生きもの同士のかかわりを明らかにしない限り、生物多様性は守れない② 農学博士 小池伸介
生物の多様性が高いと、より安定した生態系になるといいますが、まさにその実例ですね。
たとえば今年は、あちこちでドングリが凶作といわれていますね。実が生(な)る年と生らない年があるのは、
ドングリだけじゃなく、いろいろな樹種でも起こることなんです。でも、植物の豊凶は種類によって違っていて、
この種類もこの種類も不作の年に、あまのじゃくみたいに実ってる種類もあるんですよ。
また、同じ種類でも、個体による違いというのもあります。
今年はこの種類は全体に実りが悪いのに、この木だけ生ってるな、とかね。
で、動物たちのほうはどうしてるかというと、生ってる種類、生ってる木を探して食べている。
自動撮影カメラを使ったり、糞を集めたりすると、植物の実の生り方に応じて、動物たちが非常に柔軟に動いていることがわかってくる。
個々の樹木だけ見ると凶作でも、森全体でみるとうまくバランスがとれていたりするんです。
そういうのを見ると、森の樹木の多様性、樹木の個体ごとの遺伝子の多様性、それによって動物も生活していけるんだなと
いうのを感じますね。
私が調査をしている日光あたりでも、今年のようにブナもミズナラもクリもコナラも、みんな不作になっちゃう年があるんです。
そうなると動物たち本当にあちこち動いて実がなっている木を探す。そして、どこかでみつけるし、
やっぱり生っている木はあるんです。
実が生る年と生らない年があるのは、植物の自然のリズムでもあるので、それは変えられないんですけど、
それを補うだけの多様な植物があるかどうかが、どれだけの動物を養えるかにかかわってくるんですね。
私はもともと植物に興味があったので、ずっと思っていたんです。日本などの温帯の森だと、動物の種子を運んでもらう樹種って
5割か6割くらいあるんですよ。一方、動物にとっては、果実を食べるという採食行動、いわば生存の基盤ですよね。
この2つのことを考えると、種子散布をする動物の特徴や、動物と植物の相互作用というのをもっと理解していくことができれば、
生態系の維持とか、森の更新とか、生態系全体の保全にも結びつくんじゃないかと、そんな思いもあって注目しているんです。
生きもの同士の関係に着目することは、自然をいろいろな方向からみることになるんですね。
いきもの同士のかかわりを明らかにしない限り、生物多様性は守れないと私は思っています。
ある動物の背景には、必ず複数の生きものがいます。ですから、人間が安易にある動物だけ取り除いたり、
逆に、ある動物のためだけに自然に手を加えたりすると必ずどこかで自然のバランスが崩れます。
一度、崩れたバランスって簡単には取り戻せないですから、その危険性を考えることは、常に必要だと思いますね。
生きもののつながりについてまだわかっていないことも多いので、難しい面もありますけど、
たとえば東南アジアでは、保護区がだんだん小さくなって、大型の動物がすめなくなってくると、
ゾウなどに種子散布を依存していた植物が更新できなくなる、そして、この植物とゾウの関係はとても大事だったんだと、
後になってから人間が気づく、そういう例が知られています。
ただ、振り返って今の日本で、クマにだけ種子散布を依存している植物があるかというと、
はっきり言えないんです。でも植物は寿命が長いので、気づいたときにはもう遅いかもしれない。
そうならないためにも、いろんな動物が森林の生態系の中で、どんな役割を果たしているのかがわかってくれば、
多様性の保全にもつながっていくと感じています。生きもの同士の相互作用は、多様性を生み出してきた大もとでもありますからね。
それをひとつひとつ明らかにしていくことが私の仕事かなと、そう思っています。
WWFマガジン
生物の多様性が高いと、より安定した生態系になるといいますが、まさにその実例ですね。
たとえば今年は、あちこちでドングリが凶作といわれていますね。実が生(な)る年と生らない年があるのは、
ドングリだけじゃなく、いろいろな樹種でも起こることなんです。でも、植物の豊凶は種類によって違っていて、
この種類もこの種類も不作の年に、あまのじゃくみたいに実ってる種類もあるんですよ。
また、同じ種類でも、個体による違いというのもあります。
今年はこの種類は全体に実りが悪いのに、この木だけ生ってるな、とかね。
で、動物たちのほうはどうしてるかというと、生ってる種類、生ってる木を探して食べている。
自動撮影カメラを使ったり、糞を集めたりすると、植物の実の生り方に応じて、動物たちが非常に柔軟に動いていることがわかってくる。
個々の樹木だけ見ると凶作でも、森全体でみるとうまくバランスがとれていたりするんです。
そういうのを見ると、森の樹木の多様性、樹木の個体ごとの遺伝子の多様性、それによって動物も生活していけるんだなと
いうのを感じますね。
私が調査をしている日光あたりでも、今年のようにブナもミズナラもクリもコナラも、みんな不作になっちゃう年があるんです。
そうなると動物たち本当にあちこち動いて実がなっている木を探す。そして、どこかでみつけるし、
やっぱり生っている木はあるんです。
実が生る年と生らない年があるのは、植物の自然のリズムでもあるので、それは変えられないんですけど、
それを補うだけの多様な植物があるかどうかが、どれだけの動物を養えるかにかかわってくるんですね。
私はもともと植物に興味があったので、ずっと思っていたんです。日本などの温帯の森だと、動物の種子を運んでもらう樹種って
5割か6割くらいあるんですよ。一方、動物にとっては、果実を食べるという採食行動、いわば生存の基盤ですよね。
この2つのことを考えると、種子散布をする動物の特徴や、動物と植物の相互作用というのをもっと理解していくことができれば、
生態系の維持とか、森の更新とか、生態系全体の保全にも結びつくんじゃないかと、そんな思いもあって注目しているんです。
生きもの同士の関係に着目することは、自然をいろいろな方向からみることになるんですね。
いきもの同士のかかわりを明らかにしない限り、生物多様性は守れないと私は思っています。
ある動物の背景には、必ず複数の生きものがいます。ですから、人間が安易にある動物だけ取り除いたり、
逆に、ある動物のためだけに自然に手を加えたりすると必ずどこかで自然のバランスが崩れます。
一度、崩れたバランスって簡単には取り戻せないですから、その危険性を考えることは、常に必要だと思いますね。
生きもののつながりについてまだわかっていないことも多いので、難しい面もありますけど、
たとえば東南アジアでは、保護区がだんだん小さくなって、大型の動物がすめなくなってくると、
ゾウなどに種子散布を依存していた植物が更新できなくなる、そして、この植物とゾウの関係はとても大事だったんだと、
後になってから人間が気づく、そういう例が知られています。
ただ、振り返って今の日本で、クマにだけ種子散布を依存している植物があるかというと、
はっきり言えないんです。でも植物は寿命が長いので、気づいたときにはもう遅いかもしれない。
そうならないためにも、いろんな動物が森林の生態系の中で、どんな役割を果たしているのかがわかってくれば、
多様性の保全にもつながっていくと感じています。生きもの同士の相互作用は、多様性を生み出してきた大もとでもありますからね。
それをひとつひとつ明らかにしていくことが私の仕事かなと、そう思っています。
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