではなかなか想像できないですね。

この「熱水鉱脈」というのは、金や銀といった金属の鉱床を作り出す、人類にとってはきわめてありがたいもののようで。

一方、空から降って来た雨が大地に浸み込んで、地下のマグマによって熱せられることもある。で、それが周囲の岩石を溶かして、新たに石を造ることもある。低温度の「浅熱水鉱床」。こうした水は酸素を含んでいるので、硫酸塩鉱物を造ることが多いとのこと。バーライト(重晶石)、セレスタイン(天青石)、ジプサム(硬石膏)など。セレスタインなんかはそういう熱水が空洞に流れ込んでああいうジオードができたんですかね。

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もう一つ、石好き民にとって重要なのが「スカルン」というやつ。
これはマグマが石灰岩・苦灰岩などの堆積岩とぶつかってできる鉱床。
そこにやっぱり水が関与する。マグマにも堆積岩にも水は含まれていて、その中に様々な元素も溶けているし、さらに溶かし込む。それが複雑に作用しあって、多彩な鉱物が生まれる。
ガーネット、ベスビアナイト、エピドート、ダイオプサイド、トレモライト、サーペンティン、タルク、ウォラストナイト、斜長石、角閃石、その他もろもろ。

スカルンの代表的鉱物、ベスビアナイト。いやヴェスヴィアナイト。(うざい)
既出記事ではブルーグリーンの結晶のを載せたけど、これは別の、ちょっと変な色をしたやつ。キラキラして美しい。

組成は Ca19(Fe,Mn)(Al,Mg,Fe)8Al4(F,OH)2(OH,F,O)8(SiO4)10(Si2O7)4。ははは。
マグマ+熱水が岩とぶつかった混沌の中でこんな複雑な結晶が組み立てられるなんて、面白いですね。

金属鉱床もこのスカルン付随の熱水によってできるものが多いらしい。熱水鉱床と同じになるけど。
まあスカルンは複雑で難し過ぎてわけわからない。こちら、あるいはこちらでどうぞ。

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水が生成に直接関わるわけではないけれど、鉱物が水によって集められるというものもある。
「漂砂鉱床」と呼ばれるもので、重い鉱物が流水の作用で特定の場所に集まった鉱床。
金・白金・錫石・ジルコン・サファイア・ダイヤモンドなどは重いため、深い河底や海底に溜まる。その土砂を「水簸(すいひ)」して鉱物を取り出す。「川流れサファイア」なんていうのが典型ですかね。
中には、南アフリカの世界最大の金鉱床ウィットウォーターズランドのように、漂砂鉱床として集まった金が再び固まって堆積岩となったものもある。

水は集めるだけではないですね。岩石を削り砕く役割もある。火成岩を砕いて中にある鉱物結晶を取り出すといった芸当もやっているわけで、水は自然の鉱夫とも言えるかもしれません。


海の水も意外なところで石を造っているようです。
《太古代の末に、初めて光合成による酸素が放出されると、酸素と海水中に溶けていた還元鉄イオンが結合して、大量の酸化鉄として海底に堆積した。私たちが使う鉄製品は、ほとんど太古代最末期から原生代初頭(約25~20億年前)の間に集中的に堆積した縞状鉄鉱層(BIF)から採掘・加工されたものである。》『三つの石で地球がわかる』
鉄というのはふんだんにあってあちこちで化合物を作っているけど、それをまとめて鉄を取るというのは案外難しい。大昔に水がまとめておいてくれたわけですな。とても親切。(そういうことじゃないと思うよ)
また、海水中のカルシウムは自然沈殿してカルサイト・アラゴナイトを作る。多くの石灰石は生物由来ですけど、自然沈殿というのもあるそうで。

まあ水がかくも多彩な鉱物・岩石世界を作り上げているのは確かなこと。
水のない火星の地表写真を見ると、おんなじような岩と砂が続いていて、なんとも殺風景です。
つか、水がなければ地球型の生命は生まれなかったわけですしね。地球もわれわれも、水によって生まれ水と共にある。そう言ってしまうと平凡ですけど。

改めてこういう水の役割というのを見てみると、驚嘆しますね。
昔あった「水成岩」という概念は「堆積岩」に統合されて廃止されたようですけど、「水成鉱物」という概念があってもいいんじゃないかと思うのです。(素人の妄想乙) 多すぎて意味ないかな。


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