なすがままに

あくせく生きるのはもう沢山、何があってもゆっくり時の流れに身をまかせ、なすがままに生きよう。

あるホームレスの話

2005-06-21 21:11:30 | 昭和
昨日は体調不全で自転車通勤はしなかった。今朝も車で通勤した。帰りはどうしようかと散々迷ったが、結局自転車通勤を選んだ。急がずにゆっくりスタートしたが花野路に入るとペダルに力が入る。結局遠賀川河口堰まで時速30数キロで飛ばしていた。昨年江川沿いに小さな公園が出来た。屋根付きのベンチもありトイレもある小奇麗な公園である。僕はその公園で水のみ休息をすることにした。ベンチに座り汗を拭きながら水を飲んでいると向こうから小柄な女の人が自転車を押しながらやって来た。彼女は僕と反対のベンチに座った、そして、僕に「ご主人、ライターを貸してくれませんか?」と僕に言った。僕は「すみません、タバコを吸わないから持ってないのですよ」。「そうですか、すみません」と彼女。実は彼女はホームレスなのだ、自転車の前かごや後ろの荷台にも生活用品が入っていると思われる荷物を満載している。ハンドルにも大きな手提げ袋をぶら下げている。真っ黒に日焼けしているが年齢は僕よりもかなり若い多分40歳代半ば位かと思われた。彼女は日が暮れようとしている江川の水面をじっと目を凝らしてみている。僕は直ぐに立ち去るのも気が引けてどうしようかと迷った。そして、僕は切り出した「奥さんの言葉は長崎なまりですね、長崎出身ですか?」と僕。すると彼女は僕を見て白い歯を見せて言った。「ご主人も長崎ですか?私は長崎市内です」とうれしそうに答えた。「いえ、僕は長崎じゃないです、友達が長崎にいるので言葉つかいが似ていたものですから」。そして、しばし沈黙。それから、僕はデイバックの中から飴玉の入った袋を取り出した、いつもエネルギー補給のためデイバックの入れているのだ。その袋を彼女に示しながら、「ライターはもってないけどこれ良かったら口にして下さい、疲れがとれますよ」と渡した。彼女は飴玉の袋を手に一瞬戸惑ったような顔をしたが、直ぐに笑顔で「すみません、ありがとうございます」と立ち上がって僕にふかぶかとおじぎした。「それでは、これで失礼します、気をつけてください」と僕は自転車のペダルを踏み降ろした。複雑な気持ちだった、あの若さで何故ホームレスに?やりきれない気持ちだった。これが経済大国日本なのかと思った。今夜は彼女はあのベンチで寝るのだろうか・食事はどうするのだろう・病気したらどうするのだろう?と僕は頭の中は混乱してしまった。景気後退でホームレスは増加している、年齢も僕と同じかそれ以上が殆どだと言う。本当に世知辛い世の中だ。