昭和初期の大阪 五十
金谷点柱(こんたにてんちゅう)
じろうは顔をゆがめるとすぐ泣き出して家ににげてもうた。
ぼくは正義のうたえもんみたいな気持ちになって家にもどった。
…なんぞあったんかい!そんな顔して!…
母はぼくの顔見るとまるでさっきのことを見ていたようにたずねよった。
…つい顔見たらウメちゃんをちょうせんのばか言うたじろうをとなってこのゲンコがじ ろうの頭にぶつかったんや!…
…ぶつかったんとひっぱたいたんとおお違いじゃ!まっことこの子はしょうむない子じ ゃ!母さんこれからすぐ謝りに行ってくるけん!おまんもいっしょに来いいや…
と母は唇をかみながらぼくの手をひっぱった。
どこに隠しとったんやろ、母はくさ餅とかいた菓子箱をだして風呂敷につつんだ。 じろうの母親が白いかっぽうぎ姿のままでて来ると、
…いつもお世話になっちゅうけんしよぅすまんことですが、うちの子がおたくのじろう 様に手をかけたいうもんやからお詫びに!…
と母はぼくの頭を押さえて自分も頭をさげよった。
…ぼく、ウメちゃんをじろうくんがちょうせん!ばかと言うたんでたたいたんや!…
と言うとキシャのおばはんはすぐわけが分かって、
…じろう!ちょうせんの子も日本の子も同じ日本人や!にどとそんなこと言うたらお父 さんに言いつけるから!…
とじろうを叱った。
ぼくはじろうの母はとてもりっぱな人やと思うた。
ちょうせんの子も日本の子もいっしょや!ほんまにじろうの母は偉いと思うた。
…母ちゃん!キシャはやっぱり偉いんやな…
…じろうのお父さんは大学を出ちゅうき、毎日しんぶんのキシャなんや、これからはな かようしいいや!…
ぼくはじろうの父がてつどうのキシャでなくしんぶんをだす会社の偉い人とはじめて知った。
金谷点柱(こんたにてんちゅう)
じろうは顔をゆがめるとすぐ泣き出して家ににげてもうた。
ぼくは正義のうたえもんみたいな気持ちになって家にもどった。
…なんぞあったんかい!そんな顔して!…
母はぼくの顔見るとまるでさっきのことを見ていたようにたずねよった。
…つい顔見たらウメちゃんをちょうせんのばか言うたじろうをとなってこのゲンコがじ ろうの頭にぶつかったんや!…
…ぶつかったんとひっぱたいたんとおお違いじゃ!まっことこの子はしょうむない子じ ゃ!母さんこれからすぐ謝りに行ってくるけん!おまんもいっしょに来いいや…
と母は唇をかみながらぼくの手をひっぱった。
どこに隠しとったんやろ、母はくさ餅とかいた菓子箱をだして風呂敷につつんだ。 じろうの母親が白いかっぽうぎ姿のままでて来ると、
…いつもお世話になっちゅうけんしよぅすまんことですが、うちの子がおたくのじろう 様に手をかけたいうもんやからお詫びに!…
と母はぼくの頭を押さえて自分も頭をさげよった。
…ぼく、ウメちゃんをじろうくんがちょうせん!ばかと言うたんでたたいたんや!…
と言うとキシャのおばはんはすぐわけが分かって、
…じろう!ちょうせんの子も日本の子も同じ日本人や!にどとそんなこと言うたらお父 さんに言いつけるから!…
とじろうを叱った。
ぼくはじろうの母はとてもりっぱな人やと思うた。
ちょうせんの子も日本の子もいっしょや!ほんまにじろうの母は偉いと思うた。
…母ちゃん!キシャはやっぱり偉いんやな…
…じろうのお父さんは大学を出ちゅうき、毎日しんぶんのキシャなんや、これからはな かようしいいや!…
ぼくはじろうの父がてつどうのキシャでなくしんぶんをだす会社の偉い人とはじめて知った。