今日の一枚

 小さな幸せを
見つける名人になりたい

宮部みゆき『誰か』

2008-10-30 18:34:11 | 写真日記
 『誰か』宮部みゆき著

 久しぶりに読書した。秋ですね。
今月の初めから、とても体調がよく、目も疲れることなくよく見えた。
買っただけで、しまいこんでいたこの本を出し、読むことにした。
最初は、先日購入のルーペを使ったけど、これが見えすぎてしんどい
普通に老眼鏡を使って、読むとすらすらと疲れ知らずで読めた。
といっても、時間はとてもかかった。たっぷり三週間使って読み上げた。
ほんとに読むのは楽しい。

 ある有名企業の会長の運転手が事故死する。
残された二人の娘が、その運転手の生涯を本にしたい・・と
会長に頼んだことから、その娘婿である主人公が関わってくる。
事故死は自転車に轢かれたことで、転び打ち所が悪くて死ぬ・・という
単純な事故であるが、その犯人は捕まっていない。
その犯人探しのため、本を出したいというのだが、姉は反対、
妹が大変熱心に進めている。

姉は運転手であった父の過去について、とても不安に思っていることがあり
本の出版に反対しているのであるが、その詳細は分からない。
娘婿は、その詳細の調査をする。

普通に暮らし、妻には先立たれたけれど、娘二人と幸せに暮らす男。
その過去に隠された闇、闇がもたらした二人の娘の確執。
それらを覆い隠して暮らす幸せ。

分からなければ、知らなければ・・という姉。
そんなことはないだろうと思うのは、なんの憂いもななく生きているからか。
そんなことはない、誰でも何かしらの憂いを持って生きている。

 私は?
真実を知らなければ、悩むことも考えることもない。
隠し通すという美徳もあるかもしれない。
知りたいと思う気持ちと、知らなければ波風も立たず
苦しむこともない。何も変わらない生活を続けることが出来る・・と思う。

人間の心には、多くの善と悪が混在している。
そのすべてをさらけ出して生きていくのは難しい。
愛し合う男女であっても、信頼しきった親子関係であっても
真実がすべて美しいわけではないのです。

 そんなことを最後に考えさせられる物語でした。
本を読むと、まず行った事のない町並みを想像し、
出ている人物の顔や性格、生活を想像する。
その楽しい妄想の時間を楽しみ、最後にこういった
心の問題に遭遇して考える。

映画化やテレビドラマ化された時に、想像通りの町並みや人物設定が
されたときは嬉しいし、違うこの配役は違う・・とかテレビや映画に
突っ込んで
ほんと、本って楽しませてくれますよね。

『老いの哲学』

2008-10-22 22:31:37 | 愛媛新聞より
 『老いの哲学』山極 寿一さん 霊長類学者
    (社会性が生んだ長寿)

 霊長類で「老い」がはっきり見て取れるのは人間だけですから。

 「おばあちゃん仮説」というのがあってね。
雌が「自分の繁殖をやめて娘、息子、若い世代の繁殖を手伝って、
孫世代の生存価を高める」ということを、人類はいつのころからか始めた。

 「閉経」っていうのは人間だけにある現象でね。
普通は繁殖能力がなくなるときが寿命の終わり。人間はその閉経の時を
前にずらして、まだ元気なおばあちゃんになって、生計活動に参加する。
共同で育児をするというのは人間の大きな特徴だけれども、それが可能に
なったのは、おばあちゃんの力が大きいというわけだな。

 なぜかと言うとね、人間は直立歩行のせいで骨盤が小さいから、
大きな子どもを生めない。まだ胎児の状態で生んで、生後はとにかく
脳を発達させる。体の成長は後回しにしてね。子どもがたくさん死ぬ
サバンナという環境で、出産間隔を短くして子どもを増やす戦略を
取ったから、母親は何年にもわたってひ弱な子どもを何人も抱えることに
なった。一人じゃ育てられないだよね。

 「共同育児」は、人間の社会性の中に非常に深く組み込まれている。
つまり人間は、脳の大きな子どもを育てるという作業を集団全体で
行なったがためにね、非常に奇妙な社会性と生活史を手に入れた。
その結果起こったのが老人が長生きするっていうね、それまで霊長類が
獲得したことのない性質だったんだろうね。

 もちろん老化、ということもある。でも自力で生きられなくなった人を
集団で生かした痕跡は、すでに百六十万年くらい前の化石証拠があるからね。
歯が全部なくなってその後生きていたという。離乳食と同じようなものを
食べさせないと死んでいるよね。障害がある者を積極的に生かすというのも、
人間だけがやっていることで。

 それは子育てから来ているのかもしれない。つまり「共感」って
いうのが必要なわけだ。他者に非常に強く共感を持つということが、
人類の重要な特徴だから。でもね、人間の共感する力を、
悪用しちゃってるわけだよ。集団意識を高めて戦争するってのは、
共感の最悪のシナリオだよね。

 介護っていうのも人間にとっては非常に古い、百万年以上前からあった
ことなんだけど、それを社会の中にどう組み込んでいくかというのは
なかなか難しい。江戸時代の「隠居」なんてのも、老後、それまでと
違う人生を送らせて「あげる」っていう、社会のロジックだったかも
しれない。それももう機能しないだろうしなあ。

 いや、私なんかも早々と引退しようかと思ってるんだよね。
自由に野山を歩きたいし。フィールドに出てるときはいいんだけど、
こういうところ(研究室)にいるのは、もうたまらんと思ってさ。

 『やまぎわ・じゅいち』霊長類学者。京大大学院教授。
1952年、東京生まれ。野生ゴリラの行動観察をベースに人間社会への
洞察を重ねる。「父という余分なもの」「暴力はどこからきたか」など、
著作多数。

 近著「人類進化論」は、ほかの動物の観察から人類の進化の
ミッシングリンクを見つけ出そうとする、日本発祥の霊長類学の
総合的な解説書。

 おばあちゃんの私。
人間だけが迎えるおばあちゃん。
何だか、得したな・・人間で。
昔のように、おばあちゃんが孫の世話に追われることはない。
子どもを巣立ったことで、得られる大きな自由な時間を
好きなことに費やすことの出来る贅沢。

今の時代に、人間で生まれたことに感謝。

 それにしても、これは面白い。
ゴリラやチンパンジーと比較して、人間たる所以を考察。
分からないなりに、この方の著書を読んでみたいと思います。

 

 

白熊

2008-10-20 14:31:44 | 写真日記
フェルト羊毛で作る動物。情報番組で紹介されていたのを、早速作ってみました。ぬいぐるみを作ってみたいと思っていたので、この手芸はとても楽しめました。初めてにしては(^.^)まぁまぁの出来かな。

『身の丈』で豊かに暮らす⑤ 辰巳 渚

2008-10-19 18:31:22 | 愛媛新聞より
 『身の丈』で豊かに暮らす⑤ 辰巳 渚

 お店に行くと、「セール!40%オフ」の赤札が出ている。
「欲しい!」と思うとき、あなたの心では何が起きているのでしょうか。
何を手に入れたいのでしょうか。実はわたしも「特売」「セール」の
文字には弱い人間です。「最終処分」と書かれたワゴンには、
すーっと近寄りたくなって、「何か使える物がないかしら」と
探してしまいます。

 つまり、使いたい物を見つけて欲しくなったわけではないのです。
わたしたちは物そのものではなく、「安さ」が手にいれたくて
「欲しい」と思ってしまう存在のようです。
時には無理やりでも買いたい物を探そうとしている自分に気付くことが
あります。ハッと気が付いて、そこまでして「安さ」が欲しいか、
自分をしかって探すのをやめるのです。

 話が飛ぶようですが、私の専門はマーケティングです。
企業が物を売るお手伝いをする仕事ですが、マーケティングでは、
人間の心理を巧みに利用して物を売ろうしてきました。その立場で見ると、
今は物質的に豊かで生活に足りない物はなく、物の本来の価値だけでは
お金を払ってもらえない時代と言えます。

 「安さ」を売るのは、いわば古典的な手法ですが、ほかにそのような
手法があると思いますか?例えば、「新しさ」。「新発売!」と
銘打った商品で、本当に新しい物はどれくらいあるのでしょうか。
家電売り場で店員さんに説明してもらっても、そうもピンときません。
でも買い替え気分が盛り上がっているので、「新しいから機能も
アップしているはず」と自分に言い聞かせて買ってしまいます。

 ほかにも「デザイン」「流行」「珍しさ」などいろいろあります。
これらを専門的には「付加価値」と呼びます。このような、うたい文句に
惑わされていませんか。

 付加価値だと分かった上で大いに楽しんで買うのは賢い買い方だと
思いますが、うっかり買って「やっぱり要らなかった」としまい込む
羽目になるのは残念です。「欲しい」と思ったときに、自分が本当に
何を求めているのか、ちょっと立ち止まってみませんか。
               (マーケティングプランナー)

 物を買うときに価格というのは、重要な要素。
ついつい安さに目がいきがちになる私です。
このところの中国産食品の不具合が出ていますね。
安さを求めるあまりに、どこかの誰かを犠牲にしているのかも。
中国から、あんな遠くから運ばれた食品が、
地元の野菜を買うより安い。
それって、なんだか変・・ですよね。
農家の作業は、日本だって、中国だって変わらないはずなのに、
より多くの運搬費を使う輸入ものが日本の製品より安い。
この不合理をよくよく考えなくてはいけないと思うのです。

私自身の買い物は、そういったことも考え、家計も考え、
必要な物を必要な量だけ買う。無駄をなくす努力が必要でしょうね。

バリ

2008-10-09 19:47:17 | 写真日記
インドネシアから移築し建物に、直輸入の雑貨や絵画を売っている。カフェでもあるらしいのです。ほんとは食事をしたくて行ったのですけど、あまりにもおしゃれで、カフェ・ダイニングって、書いてあるにも関わらず(^-^;)とても入ることができずに退散(^.^)