永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

テトラのてっぺんで。                           7月8日

2011-07-10 | メバル
山道から里道に出て海に出るまで暫く走らなければならない。
窓を開けると田植えが終わった田んぼの水面を渡って来る初夏の風が気持ちよかった。

海に出るとまず波の様子を見る。
その夜は2メートルの波ということだったが、実際は凪いでいた。もうベタ凪に近い。

ここまで来ると引き返すわけにも行かず、ポイントに向かって海岸線を走る。
地形によって波の高さは違って来る。それを期待したが、どこまで走っても凪ぎに変わりはなかった。

しかし、このところの新ポイント、高いテトラの下の海は違った。
周囲は凪いでいるが、ここだけはサラシが立っていた。
うねりがあり、それが海面から顔を出し細長く横たわる磯に当り、テトラと磯に囲まれたその海域はサラシが広がり、波立つ海面には活気があった。

先ずは前回爆釣であったガルプ、ジギングブラブ2インチを付けて前回のヒットポイント沈み根辺りに投げてみる。
すぐに食いつくと思っていたが、食いついては来なかった。
前回良かったから今回も、というわけにはいかないようだ。
メバルは特にその場その時でパターンが違ったりする。
その時のベイトに由るのだろうが、よくは分からない。

そのうち、ジギンググラブは無惨な姿になってしまう。
またフグである。
困るのであるが、諦めない。まだ始めたばかりなのだ。

ならばと、自作のカブラを投げてみる。ここでプラグを使う気にはなれない。テトラに擦れてすぐにボロボロになってしまうからだ。
しかし、カブラもダメだった。こいつを使うには少し荒れ過ぎなのかも知れない。

ふと、カルティバのロックンベイトが思い浮かんだ。
人気がないようだが、気に入っているのでいつもバッグに入れてある。
尻尾を小刻みに振りながら泳ぐ可愛いやつで、フグにも強そうだ。

左手は宙空に突き出したテトラが邪魔をして投げにくいのだが、ラインが擦れるのを覚悟で敢えてその方向へ投げてみる。
着水とともにゆっくり引いて来る。
いきなりゴツンときた。
合わせると重さが伝わって来る。
ゴリ巻きして、抜き上げである。
えいやっ!!とリールを巻いたが、海面を離れると重くてままならない。
それでも巻くが、中空に突き出したテトラをなかなか超えてくれない。
テトラの腹を擦り引っ掛かり、下がり、また上がって来る。
と、その時、カクンと抜け落ちてしまった。

ああ!!と思う。
またである。


願わくは魚がそのまま海に落ちてくれることだ。
まだ巻き上げはじめたところだったし、おそらく大丈夫だったろう。
そう思いたい。

おそらく、柔らかい口の脇にフッキングしたのであろう。
この高さを落とさずに抜き上げるには堅い上顎にしっかりとフッキングさせる必要がある。
そのためには向こう合わせではなく、アタリに集中してこちら主導で掛けねばならない。


どうやらこの方向にはフグはいないようだった。
或はロックンベイトがお気に召さないのかも知れない。


すかさず、次のキャスト。同じ方向。同じライン。
ヒット。
今度は猛烈な早さで巻き上げた。
25センチ。
フッキングを確かめる。なんとか上顎に掛かっていた。




その次もガンときた。
こいつは重かった。
今度は心して巻き上げる。
テトラに引っ掛かりそうになり、一度落ちかかるが、なんとか巻き上げた。
デカメバル用のルナキアでも大丈夫かと思うほど折れ曲がった。
こいつはしっかり上顎にフッキング。




ひょっとしてと、バックからメジャーを出して、暴れる魚を押さえつけながらなんとか計測写真を撮る。
しかし、28センチを僅かに越えたに過ぎなかった。
前回、計測写真はその場ですぐ撮らんといかんなあと痛感したわけで、気を入れてやってみるとこれである。





その後もヒットは続いた。

26センチ。



25センチ。



そしてまた、一際重いやつ。
よし!!今度こそはと期待しながら抜き上げた。




測ってみる。

しかし、また28センチであった。





その後、遠くを狙ってフルキャストすると、向こうの磯まで届いて根がかり、
ラインブレイクとなってしまった。
テトラの上でラインを編み直し、再び釣りに戻ったが、
何故かアタリはぴたりと止まってしまった。

フグがいるからか?
そうではない。

フグはいなかった。
しかし、どの方向に投げても、ワームを替えても、
反応はなくなった。

何故か?暫くテトラに座り込んで考えた。
いろいろ考えられるが結局のところ分からない。
突然スイッチが入って爆発し、突然スイッチが切れて静まり返った。
そういうことだ。

メバルの時合いは短いとよく言われる。
ほんとそうなのだ。
時合いは祭りで、終われば後の祭りである。
先程までの熱気と興奮は何だったのか、
終わった後の一種形容し難い寂しさもメバル釣り独特である。

今回も怪物に出会えなかった。
でも、まだ諦めるわけにはいかない。
ここには必ず怪物がいるのだし、
この海はまだメバルたちの宴が続いているのだ。


空には星はなく、暗闇と波のざわめきだけである。
初夏の柔らかい風が吹いていた。



しかし、私は深夜独り、こんなテトラのてっぺんで何をしているのだろう?


なんだか可笑しかった。