永遠に、幸せになりたい。    by gorosuke

真夜中、いいおっさんが独り海に向かって延々と竿を振る。
アホだな。でもこのアホ、幸せなんだよなあ。

 ひねもすのたり のたりかな

2012-04-11 | クロダイ
久しぶりの更新。

釣りを忘れたわけじゃない。

3月に入ってさてと二度ばかり出かけたが、
二度とも予想外の荒れと強風、寒さで釣りにならなかった。

なんだか今年は季節が二週間、いや一ヶ月くらい遅れているのではないかとも思われた。

そんな思いと仕事のこと。

今年に入って、新しいスタイルで仕事を始めた。
怠け者の私が、とにかく一日一つは版画を彫る、と決め、それを続けて2ヶ月を過ぎた。
自分でも信じられないくらい毎日彫刻刀を握っているのだが、その仕事のリズムと流れが先行してしまい、釣りへのタイミングを逃してしまうことが多かった。
まあ、新しいスタイルが案外面白かったのである。

そうして気が付けば、4月である。

部屋の隅に置いてあるロッドもリールも静かに眠り込んでいた。
そろそろ起こしてやってもいいか。
私の錆びかけた釣りの心も磨きなおそう。

予報を見ると、1メートルの波、風も良し、気温も10度。
やんわりと釣りへのイメージが蘇って来る。
早めに晩飯を掻き込み、ロッドとリールを叩き起こした。

先ずは本命ポイント。
というか、デカメバルが期待出来そうなポイントを他に思いつかないのだ。
いや、我がポイントの少なさよ。

釣り座に立ったのは7時過ぎ。辺りはまだかすかに夕方の余韻を残していた。
風は追い風3メートル、やんわりとした春の風だが
海はあんらら・・・・ベタ凪だった。

なんだか期待出来そうもない状況だが、ともあれプラグから始めることに。
アスリートリップレスを風に乗せてフルキャストした。
9.3フィートのロッドである。よく飛び、何処に着水したか分からない。

先ずは表層をゆっくり引いて来る。
魚が食い付いて来る感触を思い出しながら。

二投目、遠くでガツンと来た。
プラグに食いつく独特の感触。
案外の引きと重さだった。
久しぶりのメバルの躍動がピキピキと伝わって来る。いい感じ。

暗い海面にメバルの暴れる白い波が見える。
ゴリ巻く。

メバルが白い筋となって近づいてくる。
えいやっ!!と抜き上げる。


26センチだった。


久しぶりのメバルの顔、形だった。
何度も見た姿だが、ナマの顔はやはりいいもんだ。

ベタ凪だが、いいスタート。

期待するが、その後ぷっつり。


プラグからワーム、カブラとルアーを替えてみたし
方向も、レンジもいろいろと思いつく限りのことをやってみるのだが音沙汰なし。

やはり凪ぎはこんなもんか。
だが、帰るにはまだ早い。


暫し一服。ポットに入れた熱いコーヒーを喉に流し込み、煙草に火をつける。

月はなく、正面に北斗七星がいる。左手の低いところに惑星が一際大きく輝き、海面にボンヤリと光の道筋を作っている。木星か土星だろうが分からない。

静かでまったりとした春の海であった。


まさに蕪村の句の通りである。

「春の海 ひねもすのたり のたりかな 」



気を入れ直し、キャスト再開。

いろいろやってみるが、結局のところ、フロートリグに長めのリーダー(1メートル強)、0.5グラムのジグヘッド+ガルプを遠くにキャストし、ゆっくりと、ほんのゆっくり移動させながら小さいアタリに集中する、というのがまだしも一番可能性があった。

時折アタリが出はじめ、2度まあまあのをバラしたが、時合いや群れのようなまとまったものではなく、てんでバラバラのものだった。

当るも八卦、当らぬも八卦、なんだかとりとめのない釣りである。

と、当った!!

23センチ。



その数投後、小さいアタリ、グググと言うような、妙なアタリ、
合わせるとグンと重さがロッドに乗った。
いきなり走った。
下へ潜ろうとするのを強引に浮かせる。

抜けるなよ・・・・

抜けなかった。



28センチだった。



このサイズ、やはりいないわけじゃない。


時計を見ると9時を過ぎたところ。

さて、これからだ、と再び気を入れ直し、
28センチが食いついた辺りを集中して狙うが、
突然風が強くなって横風となり、キャストもままならなくなってきた。

それでも風向きを計算に入れたキャストで粘っては見るが、
23センチが一つ、バラシが一つ。




粘ることが得意な私だが、風はますます強くなり、突風に身体が持って行かれそうになる。
アブナイ!!と感じた。


11時

諦めた。



大した釣果ではないが

私の遅い春メバル一番だった。







28.26センチの胃の中からこんなやつが出てきた。

みんな一様に消化されていないところを見ると、釣れた時間は違うけど、その時がその魚の時合いだったのだろう。






しぐれてゆくか 再び

2012-02-08 | メバル
2月6日、気温が緩み降り続いていた雪が雨になった。
ということは波も落ちる。1メートルだという。

2月は半ば諦めていたが、俄然釣りへの熱情が蘇る。
晩飯後、降りしきる小雨の中、呆れ顔の連れ合いを尻目に出かけた。

なんだ、雨くらい
である。

前回と同じ、怪物を狙えるポイントである。
久しぶりの釣りにワクワクするのであったが、
2月の釣り、やはり渋かった。

キャストを始めて30分、やっと小さいの。
22センチ。



いないわけでもなさそうだ。

が、いるわけでもなさそうだった。
どこをどうやっても反応なし。


あまりの渋さにフロートリグを諦め、ヤケクソ半分プラグを投げてみた。
ブルースコードC60。思い切りのフルキャスト。
表層にいそうにないので、カウント15でゆっくりと引く。

と、食いついた。


23センチ。

小さいが、久しぶりのブルースコードでのヒット。

で、その次も。
こいつはデカメバルの引きと重さ。


26センチ。

暫く間を置いて


ヤリイカだった。うっはー。

その後も乗らないがバイトはあった。

今日はプラグのパターンか、
と思いきや、

沈黙。


前回のメバルの胃からアミ(小エビ)が出てきたのを思い出し、
ジグヘッドケースの中にあった自作のカブラをフロートリグに付けて投げてみた。


(錆びていたが、なんとか使えそうだった。)

すると、すぐに食いついた。



24センチ。

次も、


23センチ。

その後も続き、4連ちゃん。

やはり、アミパターンだったか、よし!
と、心沸き立つが


また沈黙。


再び、ワームに戻り、プラグをやり、カブラもやってみるが、この沈黙は深く大きかった。

小雨は時折大粒になって防寒ジャケットの背中でパラパラと音を立てた。


移動した。

高いテトラへ。
雨に濡れたテトラ、滑って落ちたらオシマイだ。
慎重の二乗で釣り座につく。

水面からの高さはゆうに10メートル。
ルアーを回収するに途中突き出したテトラが邪魔をする。
極めて釣りにくいポイント。
ライントラブルやルアーのロストは覚悟しなければならない。
一般の感覚ではここで釣りをしようと誰も思わないだろう。
だからこそ怪物と出会える可能性は高い。

PEスペシャル93はまさにこんな釣りのためのロッドだ。
まずはフロートリグ、12グラムのスーパーボールにカブラを付け浮き根周りを狙ってみる。過去、ヒット率の一番高いエリアだ。

風は緩い追い風だし、海は適当に荒れて悪くなかった。

しかし、事件は起こらない。

カブラをジグヘッド+ベビィサーディンに替えてみる。

ここは前方に細長い磯が斜めに横たわっており、テトラとV字を形作っている。
そのV字の一番奥を狙ってキャストする。
この方向は障害物が多くできることなら避けたいところだが、幸い風向きが良くトラブルにはならないようだった。

その一投目、きた!!

乗った!でかい!!
こいつを待っていた。

根に潜られないようゴリ巻く。
薄暗い海面、魚の躍動が白い筋となって10メートル下の足元に近づいて来る。
この方向は抜き上げの途中、必ず宙空に突き出したテトラに擦ってしまう。
躊躇していたらそこで落としてしまう。
一気に巻き上げ、抜き上げるしかなかった。

いっちにのさん!!
ロッドを跳ね上げ高速で巻き上げる、
魚の全重量がロッドに掛かる。

しかし、案の定、魚体がテトラに当った瞬間抜けちまった。

おそらく、口の横にフッキングしたものと思える。
ここでは、特に大型は上顎にしっかりフッキングさせないかぎりランディングは難しい。

気落ちはしなかった。
でかいのがいることが分かったからだ。
雨に濡れそぼった心は再び活気を取り戻した。

しかし、その活気も虚しく空振り。
1時間半ひたすらでかいのを狙ったが、25センチ一匹。




防水の筈の防寒ジャケットもじんわりと雨が浸透し、グローブもグチョグチョになっていた。
前回のような凍り付く寒さではないが、すでに指先の感覚が鈍く力が入らない。


依然止む気配のない雨の中を車へと向かった。


しかし、メバルというやつ、分からない。
プラグに食いついたかと思えば、カブラになり、最後はワームにしか反応がなかった。
こんなにもクルクルと変わっちまうのだ。


帰って26センチの胃の中を見ると、こんなやつ。

5~6センチの小さな魚、おそらく波の花。
プラグに食いついたわけだ。
他のやつの胃は空っぽだった。



満天の星たちよ。

2012-01-19 | メバル
17日、突然波が落ちた。

連日3~4メートルだったのが、夜には1メートルになるという。
冬の能登外浦、こんなことは滅多にない。

これは何が何でも出かけねばならぬ。

怪物を狙える本命ポイントはこの時期到底釣りにならず3月までは諦めていたのだが、ひょっとしたらと期待した。

直行してみると案の定、波は1.5メートル、適当に荒れて悪くない状況。
実に半年ぶりの釣り座だった。
風邪は右後方からの緩やかな追い風。

時刻は9時。
空は晴れ上がり、満天の星が煌めいていた。
北極星を真ん中に挟んで北斗七星とカシオペアが水平線の上で向かい合っている。
ただ、風が冷たかった。


さて、釣りである。

このところの釣りから、渋いことは覚悟していたが、
案外、そうでもなかった。

ぼつ、ぼつ、とアタリがあり、ぼつ、ぼつ、と掛かった。






(改めてメバルの顔は魅力的だと思う。一匹一匹個性がある。今回は彼女たちの顔を意識して撮ってみた。)


入れ食いとはいかないし、サイズも22~23センチと今ひとつだが、このところの渋さを思えば、久々の釣りらしい釣りであった。

フロートリグメソッドである。
長めのリーダーに重めのジグヘッド(0.9グラム)、ガルプベビィサーディン。
始めは大きめのものを付けていたがアタリなく、ベビィサーディンに変えた途端にアタリが出始めた。

サラシ際でもなく、潮目でもなく、漠然と暗い遠くの海面でのみアタリがあった。
アタリがあるのはフルキャストして着水後の数巻きしたエリアだけだった。
方向も一つ。ちょっと外すともう当たらない。

小さい群れなのだろう。
同じ位置にキャスト出来れば続けてアタリがあるが、それも暫くすると当らなくなる。
そしていろいろ探っているうちに少しズレた方向でまたアタリがあり、暫くするとまた当らなくなる。

いずれもアタリのある方向は着水地点10メートルの幅はあるものの大体一方向である。
ほんの小さい群れが狭い範囲を行ったり来たり、移動しているように思えた。


強くはないが冷たい風だった。
星が綺麗な夜は冷え込むのだ。
予報では夜の気温は2度だったが、そんな筈はなかった。
熱い茶で身体を温め、かじかんだ手に息を吐きながらのキャストである。

と、小さくコツッ!と小さいアタリ。
少し遅れ気味に合わせるとしっかりと乗った。
重かった。それまでのやつと引きも違う。
ゴリ巻きしながらもドラグが出る。
高い釣り座である。足元まで引き寄せたのを確認してロッドを下げ、
いっち、にの、さん、で高速で巻きながら一気に抜き上げる。



でかかったが、尺には及ばなかった。



28センチ。産卵前だ。

でかいのもいる、
と期待するものの、その後はまた22~23センチに戻っちまった。
やはり同じ方向、同じ距離、ぼつ、ぼつ、と掛かった。










暫くアタリが途絶えたので、プラグを投げてみる。
かろうじてベビィサーディンに反応があるということはベイトは小魚に違いない。
しかし、反応なし。
ベビィサーディンより大きめの小魚系のワームにすると数度当って来た。
が乗らない。

再び沈黙。

場所を移動する。高いテトラ。
ここは昨年晩春から初夏にかけてデカイのがゴロゴロ上がったし、数匹怪物を逃したポイントだ。
この状況なら、と期待したが甘かった。
全くアタリさえなかった。

さてどうするか?

帰ろうか、寒いしな・・・・

時計は12時を回っていた。

帰りの方角、南の空にはオリオンが瞬き、その左下にはシリウスが一際大きく青く輝いていた。久しぶりに見るシリウスだった。
突然、元気が湧いて来た。
高いテトラで暫くやっていたお陰でかじかんでいた手も少し楽になっていた。


もう少しやってみるか。
このポイントで釣りが出来るなんてもう暫くないかも知れんし。
全く釣れんわけでもないし。
それにそのうち時合いが来て、でっかいのがガッパ、ガッパと食いつくかも知れんし。

元の釣り座に戻った。

だが、時合いどころか、ぼつぼつと当っていたのさえ何処かへ行っちまった。

正面、北の空は相変わらず雲一つなかった。
満天の星はますます輝きを増し、北極星を中心にして、北斗七星とカシオペアがゆっくりと半時計回りで回転していた。

深夜、独りで釣りをしていて霊的なものを見る人がいる。
私は鈍いのだろう、あまりそのような経験はない。
暗闇に独りでいても、基本的に寂しさは感じないのだ。

何故ならば、星たちがそこにいるからだ。
我々の存在は星の燃えかすから出来ている。
星たちと我々はぶっつづきでありとても近しい関係なのだ。
要するに、星たちは仲間なんである。

我々はいつも人間たちが作った価値観に翻弄されウロウロと生きているが
我々の生命は人間が作ったものではなく、宇宙という壮大な運行の中で生まれ、それとともにある。
宮沢賢治は「銀河をこそっと胸に収めて生きていこうではないか」と言ったが
私もそうありたいと願う。



すでに息を吐きかけてもかじかんだ指には力が入らない。
リールのハンドルをスムーズに回せなくなっていた。

最後のフルキャストで一匹。



それで終わりにした。
2時だった。


車に戻ると、フロントガラスの内側が表面結露し、それが凍り付いていた。





帰り道、道路標示はマイナス4度を示していた。


どうりでな。
うっひゃ~~。






帰って後、魚の胃を調べてみると小さいエビ(アミ)が出て来た。カブラを使ってみるべきだったか。






しぐれてゆくか

2012-01-16 | メバル
このところ降り続いていた雪が雨に変わった。

雪まじりの雨である。

雪が雨になるということは気温が上がったわけで、荒れていた海も少しは大人しくなる。

時雨の中、正月に尺が上がったポイントに出向いた。
2メートルの波だったが、緩やかな磯湾の奥なので釣り座は1メートルくらいか。
雨は小雨になり、背後からの風に乗って舞うように落ちて来る。
釣りをするに問題のない状況だった。

フロートリグから始める。ワームはガルプ、サンドワーム。
数投目、ヒット。
ちっこいやつ。



前回よりはいいか、と思うが
その後、さっぱり。

30分後、シンキングリグに変えてみる。前回尺がヒットしたリグである。ワームも同じガルプ、ベビィサーディン。
この磯はフロートよりもシンキングのほうがヒット率は高い。

しかし、音沙汰なし。

そのうち、雨が強くなって来た。
雪まじりの雨粒が背中を激しく叩く。
中断。
車に逃げ帰る。

でも、帰らない。
大晦日も、正月も極めて渋かった。
ほんの僅かなアタリしかなかったが、そいつがでかかった。
ここで帰るわけにはいかない。
渋いのは覚悟の上だ。

車の中で煙草を一服。熱いお茶を飲んだ。
車の屋根を叩く雨の音を聞きながら少しウトウトしたか。

30分後、雨は小降りになった。
気を新たにキャスト再開。

しかし、状況は変わらなかった。

潮目を狙っても、沈み根やテトラ際を狙っても、レンジを変えても、ワームを変えても、ジグヘッドの重さやリーダーの長さを変えても、思いつく限りのことをしてみるがアタリらしきものはなかった。

魚がいないのか?
いや、そんな筈はない。
ただ、食って来ないのだ。
何故、食いつかないか?

分からなかった。

ひょっとして届く範囲にベイトがいないのかも知れぬ。
実際、ベイトのことがよく分からない。

つーさんの話では12月の越前海岸はゴカイ類だったという。
ならば能登外浦もゴカイだろうとそれを想定してやっていたのだが、
事実、前回の尺の胃からは何も出て来なかったし大晦日の尺の胃も空っぽだった。

半分ヤケクソでプラグを付けて投げてみた。
ブルースコードC60。
このところ出番がなかったが、デカメバルを釣り始めた頃何匹も尺をあげた懐かしいプラグだ。いざという時はやはりこいつなのだ。

でも、アタル気配はなかった。

やはり駄目か、と思ったとき、
ゴゴン!と来た。

合わせるとデカメバルの重さがロッドに乗った。
強い引き、尺クラスか!!
よっしゃ!!

と・・・・・

海面を波しぶきが走った。

あんら、違った。

引き寄せ、抜き上げようとして上がらない。
フクラギだった。
ロッドを下げ、リールを目一杯巻いて、気合いを入れて再び抜き上げる。
PEスペシャルは大丈夫とタカをくくっていたが、危ないところだった。



綺麗な魚体、美味そうだ。
瞬間、こいつの刺身の映像が頭をよぎる。

が、突然暴れ下に落としてしまう。そのショックでラインブレイク、ブルースコードと共に海に帰っちまった。

フクラギが来ているのか。
すぐさまレイジー60を付け、フクラギを狙った。

直後のキャストで再びヒット。
フクラギと思って引き寄せ、抜きあげにかかり魚の顔が海面から出たところで
フクラギではないことが判明。でかい口、スズキだった。
フッコクラスだったのでそのまま抜き上げるが、リーダーがブレイク、また海へ落としてしまった。

しかし、2.5号のフロロがこうも簡単に切れてしまうものか。

どうやら、メバルじゃなくてこいつらの日のようだった。

車まで玉網を取りに戻り、本格的にスズキやフクラギを狙った。

がしかし、その後アタリはぱったりと消えちまった。
どこからか回遊して来て、ひと回りして何処かへ行ってしまったらしい。
短い時合いだったのだ。
用意してかかると時既に遅し。よくあることだ。

その後、メバルに戻るが、遠くで一度小さいアタリがあったものの、その後は相も変わらず反応はなかった。

一時止んでいた雨が再び降り始めた。

ヘッドライトの明かりの中を白い筋の束となって雨粒が落ちてゆく。
グローブに雨が沁みてかじかんで来た。

いくら粘るのが得意でも、もういいだろう。

結局、空のバケツを抱え車に戻った。
11時だった。

まあな、こんな日もある。



帰り道、雨は雪になった。



「うしろすがたの しぐれてゆくか」(山頭火)









正月、雪の尺

2012-01-04 | メバル
正月は比較的穏やかな天候だったが、4日から再び荒れるというので3日の夜、出かけた。

北陸の日本海は荒れ出すと手に負えない。4~5メートルの波になるのだ。

ここ数年、正月の釣りは事件が多く期待出来るということもあった。

先ずは勿論、大晦日に尺を釣り上げたポイント。
波は1.5メートル、悪くなかった。
しかし、大晦日と同じ、渋かった。

フロートリグではじめたが、どこに投げても、どんなワームを使っても場所やを変えてもジグヘッド単体でやってもアタリらしきものはなかった。

2時間粘って、最後に最初の場所に戻り、最初のフロートリグに戻してやってみると、大晦日の尺がヒットしたテトラ際の同じところでゴゴと来た。やっとのアタリである。
うまく乗り、重い手応え、またしてもと期待するが、
28.5センチだった。





その後、30分粘るが、アタリなし。

大晦日と殆ど同じパターン。
2時間粘ってアタリは一度、その一匹がいいサイズ。

その場を諦めた。
時計を見ると9時半。
まだ帰る気にはなれなかった。

連れ合いがメバルの煮付けを食いたいと言っていたので
20センチクラスでもキープしようと思っていたのだが、
一匹では話にならない。


輪島方面に移動する。

昔良く通った浅い磯だ。
何年か前の正月、つーさんと尺揃い踏みをやったポイントでもある。
普段は小さいのしか釣れないが、正月から1月一杯はデカイのが期待出来る。
産卵しにデカイのがやってくるのだ。

海は適当に荒れ、雰囲気は悪くなかった。


先ずはフロートリグを投げた。
PEスペシャル93は12グラムのスーパーボール飛ばしウキリグをジグヘッド単体のように何の違和感もなく遠くへ運んでくれる。
こんな竿は振っているだけで嬉しくなって来る。

しかし、ここも渋かった。激渋。
ここなら煮付けにする小さいやつくらいは釣れるだろうとタカをくくっていたのだが、そのアタリさえなかった。

そのうち釣り人が一人やって来て、キャストを始めた。

2時間経過。

釣り人も釣れた様子はなく、私も全く釣れなかった。

釣り人は1時間もやっただろうか、諦めた様子で帰って行った。
普通の感覚の釣り人なら、そうするのだろう。

しかし、私は帰らない。

ちょっとルアーを投げて釣れなかったらすぐに移動する人がいる。
魚がいるところを探して歩くのはルアー釣りの特徴だが
ことメバルに関してはそれがいいかどうか、と思っている。

メバルの場合、釣れなくてもそこにいないとは限らない。
多くの場合、そこにいても食いつかないだけなのだ。
それが何かの契機でスイッチが入り、活性が急上昇する。
それを時合いというが、メバルの場合それが顕著なのだ。

2時間アタリなく、その後、突然爆釣という経験したのは何も私だけではないだろう。

場所を追っかけると、タイミングがズレれば、釣れないタイミングを追っかけることになりかねないし
ポイントのこともしっかり把握出来ない。

過去にいい思いをして場所も雰囲気がある。
そんなお気に入りのポイントがあるなら、そこでじっくりと構える。少々アタリがなくても粘ってみる。
どうして釣れないか考え、思いつく限りのことをしてみる。
そうしてその時のパターンを探す。パターンはその時その時で違うし、変化もする。
そのうち時合いも来るだろう。(じぇんじぇん来なかったりして)

じっくりと場所と対峙する。付き合ってみる。

場所を追っかけるより、その方が確率が高い。
その場所とも仲良しになれる。
それが私のスタイルだ。

といっても、私もすぐに移動することはある。
釣り座に立った途端、駄目だと直感する時、
或は気象条件、風や波で釣りにならない時、
そんな時はすぐに移動する。
あたりまえか。

ともかく、私の得意技は粘ることなんである。

講釈はこれくらいにして、釣りに戻ろう。


フロートリグ、プラグ、単体ジグヘッドでやってみたが、どれも駄目だった。
でも海の様子からメバルがいないとはどうしても思えなかった。


私はメバルを始めた当初から飛ばしウキを多用してきた。

始めはフロートタイプの飛ばしウキだったが、いろいろ経験しているうちに、でかいやつは深いところにいるという一つの思い込みが出来て、シンキングタイプを使うことが多くなっていた。

しかし、昨シーズンの正月、荒れた海、フロートタイプで2匹の尺を上げ、荒れた海ではフロートタイプが効果的であることを実感した。それもあまり引かないやり方である。
それ以来、フロートタイプが主流になっていた。
飛ばしウキの最初に戻ったわけだが、最初とは大いに内容が違う。

だから今シーズン、大晦日も、今回も当たり前のようにフロートタイプを使った。

しかし、ここはどうだろう。
そう深くはない磯で、底は沈み根や岩が入り乱れている。
そして活性は極めて低い。

恐らく、メバルたちは海中に出ることなく沈み根や岩の隙間に入りにじっとしているのだろう。
表層あたりを餌らしきものがゆらりと移動するくらいでは出てきはしない。

ならば、岩の隙間の、メバルの鼻先まで持って行ってやろうではないか。

久しぶりにシンキングタイプ(メバトロボール、ファーストシンキング)をつけてフルキャストしてみた。
リーダーは60センチと短めだ。

カウント15でゆっくりと引く。
時々ジグヘッドが底の岩礁に当ったり、引っ掛かりそうになりながら、遠くからゆっくりと底を転がすように、撫でるように引いて来る。
ジグヘッド単体ではこれができない。

と、ココン!と当って来た。やっぱりな。
が、乗らない。

それが2度続く。

で、ワームを変えてみる。
ワームはそれまで大きめのイソメやゴカイ系のサンドワームやクリームだったが、小さいベビィサーディンを付けた。

すると、案の定、食いついた。

おお!!
久しぶりのメバルの引き、いい感じ!!

20センチ弱のちっこいやつだが
それでもやっと釣りの雰囲気になって来た。

気がつけば雪がちらほら降っていた。
でも帰る気はしなかった。これからなのだ。
背後から斜めに海面に舞い落ちる雪を見ながらのキャストだ。




そして、12時を回った頃だった。

そう遠くない沈み根の向こうあたり、ジグヘッドがコンコンと根に当たった瞬間
ゴッ!と来た。

そう大きくはないが、はっきりとしたアタリだった。

合わせると、重さが乗った。
始めは大したことない重さだったが
少し寄せたところで俄然重くなった。
根に潜ろうと下へ突っ込んだのだ。

しかし、そうはさせじと浮かせにかかる。
一度、動かなくなったが、一瞬テンションを緩めると再び動きはじめた。
一気に引き寄せる。

強い引きだった。
バレるなよ!!

足元に来たのを強引に抜き上げた。
空中にぶら下がった魚の大きさ、迫力。
見るからに尺は越えていた。



自分ながら驚いた。
まさか、と思った。

正直なところ、
その夜は釣れてもせいぜい煮付け用の小さいやつくらいだろう、と半分諦めていたのだ。

俄然、心臓が高鳴った。
暴れて落とさないように慎重に握りしめる。
安全なところに運び測る。



31センチだった。

31センチを超えたのは何年かぶりのことだ。

このサイズがこのポイントで出るなんて想像もできないことだった。


(これは記念写真を撮らないとイケナイ。前回に続き自分で撮る。今度はうまく魚の全体が入った。しかし右腕が邪魔だな。)

今ひとつ実感がわかないまま
釣りを再開する。

雪は牡丹雪となり、容赦なく暗闇から落ちて来た。
だが寒くはなかった。

降る雪構わずキャストを続ける。
しかし、集中できなかった。
海面に吸い込まれていく雪があまりに美しかったし、
予期せぬ突然の大物で頭が混乱していたのだろう。


気持ちを入れ直し、釣りに集中し直す。

その後、再びデカイのがかかったが
沈み根に潜られ、バラしてしまった。
やはりどこか気が抜けていたのだろうな。

雪はますますひどくなり、海面が見えなくなって来た。
シャビ!シャビ!シャビ!と背中に当たる雪の音。
背中にも雪が積もっているようだった。




もう一匹尺を、と粘ったがそろそろ限界だった。
足は大丈夫だったが、グローブがグチョグチョに濡れ手がかじかんできた。思うように指が動かない。

25センチが釣れたところで終わりにした。

1時半だった。


愛車、ハイエースを4WDに切り替え、雪の道を帰った。

渋い釣りだった。
釣果はたったの三つ。
しかし、1つは飛び切りでかかった。

大晦日と同じような釣りである。

尺越えがいないわけじゃない。
じっと何処かに潜んでいる。
ただ、簡単には食って来ないだけだ。
だが、食って来ないとは限らない。
何かのタイミングで必ず食いついて来る。

何かのタイミングが分からないのだが・・・・


大晦日と正月の二匹の尺は
そのことを実感させてくれた。

幸運だったし、粘りが功を奏した釣りだったとも言えるだろう。







大晦日の尺。

2012-01-02 | メバル
皆さん、新年あけましておめでとうございます。


と、新しい年は明けたのだが、
昨年の大晦日の夜、昨夜のことであるが、
その不思議とも言える釣りのことは書いておきたい。


昨年、輪島イカ釣りダービーが終わってからというもの釣りに出かけられなかった。

12月の福井ゲッコウカフェ展覧会に向けて新作版画に取り組んでいたからだ。
この展覧会は私にとっていろんな意味で重要な仕事であり展覧会だったのだ。

そのために展覧会が終わるまではと釣りを封印した。

11月に入ってあちこちでデカメバルが沢山上がっていた。
今年はメバルの当たり年らしいとの噂も耳に入る。

小生の昨年のメバルの目標は尺を5匹だった。
正月から調子は良く、夏までに4匹は釣り上げ目標は楽勝に思われた。
後一匹だが、それを釣りに行くことは出来ぬ。
悶々としながら仕事に向かった日々だった。

12月26日、福井展覧会は終わった。皆さんのお陰で楽しく盛り上がり意味深い展覧会となった。
能登に帰って来たのは28日だった。
能登は積雪60センチ、あたり一面真っ白の冬景色だった。

さて、釣り再開である。
すでにニューロッド、ブリーデンPEスペシャル9.3フィートも手に入れていた。
身体の奥から釣りへの想いと感触がじんわりと蘇って来る。
しかし、海は荒れていた。
4~5メートルの波が続いていた。

それが大晦日になって俄に落ちた。
1.5メートルだと言う。

言うまでもなく晩飯後、雪を蹴って出かけた。


先ずは本命ポイントに直行した。
だが、予想に反して波は高かった。
6メートルの足場まで波が上がって来る。
海面は怒濤逆巻き荒れ狂っていた。
一投も出来ず、諦めた。

春に怪物を狙って通った高いテトラも同じ状況。
サラシの渦であった。
それでもと思い、一時間ほどサラシの中へ飛ばしウキリグを投げてみるが全くアタリはなかった。
デカメバルは波がある方がいいが、これは論外であろう。


移動する。


帰り道の途中のイージーテトラ。

ここは緩やかな奥湾なので波はさほどでもなかったが、崖崩れの工事中で道路の常夜灯がなくなっていた。
常夜灯の微かに海面を照らす灯りが魚を集めていたのだが、残念。

ともかく真っ暗の中、キャストを始める。10時だった。

波で一番下のテトラに降りられないので上からのキャストである。
風もあるので飛ばしウキに長めの1メートル強のリーダーを付けた。
ジグヘッドは重めの1グラム、ワームはガルプサンドワーム2インチだ。

やっとまともな釣りである。
PEスペシャル93は12gの飛ばしウキを軽く遠くへ運んでくれる。
この長さは足場の高いところや磯にいいのは勿論、飛ばしウキにももってこいである。

基本的に私は長いロッドが好きである。
磯でのスズキ釣りには13フィートを使っているし、メバルも始めた当初から9.3フィート(テンリュウ・ルナキア)を使って来た。
出会ったポイントの足場が高かったということもあるが、加えて能登外浦の寒い季節は波と風が強く、飛ばしウキを使うことが多かったからだ。

波はテトラにぶち当たり帯状のサラシを作る。そのサラシの際をゆっくり引いて来る。引くというより少しづつ移動させる。

ここは前方に浮き根などのストラクチャーがない。余程の群れが回遊して来ていない限り、前方ではヒットしない。
魚はテトラの下に潜み、波とともにやってくる餌をじっと待ち受けている。
テトラにぶち当った波はテトラ際をゆっくりと移動し集まって来るのがこのポイントなのだ。と、思っている。

福井での展覧会中、つーさん宅に寝泊まりさせてもらったのだが、彼は毎夜のように釣りに出かけ、デカイのをガンガン釣っていた。噂通りの当たり年。
それに昨年の正月、ここで尺を2匹釣ったことが思い出され、期待に胸は膨らんだ。

さてどうか?・・・・

しかし、さっぱりであった。

時々当るのは藻ばかりだった。

ワームを定番のベビィサーディンに変えてみたり、場所を変えてやってみるが同じである。


でも帰る気にはなれなかった。
移動する気にもなれない。
釣りが可能でデカイのが期待出来そうなポイントを他に思いつかない。

ここは粘ることに。
気温はマイナス一度、いつもなら冷たさに足が痛くなるのだが、今回は違う。
福井から帰る日、つーさんお薦めの山用の防寒靴を一つ仕入れ、そいつを履いているのだ。なんでも零下40度に耐える靴だとか。
ちょっと大袈裟とは思ったが、寒さに足が痛くなり、まるで我慢大会のような釣りはご免被りたかった。

足が温かいと手も温かい。
足の痛さに悩む方には是非おススメしたい靴である。


(ソレル、スノーブーツ・カリブー)


話は釣りに戻る。

足は温かいが、釣りは寒かった。
釣れる気配がない。

水平線の向こうに漁船の灯りだけが点々とボンヤリ空を照らしている。

11時を回った頃、ワームを変えてみた。
福井の釣具屋さんで仕入れた「クリーム」というブラックバス用のワーム。ミミズのような8センチくらいのやつ。
ガルプに比べ芯はしっかりとして針持が良さそうだし、全体にはグナングナンして見るからに釣れそうだ。

気持ちを新たに極めてゆっくりとテトラ際を引いて来る。

と、アタリ。

ククッと来た。

合わせると重さが乗った。
いきなり重かった。
流石のPEスペシャルも絞り込まれたが
余るほどのパワー、安心してそのまま抜き上げる。

水面から魚体が出て来た瞬間、
尺だ、と思ったほどの堂々としたやつだった。




(嬉しくて自分で撮ってみるが、やはりうまく入らない。うっはー。)

暴れて落とさぬよう、慎重にしっかりと左手に握り
上の平らなところに運び測ってみた。



しっかり尺だった。

よし、時合いか!!もう一匹!!

と気分は盛り上がったが
その後は再びサッパリであった。

空は晴れあがり頭上には北斗七星が上がって来た。アルクトゥルスにスピカ、
私の星座、獅子座も少し斜めになって近くにいた。前足のレグルスが青く輝いている。
春の星たちである。

時計を見ると12時を回っていた。

海とメバルと星たちと年を越したのだ。

その後一時間粘るが音沙汰なし。

諦めた。

しかし、可笑しな釣りである。

たった一度の魚信、
そいつが尺だった。


群れに当れば沢山釣れる。
しかし、群れの中に尺クラスは稀である。
まして、尺を越えるような怪物は群れず単独で潜んでいるのかも知れぬ。
我々の想像を超える場所に。

メバルにも個性があろう。明るい性格、皆と楽しく浮かれ騒ぐようなやつは大きくはなれない。
極めて用心深く賢いやつ。人間の誘いなど見向きもせず、暗いところにじっと潜み孤独を愛するやつ。し、渋いぜ!!
そんなやつが20年も生き延びて怪物になるのだ。
今年こそは35センチを超えるようなそんな怪物に出会ってみたいものだ。



ともあれ大晦日の夜、11時過ぎ、
忽然と年間の目標尺5匹が達成出来たのである。



海よ、今年もよろしく。




ロッド:ブリーデンGRF-TR93 "PE Special"
リール;ダイワ セルテートフィネスカスタム2506+ダブルハンドル
ライン;ラパラ PEマルチゲーム0.6号 リーダー フロロカーボン3号
飛ばしウキ:スーパーボール12グラム リーダー フロロカーボン2.5号1メートル前後
ワーム:ガルプ サンドワーム2インチ、ベビィサーディン、 「クリーム」
ジグヘッド;尺ヘッドRタイプ1グラム


【お知らせ】

本文にも登場するつーさんは身内のごとき親しい友人であるが、釣りの師匠でもある。
彼に出会わなかったら釣りという極めて愉快かつ豊饒な世界を知らずに生きていることだろう。
その彼が昨年、釣りのメジャー雑誌「イカプラス」にデビューしたことはすでにブログに紹介した。
今回はイカプラスの増刊号「東海・北陸のライトゲーム」にメバリングの記事を書いている。
彼の本領はやはりメバルである。
凪をメバル日和というが、日本海のデカメバルは波の立つところで釣れる。
タイトルは「波を釣る」。荒れた海、フロートリグでの釣り方を彼の繊細な感覚と幾多の経験から導き出される洞察で分かり易く書いてくれている。(3ページカラー)
北陸の荒海でデカメバルを狙う熱き貴方に是非手に取ってもらいたい。
貴方の釣りに新しき何かを提供してくれること請け合いだ。よろしくです!!





輪島エギングバトル・ダービー顛末記

2011-11-01 | アオリイカ
さて、その後ダービー後半戦の顛末である。

仕事も煮詰まっていたが、ダービーの決着のこともある。
ガキじゃあるまいし、釣りなど置いて、仕事に専念しなければ、と思わぬではなかったが
しかし、バカたれと言われようが、アホといわれようが、ガキといわれようが、ダービー後半戦を迎え、ここで釣りを置くことは出来なかった。
もうとことんやってみるしかなかった。

と、まず訳の分からない言い訳をしておく。

でだ、昼はうんうんと仕事に向かい、釣りは夜出かける事にした。


10月13日の釣りで26センチ850gと22センチ550gが出てエギングダービーの暫定トップに立った。
3匹の合計は1806g。そんなものすぐに抜かれるだろうとは思ったが、
今シーズンは全体的にイカのサイズが小さいらしくそれくらいの重量でも2位に随分の水を開けていた。

その後は海も大荒れとなり、仕事のこともあって暫く釣りに出かけなった。

18日夜。少し収まったというので出かけて見た。
収まったといっても2メートルの波。そのせいかアタリ一つなかった。

19日夜、さらに波が収まったようだったので行ってみたが、前夜と同じくサッパリアタリがない。海にイカの存在感がなかった。
イカ釣りで坊主というのは滅多にない事だが、それが2日連ちゃん続くなんて!!・・・・・

この二晩は釣り場で輪島のイカ釣り猛者エギンガーさんと偶然出会ったが、彼も全くアタリがないというから先日来の大荒れでイカが大挙してどこかへ行っちまったのか?と本気で思ったほどだった。

この時、エギンガーさんからキロアップを上げた若者がいるとの話を聞いた。
でも、3匹の合計でかろうじて私がトップを維持しているらしかった。
キロアップを持っているのは強い。抜かれるのは時間の問題であろうが、
どちらにしても後一匹25センチクラスを出さなければ話にならないように思えた。

帰り道、道路の真ん中に何か違和感のある存在。
車を停めてバックし、車を降りて見てみると
なんと、毛ガニだった。それもでっかい。
近づくとハサミを精一杯広げて威嚇するのだが
その様はなんだかフレーフレーと私を励ましてくれているようで笑っちまった。




ともかく、海が収まるのを待つしかなかった。

22日、海はやっと凪ぎに近い状態になった。
このところ目指すポイントはどうやらメジャーポイントらしく、いつも先客が入っている。
日が暮れるまでまだ時間があったが、この日も先客が二人いた。
一番の釣り座は塞がっているので、隣の岩に乗りキャストを始めた。

さて、イカはいなくなったのかどうか?
それが気になったが数投目に18センチが乗った。
久しぶりのイカの手応えだった。
どうやら、イカたちはどこかへ行ったわけではないようだ。
とすれば、荒れが原因だったか。何となくホッとする。



その後も20センチサイズがぼちぼちと出て、そのうち22センチも出た。



こいつは計量済みの20.5㎝と入れ替えることができるサイズだが、
狙らうのはあくまでも25センチクラス。

しかし、その後、同じ調子でぼつぼつ来るものの、それを越えるようなサイズはついに出なかった。


明くる朝、塩谷で計量してもらうと1936gと少しアップし、まだかろうじて暫定トップを維持していたが、話に聞いていたキロアップを上げた若者がすぐ後ろに迫って来ていた。



なんでも、計量してくれた若旦那が言うにはこの時点で500g以上は4匹しか出ていないのだとか。
4匹というのは若者のキロアップと私の3匹である。

ふむ、そんな状況なのか、と多少驚いたが、
私としてはとにかく25センチクラスを後一匹釣りたいという思いだけがあった。



それから一週間後の28日。
最後の勝負を賭けるつもりで出かけた。

夕方早めに出かけたのだが、その日も3人の先客があり、主な釣り座は既に塞がっていた。

仕方ないので、彼等と離れた岩を見つけそこでキャストを始める。
あまり釣れないのだろう、普段、誰も乗らない岩である。

だが数投後、乗った。18センチ。
まんざら釣れない事もないらしい。



暫くして、先客の一人が帰り支度を始めたのでさっそくその釣り座に移動する。
どう考えてもそちらの釣り座の方が有利なのだ。
先客は上品な初老のおじさんで、午後になって来たが暗くなる前に帰るのだという。
手には数杯イカの入ったナイロン袋を下げていた。穏やかな笑顔のおじさんだった。

そこで一時間やっただろうか、辺りがすっかり暗くなってから残りの二人も帰り支度を始めたので再度、その釣り座に移動する。
潮の流れからしてやはりその釣り座がこのポイントのナンバーワンなのだ。

二人のうちの一人が私を見るなり
「ゴロスケさんでしょう。」と言う。
あらら、久しぶり。輪島の名人として知られる名物釣り師のおじさんだった。
暫く、岩の上で釣り談義が盛り上がった。ホントに釣りが好きなおじさんである。
昼過ぎからやっているがあまり釣れない、デカイのはさっぱりだ、とにこやかに笑うのであるが見せてくれたクーラーボックスには相当数のイカが入っていた。
流石である。

さて、誰もいなくなった海、そこからが本番だった。
海は凪ぎ、追い風である。状況は上々であった。

釣り始めからぼつぼつと20センチクラスが出ていい感じ。



そのうち、一際重いやつがヒット。
心は弾んだが、測ってみると手応えの割には小さく22センチ。



その後も掛かりはするものの、赤イカだったり、20センチ弱が続き、次第にアタリが遠のいていった。




結局、また22センチ。なかなかそれを越えてくれない。

帰ってから私の秤で22センチを測ってみると550gだったので、前回の22センチより僅か12g重かった。
僅か12gと思ったが、されど12gである。
たった12gのためにわざわざ20キロ走って輪島まで計量に行くか?
行くんである。
その後のダービーの経過なども知りたかった。

翌朝、塩谷釣具へ出向き計量してもらうと前夜の22センチは552gで14gアップの1950gとなったが、予想通り、暫定2位になっていた。
暫定トップは勿論キロアップを持っているお兄さんである。
(この時の順位表の写真を是非アップしたかったがデジカメを忘れてしまった。)

トップとの差はおよそ90g。
逆転するには650gを一匹釣ればいいわけである。
650gといえば恐らく23~4センチだろうな。

残す日にちはその日も入れて後3日だった。
昨夜が勝負を賭けた最後の日のつもりだったが
ここはすんなり引き下がるわけにはいかない。



その日29日の夕方、一発逆転を狙った。

日曜なので、先客がいる事は覚悟していたが、予想外に二人だけだった。
ナンバーワンの岩に二人乗っているが、隣のナンバーツーの岩は空いていた。
その岩に向かって崖づたいに降りていると、先客の二人が竿を収め帰り始めたではないか。
その彼等とすれ違う。

「釣れましたか?」と訊いてみると、
「昼過ぎからやってましたが、駄目ですね。」と笑う。
物腰の柔らかい中年の二人だったが、彼等がやっていたのはイカ釣りではなくクロダイだった。
「イカなら釣れるかも分かりませんね。頑張ってください。」と去って行った。

幸運だった。
少なくとも半日はそのポイントで誰もイカ釣りをやっていないのだ。

釣り座に立った。
土曜日の夕方、波は1メートル弱、追い風、という状況でこのポイントに誰もいないというのは奇跡に近い出来事に思えた。

確かにこのところ数は出なくなった。成長したイカは警戒心が強く、簡単には掛かってくれない。気分のいい日中の釣りは難しくなっている。
しかし、だからこそ釣りとしては面白い。
根掛かり覚悟で底を取り、微妙なアタリを感知しやり取りする。
数は出ないが掛かればデカく、その引きと手応えこそがイカ釣りなんである。



まさに陽は水平線に落ちんとし、波はザワザワと囁き合い、潮もゆっくりと動いていた。
なんだか胸騒ぎがするではないか。
こんな時はチャンスなんである。
一発逆転には23センチ、650g以上の大物だが、
目の前の海にそやつの存在をリアルに想像出来た。

先ずは正面にフルキャストする。
エギが沈むのを待つ。潮が動いているせいか3.5号エギはカウント55~60で着底する。
まずは大きく鋭く二段しゃくり、続けてパンパンパンと小さくダートさせ、またフォール、着底を確認し、イカの存在を探り、イカがいないようならまたしゃくる。

根掛かり覚悟の底べたの釣りである。
私の場合、夜、底ベタを狙う場合、エギの動きは少ない方がいいと考えている。フォール中に抱かせるというより、底でちょこちょこ小さく動かしイカを誘うのである。だからなるべくダート幅の少ないエギを使う。

エギを底で小さく動かしながらイカの存在を探る。
もわっと重くなったり、そうっと引っぱったり、反対にテンションが抜けたりするとアタリである。
しかし、これは藻の上に乗ったエギが藻の揺らぎに引っぱられることもあるわけで、アタリと思って合わせると、ロッドに乗った重さがイカであるか根掛かりであるか、当るも八卦、当らぬも八卦という、きわどい釣りなのである。
イカが触っているのが分かることもあるが、イカか藻かの微妙な感覚の違いは今のところ私には明確には分からない。

私はPE0.8号にフロロカーボン3号のリーダーをつけているが、根掛かっても、藻の触り始めに回収すればまずは藻を切って回収出来る。
しかし、5~6時間やるのであればエギの一つや二つはロストする覚悟はしておかねばならない。

勿論、このやり方は底に藻がびっしり繁茂している状況では難しい。
そんな時は、藻の少し上で勝負するしかない。
やはりエギのロストは少ないに限る。


とまれ、2~3投目、乗った。
藻の塊が底から剥がれ上がって来るという重さだった。
でも藻ではない。躍動する生体反応が伝わって来る。
重かったが玉網を使うまでもないサイズ、
上げてみると22センチ、500gはあるだろう。



最初からこのサイズである。
自ずと期待に胸は膨らんだ。


で、その直後だった。

遠くからエギを寄せて来て真ん中あたりの底、
ここがこのポイントのホットスポットのように思われるその地点、
着底後、ちょっと間を置いてクンと軽く合わせてみると、
クンと重さが乗った。
ロッドをゆっくり煽って引き寄せると、もわーっと重さが着いて来る。
こいつも藻ではなかった。

そして、いきなりロケット噴射の嵐である。
強烈だった。
堅く締めているドラグが噴射の度にジーッ、ジーッ!!と出る。
激しくロッドがお辞儀を繰り返し、リールを巻くどころではなかった。
勿論、こんな引きは今季初めてのこと。

強烈な引きをロッドでいなし、余裕ができるとリールを巻いて少しづつ寄せて来る。

やがて海面に浮き上がったそやつはデカかった!!
淡黄色の巨体が波間をゆらゆらと近づいて来る。
そして、勢いよく暗い空中に水を噴射する。太く高く上がる水柱。

そやつが今季最大の26センチ850gを越えているのは一目瞭然だった。
これなら逆転できる!!
よし!!


近くまで寄せて用意しておいた玉網を入れたが
イカが重過ぎてロッドを持つ右手だけで寄せきれない。

一旦玉網を置いて、リールを巻き両手で更に足元まで寄せ
再び玉網を入れる。

なんとかイカの全身が玉網に入った!!
して、玉網を抜き上げようとしたその時、
波が押し寄せ、玉網にかぶった。

と、その拍子に、あら!!!
入った筈のイカが玉網の外へ。
エギは玉網に絡んだまま。

イカは黄色い巨体を翻し、悠々とあざ笑うように海面を遠ざかって行くではないか。

腰が抜けちまった・・・・

ほんと。

頭真っ白け。


この喪失感は
もう少しでものに出来そうな彼女に土壇場で逃げられたのに似ている。

イカが遠ざかって行くと同時に「優勝」も遠ざかって行ったのだ。


その後、12時まで粘ってみたが、気もそぞろ、
それでもと、気を入れ直しやってみるが
二度と再びデカイのは出なかった。




千載一遇のチャンスは逃すと二度と来ないのだ。

逃がした獲物はデカイというが、
あのあざ笑うように遠ざかる淡黄色の魚体は生涯忘れることができぬほど鮮烈な映像となって我が脳裏に焼き付いたのだ。

ダービー締め切りまであと2日あるが、

私の勝負はこれで終わったのだと思った。




だがしかし、明くる日30日の夕方、
雨が降っていたが、やはり出かけたのである。

ここまでくれば、結果はどうあろうと、最後までやるんである。
雨が降ろうと槍が降ろうと
ここで諦めたら男が廃るんである。


最終日の明日31日は風雨がさらに強くなり海が荒れるらしく、その夜がホントの最終日となった。


ポイントは同じ磯。
この日は雨が降っていたせいだろう、先客はいなかった。

空は雨雲に覆われ、昨日まで煌煌と輝いていた星々に代わって水平線には点々と漁船のライトが灯り、微かに凪いだ海面を照らし出していた。
戦いの終わりにふさわしい静かな海だった。

凪ぎは釣れにくいものだが、それでも底を拾うようにぼつぼつと掛かった。

何杯目かにひとつ重いやつが乗り、ひょっとしたらと期待するが
またしても22センチだった。(家に帰って測ってみると500g。)



そのうちイカ釣り師エギンガーさんが釣り友山口さんとやって来て3人での釣りとなった。
彼等もその夜に最後の勝負を賭けていた。

釣り友と一緒になんやかんやと言いながら釣りをするのも楽しいものである。
エギンガーさんのような熟達だと何気ない会話の中に学ぶべきものが多くある。

エギンガーさんが何杯か釣り上げ、山口さんも500gサイズを釣り上げた。
私は何故かアカイカばかりが掛かった。



10時頃になると、アタリは途絶え釣れる気配がなくなった。
粘りが信条の私だが、それ以上粘る気はなかった。

もう十分だった。

エギングバトルの最終結果は分からないが
ともあれ逆転優勝はならなかった。

しかし、目一杯、心の底から楽しかった。

エギンガーさんたちも今年は駄目だったようだが
それなりに面白かったといい顔で笑ってみせた。



海で力の限り遊んだ男たちの顔は輝いているんであった。


今回のイカ釣りで少なからず釣り師たちに出会ったが、
彼等の多くは若者ではなく、おじさんたちであった。
おじさんたちが子供のように夢中になって海と遊んでいる。
その姿は共感出来るものがあり嬉しいものであった。


これで私のイカシーズンは終わった。
最後に元気なイカの写真を一枚。
釣り上げた直後、水を吹き上げる瞬間である。
釣って楽しく、食ってうまかったイカたちに
心からの感謝を込めて。




お月さんとイカ釣りダービー

2011-10-15 | アオリイカ
昨年、輪島エギングダービーにエントリーし、中盤までは盛り上がったが展覧会で尻切れとんぼに終わっちまった。

今年も一応エントリーしたが、まだ一度も計量に行っていなかった。
計量の意味あるサイズが釣れていないのだ。

ダービーの締め切りは今月一杯、そろそろ計量しとかないとなあ、という思いがあった。

加えて、その日13日はまだかろうじて満月だった。予報は晴れ、風も悪くなった。
私はまんまるお月さんと釣りをするのが基本的に好きである。
翌日の午後からは天気は崩れ夜には雨になるという。

となれば、いざ!!出陣なのである。
満月のイカ釣りはなにがなんでも行かずばならぬ。のである。

夕刻、先ずは昨年のダービー、徹夜で頑張り27センチを上げたポイントに行ってみるが、既に先客が3人もいた。
その一人は毎年上位に居座るエギンガーさんであり、後の二人もダービーに参加している人に違いなかった。

諦めた。

移動する。
一度も行ったことがないが、以前から気になっている磯へ。
緩いカーブを描く湾の磯、岬のちょっと突き出た岩へ向かったが、生憎ここも先客が一人いた。
挨拶をし、邪魔にならぬよう隣の岩に乗った。
「釣れますか?」と訊いてみると
「一匹釣れたけど、その後一時間釣れません。」と大らかな笑顔で応えてくれる。
正直な人である。

いつも通り3.5号エギを正面の海にフルキャストする。
右後方からの追い風に乗ってよく飛ぶ。
潮が良く動くところらしく右前方に沖に向かって軽く潮目が出来ていた。

凪ぎに近い波、追い風で底に達するまでのカウントは45。
水深は10メートル強。
悪くない。

空は快晴、少し欠けた満月が右の山の端から顔を出し、磯を煌煌と照らしライトが要らないくらいだった。
イメージ通りの満月の釣りであり心は弾んだ。




釣れないというがタイミングが悪いだけだろう。

案の定、2投目足元の底で乗って来た。
足元だから小さいやつかと思いきや、そうではなかった。
胴長22センチ。今季最大である。



いや驚いた。
遠くから追っかけて来たやつに違いない。

その後もぼつり、ぼつりと掛かった。
数は出ないがサイズが揃っていた。
みんな20センチに少し足りないサイズ。
今年は全体的に小さく、20センチ弱は他のところではその日の最大サイズなのだ。




そのうち、先客はライントラブルでどうにもならない、頑張ってくれと言い残し帰っていった。
ならば、と彼の釣り座に移動する。
やはりそこがこのポイントでの一番の釣り座だった。どの方向へもキャスト出来るし、高さ、足場の安定感は理想的だった。

いつの間にか水平線にはイカ釣り舟の灯りが点々と並んでいた。
目の前の海を見ていると、なんだかデカイのが来そうな予感があった。

そして、数投後、予感は的中した。

中程の距離、底だった。
ラインのテンションが微妙に重くなり、少し待ってみると案の定そうっと引っぱるではないか。
少しラインを送ってやり、間を置いてクンと合わせるとカンナがしっかりとイカに食い込み、ロッドに重さが乗った。
いやその重さったらなかった。ロッドが激しくお辞儀を繰り返し、リールが自由に巻けなかった。

でかいぞ!!
バレないように慎重に事を進める。イカの強烈なジェット噴射をロッドでいなしながらゆっくりと寄せて来る。
水面に浮上したそやつは何度も水を噴射した。
いやあ、いい光景。

足元まで引き寄せ抜き上げにかかるが、ちょっと心配になった。
しかし、玉網を持って来ていない。
小さめのスズキを抜き上げる要領だ。
ロッドのしなりを利用して一気に抜き上げ、ロッドに全重量が掛かる前に磯の上に引き上げた。
なんとかうまくいった。




25センチを越える堂々としたアオリイカだった。
20センチクラスとは次元の違う大きさである。

いや、一人でコーフンしちまったぜ。
ここに来て正解だったとつくづく思った。

これで22センチと25センチになった。
ダービーは三匹の合計である。
後一匹20センチオーバーが欲しかった。

時間はまだ、たっぷりとあった。


しかし、その一匹が来なかった。

ぼつり、ぼつりとは来るものの20センチを越えない。

時折、アカイカ(マイカ)も来た。





つーさんのイカプラスの記事に刺激されて、時折潮目あたりの表層も狙ってみるが掛からない。
そういえば表層で掛かるのは荒れている時だったような記憶がある。

12時までには余裕を持って帰れると思っていたがそうはいかなかった。

粘るうちに12時は過ぎ、過ぎるとアタリは全く途絶えてしまった。

帰ろうかと思った。
3匹目は18センチでもいいではないか、そのうちデカイのが釣れたら交換すればいいのだから。
だが、一度帰って、計量のために再び輪島に出て来るのは面倒に思えた。
我が家は輪島市街地から20キロ離れた山の中なんである。
このままのんびり朝までやって、早一番、塩谷釣具で計量してもらおう、そう思った。

そのうち眠くなって来た。
だらだらとキャストとシャクリを繰り返していても釣れる訳がない。

岩の上で寝ることにした。
風が当たらないようくぼみを探し身体を横たえる。
フードを被れば思いのほか寒くはなかった。

少しかけた満月がそんな私を見て笑っている。
月に寄り添うように金星が輝き、西の低いところにはオリオン座が傾いていた。


一時間も眠っただろうか、目が覚めるとスッキリとして再び釣り座に立った。
海は完全に凪ぎ、風も緩くなっていた。
気分新たにキャスト再開。

一投目にヒットしたが手応えが可笑しかった。
生体反応がなく藻の塊を引いているようだったが
足元まで来て突然激しく慌てるようにジェット噴射を始めたのである。
ははんと思った。
こいつ、足元まで来て初めて釣られたことに気がついたんだ。

で、このへんなやつ、20センチを僅かに越えていた。



しかし、へんなやつはこいつだけではなかった。
その後、小さいのが数匹釣れたが
みんなそのようなぼんやりとした活気のない反応であった。

要するに、イカたちは眠っていたのだ。
これじゃあ釣れる訳がない。

ここは12時を過ぎるとイカたちの就寝時間なのだ。
そう思うと俄然やる気がなくなりもう一度岩の上で寝てしまった。

目が覚めると朝だった。
朝まづめに期待してみたが、イカたちはまだ寝ているようで早々に切り上げ塩谷釣具へ。

計量の結果、26センチは850g。あと22センチと20センチ、三匹の合計は1806gとなり
いきなり暫定トップに躍り出たのであった。
うっひゃ~~、トップ。

自慢ではないが、私はこれまでの人生で優勝とかトップとかの経験が皆無である。
学校の成績でも運動会でも何かのコンテストでも大したことはなかった。(体育実技と美術だけはまあまあだったが。)
暫定であっても、トップという言葉の響きは新鮮で嬉しい。

しかし、すぐに抜かれるだろうな。

25センチクラスがあと一匹釣れれば上位入賞、2匹だと本当に優勝するかも。

ダービーの締め切りは後2週間。
輪島の熱き釣り師たちのように毎朝、毎晩とはいかない。
しかしだ、ここは静かに狙ってみるか。

人生初の「優勝」を。





計測の三杯。


釣りに出かける理由。

2011-10-11 | アオリイカ
釣りに出かけるにいろいろと理由がある。

私の場合、釣りはブログのタイトル通り、私が直球で幸せになれる行為だが、だからといって毎日釣りをしている訳じゃない。
釣りに出かけるには何かの動機と契機がある。

その日、連れ合いのパート仲間の女の子が泊まりに来ることになった。彼女は最近離婚し、近々金沢に引っ越してやり直すのだという。
引っ越す前に連れ合いと是非話がしたかったらしい。
女同士の積る話もあるのだろうと、その夜私は釣りに出た。

イカ釣りシーズン後半はイカも成長し深場へと移り、夜釣りが主流になるが
この時期、まだ夜釣りには早かった。

しかし、ぼつぼつ来た。





サイズも少し上がって来たようだ。


日中の釣りと違って夜釣りはラインを伝わって来る微妙な魚信が頼りとなる。
視覚的な情報が少ないので、かえってイカとのやり取りに集中できる。

基本的には底を狙う。まず深さを測る。カウントしてどのくらいで底に到達するか。
同じ深さでも風や波、潮流に寄って落ちるスピードは違う。
だからその時、その時のカウントがある。

その夜はカウント40で底に着いた。
カウント35で鋭い2段シャクリやタンタンタンと振り幅の小さいジグザグダートでエギを動かし、またフォールさせる。そしてまたエギを動かす。
エギを鋭く動かすことと、シャクリのパターンを作らないこと、また夜の場合はエギを小さく動かすことが肝心かと思われる。
そして底の少し上あたりの位置を保つ。

フォール時、ラインには常に軽いテンションを掛けているが、そのテンションに違和感を察知したら、それがアタリである。
もわっと重くなったり、急に軽くなったり、突然引ったくったり、また、そうっと引っぱるような感触。

私はそうっと引っぱるようなアタリが好きである。
その時はラインを少し出してやり、ワンテンポ置いて合わせる。
するとぐっと重さが乗る。してグイグイ引っぱる。
こいつが楽しい。

違和感を感じても乗らない時がある。その時はエギの周囲にイカたちがいることをしっかりイメージして誘ってみる。エギをあまり移動させず鋭く動かして待つ。それを繰り返す。
それでも乗らない時はエギを追っかけて来ていることが多いので、足元まで気を抜かないことだ。

底でアタリがなければ、表層も狙ってみる。
水深3メートルくらいのレンジ。
時折、このレンジで入れ乗りすることがある。

しかし、この夜は表層はサッパリだった。

ベタ底でなんとかぼつぼつである。





曇り空で月もなくただ暗い海だった。
目の前に広がる闇と波のざわめき、そして我がロッドが空を切る音だけだった。

連れ合いの同僚はほんわかとした空気の可愛い女性である。
離婚は旦那の浮気が原因らしい。
結婚して4年目だという。
2年悩んだ挙げ句、別れることを決意したのだとか。

まあ生きていればいろんなことがある。
いいことも悪いことも。
そしてまた、いいことも悪いことも二つ続かない。

離婚は若い彼女にとって一大事だったに違いないが、なんてことはない。
今の世、掃いて捨てるほどある。
そのうちいい男と出会いまた結婚すればいい。
故河合隼雄氏も理想の結婚は二回目の結婚だといっているではないか。
美味いイカ食って新たな出発だ。

と、・・・・掛かった!!



うっは!!マイカ。

この夜の釣果は20センチ弱が15杯。

翌日、彼女はシャキシャキのイカ刺しをたらふく平らげ、でかいお椀のご飯もお代わりし、
いい顔で帰って行ったのだった。





その2日後、横浜で暮らしている娘たんぽぽが幼馴染みの結婚式で帰って来た。
久しぶりに帰って来た彼女に何が食いたい?と訊くと
「イカ刺し食べたい。」と言う。

誰かに美味い魚を食わせたい、というのは私の釣りに出かける大きい動機である。
してそんな時は多くの場合、釣れるんである。
いや、釣れるまで帰らないのかも。

彼女が食べるに5杯もあったら十分だろうとタカをくくり
軽い気持ちで昼前に出かけたのだが、これが甘かった。

先日40杯釣れたポイントであるが、
釣り始めに20センチが釣れ



いい調子だと思いきや、
その後、サッパリ釣れない。

ここは確実に釣れるポイントだと確信していたが、
このポイントでも昼を過ぎると駄目らしい。
風も悪かった。
右からの強い横風。

しかし、テトラ帯の中程でやっている人には時々釣れているようだった。
いないわけではないが、私の守備範囲ではなかった。
私の釣り座はいつも通りテトラ帯の先端なのである。

だからといってテトラ帯の中程の、その釣り師の隣に移動する気にはならない。
しかし5匹は釣りたい。
とうとういても立ってもいられず、テトラ帯の根元に移動した。
ここは浅いが目の前に潮目があり、あぶくの帯ができている。
そのあぶく帯を狙ってみようと思ったのだ。

がしかし、ここもサッパリである。
なんだかな、どこかタイミングがズレている。
釣りは追っかけてはイケナイ。というのが持論である。
まあ人生も同じだな。
うまくいっている人の真似をしたり追っかけても駄目である。自分なりのやり方で生きる。

気持ちを落ち着け、先端の釣り座に戻った。
ここは潮の流れもあり深くていいところなのだ。ここでじっくりでかいのを狙おう。
改めて目の前の海と対峙する。
海と自分と。それだけの世界。

沖に向かって風上の正面、低い弾道でキャストする。
3.5号のエギは案外飛んで釣りになる距離に着水する。
カウント50、ベタ底を狙ってみる。

掛かった。

案外の重さ、20センチだった。



その後もぼつぼつと掛かり始めた。




いつの間にか隣の釣り座に若いカップルが登場していた。
なんだか楽しそうにやっている。
彼女と釣りに出かける。それほど楽しいことがあろうか。

ぎっちょの彼氏のキャストが独特で面白く、イカ釣りに慣れた様子で時折イカを引き寄せていた。
なんでも毎週末金沢からここにやって来てイカ釣りをやっている二人なんだそうだ。
道理でここのテトラを知り尽くしている感じだったし、的確な釣りであった。



この日は土曜であったが、いつになく道路には車が多く走っているし、ざわついた雰囲気があった。
珍しい車の渋滞を見て「明日はダイワ主催のイカ釣り大会が輪島で開催されるので、ポイントの下見にやって来てるんです。」と彼が言う。
毎年この時期に行われる大会で金沢富山から釣り師が250人程度参加するらしいが、なんと彼は昨年のチャンピオンで彼女は3位だったのだとか。
勿論、明日の大会にもエントリーし、連覇を狙っているのだそうだ。

彼は18センチが釣れてもリリースし
「こんなんじゃ優勝出来ませんね」と笑うのであった。
で、そんな彼氏を嬉しそうに見守る彼女なんである。
ナイスカップル、いいね、このやろー!!

そうこうしているうちに周囲は薄暗くなり、二人は爽やかな印象を残し姿を消したのだった。
名前はフクシマさんというらしい。またどこかで会えるだろう。

で、私。
この時点で既に5杯はクリアしていたが、なかなか帰れなかった。
この一投で帰ろうと思うと掛かり、
また最後の一投で掛かるんである。

で、最後の最後でまた掛かる。
そいつは根を引き剥がすような重さがあり、引きもこれまでになく強かった。バレるなよと慎重に引き寄せ、よいしょと抜き上げる。
思ったほどの大きさではなかったが、それでも今季の最大であった。


21センチ。

で、泣いても笑ってもこの一投で
またこいつが掛かり、これで終わりにしたのだった。



マイカ。


釣果は結局20杯。

釣れたとは言えないが、目一杯の釣りだった。


言うまでもなく、たんぽぽは美味い!!美味い!!の連発でイカ刺しを貪り食ったのだった。
まず横浜ではこんなプリプリのイカは食えないのだ。







ところで、福井のおみつさんからメールが届いた。おみつさんはつーさんの嫁さんである。
今年の12月、彼女のギャラリー・ゲッコウカフェで展覧会をすることになっている。
メールの最後にはこう書いてあった。

「釣りもいいけど版画もね!」

うっひゃ~~!!






【お知らせ】

師匠つーさんが釣り雑誌にデビューした。
つーさんは釣り師としてすでに北陸周辺では知られた存在だが、釣りだけでなく文学や哲学にも造詣が深く、いい文章を書く。
そのことは彼のブログ「星空キャスティング」に明らかだ。(ブックマーク参照)

その彼が雑誌に記事を書くというのはまさに水を得た魚のごとくなんである。
雑誌の名は「イカプラス」。東海・北陸のイカ釣り情報満載の釣り雑誌売れ行きナンバーワンのメジャー雑誌である。
今回の記事はアオリイカ釣りについて。特に秋のイカ釣りシーズン後半の釣り方として常識となっている底をとるやり方をひっくり返し、表層を狙うという提案が目を引く。
彼の釣りの素晴らしさは常識をしっかりと踏襲しながら、それに固執しない視野の広さと柔らかい感性で独自のテクニックを開いていくところにあるが、イカ釣りでも惜しみなくそのテクニックが披露されているわけだ。

このブログに立ち寄った貴方に是非、手に取っていただきたい。貴方の釣りにとって何か光るものを手に出来ること請け合いである。

12月には彼の真骨頂デカメバル釣りの世界がさらに大きい紙面で展開される予定だ。
楽しみに。

















イカの海

2011-10-06 | アオリイカ
10月4日、朝早くからぷらりと出かけた。

昨夜の雨が少し残ってはいたが、西の空は明るかった。

予定のポイントは風が悪く波が強過ぎた。潮も濁っている。
二投して諦め、移動する。

海沿いの道を走りながらこの状況で釣りが出来そうなポイントを探した。

能登外浦の、とあるテトラ。

ここも荒れ気味だったが、湾なので最初のポイントほどではなかった。
1~1.5メートルの波というところ。
時折やって来る大きなうねりがテトラにぶち当り、飛沫がかかる程度。
風はうまい具合に追い風であった。

先客は二人いたが、うまいぐあいに先端の釣り座は空いていた。
釣り座は宙空に斜めに突き出したテトラなので慎重な人は行かないのだろうな。


少し濁りがあるのでオレンジカラー3.5号エギを正面にフルキャスト。風に乗ってよく飛び、遠くのうねっている波に着水する。
この海悪くない。なんだか活気がありワクワクするものがあった。

ボトムの少し上、深層を狙う。
およそ30数えて二段しゃくり。そして適当に軽い連続ダート。フォール。またしゃくる。
その繰り返し。決まったパターンはない。
ただ深層をキープすることだけを心がける。

入れ食いとはいかないものの、釣りはじめからいい調子で釣れ続けた。
続けて掛かったかと思えば暫く間があき、また釣れる、という調子。








頭の中でカウントしてはしゃくり、またしゃくる。
そのうちカウントしなくても身体がリズムを覚えやっている。





まんべんなく掛かるのだが、みんな15センチ前後。20センチを超えるやつが来ない。

今年の特徴は釣れる場所と釣れない場所がハッキリしていること。全般に小さいが稀に予想だにしない大物が釣れたりもするということらしい。
どうやらこのポイント、ぴたりストライクのようだった。
こうなったら数にこだわってみようか。
食って美味いのはこのサイズなのだ。

目の前には美しい海。水平線は緩やかな弧を描き、そのうえに可愛い綿雲がたなびいている。何も考えることはない。この景色をただ見つめ、竿を振る。
身体の隅々に海と風と秋の陽光がしみ込むようだ。




イカの乗り方にはいろいろある。

まずはよくある、しゃくった瞬間ガツンと掛かるやつ。
これは掛けたのではなく、掛かったのだな。
下手すると身切れするので、大きく鋭くしゃくる時はタンと軽くしゃくっておいて大きくしゃくることにしている。



次に、フォール時、引ったくるように持って行くやつ。
こいつはなかなか乗せられないが、乗ったら触腕一本に掛かっている場合が多い。
だから、掛かった場合、そうっとゆっくりと引いて来る。



その次にフォール中、ぐっと重さが乗って来る時。
こいつはしっかりフッキングしている。



またフォール中、そうっと触っているのが分かる時。
やがてやつはエギを少し引っぱる。ラインを少し出してやり、ワンテンポ間を作って合わせるとぐっと重さが乗る。
これはしっかり掛けたのだ。この乗り方が一番楽しい。



エギが足元まで来ても、気を許してはいけない。
足元にいるやつは小さいやつが多いが、沖からエギを追っかけて来たやつもいる。
エギをギリギリ見えるところまで上げておいて、暫くその周りに大きいやつが追っかけて来ていないか確かめる。
そんなやつはエギが岸に近づくと慌てるように寄って来て抱きつくことが多い。




今回はラインに注視した。
日中などラインが見える時、ラインの動きでアタリをとる。
師匠つーさんの得意技だ。こいつを会得すると釣果が倍違うと彼は言うのだが、これがなかなかに会得し難し。
なにせ、波があり風があるのだ。寄せ波引き波でラインはふけたり引っぱられたり、風で膨らんでよく分からない。

しかしだ、じっと見ていると確かにそういったラインの動きとは違う動き方をするときがある。
違和感のあるフケ方、引っぱられ方、それがアタリである。
特に、フケる時、よく見ていないと見逃してしまうが、こいつはイカがしっかり抱きついているのでまずはバレない。
一二度そのアタリで掛けたが、それで掛けるとなんだか嬉しい。当り!!って感じだ。




イカたちは美しい。何度見ても見飽きない。形、模様、同じやつはいない。丸くてでっかい目。
釣り上げるとエンペラを前後にバタバタと動かし、そのうち水をブシューと噴く。思いっきりだ。
水ならいいが、墨も噴く。顔も衣服も現代アートだ。
ともあれイカたちは活き活きと躍動するんである。

嗚呼、なんと楽しいことか。


日が高くなるに釣れて風向きが変わって来た。右からの横風。
俄然釣りにくくなってきた。

釣れる間隔も長くなって来る。



しかし、粘る。
粘るのが私の得意技。




我慢をして粘るのではない。
気分がいいし楽しいから、知らず長くなる。


気がつくとベルトに付けていた小さなバッグが見当たらない。
何かやっているうちに外れ海に落ちたらしい。
道具を海に落とすのも私の得意技だ。
リーダーとハサミ、スナップが入っていた。
根掛かりでエギをロストし、どうすることもできず終わりにした。

日は頭上にあり、いい時間になっていた。
6時間はテトラの先っちょに立っていたことになる。
いい年こいて何やってんだ、と思うがしかたない。
海に出るとついこうなっちまうんである。


久しぶり、クーラーボックスはずんと重く、テトラを渡るのが危うかった。

大して釣れない日が多いが、

こんな日もある。





帰って数えたら40だった。最大は17センチ。