ごとりん・るーむ映画ぶろぐ

 現在584本の映画のあくまで個人的な感想をアップさせていただいています。ラブコメ、ホラー、歴史映画が好きです【^_^】

堕天使のパスポート(スティーブン・フリアーズ監督)

2008-01-05 | Weblog
ストーリー;ロンドンの不法入国者を中心に物語が展開。イスラム教徒である22歳の女性シュナイとナイジェリアからきた正体不明の男は居住費の節約と入国管理局の捜査を免れるため昼夜逆転の同居生活を送っている。ホテルで水があふれる器具を直していると底から赤く立ち上るものがある…。
出演;オドレイ・トトゥ、キウィテル・イジョホー、セルジ・ロペス
コメント;「危険な関係」「グリフターズ」のスティーブン・フリアーズ。シナリオにおそらくは忠実なものの画面の展開や演出で見事な冴えをみせる。
いわゆるサスペンスの属するのだろうが、セリフにほとんど頼らない展開がすごい。ラストの別れのシーンもきわめて大人の演出だ。コカの葉やトリュフの入った箱などの小物の演出もうまい。特に最後近くのシーンであえて言葉に出さず、唇の動きだけですべてを表現するというのもなかなかオシャレ。
(イギリスへのイスラム不法入国?)
 個人的にイスラム教徒が不法入国する先が英国というのは実は解せない。イスラエル問題とリンクすると、英国はバルフォア宣言でイスラエルと、フセイン・マクマホン宣言でアラブと同じ土地に独立国家を約束している。このときの戦闘の相手がトルコである。英国は第2次世界大戦前からユダヤ人の入植を制限するようになっていたが、どちらにとってもいい顔をするというあたりが、いろいろな不法入国の温床にもなりうるということなのか。ただ移民局に類する組織形態はどこの経済先進国にもあるのだろう。捜査の方法や労働の形態などは、案外どこでも似ているものかもしれない。画面には憎憎しいホテル経営者が顔を出すが主な主人公は日本人と同じ有色人種。なにやら好感が持てると同時に、ロンドンのあまりにもすごい有色人種化に「ラブ・アクチュアリー」の別のメッセージも受け取る。
 ある統計資料ではEU以外の不法入国者の数が約200万人となっていたがこれは過小計上かもしれない。
 最初の入国者はイスラム教徒でも2世はキリスト教文化圏という世代交代の動きもあるようだが、映画の中では家族の中で唯一英語がしゃべる少女がその状態を象徴している。
(トルコ共和国の政治?)
 外からみていると非常に内部事情がわかりにくい国ではある。親日派が多いとは聞いてはいるが。1980年にクーデターがあったという。現在は中道右派とイスラム教徒の連合による「公正発展党」と中道左派の「共和人民党」の2つが議会で大きな勢力を占める。そのほかにもクルド人などの権利を主張する政党などが乱立しているようだ。政教分離がきわめて厳格に適用され、世俗において「宗教の話題」はできないものとされている。建国のケマル・アテテルクの方針が生かされている。1960年と1980年にクーデターが発生しており、西欧主義とイスラム主義との使い分けに苦慮している、しかし成功しつつある国と考えていいのかもしれない。この西欧主義の最終目標は欧州連合にあるようだが、クルド人問題やキプロス問題などの解決が課題とされている。今年の秋にも加盟交渉の継続が報道されている。おそらくは年齢が22歳ということから、この1980年の軍部クーデターのおりに政治犯としてイギリスに亡命したという設定であろう。
(ナイジェリア)
 一方こちらについては有名なビアフラ事件がある。「ビアフラ」(朝日新聞社)という名作もあり、割とインテリが多くてしかも石油が発見されたイボ族の出身ではないかと推察される。この国はアフリカの中では非常に裕福な部類だと思われるが一時期主人公がアメリカにいたという設定は興味深い。
いわゆるインテリのアフリカ人、イスラム教徒の女性、そして「貧しい」(正確にはお金はもっているわけだが)英国人(つまり階級社会においてはサーバントの扱いになっているから、英国でも低い階層にはなる)の三人がからみあう。一人は女性としての大事なものを失い、男性はプライドを失い、そしてまた一人は身体的に何かを失う。しかし、三人ともそれがそれぞれの方法で「回復」できたりするから面白い。救いがあるのは再生できるところか。

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