昭和初期の大阪 六十三 金谷点柱(こんたにてんちゅう)
…ヒロちゃん!ほんまか?わしはヒロちゃんの家と親戚つきあいやったが、やはり別れ る時がきてもうた!おお!パルチャやパルチャや!ヒロちゃん!…
そうつぶやいたチョンチュウおんちゃんの眼から涙がこぼれた。
…パルチャはわかれるかなしみやな!…ぼくが言うとウメちゃんは裏の材料おきばの陰ににげてもうた。
ぼくも悲しゆうなって家に戻んで母ちゃんのそばで泣いた。
…人間はあって別れてまたあっての繰り返しよ!ウメちゃんのおかげでおまんも成績が ようなったき、いつまでもわすれたらあかん!これからも頑張りいや!…
母も鼻をつまらせながら言った。
小樽の父がやってきた日は雲ひとつない青空がひろがっとった。
ぼくとウメちゃんは十三間道路の住吉前で早くからのりあいバスのくるのをまちよった。 時々おおきな貨物自動車がつちけむりをまきあげてはしった。
ウメちゃんはさっきから下をむいたままやった。
…ウメちゃんの大好きなリンゴ、父ちゃんげょうさんもってきよるでェ!元気ださんと! ぼくがそう言った時…こ、こ、こーれ、と家をでるときからにぎっていたウメちゃんの白い右手を開いてぼくの眼のまえにさしだした。
みると青緑いろのビー玉やった。
…こんな王様ビー玉はじめてや!ぼくにくれるんか?…
ウメちゃんは唇をかみながらうなずいた。
しかし重さがちがうだけか、すんだ青緑いろはいままでみたこともない美しさやった。 …これビー玉であらへん!たからもんや、たからもんや!…とぼくは大声でさけんだ。
…ヒロちゃん!ほんまか?わしはヒロちゃんの家と親戚つきあいやったが、やはり別れ る時がきてもうた!おお!パルチャやパルチャや!ヒロちゃん!…
そうつぶやいたチョンチュウおんちゃんの眼から涙がこぼれた。
…パルチャはわかれるかなしみやな!…ぼくが言うとウメちゃんは裏の材料おきばの陰ににげてもうた。
ぼくも悲しゆうなって家に戻んで母ちゃんのそばで泣いた。
…人間はあって別れてまたあっての繰り返しよ!ウメちゃんのおかげでおまんも成績が ようなったき、いつまでもわすれたらあかん!これからも頑張りいや!…
母も鼻をつまらせながら言った。
小樽の父がやってきた日は雲ひとつない青空がひろがっとった。
ぼくとウメちゃんは十三間道路の住吉前で早くからのりあいバスのくるのをまちよった。 時々おおきな貨物自動車がつちけむりをまきあげてはしった。
ウメちゃんはさっきから下をむいたままやった。
…ウメちゃんの大好きなリンゴ、父ちゃんげょうさんもってきよるでェ!元気ださんと! ぼくがそう言った時…こ、こ、こーれ、と家をでるときからにぎっていたウメちゃんの白い右手を開いてぼくの眼のまえにさしだした。
みると青緑いろのビー玉やった。
…こんな王様ビー玉はじめてや!ぼくにくれるんか?…
ウメちゃんは唇をかみながらうなずいた。
しかし重さがちがうだけか、すんだ青緑いろはいままでみたこともない美しさやった。 …これビー玉であらへん!たからもんや、たからもんや!…とぼくは大声でさけんだ。