老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

蹴らないでくれ

2023-07-10 03:25:36 | 沁みる砂時計

我が家の3坪ほどの家庭菜園 二本の胡瓜苗が成長し 幸せの黄色い花を咲かせ 20本の胡瓜を頂いた
beagle元気 「胡瓜」の言葉に反応するほど胡瓜大好き メトロノームのように先が白い尻尾を左右に
大きく振り胡瓜を待つ beagle元気も私たち夫婦も胡瓜の命を頂き元気になる

1983 小石にも生命がある

食道癌の手術前後 病床で書いた高見順の詩「小石」から引用 
蹴らないでくれ
眠らせてほしい 
もうここで 
眠らせてくれ


86歳の老男は食道癌(ステージ5)を今春 発見され
転院し放射線治療を受ける。
放射線治療を受けても「効果があるかどうかは別問題」、と医師から告げられる
8mmの管を鼻から胃まで通し何とか栄養を維持できたがそれももう限界

食道の腫瘍が大きくなりその細い管を圧迫してきた
管を抜去すると再び管を挿入することはできない
胃ろうを造設する手術を行う
「口から食べたい」、という老男の願いは消えていった

躰は痩せ、胸の奥や背中の痛み、咳、 嗄声 させい (声のかすれ)の症状があり
苦しい
小石まで成長した食道の癌よ
蹴らないでくれ
眠らせてほしい 
もうここで 
眠らせてくれ

癌と必死に闘ってきた高見順
86歳の老男も闘っている


私たちは道端にある小石を
何気なく足蹴りをすることがある
そんな小石にも
生命があることさえ忘れていた

石と言えば 
「景石」という言葉を思い浮かぶ
景石は庭園美を構成する重要な材料であり
景石は 「捨て石」とも言われ 
主役的な庭石を引き立てるためには置かれる
捨て石は 無造作に何気なく置いてあるように見せて
そこに捨石があるだけで庭の風景がさらに引き立つ

捨石は影の存在なのかもしれない

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