つくばの“ド素人”音楽同好会

クラシック音楽から,邦楽,洋楽とジャンルにとらわれず幅広く語り明かす,音楽の素人さんのための憩いの場です。

指揮者名鑑【朝比奈隆と私】

2005年05月16日 21時50分05秒 | マエストロ
 以前,当ブログで朝比奈先生の文庫本が出ていると紹介した。
地元の本屋に注文したら,すでに絶版と聞き大変がっかりしていた。

すると,捨てる神あれば拾う何とやらで,たまたま東京駅の大丸の書籍店で実物を見つけた。
それが「朝比奈隆 わが回想」(徳間文庫)だ。

朝比奈先生の回想録の決定版というとおり,朝比奈先生とその時代のクラシック界の流れが凝縮された貴重な1冊だった。

岩城先生の本はその文体にユーモラスな雰囲気が漂う。一転,朝比奈先生の場合は対話形式の語り下ろしに,先生の愛される人格が滲みでていてこれまた面白い。同じ指揮者の本でも対称的だ。

惜しむらくは,この本が絶版ということだ。
実際,書店を根気よく探せば見つかるかもしれないが,この本はもっともっと多くの人に読まれるべきだ。
初版が2002年12月ということだから絶版ならあまりに早すぎる。

少し勘ぐるなら,本文中に当時の世界大戦の記述があることが問題だったのか?!
戦争の記述にはとかくナイーブなこの国の状況を考えるとそうも思いたくなる。
や,考えすぎだな。

私たちは戦争下の状況を伝える情報に多くアクセスできる。が,実はこの本にあるように,その時代を生き抜いた人の言葉にこそ,事実に近いそれがあるのではないかという気がするのだが。

今晩のBGM:ブラームス「大学祝典序曲 作品80」(ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団/ウォルフガング・サヴァリッシュ指揮)