
暗い、さみしい、土のなか、
金魚はなにをみつめてる。
夏のお池の藻の花と、
揺れる光のまぼろしを。
静かな、静かな、土のなか、
金魚はなにをきいている。
そっと落ち葉の上をゆく、
夜のしぐれのあしおとを
冷たい、冷たい、土のなか、
金魚はなにをおもってる。
金魚屋の荷のなかにいた、
むかしの、むかしの、ともだちを。


今まで、私は何匹の金魚のお墓を作ったかわかりません。
一番記憶に残っているのは、父が30匹くらいの金魚を持ってきて(買ったのか・・もらったのかはわかりませんが・・)
たらいに金魚を放し、父は針金と和紙で金魚すくいをたくさん作ってくれました。
金魚すくいきちがいの私には、こんなうれしくてすばらしいことはありませんでした。
父は「好きなだけやりなさい・・」と、うれし顔でした。
お金も時間も気にしないで夢中になって、あきるまで金魚すくいを楽しみました。
そして、また明日やろうと庭にたらいをおいたままその夜は過ぎました。

朝起きて、庭に出てみるとたらいに金魚が赤白くなって、プカプカ全部死んで浮いていました。
びっくりして、声も出ませんでした。こころのなかでは、とんでもないことになった,
金魚を全部殺してしまった犯人のような気持ちになり、金魚に取り返しのつかない罪悪感を感じたものです。
そんな、誰でもが記憶にある「金魚のお墓をつくった」その後の心境の詩です。