日本一周川下り

カヌーで全国一級河川を中心に川下りをした旅日記。
日本一周の楽しいやり方等、カヌーとは無関係に楽しめるでしょう。

 同 【2003年 7月22日】

2006-10-11 03:52:38 | Weblog

《阿武隈川》

番号 河川名 全長(km) スタート地 ゴール地 難易度
備  考
20 阿武隈川 239(内約11) 昭和大橋 五十沢の水門 超易 初心者がゆったりと楽しめる

 静かな朝、5時半に目が覚めた。静かだ。すぐ頭の上に、昭和大橋があるが、余り車が通らない。鳥の声も聞こえない。静か過ぎる!
 が、そこへ「ピーヒョロロロロロー」とトンビの声がした。あぁ、懐かしい、綺麗な声だなぁ。

 さあ、昨日、自転車を置いてきた五十沢の所へ下っていくのだ。
 ここは、阿武隈川の中流、桑折(こーり)町昭和大橋のすぐ下、朝食は帰ってから食べることにし、即、出発の準備。
 そこへ軽トラが近づいてくる。『今から出るんかね?』 『あぁ、昨日のお二人さん、お早いですね。魚ですか?』 『そう、今日は○○が上がらんかった。』 『それって、何ですか?』 『うなぎの仕掛け!』 『あぁ、うなぎね。それは残念でしたね。どうして?』 『水が多くて、上げられなかったんだよ!それ(カヌー)には水が増えてて良かったね。』 『そうですね、カヌーには水が多すぎても良くない場合があるけど、少ないのはもっと悪いですから、今日は一番良いかも知れません。この先の中州のある所の左側、渦を巻いてるでしょう。あれ、気持ちよさそうですね~』と、言うと二人は顔をみあわせた。渦だから、きっと危ないと思っているからだろう。『で、どこまで行くの?』 『イソ~?まで』 『五十沢ね、それよか、もっと下がよかんべ!』と、話がスムーズに進んだように、書いているけど、実は、若い方の人が通訳してくれて、ようやく理解できた次第。

 茨城県の中部までは言葉はきちんと聞き取れるが北部辺りから、少し聞き取りにくくなり、東北へ入ると急激に難しくなった。
 言葉もそうだが、スーパーに並んでいる食べ物もぐっと変わってくる。昨日のように、ほや・ほっき貝なんて瀬戸内では売っていない。乾麺類が激増し、納豆は種類も量も、断然多くなり、野菜も見たこと・聞いたことも無いものが見えるようになったので、人と話をするのも、スーパーへ行くのも非常に楽しい。

 10mほど水面より高く、斜めに草地と岩とが有り、そこを滑らせて水面へ降ろす。
 625:岸を蹴る。今日のコースは、下見の結果、大きな瀬もほとんど無く、どんどん流れているばかり、余り漕ぐことをしないで、川の流れに任せて、流されてみよう。
 話にあった、中州が近づき、左側へ入る。2本の幅広の瀬が合流し、大きな渦を巻いている。渦に入ると、波が無いから、静かにクル~、クルクル~と回され、流れに乗って、スーと渦から吐き出された。気持ち良い。下から湧き上がってくる水流もあり、複雑な水の動き、これが楽しい!
 川の流れに、まかせていると、周りの景色も良く見える。カラスが5羽川原に降りて、おしゃべりしていた。が、トンビが近くに来たら、二羽のカラスがそれを追い払う、暫く追っかけて、トンビが逃げ去ったら、元の所へ戻ってきた。面白い情景だ。
 また、カヌーの動きに驚いたのだろうか?それとも、何が来たのか見てやろう!と思ったのか、40cm位の魚がすぐ横を平行に飛び上がって、2m位前へ飛び込んだ。その目はこちらを「魚ろっ!」と、見ていたので、目線が合った。

 霧雨が降り、向かい風が出てきて、流れは時速5km位ありそうだが、風に押されて、半分しか進んでいない。また、流れまかせだと重心の性で、後ろ向きに進むので、前方を見るのが難しい。腹もこすらず、尻もつかず平穏無事の、全くの初心者にもってこいの、超のんびりコース。
 『あれ!見たことあるようなのが、浮いている。いや、浮いているのじゃなく、流れているようにゆっくり泳いでいる。亀だ。亀が頭だけ出して、泳いでいる、今まで、カヌーで川を下ってるけど、亀の泳いでいるの始めてだ。それも背中は見えないで、亀が頭だけ出しているなんて、亀の頭、亀の頭、亀頭だ。あっちの方が尖っているし、細いなぁ~。勝ってるぞ!

 最後の「柳川橋」を過ぎたので、後2km程、ボツボツ、ゴール地点を見逃さないように、気をつけながら、左岸へ寄っておく。この左岸の河川敷は桃の木がいっぱい植えてあり、土手の向こうの畑でも桃畑が多い、袋もかぶせてあり、収穫期のようだ、畑の中に無人販売もしている。この無人販売は、少し傷物で、6個100円となっていたので、昨日の下見の時、一箱買っておいた。
農家直販の無人売店
その下見の時、道が分からなくなり、農夫の人がいたので、道を尋ねたら、教えてくれながら、桃をもいで、差し出してくれた。驚いて、御礼を言うと、『傷ものだから、ほら、これも持って行きな!』と、計3個も戴いたのだ。

 ゴールが見えて、水路に入ると、丁度、そこで、一人のおんちゃんが、不思議そうに私のMTBをのぞき込むように見ていた。私が下から『おはようございます。そこへ、そんなものが置いてあるので、びっくりされたでしょう。』 『んだ、どうしたんだべ~、と思うた。さっき、土手から、あんたのそれ、見たよ!どっから来たべ?』 『昭和大橋から、』 『あぁ、こーりからか?』 『たくさんのりんごが浮いてますね、もったいないな~!』 『そりゃ、落ちたやつや間引いたの、川へ捨てたんだべ。』 『まあ、上がって、いっぱいやらんね!』と、缶ビールを差し出してくれた。『あっ、ありがとうございます。まあ、これを上に上げてから、いただきます。』5m位の高さまで引きずり上げ、『これから、どうするんだべ?』 『この自転車で車を取りに昭和大橋まで戻ります。』と、言って、ビールを戴こうとすると、『わしは飲めとは言わん。同罪だかんな!』と、先ほどの態度と一変し、念を押された。『自転車だから大丈夫です。』プシュー!そして、『朝ごはんまだ食べてないから、車の所で食べるから、ここまで帰ってくるのに、2時間くらい先ですね。』

 『わしは、ここで、網を仕掛けようと、ここの草刈ったり、準備してるんだ。わしは6年前、退職して、専業農家になり、柿や桃や米作っているんだ。ここで、鮎取るのが、わしの道楽よ。息子の上司などに送ってあげるのよ。米や果物は子供や孫に送るのよ。親は馬鹿だで~!子供4人育てて、剣道習わせて、4人で全部で20段あるよ!長男は県警の部長だから、飲酒運転の同罪になったら、大変なんだ。母ちゃんは今朝病院へ行って留守だよ、昼頃帰ってくるだ。通風が出たのでね。母ちゃんは地域の婦人部の役員を長く、やって、人の世話ばかりやってるよ。』等など、いっぱい話された『お父さんの写真撮らせていただけますか?』 『あぁ、でも、網作ってから、そこで撮ってくれよ!』 『じゃあ、まあ、先に、車取りに行きます。また、後ほど。』

 自転車での帰り道、間違って遠回りになってしまい。大分時間超過だが、朝食に昨日のお好み焼きの残りの半分と味噌汁で、「すもも」と「桃」を食後の果物に食べた。
 折り返し、カヌーを取りに戻る。今度は車ではあるが、最短の土手道を通って早く帰ることができた、が、彼は車と共に見えなくなっていた。が、四手網はもうきちんとできていた。カヌーを積み、次への出発準備を整えていると、車が入ってきた。彼だ、これで写真も撮れる。
完成した四手網と宍戸さん
 彼が車から下りてくるとき、ビニール袋を持って下りてきて、『これ持って行きな!』と、言って下さったものはどっさりの減塩梅干と、超どっさりのジャガイモだ。『えっ、こんなに沢山、うれしい~、丁度、ジャガイモなくなってたから、今日買うところだったんですよ。これはありがとうございます。助かりました。』また、暫く話をして、写真を撮らせていただき、ご住所をお聞きし、『いつか、電話か、FAXをおくれよ!』 『ハイ、必ず、』と言って、お別れをした。 お家の場所もお聞きしたけど、寄ればまた、ご迷惑をおかけすることになるので、ナビに従って、阿武隈川の川筋を下り、名取川に向けて、走った。

 宮城県に入り、名取川は名取市を通り、河口は仙台。新幹線の鉄橋の下を宿にしようと散策したが、水はけが非常に悪く、水溜りがあちこちにあり、乾いた所が無い。また、鉄橋やすぐ隣の橋からの樋があちこちにあり、泊地にむかない。100mほど上流へ行くとようやく何とか使えそうな場所が見つかり、そこの川原を泊地と決め、上陸地は新幹線の下、左岸。
 スタ-ト地点は何と、わずか3、9km上流で、2級の瀬のど真ん中、ほんの少しの淀みを使ってその瀬に突っ込まなければならない。この上流が通りにくそうなことと、そこより上は、すごく木が密集してて、道路もないし、下見もできない、また、この名取川は、女優の名取裕子さんのようにすごく可愛い川で、河口でも川幅300mほど、長さも非常に短い。

《名取川々原泊》

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