ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

 2008年10月から「第2マキペディア」として続けることにしました。

教育の広場、第 173号、モハマド君の手術

2005年08月30日 | その他
        
 昨年(2003年)末、イラクのファルージャでの戦闘に巻き込
まれて左目に重傷を負った10歳の少年モハマド君(サレハ君、
と言う新聞もあります)の目の手術を日本でしてあげようとい
う努力が、大きな運動になりました。

その基金には1週間で1000万円以上の寄付が集まりました。
幸い日本に呼ぶことに成功し、手術も成功したそうです。

 これを始めた橋田信介さんがイラクで銃撃されて、甥の小川
功太郎さんと共に亡くなったという悲劇が加わって、一時はモ
ハマド君の居場所も分からなくなったりしたので、一層国民の
関心を引いたのだと思います。

 一段落した所で感想をまとめます。

 第1に、今回の特徴として確認するべきことは、橋田さんた
ちの銃撃・死亡事件に関して、その家族への悪罵がなかった(
らしい)ことです。これは、前回の3人のイラク支援ボランテ
ィアの人達の拘束事件の時や、先日の小泉首相の再度の訪朝の
時の拉致被害者家族への(少なくない国民の心ない)態度と比
較して大きな違いです。

これは、多分、橋田さんや小川さんの家族が政府批判をしな
かったからだと思います。逆に言うと、日本では政府批判は勇
気がいるということでしょう。民主主義国家の現状として大問
題だと思います。

第2に、モハマド君以外にも「日本に呼んで治療をしてあげ
ても好い人(子供に限っても好い)」がイラクには沢山いるの
ではないか、ということを考えたいと思います。それなのに、
そういう事はあまり意識されないように報道されていたと思い
ます。これも問題だと思います。

第3に、それどころか、そもそもなぜそういう罪なき人々が
沢山傷つくのか、という更に根本的な問題は全然論じられなか
ったと思います。それは分かっていた事なのかもしれません。
しかし、或る事柄を論じる時には絶対に結び付けて考えなけれ
ばならない事柄というものがあると思います。これを避けてい
ては、本当に考えた事にならないと思います。

第4に、全然論じられなかった事として、更に、日本政府の
「イラク復興人道支援」との関係をどう考えるのか、という問
題があります。イラクに派遣されている自衛隊員は通常の給与
のほかに「危険地勤務手当て」として1日3万円支給されてい
るとか聞いています。 300人以上派遣されているのですから、
それだけで1日1000万円以上、国庫から支出していることにな
ります。

このお金を自衛隊の派遣という形ではなく、別の形で使った
ら、一層大きく「イラク人道復興支援」の実をあげることがで
きるのではないでしょうか。こういう事は考えなくて好いので
しょうか。

第5に、以上の事を考えますと、モハマド君への国民の熱い
思いは、その反面に、こういう根本問題を避けて、何か好い事
をしていると思い込みたいという願望があるのではないか、と
いう推測を生みます。少なくとも、嫌な事の続く日々の中に一
服の清涼剤がほしいという願望があるのではないでしょうか。

こういう気持ちも分からないではありません。しかし、清涼
剤は清涼剤であって、本当に涼しくするものではないと思いま
す。

イラクへの米軍の侵攻についてアメリカを強く支持してきた
国々の中でも、スペインでは昨年の秋の列車爆破テロをきっか
けにして政権が交代しました。イギリスでも先日の地方選挙で
与党が歴史的な大敗を喫しました。来年の総選挙では政権交代
があるのではないかと言われる事態になっています。

それなのに我が日本では相変わらず小泉「はぐらかし」内閣
の支持率が50%を越えているのです。年金制度の改革では支持
を失っていますが、「イラク人道復興支援」とやらへの支持は
変わっていません。

第6に、モハマド君のための基金はその後も増えつづけたこ
とでしょうから、多分、1000万円を遙に越える寄付が集まった
ことと思います。その内のいくらをモハマド君のために使った
のでしょうか。残りはどう使うつもりなのでしょうか。

あと何人かのイラク人少年少女を日本に呼んで治療してあげ
ることに使ってもいいと思います。あるいは、イラク国内に適
当な治療施設を作ってあげるのもいい案だと思います。あるい
は、アフガニスタン援助を続けているアフガニスタン人の医師
(たしか磐田市近郊で開業している)を応援しても好いと思い
ます。

こういう基金については報告をした方が好いと思います(ど
こかでしているのかもしれません)。

 (2004年06月16日発行)