はなこのアンテナ@無知の知

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韓国周遊~7つの世界遺産を巡る(7)

2007年08月27日 | 韓国周遊旅行(2007年夏)
 さていよいよ海印寺(ヘインサ)である。門前町へ向かう車中でガイドの韓さんが「海印寺の駐車場へは一般の車は入れません(地元タクシー業界の要求に従ったものらしい)。しかし門前町から海印寺へは結構な道のりです。歩こうと思えば歩けないこともないですが大分時間がかかるでしょう。だからタクシーを利用される方が多いです。皆さんはどうなさいますか?」と聞いて来た。我が家は個人旅行なら断然”歩き派”(なんせイスタンブールでは、ボスポラス海峡を横切るあのガラタ橋を渡ってアジア地区とヨーロッパ地区を往復6時間かけて踏破した家族である)なのだが、今回はスケジュールがきっちりと決められたパッケージツアー。ガイドさんは表向きこちらの意向を伺う姿勢ながら、「タクシーを使え」と言う空気が車内に漂う。S夫妻は「じゃあタクシーで」と即答。ここは空気を読んで我が家も「タクシーで」と応えた。もちろんあくまでも”ガイドさんの提案”なので料金は別途支払うことになる。

 往復で1万ウォンとはこれいかに?韓国上陸2日目でまだウォンの貨幣価値がピンと来ないせいか、その料金が妥当なのかどうか分らない。門前町からさらに登坂する海印寺へはタクシーで往復10分もかからなかっただろうか?道路は蛇行した上り坂なので暑い中歩くのは大変だったかもしれない。ガイドさんに言われるままに復路で1万ウォンを運転手に手渡した。運転手の喜びようを見ると、結構な収入なのだろうか?円換算式はウォン÷100×14(←この数値はレートによる)だから、1万ウォンは1400円となる。このところの円安のせいかもしれないが実感としては日本と殆ど変わらない。ガイドブックには「タクシー料金は格安」とあったから日本人価格だったのかもしれない…まあ、これは海外の観光地ではよくあることで韓国に限らないことだけど。

 海印寺(ヘインサ)は華厳宗の十大寺院のひとつで、寺自体は802年、長年中国に留学していた僧、順応(スヌン)と利(理?)貞(イジョン)によって創建され、以後度重なる火災・戦災で建築物は焼失しては再建が繰り返されて来たらしい(やはりここでも秀吉の朝鮮出兵が関わって来る…(__;))。現在の本堂は1971年、朴政権下に再建されたものである。1995年、世界遺産に登録された。この寺院を有名にしているのは、ここに保管されている高麗八万大蔵経である。

 大蔵経とは仏教の経典・論書などを総集したもの。海印寺にある『高麗八万大蔵経』は仏教聖典が一式すべて揃っていることから、現存する大蔵経の中でも最高峰のものとされている。仏教を建国の理念とし、仏の加護で北方遊牧民族(蒙古)の侵略から国を守ろうとした高麗が全精力を傾けて作成したものらしい。これは紙に書かれたものではない。経文を”縦が約24cm・横が約70cm・厚さが約4cmの白樺でできた版木”の上に精巧な技術で彫り込んだものなのだ。つまり印刷の為の版木。その数8万1258枚に上る。しかも現存するのは第二版で、1011年から1087年にかけて作られた最初の版木は1232年に侵略者によって破壊され、それから4年後に再び15年の歳月をかけて完成されたものなのだ。一字一句の間違いも許されない正確さで進めなければならなかった作業。想像するだけでも当時の人々の熱意と努力には頭が下がる。

 そんな貴重な高麗八万大蔵経は、境内の高所に建てられた4つの倉庫(大蔵経板閣)の中に収められており、簡単ながら効果的な換気システムにより保全されているらしい。もちろん倉庫の中には入れないが、小割りの窓から版木の一部を見ることができる。版木に刻まれた文字を目の当たりにすると、その精緻な仕事に改めて感動した。この版木から印刷された大蔵経は室町時代に日本に持ち込まれ、現在増上寺(東京都)と大谷大学(京都府)が所蔵しているらしい。また高麗八万大蔵経に関連して、以下のような興味深い記事もあった。ハングル版だけでなく漢字版も残してほしいなあ…
韓国の世界遺産 高麗八万大蔵経を銅板に

 山門。帰り道に撮影。深緑が美しい。


写真左:九光楼、1817年に再建。     写真右:特別法要で護摩が焚かれたようだ。 
                          帰途につく多くの信者と参道ですれ違った。

本堂の大寂光殿。創建当時の仏像が鎮座する。
 

 大蔵経が収められた大蔵経板閣

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