パーキンソン病とは脳内の神経伝達物質であるドーパミンが不足することによって起こる疾患です。
症状としては、指が震える(振戦)、一歩目が出ない(すくみ足)、一歩目が出るとパタパタと加速してしまう(突進現象)
筋肉が固縮しているので、外力で、たとえば肘関節を伸ばそうとするとガクンガクンと滑らかさの無い動きになる(歯車現象)
顔の表情が無くなり、しゃべらなくなる(仮面様顔貌)などが有名です。
グルタチオンは慢性肝炎に対する肝庇護点滴セットの中に、昔からなんとなく入れられる、薬価56円のオマケ?みたいな注射液です。
最近、このグルタチオンを数アンプル、週に数回点滴するのがパーキンソンに対して有効だという本が出版されています。
これを参考に88歳のおばあちゃんに点滴を施行してみました。
この方(便宜上Aさんとします)は当院初診が70歳の時で、病名は便秘と慢性胃炎でした。
老人会の会長で、口八丁手八丁のにぎやかな性格でしたが、油断すると私にベタベタと触ってくるという癖がありましたので用心を怠れませんでした。
80歳を越えても元気で、会長を辞めさせてもらえないというのが唯一の愚痴でした。
Aさんに最初の異変が発生したのは平成20年の1月でした。
早朝に吐き気と便意を催しトイレにて意識喪失、頭部のCT検査を受けましたが異常ありませんでした。
すぐに意識も回復しましたので、消化器症状による反射性の血圧低下か、一過性の脳虚血発作だろうという診断でした。
しかし、翌月になってもふらつきがあるということで、今度は頭部のMRI検査を受けましたが、やはり異常ありませんでした。
以後歩行状態は少しずつ悪化して行くのですが、パーキンソンを疑わせるような症状はありませんでした。
それでも試しに、抗パーキンソン薬であるシンメトレルを処方してみたのですが、若干の改善しか認められませんでした。
平成22年4月、さらにふらつきがひどくなったのでAさんは済生会病院を受診。
頭部CTにて傍側脳室低吸収域が確認され、Aさんに初めて血管性パーキンソン症候群の診断が下されました。
平成23年4月に、ドーパミン製剤のパーロデルの処方を開始しました。
同年6月に済生会にコンサルト、レボドパ製剤の追加を指示されドパゾールの処方を開始しました。
ところが9月7日に突然、動かず、しゃべらずの仮面様顔貌が出現しました。
済生会の診断は心原性脳塞栓症(左中大脳動脈、左前頭葉など)で、塞栓機序での脳梗塞でした。
入院、リハビリを終えて平成24年5月から当院の外来に復帰されましたが、ADLの低下はいなめず、
自力歩行は、つたい歩きでも転倒するくらい不安定ですし、さらには寡黙となり笑顔も消失していました。
さて、今年の4月にグルタチオン4アンプルを生理的食塩水100mlに入れて、週2回の点滴を開始しました。
当初は変化が無かったのですが、5回目くらいから歩行が改善されてきて、少ししゃべるようにもなりました。
10回目くらいからは、スタッフの手を借りずにつたい歩きが可能となり、壁が無い部分では、完全な自立歩行もできました。
笑顔や冗談も出てきましたし、15回目には私に触るという悪い癖も復活しました。
今日、19回目の点滴に来られたのですが、私の臙脂色のユニフォームを冷やかされました。
一時期は認知症を疑ったのですが、素晴らしい回復です。
パーキンソン病には様々な種類がありますので、グルタチオン点滴が全く効かない人が3人に1人は、おられるそうです。
しかし、逆を言えば、3人に2人は効くわけですし、副作用もありませんので、ダメ元でも、やってみる価値はあると思います。
これまでは、私にとって、パーキンソン病は、つらい疾患でした。
診断がついた時点での余命は5年といわれていましたし、症状は次第に進行していきます。
症状を抑える薬はありますが、やがて効かなくなっていくし、リバウンドやウェアリング・オフ
(一日の内でも、薬が効いている時間と切れている時間が混在する現象)などもあります。
欲張らずに、腹八分の処方を、少しずつ、さじ加減を変えながら続けていくという必要がありました。
自分の患者さんの症状が、どうしようもなく悪化していくのを見守るのは医者としてつらいことです。
しかし、今回のように、安価な点滴で、夢のように快復する患者さんを目撃することは医者冥利につきます。
症状としては、指が震える(振戦)、一歩目が出ない(すくみ足)、一歩目が出るとパタパタと加速してしまう(突進現象)
筋肉が固縮しているので、外力で、たとえば肘関節を伸ばそうとするとガクンガクンと滑らかさの無い動きになる(歯車現象)
顔の表情が無くなり、しゃべらなくなる(仮面様顔貌)などが有名です。
グルタチオンは慢性肝炎に対する肝庇護点滴セットの中に、昔からなんとなく入れられる、薬価56円のオマケ?みたいな注射液です。
最近、このグルタチオンを数アンプル、週に数回点滴するのがパーキンソンに対して有効だという本が出版されています。
これを参考に88歳のおばあちゃんに点滴を施行してみました。
この方(便宜上Aさんとします)は当院初診が70歳の時で、病名は便秘と慢性胃炎でした。
老人会の会長で、口八丁手八丁のにぎやかな性格でしたが、油断すると私にベタベタと触ってくるという癖がありましたので用心を怠れませんでした。
80歳を越えても元気で、会長を辞めさせてもらえないというのが唯一の愚痴でした。
Aさんに最初の異変が発生したのは平成20年の1月でした。
早朝に吐き気と便意を催しトイレにて意識喪失、頭部のCT検査を受けましたが異常ありませんでした。
すぐに意識も回復しましたので、消化器症状による反射性の血圧低下か、一過性の脳虚血発作だろうという診断でした。
しかし、翌月になってもふらつきがあるということで、今度は頭部のMRI検査を受けましたが、やはり異常ありませんでした。
以後歩行状態は少しずつ悪化して行くのですが、パーキンソンを疑わせるような症状はありませんでした。
それでも試しに、抗パーキンソン薬であるシンメトレルを処方してみたのですが、若干の改善しか認められませんでした。
平成22年4月、さらにふらつきがひどくなったのでAさんは済生会病院を受診。
頭部CTにて傍側脳室低吸収域が確認され、Aさんに初めて血管性パーキンソン症候群の診断が下されました。
平成23年4月に、ドーパミン製剤のパーロデルの処方を開始しました。
同年6月に済生会にコンサルト、レボドパ製剤の追加を指示されドパゾールの処方を開始しました。
ところが9月7日に突然、動かず、しゃべらずの仮面様顔貌が出現しました。
済生会の診断は心原性脳塞栓症(左中大脳動脈、左前頭葉など)で、塞栓機序での脳梗塞でした。
入院、リハビリを終えて平成24年5月から当院の外来に復帰されましたが、ADLの低下はいなめず、
自力歩行は、つたい歩きでも転倒するくらい不安定ですし、さらには寡黙となり笑顔も消失していました。
さて、今年の4月にグルタチオン4アンプルを生理的食塩水100mlに入れて、週2回の点滴を開始しました。
当初は変化が無かったのですが、5回目くらいから歩行が改善されてきて、少ししゃべるようにもなりました。
10回目くらいからは、スタッフの手を借りずにつたい歩きが可能となり、壁が無い部分では、完全な自立歩行もできました。
笑顔や冗談も出てきましたし、15回目には私に触るという悪い癖も復活しました。
今日、19回目の点滴に来られたのですが、私の臙脂色のユニフォームを冷やかされました。
一時期は認知症を疑ったのですが、素晴らしい回復です。
パーキンソン病には様々な種類がありますので、グルタチオン点滴が全く効かない人が3人に1人は、おられるそうです。
しかし、逆を言えば、3人に2人は効くわけですし、副作用もありませんので、ダメ元でも、やってみる価値はあると思います。
これまでは、私にとって、パーキンソン病は、つらい疾患でした。
診断がついた時点での余命は5年といわれていましたし、症状は次第に進行していきます。
症状を抑える薬はありますが、やがて効かなくなっていくし、リバウンドやウェアリング・オフ
(一日の内でも、薬が効いている時間と切れている時間が混在する現象)などもあります。
欲張らずに、腹八分の処方を、少しずつ、さじ加減を変えながら続けていくという必要がありました。
自分の患者さんの症状が、どうしようもなく悪化していくのを見守るのは医者としてつらいことです。
しかし、今回のように、安価な点滴で、夢のように快復する患者さんを目撃することは医者冥利につきます。
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