「ユーゲント」第04号(1999年05月12日)
ドイツ語教室の教科通信
連休中の宿題と一緒に、最初のアンケートを送っていただきました。
裏まで沢山書いている人、ほとんど書いていない人、様々でした。このアンケートは記名式になっています。この点はいずれ話し合いましょう。私としては、対話の1つと考えています。
主な意見を紹介し、私の感想を添えます。
なぜ本大学に来ましたか。又、自分の学科を選んだ理由は何ですか
──親元を離れ、自分の力で生活がしたかったので県外の大学を選んだ。
★ 下宿をしてみたいという考えは、多くの大学生が持つようです。青年らしい健全な発想だと思います。しかし、特に女子の場合には、下宿は困るという家庭もあるようです。私自身は下宿をした経験はありません。
★ ミヒャエル・エンデを学びたいという人が2名いました。エンデはドイツでは日本ほどの人気ではないようですが、ドイツ語はとてもきれいだと思います。
★ センター試験に失敗して本学に来た、という人もいるようです。しかし、ここに来てよかったと思えるようにしましょう。少なくともドイツ語については。
★ 本学は宇宙工学が特色なのでしょうか。工学部の人達にはそれを希望する人が多いようです。
★ 静岡の温和な気候に憧れる人もかなりいるようですね。
★ 周りに遊ぶ所が少ないので、勉強するのに好いという意見もかなりありました。
どんな学生生活を送るつもりですか
──自分の様々な可能性をためし、多角的なものの見方を養いたいので、勉強のみならず、サークル活動、対人関係、できればセカンドスクールなど、出来る限り積極的に何にでも参加していくつもりです。
★ 自分を見つけるために、大いに暴れてください。
──自分の将来についてしっかりと考えて、高校時代から憧れていた職業につくために努力したい。また、サークル活動などを通して自分の視野を広げていきたい。
これまでに外国に行ったことがありますか。どこにどういう事でどの位の期間滞在しましたか。どんな感想を持ちましたか
──アメリカにいとこに会いに行った。田舎だったので、とてものんびりした雰囲気だった。また、人がみんな親切だった。
★ ドイツも田舎の小都市がとても素敵です。
──シンガポール観光1週間。いろんな民族がいておもしろい。
──修学旅行でカナダのバンクーバーへ5泊6日。とてもきれいだった。
──修学旅行でハワイに。食べ物から洋服からサイズが大きいので驚きました。こちらの意思を伝えるのは比較的楽ですが、相手の言っていることを理解するのに苦労しました。ヒアリングに力を入れなくてはと思っています。(同感)
──中学2年の時にアメリカのテネシー州に1ヵ月間、1人でホームステイをしました。そこで学んだのは、やはり言葉というものは自分で話そうとしないと伸びないということです。実際、たった1ヵ月のホームステイで驚くほど英語の力がつきました。
あと、テネシーの田舎の農家にステイしたのですが、アメリカといえば男女平等というイメージを持っていましたが、私のステイした家庭ではまるで昔の日本のようにお父さんが一番エライという感じでした。今の日本などよりずっと父親に威厳があったので、驚きました。
──カナダに3年間。むこうの人は、いい奴といやな奴とはっきりしていると思った。
──中学3年生の時、市の交換学生としてアメリカに2週間半いき、ホームステイしました。日本はとても治安がいいなと思いました。アメリカは自然がとてもきれいだった。
──サマーキャンプでアメリカ・メキシコに1週間。
──中学の時、学校の海外派遣でオーストラリアに1週間。4泊5日ホームステイしました。発音がイギリスとは違うのでびっくりしました。
──ツアーで中国に5泊6日。中国は日本に比べて遅れているが、みんな好い人ばかりで、温かい国民性だと思った。
──中学2年の時、友達と2人でドイツのフランクフルト近郊の家に2週間。前に見た学生牢も見たことがあります。フランスのパリにも3日間くらい。素晴らしかったです。また絶対に行く。
★ 2度目は油断しますから、泥棒にやられないように。
──2年前、タイに1週間の家族旅行。「異国の文化」というものを強く感じました。
★ 今では家族旅行で外国へという人も増えているようですね。
──外国に行ったことはないけれど、アメリカ人と何度か話したことがある。とても楽しかった。
★ この積極性を買う。ドイツ人の学生から聞いた話。ドイツ人の学生は外国語を習うと、それを母語とする人を見つけるとすぐに話そうとする、とのことでした。
──高校2年の時、ロスアンゼルスの親戚の所に2週間行った。英語を話せなくては全然ダメだと思った。
中学と高校での英語の授業の印象
──中学は楽しかった。なぜなら、英語だけでなく、アメリカやイギリスの文化や産業のこともやってくれたから、覚えやすかった。高校は受験英語で、グラマーは特につまらなくて大嫌いだった。でも、リーダーは文章を読むのでいろいろなことをまなべて、楽しかった。
★ 全体として、中学の英語の授業には工夫のある授業が多く、良い印象を持っている人が多いようでした。高校は一部の例外は除いて、つまらない授業が多いようです。大学の受験問題がヒアリング重視に変わってきているので、今後は少しは変わるかな?
このドイツ語の授業についての感想
──非常に展開が早いように思います。それだけに予習・復習がものをいう授業のようなので、これからが大変そうです。前回、学生寮に住む学生のビデオを見ましたが、興味深かったので、今後もドイツ語以外のビデオを見る機会を多くとっていただきたいと思います。
★ 今年から、休憩にドイツ語以外のビデオなどをも少し取り入れようかと考えています。あの学生寮には反発もあったようです。尚、授業のペースは生徒が少し早いと思うくらいがちょうど好いと思っています。付いていけないのではと不安の方もあるようですが、心配ありません。家では音読することです。慣れることです。
──先生は人に覚えさせるのがとてもうまいと思った。ただ、もうちょっと説明が欲しいです。
★ 私の授業に対する不満は毎年、ほとんど同じで、その1つが「もう少し説明を詳しく」です。原因は、私が説明は必要最小限にしようとしていること、そして何よりも生徒に音読で慣れるよりもまず頭で理解しよういう間違った考えがあること、にあると思っています。
中級文法に入ると詳しく説明しますが、初等では自然に解決します。現に「文法が分からないので、全く分からなかったが、今はなんとかなっている」という声もあります。
──日本語訳の答え合わせをもう少しゆっくりやって欲しい。
★ これは考えましょう。
──黒板の字をもう少し大きく書いてほしい。(考えましょう)
──先生が、ドイツ語は「教養科目として」学ぶと言ったのに深い違和感を感じた。戦時独語教育を引きずらないでほしい。
★ 意味が分かりません。次回、詳しく持論を展開して下さい。メールで送って下さっても結構です。
──文法よりも耳からドイツ語を覚えるという授業だと思った。
──ドイツ語を少し、話せるようになる気がします。
──青春を謳歌するのはドイツ語を勉強することだというのは、先生にとってそうであっても、僕にとってはそうではありません。
★ あなたにとって青春とは何ですか。否定だけでなく自説を出してくれなくては、対話になりません。
──赤ん坊も耳だけで日本語を覚えてしまうので、先生の授業は正しいが、1年間しかないので、きついものがある。
★ 大人が外国語を学ぶのは、子供が母語を学ぶのと、共通点と差異点とがあると思います。正しい組み合わせや如何に?
──1年間、ドイツ語づくしになりそうな予感。
★ 青春を謳歌しましょう。
──ドイツ語は英語より覚えづらい。
★ ドイツ語の方が規則性が高く、同じ努力で英語の場合の1、5倍の成果があると思います。
★ 再履修の方からは、「今までにない授業」とか、「新鮮な感じがする」という声もありました。
その他
──前回、ドイツ語とはあまり関係のないような話も聞けましたが、それを聞いて、もっと先生とお話をしてみたいと思いました。
★ 学校生活では、友達との付き合いも大切だと思いますが、先生との付き合いも意味があると思います。しかし、それをどこに求めたらよいのでしょうか。
ドイツの学校では Sprechstunde 〔面会時間〕という時間を個々の先生が設けています。その時に研究室に行けばよいのです。私は拙宅に泊まりにきて下さるのを歓迎します。
この連休も、かつて教えていた東洋大学の学生が社会人になって2年目ですが、ようやく休みを取って来てくれました。安城市にあるデンパークという花のテーマパークみたいな所に行きました。そこまでは大変だとすると、例えば水曜日の4時から一緒にビデオを見たりして話し合うとして、数人でも来てくださるでしょうか。
──ドイツ語を勉強するために大学に行く人は外大に行っていると思います。他のことにも力を入れたいので、もう少し考慮して下さい。
★ 生徒を上中下に分けるとすると、上の人に合わせて授業をするべきである、というのが私の考えです。才能とやる気のある人を最大限に伸ばすことが大学の目的だと思うこと、それによってこそ中の人も下の人も最もよく学べること、が理由です。自分の考えで授業を利用して下さい。
──緊張感があり、他の授業よりやりがいがある。
★ その他、「他の授業の生徒に差をつけることができそうだ」という意見もありました。本当は、皆さんを2年間受け持って、独検3級に合格させさせたいのです。東洋大学では1度、そうしました。
──先生は哲学が専門だそうなので、今度、先生の持っている考え方、人生観について、一度じっくりと聞いてみたいです。
★ 私の本はみな、図書館に寄贈してありますし、翻訳以外は読みやすいものです。まずそれを何冊か読んでみて下さい。
──ドイツ一人旅を実現するためにがんばるぞう!!
★ Viel Glueck! 成功を祈る
──高校の時、ベートーベンの第9を歌ってから、ドイツ語の力強さのようなものに興味を持ちました。
★ 私は音痴なので歌は歌いませんが、詩は取り上げたい。
──対話形式の練習の時、どの言葉がどちらの発言か分からないことがよくあるので、区分を分かりやすくして欲しいです。
★ どちらか分からないということは、どちらにしても意味が通るということだと思います。両方の場合を練習したらどうでしょうか。
──なんで「仏の牧野」と呼ばれているのか?
★ 3回の授業等でも既に十分にお分かりいただけると思います
が。
──イノシシはペットとして飼っているのか、食用なのか。
★ ペットにしては、畑の芋類などを勝手に食べすぎると思います。
──本学では、他大学との交流ないし接点が少ないのが残念だ。
★ 東京などの大学には「ニセ学生」というのがいて、余所の大学の授業に無断で出ています。
──フランス語を第1希望にしていましたが、今はドイツ語になってよかったと思っています。
★ Heil Deutsch ! 万歳! この言葉を聞きたかった!
ZUM SCHLUSS 〔終わりに〕
戦後民主主義の教科書として執筆された石坂洋次郎の小説『青い山脈』はこう始まっています。
六月の、ある、晴れた日曜日の午前であった。
駅前通りの丸十商店の店の中では、息子の六助が、往来に背中を向け、二つ並べたイスの上にふんぞりかえって、ドイツ語の教科書を音読していた。恐ろしくふきげんそうな様子である。
これは昭和22年6月から、朝日新聞に連載された小説です。
終戦直後で、まだ学制改革がなされていませんでした。旧制高校の最後の頃でした。だからその旧制高校の典型的な一コマを描いて小説の筆を起こしたのでしょう。ドイツ語と音読と、この2つは旧制高校の象徴みたいなものだったのです。
それなのに、今では音読もドイツ語もすっかりさびれてしまいました。なぜでしょうか。ドイツ語の人気が落ちているのは、世の中が変わったことが背景にあると思いますが、ドイツ語教師(学者)がかつての人気にあぐらをかいていて、努力をしなかったことも大きいと思います。
実際、ここ数年、ドイツ語を本格的に研究してみて、学界のレベルの低さと大学の授業の工夫の無さに驚いています(哲学の世界もレベルは低いです。哲学という名の哲学史ばかりです。もちろん授業もつまらない)。
授業に工夫が無いのは、皆さんが体験している通りです。
学界のレベルがいかに低いか。いずれ具体的にお話しする機会があると思います。40年以上も前に出た、お世辞にも「詳しい」とは言えない橋本文夫の『詳解ドイツ大文法』を越える文法書がいまだに出ないことに、それがよく表れています。
いよいよ風薫る5月。5月攻勢の時です。12日に再帰動詞と分離動詞とドイツ文の特徴を学んで、直ちに読本に入ります。同時に、新しいヒアリングも試みます。乞御期待
ドイツ語教室の教科通信
連休中の宿題と一緒に、最初のアンケートを送っていただきました。
裏まで沢山書いている人、ほとんど書いていない人、様々でした。このアンケートは記名式になっています。この点はいずれ話し合いましょう。私としては、対話の1つと考えています。
主な意見を紹介し、私の感想を添えます。
なぜ本大学に来ましたか。又、自分の学科を選んだ理由は何ですか
──親元を離れ、自分の力で生活がしたかったので県外の大学を選んだ。
★ 下宿をしてみたいという考えは、多くの大学生が持つようです。青年らしい健全な発想だと思います。しかし、特に女子の場合には、下宿は困るという家庭もあるようです。私自身は下宿をした経験はありません。
★ ミヒャエル・エンデを学びたいという人が2名いました。エンデはドイツでは日本ほどの人気ではないようですが、ドイツ語はとてもきれいだと思います。
★ センター試験に失敗して本学に来た、という人もいるようです。しかし、ここに来てよかったと思えるようにしましょう。少なくともドイツ語については。
★ 本学は宇宙工学が特色なのでしょうか。工学部の人達にはそれを希望する人が多いようです。
★ 静岡の温和な気候に憧れる人もかなりいるようですね。
★ 周りに遊ぶ所が少ないので、勉強するのに好いという意見もかなりありました。
どんな学生生活を送るつもりですか
──自分の様々な可能性をためし、多角的なものの見方を養いたいので、勉強のみならず、サークル活動、対人関係、できればセカンドスクールなど、出来る限り積極的に何にでも参加していくつもりです。
★ 自分を見つけるために、大いに暴れてください。
──自分の将来についてしっかりと考えて、高校時代から憧れていた職業につくために努力したい。また、サークル活動などを通して自分の視野を広げていきたい。
これまでに外国に行ったことがありますか。どこにどういう事でどの位の期間滞在しましたか。どんな感想を持ちましたか
──アメリカにいとこに会いに行った。田舎だったので、とてものんびりした雰囲気だった。また、人がみんな親切だった。
★ ドイツも田舎の小都市がとても素敵です。
──シンガポール観光1週間。いろんな民族がいておもしろい。
──修学旅行でカナダのバンクーバーへ5泊6日。とてもきれいだった。
──修学旅行でハワイに。食べ物から洋服からサイズが大きいので驚きました。こちらの意思を伝えるのは比較的楽ですが、相手の言っていることを理解するのに苦労しました。ヒアリングに力を入れなくてはと思っています。(同感)
──中学2年の時にアメリカのテネシー州に1ヵ月間、1人でホームステイをしました。そこで学んだのは、やはり言葉というものは自分で話そうとしないと伸びないということです。実際、たった1ヵ月のホームステイで驚くほど英語の力がつきました。
あと、テネシーの田舎の農家にステイしたのですが、アメリカといえば男女平等というイメージを持っていましたが、私のステイした家庭ではまるで昔の日本のようにお父さんが一番エライという感じでした。今の日本などよりずっと父親に威厳があったので、驚きました。
──カナダに3年間。むこうの人は、いい奴といやな奴とはっきりしていると思った。
──中学3年生の時、市の交換学生としてアメリカに2週間半いき、ホームステイしました。日本はとても治安がいいなと思いました。アメリカは自然がとてもきれいだった。
──サマーキャンプでアメリカ・メキシコに1週間。
──中学の時、学校の海外派遣でオーストラリアに1週間。4泊5日ホームステイしました。発音がイギリスとは違うのでびっくりしました。
──ツアーで中国に5泊6日。中国は日本に比べて遅れているが、みんな好い人ばかりで、温かい国民性だと思った。
──中学2年の時、友達と2人でドイツのフランクフルト近郊の家に2週間。前に見た学生牢も見たことがあります。フランスのパリにも3日間くらい。素晴らしかったです。また絶対に行く。
★ 2度目は油断しますから、泥棒にやられないように。
──2年前、タイに1週間の家族旅行。「異国の文化」というものを強く感じました。
★ 今では家族旅行で外国へという人も増えているようですね。
──外国に行ったことはないけれど、アメリカ人と何度か話したことがある。とても楽しかった。
★ この積極性を買う。ドイツ人の学生から聞いた話。ドイツ人の学生は外国語を習うと、それを母語とする人を見つけるとすぐに話そうとする、とのことでした。
──高校2年の時、ロスアンゼルスの親戚の所に2週間行った。英語を話せなくては全然ダメだと思った。
中学と高校での英語の授業の印象
──中学は楽しかった。なぜなら、英語だけでなく、アメリカやイギリスの文化や産業のこともやってくれたから、覚えやすかった。高校は受験英語で、グラマーは特につまらなくて大嫌いだった。でも、リーダーは文章を読むのでいろいろなことをまなべて、楽しかった。
★ 全体として、中学の英語の授業には工夫のある授業が多く、良い印象を持っている人が多いようでした。高校は一部の例外は除いて、つまらない授業が多いようです。大学の受験問題がヒアリング重視に変わってきているので、今後は少しは変わるかな?
このドイツ語の授業についての感想
──非常に展開が早いように思います。それだけに予習・復習がものをいう授業のようなので、これからが大変そうです。前回、学生寮に住む学生のビデオを見ましたが、興味深かったので、今後もドイツ語以外のビデオを見る機会を多くとっていただきたいと思います。
★ 今年から、休憩にドイツ語以外のビデオなどをも少し取り入れようかと考えています。あの学生寮には反発もあったようです。尚、授業のペースは生徒が少し早いと思うくらいがちょうど好いと思っています。付いていけないのではと不安の方もあるようですが、心配ありません。家では音読することです。慣れることです。
──先生は人に覚えさせるのがとてもうまいと思った。ただ、もうちょっと説明が欲しいです。
★ 私の授業に対する不満は毎年、ほとんど同じで、その1つが「もう少し説明を詳しく」です。原因は、私が説明は必要最小限にしようとしていること、そして何よりも生徒に音読で慣れるよりもまず頭で理解しよういう間違った考えがあること、にあると思っています。
中級文法に入ると詳しく説明しますが、初等では自然に解決します。現に「文法が分からないので、全く分からなかったが、今はなんとかなっている」という声もあります。
──日本語訳の答え合わせをもう少しゆっくりやって欲しい。
★ これは考えましょう。
──黒板の字をもう少し大きく書いてほしい。(考えましょう)
──先生が、ドイツ語は「教養科目として」学ぶと言ったのに深い違和感を感じた。戦時独語教育を引きずらないでほしい。
★ 意味が分かりません。次回、詳しく持論を展開して下さい。メールで送って下さっても結構です。
──文法よりも耳からドイツ語を覚えるという授業だと思った。
──ドイツ語を少し、話せるようになる気がします。
──青春を謳歌するのはドイツ語を勉強することだというのは、先生にとってそうであっても、僕にとってはそうではありません。
★ あなたにとって青春とは何ですか。否定だけでなく自説を出してくれなくては、対話になりません。
──赤ん坊も耳だけで日本語を覚えてしまうので、先生の授業は正しいが、1年間しかないので、きついものがある。
★ 大人が外国語を学ぶのは、子供が母語を学ぶのと、共通点と差異点とがあると思います。正しい組み合わせや如何に?
──1年間、ドイツ語づくしになりそうな予感。
★ 青春を謳歌しましょう。
──ドイツ語は英語より覚えづらい。
★ ドイツ語の方が規則性が高く、同じ努力で英語の場合の1、5倍の成果があると思います。
★ 再履修の方からは、「今までにない授業」とか、「新鮮な感じがする」という声もありました。
その他
──前回、ドイツ語とはあまり関係のないような話も聞けましたが、それを聞いて、もっと先生とお話をしてみたいと思いました。
★ 学校生活では、友達との付き合いも大切だと思いますが、先生との付き合いも意味があると思います。しかし、それをどこに求めたらよいのでしょうか。
ドイツの学校では Sprechstunde 〔面会時間〕という時間を個々の先生が設けています。その時に研究室に行けばよいのです。私は拙宅に泊まりにきて下さるのを歓迎します。
この連休も、かつて教えていた東洋大学の学生が社会人になって2年目ですが、ようやく休みを取って来てくれました。安城市にあるデンパークという花のテーマパークみたいな所に行きました。そこまでは大変だとすると、例えば水曜日の4時から一緒にビデオを見たりして話し合うとして、数人でも来てくださるでしょうか。
──ドイツ語を勉強するために大学に行く人は外大に行っていると思います。他のことにも力を入れたいので、もう少し考慮して下さい。
★ 生徒を上中下に分けるとすると、上の人に合わせて授業をするべきである、というのが私の考えです。才能とやる気のある人を最大限に伸ばすことが大学の目的だと思うこと、それによってこそ中の人も下の人も最もよく学べること、が理由です。自分の考えで授業を利用して下さい。
──緊張感があり、他の授業よりやりがいがある。
★ その他、「他の授業の生徒に差をつけることができそうだ」という意見もありました。本当は、皆さんを2年間受け持って、独検3級に合格させさせたいのです。東洋大学では1度、そうしました。
──先生は哲学が専門だそうなので、今度、先生の持っている考え方、人生観について、一度じっくりと聞いてみたいです。
★ 私の本はみな、図書館に寄贈してありますし、翻訳以外は読みやすいものです。まずそれを何冊か読んでみて下さい。
──ドイツ一人旅を実現するためにがんばるぞう!!
★ Viel Glueck! 成功を祈る
──高校の時、ベートーベンの第9を歌ってから、ドイツ語の力強さのようなものに興味を持ちました。
★ 私は音痴なので歌は歌いませんが、詩は取り上げたい。
──対話形式の練習の時、どの言葉がどちらの発言か分からないことがよくあるので、区分を分かりやすくして欲しいです。
★ どちらか分からないということは、どちらにしても意味が通るということだと思います。両方の場合を練習したらどうでしょうか。
──なんで「仏の牧野」と呼ばれているのか?
★ 3回の授業等でも既に十分にお分かりいただけると思います
が。
──イノシシはペットとして飼っているのか、食用なのか。
★ ペットにしては、畑の芋類などを勝手に食べすぎると思います。
──本学では、他大学との交流ないし接点が少ないのが残念だ。
★ 東京などの大学には「ニセ学生」というのがいて、余所の大学の授業に無断で出ています。
──フランス語を第1希望にしていましたが、今はドイツ語になってよかったと思っています。
★ Heil Deutsch ! 万歳! この言葉を聞きたかった!
ZUM SCHLUSS 〔終わりに〕
戦後民主主義の教科書として執筆された石坂洋次郎の小説『青い山脈』はこう始まっています。
六月の、ある、晴れた日曜日の午前であった。
駅前通りの丸十商店の店の中では、息子の六助が、往来に背中を向け、二つ並べたイスの上にふんぞりかえって、ドイツ語の教科書を音読していた。恐ろしくふきげんそうな様子である。
これは昭和22年6月から、朝日新聞に連載された小説です。
終戦直後で、まだ学制改革がなされていませんでした。旧制高校の最後の頃でした。だからその旧制高校の典型的な一コマを描いて小説の筆を起こしたのでしょう。ドイツ語と音読と、この2つは旧制高校の象徴みたいなものだったのです。
それなのに、今では音読もドイツ語もすっかりさびれてしまいました。なぜでしょうか。ドイツ語の人気が落ちているのは、世の中が変わったことが背景にあると思いますが、ドイツ語教師(学者)がかつての人気にあぐらをかいていて、努力をしなかったことも大きいと思います。
実際、ここ数年、ドイツ語を本格的に研究してみて、学界のレベルの低さと大学の授業の工夫の無さに驚いています(哲学の世界もレベルは低いです。哲学という名の哲学史ばかりです。もちろん授業もつまらない)。
授業に工夫が無いのは、皆さんが体験している通りです。
学界のレベルがいかに低いか。いずれ具体的にお話しする機会があると思います。40年以上も前に出た、お世辞にも「詳しい」とは言えない橋本文夫の『詳解ドイツ大文法』を越える文法書がいまだに出ないことに、それがよく表れています。
いよいよ風薫る5月。5月攻勢の時です。12日に再帰動詞と分離動詞とドイツ文の特徴を学んで、直ちに読本に入ります。同時に、新しいヒアリングも試みます。乞御期待