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「スモール野球」でなくても勝てる 日本、大勝を自信に

2013年03月11日 08時00分47秒 | スポーツ
 国・地域別対抗戦ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で決勝ラウンド(準決勝以降)進出を決めた日本。2次ラウンドのオランダ戦、16―4で七回コールドゲームの立役者となったのは9番松田(ソフトバンク)だった。恐れを知らない松田の打撃は、3連覇を狙う日本に大きなヒントを与えている。

■これまで当たり前のことができなかったが…

 1次ラウンド以来、貧打が目立った日本がやっと爆発した。言っては悪いが、オランダの投手は日本のプロ野球では1軍に上がれるかどうかというレベル。

 打って当たり前なのだが、その当たり前のことができなかったのがこれまでの日本だ。ブラジル、中国、キューバ……。いずれも大量点を取れても不思議のなかった相手だったが、崩しきれなかった。

 これまで「振り切れない日本」の情けなさを指摘してきたが、なかでもちゃんと振れている選手はいた。中田(日本ハム)と松田である。


■初球から振ってくる打者は怖い

 投手からみて、一番怖いのはどういうタイプの打者か。日本では昔から選球眼がよく、ボール球を振らず、相手に球数を費やさせる打者が嫌な打者ということになっている。これは打者が基本的に「打てない」「打っても3割」という悲観的な野球観からきている。

 しかし、投手の側からすると3割の打者も2割7分の打者も同じで、どちらが怖いかというと、ぶんぶん振ってくる打者なのだ。とりわけ初球から思い切りよく振ってくる打者は怖い。

 二回の松田のツーランホームランは初球打ちだった。初球から振れる打者がなぜ怖いかというと、こうした打者は直球でもカーブでもスライダーでも、ミートできる適応力を持っているぞと、相手投手に思わせるからだ。

 実際にできるかどうかは関係ない。どんな球でもこいつには打たれる、という雰囲気が投手にとっては大敵なのだ。

 投手にとって初球からきっちり振られることほど嫌なことはない。「俺の球は全部バレているんじゃなかろうか」と思わされるのだ。

■振り切るということが大事

 ちなみに松田のようなタイプの打者として、私が監督をしていたときの横浜(現DeNA)に、波留と石井琢がいた。2人とも天才肌。とくに波留は投手とすればもっともやっかいな「感性の打者」だった。

 日本代表に選ばれるくらいの打者は松田に限らず、本来「スイングができる」打者だ。日本の選手層からすると、技術も感性も備えている選手しか選ばれていない。

 オランダ戦で日本4本目の本塁打となった稲葉(日本ハム)の三回のソロは、ボール気味の球を振ってファウルにしながらの一振りだった。

 打者は振っているうちにリズムが出てくる。結果には関係なく、振り切るということが大事なのだ。

■「スモール」の発想は大事だが…

 前回も書いたように、打者がちゃんと振っていれば、投手が打ち取ったと思った球でもファウルになるときがあり、がっくりくる。肩に力も入る。そんな心理関係が勝負を左右する。



 日本の野球は基本的に「非力で打てない」という見通しからいろんな戦略が立てられている。そこから“スモール・ベースボール”の文化も培われたのだが、時代は変わった。

 スモールの発想は大事だが、日本はスモールでなくてもたいていの相手には勝てる。そのくらいの自信を持っていい。

 決勝ラウンド進出を決めた日本。オランダ戦のような振り切る野球ができるかどうかが、今後のカギになるだろう。

 1次ラウンドから2次ラウンド初戦の台湾戦まで、振り切れずに苦戦してきたが、本来のスイングができたら、コールド勝ちできるだけのものがある。監督、コーチが、振り切れるムードを作れるかどうかが肝心だ。

 投手陣についても同じことがいえる。先発の前田健(広島)は昨年、中日の投手コーチとしてみていて、一番すごい素材であると同時に、一番惜しいと思われた投手だった。




5回を1安打9奪三振で無失点だった前田健だが…
■自分たちの良さをもっと知ること

 初回に相手の3番バーナディナの内角を突き、バットをへし折って遊飛に仕留めた。中日ベンチからみていて、前田健のこうした内角球ほど怖いものはなかった。

 ところが前田健はちょっといい当たりをされると、スライダー、スライダーと逃げの投球をする。そして、球数が多くなっていった。オランダ戦では5回を1安打9奪三振と好投をしたものの、こうした傾向があった。

 前田健は投手としてモノが違う。それだけに素材を生かし切れていないのが惜しい。

 自分の内角球がどれほど相手に嫌なものか、気がついてほしい。それは日本代表も同じ。自分たちの良さをもっと知り、自信をもつ。それが3連覇への道である。

(野球評論家)





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