飛騨さるぼぼ湧水

飛騨の山奥から発信しています。少々目が悪い山猿かな?

連載小説「幸福の木」 その74 話 大自然のゲリラ攻撃

2011-04-02 18:47:29 | 小説

ハイハイハイハーイ、おまたせ、飛騨の小路 小湧水です。昨日今日と暖かくて、本当に嬉しかったです。
えっ?、あっしじゃないですよ、みちのくの人達ですよ。平安時代もこんなだったでしょうか?えっ、平安時代も一度、あのくらいの津波が有ったようですよ。
そう言えば、ウチの先生、「丘の船 千年先の 津波館」だって。ええ、あの船を撤去せずに、そのお金で記念館にして千年先に伝えよ!だって。そんなことは、あっしなんかに言わせずに、ご自分で言えって。ねえ?
全国から復興案を募集しろ!だって、。これも、なんで、あっしに言わせるんですかね。はい、てな訳で、みちのくも復興が始まるようで、嬉しいかぎりです。はい、これも、みちのくの人達のことですよ。
そう、困ったものは、あの原発ですね。ええ、ゲンコツものですね。まあ、世界中が心配するのも、真剣に考える機会になって、いいかもね。
はい、今日は忘れていません。小説ですよね。はい、大丈夫です。えっ、官房長官じゃないけれど、「大丈夫です」、はい、では、早速、その小説に参りたいと思います。あっ、そう言えば、サクラが咲き始めたそうで。
あの「岩?石?割り桜」は、どうでしょうか?確か、東北じゃなかったでしょうか?はい、「大丈夫です」、早速、開幕開幕!あっ、タイトルは・・・

74 大自然のゲリラ攻撃

「ああ、こんな山に長くいられるものか。見ろ、今日はいい天気になりそうだ。もったいない!」
太郎は朝から、愚痴っていた。
それもうなづける程、この日は、風も無く、お日様が暖かく照らす穏やかな天気となった。
ふと見ると、ハナは、髭の父親と息子のシュウと三人で、楽しそうに朝食の準備をしていた。
「おい、ゴクウ、見ろよ。あの嬉しそうな息子の顔を。ハナを引き止めやがって、まだガキだ、なら矢なんか持なっていうんだよ、なあ!」
太郎は、いまいましそうに三人を見つめていた。
「ええ、でも、済んだことですから、それに、私も出発が遅れて、ほっとしてます。まだ、体が本調子じゃないので」
とゴクウが言うと、太郎はムッとした。
「チエッ!こんないい天気なら、歩き出せばスッキリするんだ。どいつもこいつもなまけ癖がついて」
と言うと、太郎は、さっさと荷物をまとめ始めた。
「あれっ、太郎隊長、どうするんですか?」
「決まっているだろ。こんないい天気だ。俺だけ先に出かける。重いカヌーを担ぐからな、早く出る」
と太郎ハ、プンプンしながら言った。
朝食の準備ができて、皆で焚火を囲んで食べ始めた。
「太郎兄ちゃん、シュウのお父さんが、鹿の肉をくださると言うので、今日は天気もいいし、シュウと一緒に干し肉を作るわ。お礼を言ってよ
とハナが言うと、
「お礼?せっかくの出発を止められたんだ。そのくらい・・・、そんな事より、俺はカヌーが重いから、先に出発するからな」
と、顔を横に向けて言った。
「えっ、今日ですか?今夜まではここに居るんじゃなかったですか?」
シュウの父親は驚いて聞いた。
「悪いけど、俺は、怠け者じゃないから、ジッとしていられないんだ」
と太郎は言い切った。
父親とシュウは困った顔をしていたが、やがて、
「それじゃ、よく聞いてください。半日ほど山を下ると、特別大きなブナの木が見えます。その根本も私達の寝場所で、そこは、雪や風の心配も無く、食べ物と水も奥の石の下に隠してあります。今夜は必ずそこに泊まってください。そこなら安心です」
と言って、父親は息子と顔を見合わせて微笑んだ。
太郎はカヌーを担いで、出発した。ケンが一緒に付いて行くことになった。
ハナやゴクウ、それにシュウ親子が見送ったが、太郎は振り向きもしなかった。カヌーを背に担いでいるせいもある。
「何が安心だ子供じゃあるまいし、どこで寝ようと俺の勝手だ、よけいなおせっかいをしやがって!」
プリプリ怒っている太郎の耳に、また父親の遠い声が聞こえた
「必ずー、ブナの木でー泊まってくださいよー」
「ったく!くどい。腹の立つ親子だ」
怒りも加わって太郎の顔は、もう汗をかいていた。
太郎とケンの姿が見えなくなると、ハナはほっとして、
「ああ、ごめんなさい。太郎兄ちゃんは、へそ曲がりで、皆が言うと反対のことばかりやって。でも、どうして、そんなに泊まる場所にこだわるんですか?」
と父親にあやまるついでに聞いた。
父親は息子にも言い聞かせるように、
「こんないい天気なので、信じられないかもしれないが、午後から雪が降る気がするのだ。特に春先の雪は湿っぽくて大きい。積もり始めると、あっと言う間に積もってしまって危険だ」
と言って指を舐めて立てた。
「おとーっ、何のおまじない?」
シュウがまねして指を舐めて立てると、
「これで、風の向きを調べる。空気の流れだ。涼しく感じる方から風が吹いて来ているのだ」
シュウと父親は、しばらく無言のまま風の向きを探っていた。
やがて、父親が、静香弐、
「シュウよ。今は、ゆっくりと南東から吹いて来ているが、そのうち、北西の風に変わる。すると、寒くなり、大量の雪を降らす。特にいい天気の後ほど気をつけろ」
と言って口を閉じた。
ハナは、ゴクウの傍へ行って、
「こんな暖かい良い天気なのに、ねえ、ゴクウ?」
と、半信半疑だった。
「ええ、よく春先に雪が降ることは有ります。ここはかなり高い山の上だから、低地とは違うんでしょう」
とゴクウは否定しなかった。
「まあ、そんなものなの。でも、雨や霧は困るから、寝るには屋根がある方がいいわね」
と、ハナは、大雪が降るなんて信じられなかった。
「さあ、鹿肉を切って干しましょう。こんないい天気だから、焚火の近くでなくても、すぐ乾くわ」
とハナ達は早速、仕事に取り掛かった。
さて、。太郎とケンはと、言えば、
毛皮のカヌーを背負って、山道を下っていた。ケンの背中にも荷物が載せられていた。
もうかなり山を下って、ハナ達からは見えないほど遠くに離れていた。
「おお、ケン、はるか遠くに大木が見えるぞ」
太郎が、目を細くして見ながら言った。辺りはほとんどが裸木なのに、その木だけが緑がかっているようだった。
「あの緑は、きっと宿木だな。あれが、おっちゃんの言ってたブナの木だ。そう言えば、くどい父親だった。シュウもこれから大変だぞ」
と太郎は、シュウの未来に同情した。
「よし、ケン、ここで休憩しよう。あとは、夕方暗くなるまでに、あのブナの所まで着けばいいんだから、あわてることはない、ああーっ、疲れた!」
と太郎はカヌーを横に投げ下ろし、地面に横たわった。
「腹も減った、ケン、お前も食べろ」
と太郎は、遠慮せずに持って来た鹿の焼肉を投げた。
陽射しが暖かく、気持が良かった。
お腹がふくれると、太郎は、
「ケン、俺は昼寝をするから、少したったら起こしてくれ」
と言うと、寝始めた。
が、お日様の陽射しがまぶしいので、横のカヌーを伏せて、その中へもぐり込んだ。
「ああ、これは我ながら、いい考えだ。暗くてよく寝られそう」
と五万悦で、グウグウいびきをかいで寝てしまった。
どのくらい時間が経ったのだろう。昼はとうの昔に過ぎていた。
北の空が曇って、冷たい北風が吹き始めた。
ケンが、太郎に向かってかなり前から吼えていたのだが、カヌーの中でぐっすり眠っている太郎には聞こえなかった。
そのうち、大粒の雨が降り出した。
「ボタボトボタ!」
そのカヌーをたたく激しい音に、ようやく太郎が目覚めた。
カヌーの外にあわてて出た太郎は驚いた。
「ええーっ!雨なんて、おい、ケン、どうして起こさなかったのだ?」
とケンを叱ってみたが、今更どうしょうもない。
「ちえっ、しまった。寝過ぎた」
太郎は、担いだカヌーを傘代わりにして、あわてて山を下り始めた。
大粒の雨は、次第に、冷たくなって氷雨になった。
「ひえーっ、寒い、何で、急に寒くなったんだろう?」
太郎は、ブルブル震えながら、さらに下って行くと、氷雨は、さらに白い雪に変わった。大粒のぼたん雪である。
「ええーっ、マジかよ?雪だなんて。さっきまで、あんなに暖かかったのに」
太郎は、目の前の出来事が、信じられなかった。
ところが、さらに、信じられないことに、その雪がどんどん積もり始めた。そして、あっと言う間に、膝の高さにまで積もった。
「ええーっ、何だ、これは?俺は夢でも見ているのか?ああ、雪で足が歩きにくい!」
雪に沈む足を一歩づつ抜いて歩いていたが、とうとう太郎は、
「ああーっ、疲れた!おい、ケン、こっちへ来い、このカヌーの屋根で休憩しよう」
と、太郎とケンが止まって休んでいると、雪はさらに積もり続けた。
そのうち、とうとう肩の高さにまでなってしまった。

さて、話を、太郎が旅立ったまだ御前中のハナ達にもどすと、
「この上に切った肉を乗せておけば、早く乾く」
ハナはシュウの父親が運んで来た石のような白っぽい塊に好奇心が湧いた。
「わーっ、これは、岩塩だわ、そうでしょ?美味しい味もつくわ」
「お姉ちゃん、おとーが、早く乾かせって」
シュウが言うのを聞きながら、、ハナがひとつを手に取って舐めると塩辛かった。
「こんないい天気だから、午後早くには終わると思うわ」
とハナが答えると、
「いや、それではだめだ。御前中に終わらないと、だから岩塩も使って」
とシュウの父親は真剣な目をして言った。
ハナは仕方なく、うなづいたが、父親の姿が見えなくなると、小さな声でシュウに
「お父さんは、体が大きい割りには、心配症ね。太郎兄ちゃんと合わせて半分づつにしたら、ちょうどいいくらいになるわ」
と、クスクス笑った。
シュウも分かっているのか、一緒になって笑った。
ところが、昼近くになると、
「あっ、お姉ちゃん、あっちから、黒い雲がこっちへ来る!」
と北の空を指さして、シュウが叫んだ。
「あらっ、ほんと!なんで、こんないい天気なのに?」
ハナも驚いた。
「おーい、やはり来るぞ。すぐ、岩の中へ片付けろ。すぐ雨と雪が来る!」
シュウの父親が、あわてて駆けて来て、干し肉の片付けを手伝った。
まもなく、今までの暖かい陽射しに代わって、北風が吹き始めた。
すぐ、、大粒の冷たい雨が降り出した。
ここは、高井山なので、すぐ雨は雪に変わり、あっと言う間に、積もり始めた。「ええーっ、うそー!信じられない。さっきまで、いい天気だったのに」
岩の屋根の下で、ハナが驚いて見ている間に、雪は腰ほどの高さになり、さらに積もり続けた。
おまけに、天は暗くなり、まるで夕方のようだった。
「これから、一晩中積もり続けるだろう。雪の高さは背丈を超える。だから、四、五日は、ここから出られないだろう」
父親は、そう静かに言いながら、ドカッと腰を下ろし、焚火に薪を加えた。
ハナは、まだ信じられないと言うように立ちつくしていたが、
「ああーっ!」
と大声を上げた。
「おっ、お姉ちゃん、どうしたの?」
シュウがあわてて聞くと、
「たっ、太郎兄ちゃん、それにケンよ」
とハナは、あわてふためいていた。
「大丈夫!山の下は雨も雪も、もっと遅れて来る、それまでに、太郎君達は、あのブナの寝場所まで行く時間は十分過ぎるくらい有るはずだ。心配したことは無い。まあ、落ち着いて!」
とシュウの父親がなだめた。
「あっ、そうだったわ。だから、ブナの木って言ってたのね」
ハナは、安心したのか、ようやく落ち着いて、焚火の前に座った。
「あそこには、焚火も食べ物もある。太郎君達も四、五日、ゆっくり休んだらいい」
と言って、父親はシュウを見てにっこり笑った。
「やっぱり、おとーの言った通りだ」
シュウは、自慢そうにハナに言った。
すると、ハナは、
「あーっ、それよ!」
とまた急に立ち上がって叫んだ。
「どっ、どうしたの?」
シュウ親子が驚くと、
「それよ、シュウのお父さんの言葉を太郎兄ちゃんは信じてないわ。まちがい無いわ。そう、私でも信二なかったの・・・」
と最後は小声で言った。
「と言うことは?」
三人と横になっていたゴクウも、沈黙したまま顔を見合わせた。
さて、話を元の太郎達にもどす。
その三人+一匹の心配通り、油断して昼寝していた太郎は、前述のように、まだ避難所のブナの寝場所に着いていなかった。
それどころか、かなり手前の山の斜面だった。
積もり続ける雪の中で、太郎とケンは寒さでブルブル震えながら、カヌーの屋根の下にいたが、そのままでは埋まってしまうので、積もった周りの雪を踏み固めながら、常に雪の上にいるようにしていた。
「寒いな。これじゃ今夜眠れない。ケンお前が、もっと早く起こしていてくれたなら、今頃はあそこに着いていたのに」
と太郎は隣のケンに言ったが、ケンはキューンと泣くばかりだった。
「おお、寒い、そうだ、暖かい毛のある方を内川に向けよう」
と言って、太郎は雪の降る中を、カヌーの毛皮を裏返した。
「ああ、これで、少しは暖かい。こちら側は滑りにくかったんだ」
とほっとしていたが、急に、真面目な顔になって、
「ちょっと、待てよ。反対側は滑りやすい、と言うことは・・・」
と言うと、太郎は、あわててカヌーをひっくり返して頭をふもとに向けて、雪の上に置いた。
「おおーっつ、なんて俺は頭がいいんだ。よし、ケン、早く乗れ、これから、あっと言う間に、寝場所まで行くぞ」
と自分は後方に座って、ケンに怒鳴った。
ケンが前の方に乗ると、カヌーはゆっくり下の方へ向かって滑り出した。
「へっ、どんなもんだい。人間の方が上手だーい。ざまーを見ろ、馬鹿な雪め!」
と太郎はご機嫌な声で怒鳴った。
が、雪は相変わらず容赦なく降り続けた。
辺りは真っ白だが、夕方のように薄暗く、視界は、全然きかなかった。
「とにかく、下へ下れば、まちがいないんだ」
太郎のカヌーは、どんどん勢いを増して、あっと言う間に、あのブナの近くまで滑り下りていた。
「おい、ケン、見えるか?あのブナが見えたら吼えろよ、俺には雪で見にくいわ」
太郎は槍でカヌーの頭を常に下に向けながら、怒鳴った。
「ワンワンワン!」
ぶつかって来る雪と風に立ち向かって、前方を見つめていたケンが、けたたましく吼えた。
「何?見えたか?よし、」
と太郎が了解したが、カヌーをどう止めたらよいか分からなかった。
「おい、こっこら、とっ止まれ!」
カヌーは、ものすごいスピードで滑っていて、もし、転べば、皆が吹っ飛んでしまいそうだった。
しかも、地面の凸凹が雪面にもつき、ガタガタという震動が、スピードが増すのか、さらに、ひどくなっていった。
雪と風がぶつかって来る。もう目も開けていられない。
太郎は、槍の柄で転ばないようにするのが精一杯で、止めるどころではなかった。
「あっ、あそこだ!」
太郎の目にブナの木影が映った。
が、、あっと言う間に後方へ吹き飛んだ。
カヌーのスピードはさらに加速して、震動はもう耐え切れないほどになって来た。
「ああー、誰か、止めて!誰か助けてー!」
太郎の大声と共に、カヌーは弾丸列車のようにふもとへすっ飛んで行った。
「誰か、助けてー、麗子さーん!」
そのうち、雪の降りしきる中を、遠くで、「ドカーン!」と何かにぶつかったような音が聞こえた。

ハイハイハイハーイ、時間となりました。最近、長くなりました。はい、あのドカーン!は心臓に悪いですね。そう、原発のトラウマかも?あっ、そうそう、タイトルって、ちょっと災害を思い出しそうと言おうとしたのでした。はい、開幕の時です。ええ、どうでもいいことです。はい、では、またのお運びを願いまして。
あっ、また寒くなるそうで、先生、「あの毛布のガウンコート」安全ピンでできないかって?はい、どうでしょう?どなたかお願いします。試してくださいませんか!はい、では、改めて、また来週と言うことで、はい、バイバイバーイです。


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