みなさんこんにちは!
広島県呉市の皮膚科、橋本クリニック院長の橋本康志です。
前傾に引き続きアトピー性皮膚炎について記載しようと思います。
治療に先立ち重症度分類を行います。厚生労働省のアトピー性皮膚炎の治療ガイドライン2005より抜粋です。
重症度分類
軽症:面積に関わらず、軽度の皮疹のみ認められる場合です。
中等症:強い炎症を伴う皮疹が全身の10%未満に認められる場合です。
重症:強い炎症を伴う皮疹が全身の10%~30%未満を占める場合です。
最重症:強い炎症を伴う皮疹が全身の30%以上を占める場合です。
この重症度分類は治療開始時の重症度を判定し、その後の治療の効果判定に使用します。
治療について
1.原因・悪化因子の検索と対策
年齢によって原因や悪化因子が異なるため、問診を手助けに原因・悪化因子を探します。(明らかな原因・悪化因子が見当たらないこともあります。)原因や悪化因子が類推できる場合にはできるだけ避ける方法を考えます。
2.スキンケア
アトピー性皮膚炎の方の皮膚では、皮膚の機能異常が生じていることがあります。皮膚の機能異常とは、水分保持能の低下(皮膚に水分を保つことができず、カサカサになってしまうことです。)、痒みの域値の低下(通常痒みを感じない弱い刺激でもかゆみを感じるようになることです。)、皮膚のバリア機能の低下による易感染性(とびひなどの感染症になりやすくなることです。)
このような皮膚の機能異常が生じている場合には、スキンケアで本来の機能を補ってあげる必要があります。皮膚の水分保持能の低下に対しては、その程度に応じて保湿剤で水分の不足を補ってあげる必要があります。皮膚のバリア機能の低下に対しては、毎日の入浴・シャワーを行い皮膚を清潔に保つようにする必要があります。
3.薬物療法
アトピー性皮膚炎の治療のガイドラインでは、原因・悪化因子の除去、スキンケアでも皮疹の改善がみられない場合に、薬物療法を行うことになっており、ステロイド外用剤・抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤療法が治療の基本となり、タクロリムス軟膏についても記載があります。
実際には病院に来ていただく患者さんは、ある程度症状があることが多いので、薬物療法と悪化因子の除去・スキンケアを同時に進行していくことになると思います。
現在アトピー性皮膚炎の症状を抑えるためには原則としてステロイド外用剤が用いられます。補助的に必要に応じて抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤の内服を加えます。これら内服を加える目的は、ステロイド外用剤には痒みをとめる効果はあまりないので、痒みを抑えるために加えます。アトピー性皮膚炎では掻破を繰り返すと、治癒が遅くなるため掻破しないようにするために痒みを抑える必要があるからです。つまり痒み⇒掻破⇒痒み⇒掻破という悪循環を断ち切るために内服を加えます。
また特殊な状態をのぞき、一般的にはステロイド剤の内服はおこないません。
病状によりナローバンドUVBの照射を行う場合があります。