秋が近づいていた日、新聞やスポーツ番組を賑わせたのは
桑田がジャイアンツを去ると公式ページで発表したことだった。
その日は日曜日で、朝から駅に置いてあるスポーツ新聞を見ないように
歩いていた私は、これでジャイアンツを応援する義理が無くなったと
密かに胸をなでおろした。
父親が桑田FANだった。
亡くなった父親が、入院中に今日は桑田が勝ったね、あそこが良かったと
お土産話に花を咲かせていたことを思い出す。
父が死ぬ前に、桑田は引退しなくて良かったなと思った。
最近ではめっきり登板することがなかったけれど
それでも桑田が投げるのを楽しみにしていた。
子供の頃、大好きだったジャイアンツの選手が次々と引退し
幼少の思い出がなくなったジャイアンツを好きにはなれなかった。
そして、川相選手がジャイアンツを出た時、
もうジャイアンツを嫌悪しつつあった。
それでも、父との思い出深いジャイアンツは
どこか心の中で引っかかるもやとなっていた。
そんな中、父がそしていつの間にか私が、弟が愛した
桑田がジャイアンツを去ることになった。
桑田には現役を続行して貰いたい。
どんな場所においても投げ続けてもらいたい。
200勝。
それが、桑田本人と応援している人達の大きい数字。
そこまでは何があっても頑張ってもらいたい。
だけど、桑田がジャイアンツを去るにあたって
もう私が、ジャイアンツに残した未練は何一つなくなった。
原選手も好きだった。
監督になった。
あの頃、引退セレモニーで原監督を待ち望んでいた。
それでも、やはり応援できないほどの組織とやり方。
もうジャイアンツに何一つの未練はない。
さようならジャイアンツ。