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はせがわクリニック奮闘記

糖質制限、湿潤療法で奮闘中です。
パーキンソン病にはグルタチオン点滴を
癌には高濃度ビタミンC点滴も施行中です。

THE GIRL WITH NO NAME

2015年08月26日 | 読書


南米のコロンビアで5歳くらいの時に誘拐されて、すぐにジャングルに捨てられた女の子の実話です。
生き延びるために彼女が選択したのは、” 猿まね ” でした。
サルが食べる物ならば、自分が食べても大丈夫だが、サルが食べない物は、自分も食べてはいけないという単純なルールです。
やがて彼女はサルの群れの一員となり、四足歩行となり、人間の言葉を忘れていきます。
サルの群れでの生活は、詳細かつ精密に描写されていきます。
ときおり、自分たちの縄張りが、よそ者のアタックを受けることを除けば、生活は楽しく、安定しています。
食べ物は潤沢ですし、サルの群れは愛情に包まれており、彼女もその一員として溶け込んでしまいます。
そのジャングル生活は5年間にも及びますが、それは彼女の人生で最も幸せな時期であったかもしれません。

ある日、縄張りに侵入してきた白人のアベックハンターに拉致されて、田舎の村の売春宿に売り飛ばされます。
そこで、グロリアと名付けられ、腰まである縮れて団子状態になった髪の毛を切られ、二足歩行を強制され、人間の言葉も覚えていきます。
毎日、ひどい暴力を受けながらも、少しづつ掃除や洗濯などの家事もこなしていけるようになります。
しかし推定11歳になったグロリアは、客を取らされそうになった瞬間に、脱兎のごとく、全力で逃走します。

ククタという町にたどり着いた彼女は、大きな公園の木の下で寝ようとしますが、驚いたことには、たくさんの子供たちが、それぞれの木の下で寝ようとしていました。
ククタではストリートチルドレンは珍しくなかったのです。
彼女はストリートチルドレン仲間からポニー・マルタと呼ばれます。
ポニー・マルタとは小さなコーラのような清涼飲料水の商品名です。
ジャングルで鍛えられた俊敏性で彼女は頭角を現していきます。
生計は、かっぱらいで立てていました。
このストリートチルドレン時代も、彼女にとっては、人生に張りのある楽しい時期だったようです。

彼女の次の人生は、マフィアがらみの一家での召使生活で、ロサルバと名付けられます。
隣に住む女主人マルハの助けで、そこを逃げ出した彼女は修道院にかくまわれます。
ここで彼女はジャングルを出て以来、初めてベッドを与えられます。
しかし、その修道院での毎日は彼女にとって苦痛と退屈以外の何物でもありませんでした。

結局、彼女はそこも脱走し、再びマルハの助けで、首都ボゴタに住む、マルハの妹夫婦の家庭に迎えられます。

幸せな人生を送るための必要条件を深く考えさせられる作品です。
まずは食料と自由は絶対でしょうが、認められること、愛されること、自分の能力が発揮されることなどでしょうか。

彼女の推定年齢は私と同じくらいのようです。
現在はルス・マリーナという名前で英国に住んでおり、子供と孫にも恵まれています。



この作品は彼女の次女が、母親の思い出話を書き留めて、ゴーストライターに依頼したものです。




芥川賞・又吉直樹・火花

2015年08月08日 | 読書
昨日、文芸春秋で上記を読みました。

何の文句も無く、面白く読み終わりました。

本人は否定していますが、主人公であるお笑い芸人の姿が、どうしても又吉とオーバーラップしてしまいます。
この小説に関しては、そのことが読者をストーリーに簡単に引き込んでいく要因になっていると思います。

お笑い芸人が小説を書いたという報道がなされていますが、そうではないようです。
文学少年が、ずっと文学を愛しながら、お笑い芸人を生業とする中で小説を書いたのです。

書こうと思ったきっかけは、昨年私もアップした西加奈子の、” サラバ! ” を読んで感動したことだったそうです。
直木賞の作品が芥川賞を誕生させたという構図でしょうか?

獣の奏者外伝刹那

2015年06月09日 | 読書
十数年間、ネットとスカパーテレビでお世話になってきたケーブルテレビ局、"JCN熊本 " が5月いっぱいで、" J:COM "に吸収されました。
そのせいで、長い間使い続けてきたドメインの変更を余儀なくされました。
変更は無事に終了したのですがネットの接続が不安定になってしまいました。
当初はルーターの電源をオンオフさせたり、" 接続の問題を修正する ”をクリックするなどして、だましだまし対応していましたが、6日からそれも不可能となりました。
昨日、業者に来てもらって、なんとかつながったのですが、その技術者の話では、J:COM のセキュリティーシステムに問題があるようだとのことでした。
そこで、近日中に解約して、NTTの光に乗り換えることにしました。
強制的にドメインを変えさせて、料金も後払いであったものを、前払いに変更し、そのせいで今月は2か月分を徴収するようなサーバーについて行くきにはなれません。
私以外にも迷惑を被った方が多数おらtれるはずです。
どこに怒りの声を上げるわけにもいかず、泣き寝入りするか、手間暇かけて乗り換えるしか術がないのです。



さて、獣の奏者外伝刹那ですが、とても面白かったので、何気なく読み返していたのですが、またまた最後まで一気読みをしてしまいました。
しかも1回目よりも深く感動してしまいました。
これは、私がこれまでに読んだ中では、最高の恋愛小説です。
1巻2巻と3巻4巻は、この最終5巻目を堪能するための単なるステップにすぎなかったような気持ちにさえなります。
なぜならば、4巻までで、読者は登場人物たちの、人となりや運命を知悉することになるのですが、その知識無しでは、5巻目に感動することが不可能だからです。
その膨大なステップが、この恋愛小説を驚異的な高みに押し上げていると思います。

100%のお薦め作品です。


上橋菜穂子・獣の奏者

2015年06月02日 | 読書


" 鹿の王 " が面白かったので、ネットで衝動買いしてしまいました。

やはりファンタジー小説なのですが、" 獣の奏者 " の方がスケールも大きく、テーマも重たいように感じました。

5巻組になってはいますが、内容は3部作です。

第1巻と第2巻で最初のバトルが終了します。
それから11年後に起こったバトルが第3巻と第4巻で終了します。
第5巻は外伝と名付けられていますが、平和な11年間に起きた2つの恋愛が描かれています。
外伝だけはファンタジーでは無く、秀逸な恋愛小説なのです。
私は主人公たちの恋愛よりも、サブキャラ同士のそれに、より強く胸を打たれました。
作者は女性ですので、女性の心理分析が濃密になりがちなのでしょうが、みごとな表現力と文章力です。
また男性に対するキャラクター付けもユニークで、普通ならば受け入れられないようなそれが魅力的に思えてくるのです。

時系列で並べると、5巻目の外伝は2巻目と3巻目の間に入れるのが普通なのですが、上橋菜穂子はあえてそうしませんでした。
その理由を後書きで物語の佇まいという言葉を使って説明しています。

書こうと思えば、いくらでも書くことはできたのですが、本編の中でそれを書くことは、わたしには「 余分の一滴 」に思えたのです。
とくに恋愛はエピソードとして異常な吸引力を持っていますから、彼女らの恋を描けば、そこだけが突出して、
" 獣の奏者 ”という物語の姿を変えてしまうと感じていたからです。


さて、上橋菜穂子の代表作は、" 守り人シリーズ " なのだそうです。
1.精霊の守り人
2.闇の守り人
3.夢の守り人
4.神の守り人
5.天と地の守り人
6.虚空の旅人
7.蒼路の旅人
8.流れ行く者
の順番で読んでいくのが正解だという情報もゲットしました。
ところがとんでもない情報があったのです。

なんと来年の4月にNHKが全22回の連続ドラマで放映するそうなのです。
主演は綾瀬はるかです。

という訳で守り人シリーズを読むのは来年まで延期としました。
どんなストーリーでも、先に本を読んで放映を見れば、がっかりすることが必定だからです。

BOOK-OFF

2015年05月27日 | 読書


溜まった本は、時々、売却します。
ただし、医療関係の本で、患者さんに貸し出せそうなやつは、診察室に並べています。



最近は出張買い取りのサービスがあるので便利です。

さて、いくらで売れたのかといえば....



8820円でした。

レシートを見ると、単行本が250円、新書、文庫本が50円くらいのようです。

まあ、こちらとしては、スペースが空くだけでも有難いのですが、焼き鳥屋に行けそうな金額がゲットできるので大満足です。

上橋菜穂子・鹿の王

2015年05月21日 | 読書


またまた上下2巻組ですか.....

本屋大賞をネットで調べてみたのですが、全国の数百人の本屋店員さんたちの投票で作品を10本にしぼります。
その10本をすべて読んだ店員さんたちの投票で本屋大賞が決定するのだそうです。
したがって、読んでほしい本というよりも、売れてる本の中からの、お薦め作品が選ばれるわけです。

大賞をゲットした作品は売れることが約束されています。
さて、仮に100万部売れたと仮定すれば、1冊1700円ですから、売り上げは17億円です。
ところが上下2巻組ですと、34億円に倍増します。
本屋の店員さんたちは、オーナーではありませんので、売り上げに興味は無いはずなのですが、
穿った見方をすれば、出版業界の一員として、最近の本の売れ行き減少に危機感を抱いているかも知れませんよね。

さて、作品自体は、とても面白く、満足のいくものでした。
ストーリーも素晴らしかったのですが、感心したのは、医学的な記述が完璧であったことです。
免疫、抗原、抗体、抗生剤、ステロイドなどと思われる、医学者でなければ手を出せないような難解な内容です。

読了後に分かったのですが、著者である上橋菜穂子氏は1962年生まれですので52歳でしょうか。
彼女には現役の医師である従兄がいて、これは、彼のアドヴァイスと監修を受けて完成した作品なのです。

作品には10人を超えるような多彩なキャラが登場しますが、単なる悪人や、単なるバカはでてきません。
悪人やバカキャラでも、ちゃんとそれなりに、その言動の背景が説明されています。
そして、圧倒的に魅力的なキャラが多いのです。

個性的で魅力的なキャラをたちの関わり合いがストーリーの核となっています。
この手の作品は確実に私の琴線に触れてくるのです。
自信をもっての、お薦め作品と言えるでしょう。



西加奈子・円卓

2015年03月14日 | 読書


しばらくは西加奈子を読んでみようかなということで本屋に行きいました。
すると直木賞受賞記念コーナーが作ってあって、西加奈子の様々な著作が並べられていました。
老眼を酷使したくないので、まずは単行本を手にしました。

主役の琴子 ( こっこ )は大阪の小学校3年生で、両親と祖父母、さらに14歳の三つ子の姉たちとの8人家族で暮らしています。
円卓というのは、中華料理店に置いてある、真っ赤にペイントされたクルクルと回転するテーブルのことです。
こっこの家庭は大家族ですので、こいつを利用して円滑に食事をこなしているのです。

この小説は大阪弁を駆使したコメディーです。
コメディーなのですが、さまざまな登場人物のキャラがしっかりと設定されていて、
それぞれの発言や行動、リアクションは突飛ではあるものの、なるほどと思わせるような内容です。

小学校3年生のころの私は、もちろん子供だったのですが、すでに大人の部分もたくさん持ち合わせている生き物であったような気がします。
そのことを思い出させてくれる作品でした。

さて明日は、延期になっていた山ちゃんとのゴルフのはずでしたが、降水確率70%ということで、またまたキャンセルとなりました。

そこで先週の日曜日に行ってきた練習ラウンドをアップします。

今年初めての阿蘇グランヴィリオ西コースです。
結果は93打の35パットでした。

今回は眼鏡を作り直してチャレンジしました。
老眼鏡の度数を一番弱いものにして乱視だけを補正するという仕様です。
スコアカードを読むのにも苦労するほどの解像度なのですが、アドレスした時のボールは、なんとか二重にボケることなく見えます。

老眼鏡をかけてアドレスした時に目に映るボールは虚像です。
実際にはボールはそこにありません。
手前に仮想ボールを想定して、それをヒットすべくスイングして、やっと真のボール?をヒットできるのです。
眼鏡の度数を落とすことによって虚像と真のボールのズレがゼロでは無いものの、小さくなったと思われます。

前半は5つのホールでパーオンするものの20パットを叩いてしまい45でした。
後半はショットは乱れたものの15パットの48でした。

次回はグリーン上だけ眼鏡使用とし、ショットはすべて裸眼で打ってみようと思います。

西加奈子・サラバ

2015年03月07日 | 読書


またまた、長編上下巻物の受賞作です。
出版業界がグルになって売り上げを増やすべく画策しているのではと疑いたくなってしまいます。
半ば腰が引けた状態で立ち読みしてみたのですが、なんと1ページ読んだだけで即買いしてしまいました。
その文章がとても気に入ったからです。
めずらしくも?私に診たて違いは無く、あまりの面白さに2日で読み終えてしまいました。

作者は女性ですが、この物語の主人公は男性である歩( あゆむ )です。
ストーリーは歩が父親の赴任先であるイランで誕生した後、エジプトへの転勤、大阪への帰日、東京の大学への進学、
卒業し、フリーのライターとして中年にさしかかるまでを時系列で描写していきます。
風変わりな家族関係の葛藤、親戚のおばちゃんや、背中に彫り物を持つ近所のスーパーおばちゃんとのエピソード、
いくつもの恋愛関係などが綴られていくのですが、この作品のメインテーマは男同士の友情です。
エジプトでの小学生時代に出会った近所に住む同い年のエジプト人少年との友情。
そして高校のサッカー部の同級生との友情です。
男性である私からみ見れば、ファンタジーとしか思えない濃厚な友情です。

この作品は作者の生い立ちとオーバーラップしています。
作者自身は歩の姉である奇人としか言えないような女性なのでしょうが、物語の終盤で、ようやく、まともな存在感を発揮します。
結局は、この女性が主人公で、歩は平凡な狂言回しにすぎなかったようにも思えます。

面白い作品ですので、これ以上のネタバレは慎みます。
自信を持ってのお薦め作品です。



Audio Accessory

2015年02月18日 | 読書


先日、近所のスーパーで衝動買いしてしまいました。
ハイレゾ時代のベストコンポというサブタイトルに惹かれてしまったのです。
税込み1400円のA4サイズで400ページを越えるズッシリとした製本です。
スーパーのレジのそばで、こんな風に陳列されていました。



なんとも奇妙なコーナーです。
まあ、趣味のコーナーであるからでしょうが、場違いな感じは否めません。
しかも私が一冊買ってこの状態ですから、当初は3冊も置いてあったのです。
このブックコーナーの仕入れシステムは破綻していますよね。

本の内容は





なんともマニアックな本で、私には1割も理解できません。
それでも読んでみると意外にも面白いのです。
実際に、理解できないながらも面白いという一文を紹介します。

アキュフェーズの本社視聴室で本機の音を初めて聴かせていただいたときのことをいまでもありありと覚えている。
ものすごく静かなアンプだな、というのが第一印象だった。
これほど聴感上のSN比のいいアンプはA-200のほかにほとんどないといってもいい。
音質的には、いわゆるA級動作機らしい透明感と滑らかさが支配的だとも感じた。
私は自宅で同社のAB級動作機を使っているのだが、自室のシステムがコットンのようなざっくりとした質感を基調としているのに対して、
A-70を組み入れたシステムの音にはシルクのような滑らかさがある。
それでいて素子が発熱したような生温かさがない。
まるでシルクのガウンを羽織った時のような、ひんやりとしていて、しなやかで、しかもコシのある音質が得られる。

聴き進むうちに、楽しい音だな、とも感じられてきた。
これは従来のアキュフェーズ製品には見出しにくかった音的な振る舞いである。
アキュフェーズのオーディオエレクトロニクスは一貫して生真面目な姿勢で作られている。
そのため正確な表現はするものの、アバレ感やイロケ感に欠けるきらいがある。
だが、その種の音楽的要素が欲しいのなら、その種の要素が入っている演奏・録音を再生すればいいだけの話であって、機器のせいにするのはお門違いだ。
私はアキュフェーズのアンプは音がつまらない、という人に対して、つまらないのはアキュフェーズではなく貴方の音楽の聴き方ですよ、などさんざん憎まれ口を叩いてきたものだ。
ところがA-70は音そのものが楽しいのである。
これはA-200でも感じられたことだが、どうやらアンプというものは、真面目な作り方を貫けば貫き通すほど、
どこかで楽しい方向にブレークスルーするらしい。


結局、この編集者たちは、情熱を保ちながらオーディオ評論家としての経験を積み、その過程で、音の個性を文章で表現することに長けてきたということでしょうか。
音楽という芸術を愛し、それを再生する機器にこだわりを持ち、さらには、目に見えない音の差異を文章で表現せねばならないという、厳しい生業ですよね。


啓蒙主義

2015年01月04日 | 読書
前回の、" 蒙を啓く " の読み方は、" モウをヒラく " と読みます。
蒙の意味は、道理に暗くて愚かなことです。
啓の字ですが、もともとは開くと言う字の派生型なのです。
開くという字は、何を開くかによって、違う字に置き換えられるのです。
拓く、墾く、などと同じパターンんで、悟りを啓くなどと使います。

したがって、" 蒙を啓く " の意味は、道理に暗くて愚かな人を教え導くというものです。
ここでピンとくると思いますが、そう、昔に聞いたことのある啓蒙主義の啓蒙なのです。
当時は何も考えずにイメージだけ理解していました。

ところで、昔はモンゴルのことを蒙古と表記していましたよね。( 蒙古襲来など )
" 古 (イニシエ ) から道理に暗くて愚かな国 "、ですか......
昔の日本はモンゴルに対して、目茶苦茶なネーミングを施していたんですね。

さて、今年も三社参りに行き、おみくじを引いてきましたが、中吉でした。
詳しく内容をチェックしましたが、今年は新しいことに手を出さずに、じっと耐えておくべき年のようです。

願い事 : 思うにまかせず、目に見えて早くは出来ず。
商売 : 利益なく損あり。
学問 : 基礎を見直し勉学せよ。

などですが、笑ってしまったのは

病気 : 医師をえらべ。

というものです。
どう解釈するべきでしょうか?


Sex at Dawn ・ 人類の夜明けの頃のSex

2015年01月01日 | 読書


明けましておめでとうございます。

年末の休診を利用して上記を読み終えました。

著者はバルセロナ医学大学の講師を努める心理学者クリストファー・ライアンと
バルセロナの病院で精神科の女医を努めるカルシダ・ジェタのカップルです。



図は地球人口の最近1万年の推移です。

それ以前の数十万年間は私たち新人類の地球人口は数千人あるいは数百人程度まで減少した時期もあったそうなのです。
長らく続いたその時代の人類は狩猟採集を続けていました。
数十人のグループを形成して、移動しながら狩猟採集生活を続けたのです。

アメリカの有名なアニメにフリントストーンズという作品があります。



アメリカ人はなんとなく原始時代から、現代の一夫一婦制があったように考えますが、両著者はそれを否定します。
そして、グループ内では複雑な複数の男性と複数の女性間でセックスが日常的に行われてきたはずだと主張するのです。
この本は、それを多角的に検証し、証明しようとするものです。

この本は私にとって非常に大切な作品となりました。
これまでの私は、現代こそが人類がた易く生きていける時代で、昔になればなるほど、生きていくことは困難であったように思っていました。
しかし、たとえて言うならば、1万年前に穀物の栽培を始めたことこそが人類の不幸の始まりであり、失楽園だったのかも知れないのです。

ジャレド・ダイアモンドは
農耕への転換を、「 カタストロフであり、人類はいまだにそこから回復していない。 」 と評している。

農耕革命の最大の敗者は人類の女性であった。
狩猟採集社会において占めていた中心的な、尊敬すべき役割を奪われ、
かわりに家の奴隷や家畜と同じように
男性にとっては獲得し守るべきもう一つの所有物に成り下がったのだ。

狩猟採集生活から農耕生活へと移行した時期に遡る、世界中のさまざまな地域から採集された遺骨を見ると、それらはすべて同じ物語を語っている。
すなわち飢餓の増大、ビタミン不足、発育不全、寿命の急激な縮小、暴力の増加などである。
褒めるべき理由はほとんどない。


面白い考え方としては、胎児はセックスをするたびに少しずつ完成していくというものです。
したがって、力の強い男の精子だけでは無く、頭の良い男や背の高い男の精子も入れた方が出来の良い赤ん坊が生まれてくると考えられたのです。
このことは、一人の赤ん坊に対して何人もの父親が存在することを意味します。
一夫一婦制とは違って、父親が急死した場合でも、他の父親の援助が期待できますので、赤ん坊が生き残る確率が高くなります。
父親は何人もいますが、母親は一人ですので、女性を中心とした家系が形成され、それこそ女性は太陽であったかも知れませんよね。

ちょっとボリュームがありすぎるのが難点ですが、この本は読んでおくべき作品だと思います。

さて、この作品中に読めない漢字が登場しました。久方ぶりのことです。
蒙を啓かれるです。
答えは次回アップします。

福永武彦・愛の試み愛の終わり

2014年11月27日 | 読書




私が二十歳の時に熟読した本です。
先日アップした村上春樹の、" 恋しくて " を読んでいる時に、ふと再読したくなりました。
ネットで購入したのですが300円でした。43年前の定価が380円と書いてありますので微妙な値段ですよね。

私がこの本の内容でずっと記憶し続けてきたのは、" 恋愛の中毒症状 " という考え方です。
お互いに愛し合っていても、自分の愛よりも相手からの愛の量を少なく感じる側は、苦しみ執着するという症状です。
私は、このことをよく理解し、自分が中毒に陥っても、それをおくびにも出さぬように努めました。
恋愛に勝ち負けは無いのでしょうが、恋愛の中毒症状に陥った側が負け組であるような気がします。

さて、この本ではスタンダールの恋愛論の一部が紹介されます。
恋愛が発生する時の7つのプロセスです。

1.見とれる。
2.キスをしたりされたりしたらどんなにかいいだらうと考へる。
3.希望。
4.愛が生まれる。
5.最初の結晶作用。 ( 愛する対象の申し分のなさを更に新しく発見して来ようとする精神の作用である。 )
6.疑惑が生じる。
7.第二の結晶作用。 ( 愛する者は絶えず三つの考えの中をさ迷ふ。
第一、彼女はどの点でも完璧だ。
第二、彼女は自分を愛している。
第三、彼女から更に確実な愛のしるしを得るにはどうすればよいか。 )


私は最初の結晶作用という考え方にスタンダールの才能を感じます。

福永武彦は、それをパロって、愛の終わりのプロセスを考案しました。

1.馴れる。
2.もしも彼女と愛し愛されるのでなかつたなら、どういふことになるだらうかと考える。
3.しばしば裏切られる希望。
4.不満が生まれる。
5.最初の融晶作用 ( 愛している筈の対象の中に、自分が愛するにふさはしくない点を更に新しく発見して来ようとする精神の作用である。 )
6.憐憫が生ずる。
7.第二の融晶作用 (愛する者は絶えず三つの考えの中をさ迷ふ。
第一、彼女は少しも完璧ではない。
第二、彼女は自分を愛していない。
第三、彼女からこれ以上新しい愛のしるしを得ることが出来るだらうか。


私は憐憫が生ずるという言葉に福永武彦の才能を感じます。

ともあれ、結局、愛は、" 見とれる " ことで始まり、" 馴れる " ことから終わって行くということでしょうか......


村上春樹・恋しくて

2014年11月22日 | 読書


昨日と今日とで上記を読みました。
村上春樹がアメリカ、カナダ、スイス、ロシアなどの恋愛小説を翻訳した短編集です。
最後に村上春樹自身の書き下ろしを加えて10編としています。

各短編について、村上春樹は、恋愛甘苦度と称して5点満点で、甘味3 : 苦味2 などと採点を発表しています。
次々と読み終えていくうちに私は玉石混交という言葉を思い出しました。
というか、玉では無く、石のような短編が含まれていることに驚いてしまったのです。
何故、村上春樹が、このような作品を取り上げたのか理解不能のような面白くも無い短編が含まれているのです。

しかし、後書きで村上春樹は以下のように弁解しています。

アンソロジー編集者のつもりとしては、できるだけストレートで素直で、すらりと読めて、心がそれなりに温まる恋愛もので、
しかも比較的最近に書かれた未訳の作品を集めようと思ったのだが、いざ身を入れて探し出すと、その手のものはそう簡単には見つからない。
いわゆる「純文学」系の作家たちは、一直線でポジティブなラブ・ストーリーをほいほいと量産してくれるほど親切ではない。


そこで、少しダークなものや、そこそこ屈折したものまで加えて、広義の恋愛小説を編集したということのようです。

また、村上春樹はさらに
本書の中では「モントリオールの恋人」が、小説的に見ても恋愛的に見ても、間違いなく上級者向けにあたるだろう。
練れた著者の手になる、練れた大人の愛の物語。

と述べています。
私もそう思いましたので、その一部をアップします。

49歳のロビイストであるヘンリーと、33歳の公認会計士マデレインは、仕事の同僚で、アメリカ、カナダ、ヨーロッパと、世界を股にかけて活躍しています。
ヘンリーはバツイチ独身ですが、マデレインはモントリオールに夫と娘がいます。
そんな二人は2年前から不倫関係を続けています。
しかし、半年前、突然話題が途切れた瞬間に、二人は別れる潮時だと感じます。

そんなところで関係を終えれば、彼ら自身に関する何かが ― 二人には認めがたい何かが ― 明らかになってしまう。
それはつまり、二人の関係が大した意味を持たなかったという事実であり、自分たちがそれほど大した意味を持たないことに手を染める人間であったという事実であり、
彼らはそれを承知でやっていたか、あるいは自らのことがよくわかっていなかったか、どちらかということだ。


鋭く斬新な切り口ですよね。

さて、村上春樹の書き下ろし短編はカフカの " 変身 " をベースにしたものですが、ヒロインは、せむしの少女です。
あえて差別用語を使用していますが、主人公は、せむしの少女に一目惚れなのです。
この短編集の恋愛は、ほとんどが、 " 一目惚れ物 " というジャンルに属します。
私見ですが、恋愛で惚れた理由をいくつも挙げるのは、すべて後付けの言い訳だと思います。

そして村上春樹は最後に、恋愛の大変さを編んだような作品になってしまったことを表明し以下のように締めくくります。

でもたしかにいろいろと大変ではあるのだけど、人を恋する気持ちというのは、けっこう長持ちするものである。
それがかなり昔に起こったことであっても、つい昨日のことのようにありありと思い出せたりもする。
そしてそのような心持ちの記憶は、時として冷え冷えとする我々の人生を、暗がりの中のたき火のようにほんのりと温めてくれたりもする。
そういう意味でも、恋愛というのはできるうちにせっせとしておいた方が良いのかもしれない。
大変かもしれないけれど、そういう苦労をするだけの価値は十分あるような気がする。


この暗がりの中のたき火云々という表現は村上春樹の他の作品にも出てきたような気がします。
デジャブかも知れませんが、もしもご存知の方がおられたら御教授下さい。

椎名誠・飲んだビールが5万本

2014年11月16日 | 読書


今日は日曜日ですが、日曜当番医でクリニックをオープンしています。
しかし患者さんは、9時に一人、1時に一人、2時に一人とまだ3人しか来ていません。
新記録達成は確実のようです。

したがって、のんびりと読書に勤しんでいます。
今日は上記を読みました。
椎名誠一派 ( 和田誠、東海林さだお、野田知佑、中村征夫、etc. ) のユル本です。
ビールだけではなく、ウィスキー、焼酎、濁り酒などアルコール全般についてユルい記事が集められています。
その中から、役に立ちそうなセリフやレシピを紹介します。

映画の名セリフ集です。

「 私は祭りの日にしか酒を飲みません」
「 では毎日お祭りか 」

「 顔色が悪いな 」
「 酒場から離れているからさ 」

「 バッカスは元気かい? 」
「 バッカスって誰だ 」
「 知ってるだろ、いつもあんたと一緒にいる奴だ 」
注 ) バッカスは酒の神です。

「 酒は魂を救うが胃には悪い 」

「 何を飲んでいますか 」
「 もう一杯という名前のお酒 」

「 私はお酒は飲みません。現実に満足していますから。 」
「 私も現実に満足しています。 私の現実には酒も含まれておりますが 」

「 酒は心の砂袋を落とす。だから気球は上昇するんだ。 」

「 夜、これは飲み物だ。朝、これは薬だ 」


ウィスキーのレシピ集です。

ボイラーメイカー : ウィスキーのビール割り

前割りの水割り : 前の晩に作られた水1、ウィスキー1の水割り

ハイボールプラスワン : ベースとなるシングルモルトのハイボールに少しだけ別のモルトを垂らす
例えば山崎のハイボールにラフロイグを一滴
白州のハイボールにボウモア


冷蔵庫にジョニ黒の前割りをセットしました。

さて、妹は毎日、ビールの500ml缶を8本飲んでいました。4リットルですよね。
1年で1460リットル、10年で14600リットル、35年として51100リットルです。
ビールの大瓶は633ml、すなわち0.633リットルですので、51100を0.633で割ると80726........
ホントか?
飲んだビールが8万本だと?
どなたか確認して下さい。

黒川博行・後妻業

2014年11月15日 | 読書


今日は上記を読みました。
もともと黒川博行など知らなかった私ですが、文芸春秋でこの本に興味を持ち、ネットで購入しようとしました。
その時、ついでに直木賞受賞作の " 破門 " も同時にオーダーしていたのです。
順番通りに " 破門 " を先に読みました。

結婚紹介所を介して資産家の老人を紹介してもらい、結婚して、その遺産を巻きあげるという生業を後妻業と呼びます。
悪質な後妻業では事故や病死を装った殺人も繰り返されます。

この作品の主役である小夜子は69歳ですが、40代から後妻業に手を染め、10件近い犯行を繰り返しています。
小夜子へのキャラクター付けは徹底されていて、殺人に対する罪の意識の完全な欠落、金に対する執着、誰に対しても取り続ける尊大な態度など、
実在しそうにも無い化け物です。
小夜子は結婚相談所の所長である柏木とつるんで犯行を繰り返しています。

対するは、バツイチヤモメで刑事崩れの中年探偵本田ですが、とにかく腕っぷしも強いし、頭も切れるタイプで
見事な捜査で、連続殺人を突き止めていきます。
しかし、それをネタに小夜子と柏木から大金をせしめようとするのですが......

この作品は " 破門 ”よりも数倍面白かったと思います。
お勧め度は90%でしょうか。