昭和初期 大阪から小樽 七
ビー玉の謎
ぼくは父の汽車の時間表を手にした。
ウメちゃんちで教わった漢字のおんよみで読める駅もある。
きょうとの京は読めたが都をとと読むのを知った。
おいしい弁当はすぐからになった。母がリンゴをだしてくれた。
森永のミルクキャラメルもくれた。
遠足のときよりもっとすごいごちそうやった。
なんとか賀と書いた駅札が見えた。これはつるがと言う日本海でいちばん大きい海軍の港町と父が言う。
つるがを発車してながいトンネルをぬけて絵本にあった軍艦が波をけってはしる光景を頭にえがいているうちにねむってしまった。
大きな川にかかる鉄橋を渡るレールの音で目覚めたら朝になっていた。
いつのまにかぼくのよこに学生服を着たお兄さんがすわっている。
…ぼくちゃんよく寝ましたか?…とお兄さんがにこにこ顔で聞いた。
…うん!軍艦にのったらいつのまにか汽車の夢やった!…
ぼくはねぼけ顔をこすって答えた。
…いま通った川は神通川やて、父さんの故郷はこの川の上流の神岡町や、子供の頃はこ の川でよう泳いだがァ!…と窓外をみながら父がつぶやいた。
つぎはとみやまや!大きな駅やからおいしい弁当もあるやろ!…とぼくは時間表を見て言った。
…よう読めるね、とみはとと読んで富山と言うよ…としろい顔にあごにひげのみえるお兄さんが言った。
…うん、ぼく、大阪で朝鮮の友達にむつかしい漢字習うたんや…
…朝鮮の?…
…そうや、どもりやけど秀才や、千字文の漢字むつかしかったでェ!…
…きみは凄いこと習ったね!千字文は朝鮮のしゅしがくのにゅうもんの書物ですよ!…とお兄さんは感心した顔になった。
ビー玉の謎
ぼくは父の汽車の時間表を手にした。
ウメちゃんちで教わった漢字のおんよみで読める駅もある。
きょうとの京は読めたが都をとと読むのを知った。
おいしい弁当はすぐからになった。母がリンゴをだしてくれた。
森永のミルクキャラメルもくれた。
遠足のときよりもっとすごいごちそうやった。
なんとか賀と書いた駅札が見えた。これはつるがと言う日本海でいちばん大きい海軍の港町と父が言う。
つるがを発車してながいトンネルをぬけて絵本にあった軍艦が波をけってはしる光景を頭にえがいているうちにねむってしまった。
大きな川にかかる鉄橋を渡るレールの音で目覚めたら朝になっていた。
いつのまにかぼくのよこに学生服を着たお兄さんがすわっている。
…ぼくちゃんよく寝ましたか?…とお兄さんがにこにこ顔で聞いた。
…うん!軍艦にのったらいつのまにか汽車の夢やった!…
ぼくはねぼけ顔をこすって答えた。
…いま通った川は神通川やて、父さんの故郷はこの川の上流の神岡町や、子供の頃はこ の川でよう泳いだがァ!…と窓外をみながら父がつぶやいた。
つぎはとみやまや!大きな駅やからおいしい弁当もあるやろ!…とぼくは時間表を見て言った。
…よう読めるね、とみはとと読んで富山と言うよ…としろい顔にあごにひげのみえるお兄さんが言った。
…うん、ぼく、大阪で朝鮮の友達にむつかしい漢字習うたんや…
…朝鮮の?…
…そうや、どもりやけど秀才や、千字文の漢字むつかしかったでェ!…
…きみは凄いこと習ったね!千字文は朝鮮のしゅしがくのにゅうもんの書物ですよ!…とお兄さんは感心した顔になった。