吉松ひろむの日記

高麗陶磁器並びに李朝朝鮮、現代韓国に詳しい吉松ひろむの日記です。大正生まれ、大正ロマンのブログです。

昭和初期の大阪 四十

2006年10月04日 00時06分00秒 | 玄界灘を越えて
昭和初期の大阪  四十

 金谷点柱(こんたにてんちゅう)
 その日ひるから一番遠くの沼へ遊に行って夕方になった。
 ゲンゴロウを五匹、小さな沢でドジョウを十三匹もつかまえた。
 ゲンゴロウはぼくの顔見るとぷくぷくと泡を残して葦の茎にそってもぐってしまうがすぐまた浮かんでぷくっと泡をふいたので網ですくった。
 メスラポが群れを作って低空を同じ方向に飛んで行く。
 …あっ一番星や!コウモリ森の上みてみぃ!…
 鉄橋のむこうは真っ赤な夕焼けになった。
 …ほ、ほ、ほーしのうーた、う、う…
 …母ちやんに教わったでェ、こんな歌やろ…
 いちばん星みつけた
 あれあの森の
 杉の木の上に

 にばん星みつけた
 あれあの土手の
 柳の木のうえに

 さんばん星みつけた
 あれあの山の
 松の木のうえに

 ぼくはウメちゃんの顔見て歌いながら阿倍野ケ原の草地を歩いた。
 …ご、ご,ご、ごーばんあ、あーるでェ!…
 ウメちゃんがゆびさした沼のうえにも星がきらきら光っていた。