昭和初期 大阪から小樽 四
ビー玉の謎
梅田駅には驚いた。
住吉さんの祭りより多い大勢の人々でまちあいしつはわんわんしている。 ハイカラなかっこうしたおんちゃんたちやぼうしをかぶってええとこのおばはんたち、かっこうのええ駅員、風呂敷せおったしょうばいにん、だいがくせい、ちゅうがくせい、女がくせい、しるしばんてん姿のおっさん、、着物姿の若い女、はかまをつけ、ひげをはやしたじじい、いいにおいをふりまきながら大きな箱にべんとうをぎょうさんつんでせをそっくりかえりながらホームへ急ぐ青色の服に赤いぼうしのおんちゃんたち…ぼくはあれ買うてもらう!と心がわくわくした。
チョンチュウおんちやんとウメちやんがぼくを見送りに来ている。
ウメちゃんは顔をほてらせて待合室の長いいすにこしかけ、足をぶらぶらしながら高いてんじょうを見ている。
…ウメちゃん!池のカメつないどったやろ!逃げんようにたのんまっせ!…
ぼくはウメちゃんの横顔を見ながら言った。
一度逃げられた住吉さんのカメのかわりにウメちゃんが阿倍野ケ池でつかまえた子カメやった。
チョンチュウおんちゃんがカメの背のふちに穴を開けてタコひもでくいにむすんでいたが、ときどきひもがきれることがある。
ぼくはかたいカメのせなかをちいさな枝でひっぱたいて、こんどひもきったら百かいたたくでェ!と五日まえにいうたばかりやった。
…ま、ま、まぃにーちみ、みるさ、さかーい!…
やっと下むきながら答えたウメちゃんの頬がぬれていた。
いよいよウメちゃん、チョンチュウおんちゃんと別れる時がきた。
ほんとうはぼくも別れがかなしいんやけど、機関車の匂い、心がかきまわされるような汽笛がほえたり、シャーシャー!と機関車がいきをはく音でぼくのかなしみはどこかへとんでしもうた。
日はとうにくれて駅は人と電気のあかりで祭りのような騒ぎが続いていた。
ビー玉の謎
梅田駅には驚いた。
住吉さんの祭りより多い大勢の人々でまちあいしつはわんわんしている。 ハイカラなかっこうしたおんちゃんたちやぼうしをかぶってええとこのおばはんたち、かっこうのええ駅員、風呂敷せおったしょうばいにん、だいがくせい、ちゅうがくせい、女がくせい、しるしばんてん姿のおっさん、、着物姿の若い女、はかまをつけ、ひげをはやしたじじい、いいにおいをふりまきながら大きな箱にべんとうをぎょうさんつんでせをそっくりかえりながらホームへ急ぐ青色の服に赤いぼうしのおんちゃんたち…ぼくはあれ買うてもらう!と心がわくわくした。
チョンチュウおんちやんとウメちやんがぼくを見送りに来ている。
ウメちゃんは顔をほてらせて待合室の長いいすにこしかけ、足をぶらぶらしながら高いてんじょうを見ている。
…ウメちゃん!池のカメつないどったやろ!逃げんようにたのんまっせ!…
ぼくはウメちゃんの横顔を見ながら言った。
一度逃げられた住吉さんのカメのかわりにウメちゃんが阿倍野ケ池でつかまえた子カメやった。
チョンチュウおんちゃんがカメの背のふちに穴を開けてタコひもでくいにむすんでいたが、ときどきひもがきれることがある。
ぼくはかたいカメのせなかをちいさな枝でひっぱたいて、こんどひもきったら百かいたたくでェ!と五日まえにいうたばかりやった。
…ま、ま、まぃにーちみ、みるさ、さかーい!…
やっと下むきながら答えたウメちゃんの頬がぬれていた。
いよいよウメちゃん、チョンチュウおんちゃんと別れる時がきた。
ほんとうはぼくも別れがかなしいんやけど、機関車の匂い、心がかきまわされるような汽笛がほえたり、シャーシャー!と機関車がいきをはく音でぼくのかなしみはどこかへとんでしもうた。
日はとうにくれて駅は人と電気のあかりで祭りのような騒ぎが続いていた。