東北地方太平洋地震の大きな被害に驚いています。
たくさんの被災者の方にお見舞い申し上げますとともに、
亡くなられた方にお悔やみ申し上げます。
小さな小さな私の力ではどれほどのお役にもたてませんが
節電に努め、僅かながらの寄付をさせていただきました。
皆さまが一日でも早く落ち着いた生活を取り戻せる事をお祈りしております。
心に感じる生物多様性
ミジンコは、命が透けて見えている。 ジャズ・サックス奏者 坂田 明さん
フリージャズのサックス及びクラリネット奏者である坂田明さんは、知る人ぞ知るミジンコ研究家でもあります。
広島大学の水産学科出身で、自宅で淡水魚やミジンコを飼育し、コンサートツアーで訪れた海外でも、池や湖を覗きこんでは
「プランクトン観察」。果ては、ミジンコを見るため5000メートル級の高峰にまで登ってしまった坂田さんに、
ミジンコの世界から見えてくる生命の不思議さと力強さ、そして、生き残りをかけた戦略の巧みさについて語っていただきました。
ミジンコとジャズ、どちらとの出会いが先なのでしょうか?
ジャズの方ですね。中学2年のころですから。
ミジンコは大学に入ってから。水生生物の研究者になろうとは思わなかったねぇ。
大学卒業する時はやっぱりジャズの方が人生として面白いと思って。
水生生物は今、趣味でやってるわけだけど、時間が許す範囲でやればいいから気楽なんだよね。
論文書かなきゃいけないとかいうこともないし。
日本プランクトン学会の学会誌に寄稿したことはありますけどね。
バンドのツアーで地方に行く時にはね、車に顕微鏡を積んでおいて、田んぼとか池とかあると、
そこでプランクトンネットを出してすくって、プランクトン観察が始まるの。
北海道の誰もいない林のなかで、バンドのメンバー3人だけで盛り上がったりしてさ。
あっ、いたーっ!とか言って。
海外でもミジンコ観察されていますよね。特に印象深かったところはどこですか?
ヒマラヤの氷河。これは驚いたね。
ユキ虫を研究している、当時東工大助教授だった幸島司朗さん(現京大野生動物研究センター教授)が発見してね。
で、ぼくのところに来て、坂田さん、氷河の上にミジンコがいるぞってささやくわけ。
そういう面白い話しないで!っていうの(笑)。だって、行くのも大変、観察するのも大変。
ヒマラヤって、麓は亜熱帯でヒルがいるんです。それで、登っていくと南京虫がでてくる。
さらに登ると最後はシラミ。それを乗り越えて見に行くわけだから。
標高5,300メートルですよ。そりゃもう感動しましたね。
ヒョウガミジンコっていうのと、ヒョウガユスリカっていう羽の退化したやつがいてね。
氷河の上って白くなくて、真っ黒なの、知ってる?あれは藍藻が繁殖しているんです。
いわゆるシアノバクテリアでして、光合成して酸素を生み出す真性細菌です。
インド洋から上がってくるモンスーンに含まれていた養分が氷河の上に落ちて、藍藻が育つわけ。
ミジンコはそれを食べているんだよね。そして、氷河っていうのは一年に何センチか流れているでしょ?
だから生まれて大きくなると、藍藻を食べながら、上へ上へと昇っていくんですよ。
ソコミジンコっていうくらいで、底の方をはって進むんです。
ソコミジンコの仲間(底生性、陸生かい足類)は、そこらじゅうにいますよ。
落ち葉の上とかね。富士山麓の風穴にもいるんだけど、ヒョウガイジンコも、同じような形をしてるの。
ミジンコのどんなところが、坂田さんをそこまで惹きつけるのでしょう?
いわゆるミジンコ(枝角類{しかくるい})って体が透明だから、内臓とかが全部、透けて見えるんですよ。
これは命が透けて見えているってことでもあるわけ。
顕微鏡を覗くと、例えば、食べてたものがそのまま見える。腸の蠕動運動{ぜんどうぶんどう}しているのも全部わかる。
心臓から血液がばーっと流れ出してね、ミジンコの場合は開放系の血管っていうんですけど、まあ要するに血管がなくて、
解放された状態でばーっと出てって、血液が体じゅうをざーっと流れて、そして心臓に戻ってくる。
その流れも見えるわけ。生命誕生の様子も見えますよ。ミジンコの卵巣から、育囊{いくのう}という、
人間でいうと子宮のようなところに卵が産み出されてくるんですけど、みると仰天しますよ。
なんだこれ、トコロテンじゃん!って(笑)。小さな穴から卵が細くなって出てきて、だんだん楕円形になっていく。
そして細胞分裂が始まって、どんどんミジンコの姿になっていくわけ。で、やがてお母さんの育囊から出て行く。
あれはね、「出産」ですよ。お母さんが後腹部というところをね、息止めるみたいにして持ち上げると、
腹がぱっと開いて、子どもがわーっと出てくる。その過程が全部見える。
ミジンコを見ていると、命が透けて見えることに感動します。
命ってなんだろうと考えさせられますね。命の荘厳さを感じるし、その荘厳なものを魚が食っていて、
その魚を我々が食っている。だから我々が食ってるものは、すべて荘厳な命そのものなんです。
WWFマガジンより
たくさんの被災者の方にお見舞い申し上げますとともに、
亡くなられた方にお悔やみ申し上げます。
小さな小さな私の力ではどれほどのお役にもたてませんが
節電に努め、僅かながらの寄付をさせていただきました。
皆さまが一日でも早く落ち着いた生活を取り戻せる事をお祈りしております。
心に感じる生物多様性
ミジンコは、命が透けて見えている。 ジャズ・サックス奏者 坂田 明さん
フリージャズのサックス及びクラリネット奏者である坂田明さんは、知る人ぞ知るミジンコ研究家でもあります。
広島大学の水産学科出身で、自宅で淡水魚やミジンコを飼育し、コンサートツアーで訪れた海外でも、池や湖を覗きこんでは
「プランクトン観察」。果ては、ミジンコを見るため5000メートル級の高峰にまで登ってしまった坂田さんに、
ミジンコの世界から見えてくる生命の不思議さと力強さ、そして、生き残りをかけた戦略の巧みさについて語っていただきました。
ミジンコとジャズ、どちらとの出会いが先なのでしょうか?
ジャズの方ですね。中学2年のころですから。
ミジンコは大学に入ってから。水生生物の研究者になろうとは思わなかったねぇ。
大学卒業する時はやっぱりジャズの方が人生として面白いと思って。
水生生物は今、趣味でやってるわけだけど、時間が許す範囲でやればいいから気楽なんだよね。
論文書かなきゃいけないとかいうこともないし。
日本プランクトン学会の学会誌に寄稿したことはありますけどね。
バンドのツアーで地方に行く時にはね、車に顕微鏡を積んでおいて、田んぼとか池とかあると、
そこでプランクトンネットを出してすくって、プランクトン観察が始まるの。
北海道の誰もいない林のなかで、バンドのメンバー3人だけで盛り上がったりしてさ。
あっ、いたーっ!とか言って。
海外でもミジンコ観察されていますよね。特に印象深かったところはどこですか?
ヒマラヤの氷河。これは驚いたね。
ユキ虫を研究している、当時東工大助教授だった幸島司朗さん(現京大野生動物研究センター教授)が発見してね。
で、ぼくのところに来て、坂田さん、氷河の上にミジンコがいるぞってささやくわけ。
そういう面白い話しないで!っていうの(笑)。だって、行くのも大変、観察するのも大変。
ヒマラヤって、麓は亜熱帯でヒルがいるんです。それで、登っていくと南京虫がでてくる。
さらに登ると最後はシラミ。それを乗り越えて見に行くわけだから。
標高5,300メートルですよ。そりゃもう感動しましたね。
ヒョウガミジンコっていうのと、ヒョウガユスリカっていう羽の退化したやつがいてね。
氷河の上って白くなくて、真っ黒なの、知ってる?あれは藍藻が繁殖しているんです。
いわゆるシアノバクテリアでして、光合成して酸素を生み出す真性細菌です。
インド洋から上がってくるモンスーンに含まれていた養分が氷河の上に落ちて、藍藻が育つわけ。
ミジンコはそれを食べているんだよね。そして、氷河っていうのは一年に何センチか流れているでしょ?
だから生まれて大きくなると、藍藻を食べながら、上へ上へと昇っていくんですよ。
ソコミジンコっていうくらいで、底の方をはって進むんです。
ソコミジンコの仲間(底生性、陸生かい足類)は、そこらじゅうにいますよ。
落ち葉の上とかね。富士山麓の風穴にもいるんだけど、ヒョウガイジンコも、同じような形をしてるの。
ミジンコのどんなところが、坂田さんをそこまで惹きつけるのでしょう?
いわゆるミジンコ(枝角類{しかくるい})って体が透明だから、内臓とかが全部、透けて見えるんですよ。
これは命が透けて見えているってことでもあるわけ。
顕微鏡を覗くと、例えば、食べてたものがそのまま見える。腸の蠕動運動{ぜんどうぶんどう}しているのも全部わかる。
心臓から血液がばーっと流れ出してね、ミジンコの場合は開放系の血管っていうんですけど、まあ要するに血管がなくて、
解放された状態でばーっと出てって、血液が体じゅうをざーっと流れて、そして心臓に戻ってくる。
その流れも見えるわけ。生命誕生の様子も見えますよ。ミジンコの卵巣から、育囊{いくのう}という、
人間でいうと子宮のようなところに卵が産み出されてくるんですけど、みると仰天しますよ。
なんだこれ、トコロテンじゃん!って(笑)。小さな穴から卵が細くなって出てきて、だんだん楕円形になっていく。
そして細胞分裂が始まって、どんどんミジンコの姿になっていくわけ。で、やがてお母さんの育囊から出て行く。
あれはね、「出産」ですよ。お母さんが後腹部というところをね、息止めるみたいにして持ち上げると、
腹がぱっと開いて、子どもがわーっと出てくる。その過程が全部見える。
ミジンコを見ていると、命が透けて見えることに感動します。
命ってなんだろうと考えさせられますね。命の荘厳さを感じるし、その荘厳なものを魚が食っていて、
その魚を我々が食っている。だから我々が食ってるものは、すべて荘厳な命そのものなんです。
WWFマガジンより