以前クイズ番組で「尺八は、なぜゴロ節を残してあるのか」という問題で、
正解は「喧嘩道具に用いるため」と。これには私も驚き、そのTV番組に
クレーム入れましたが、なしのつぶてでした。ま、たしかに、浮世絵では、
喧嘩道具ではありました。この絵は「侠客、唐犬権兵衛」とあります。
以前クイズ番組で「尺八は、なぜゴロ節を残してあるのか」という問題で、
正解は「喧嘩道具に用いるため」と。これには私も驚き、そのTV番組に
クレーム入れましたが、なしのつぶてでした。ま、たしかに、浮世絵では、
喧嘩道具ではありました。この絵は「侠客、唐犬権兵衛」とあります。
中日新聞夕刊に連載されていた『遊女(ゆめ)のあと』(諸田
玲子作、深井国画)で、たびたび登場してきた不審な虚無僧
が名古屋城内で殺された。幕府の公儀隠密だった。
虚無僧というと「公儀隠密」という説が、まことしやかに流布
されているが、そのような史実は無い。隠密するには、あの
虚無僧姿は目立ちすぎる。「他所者の不審者です」と公言して
歩いているようなものだ。塀や石垣を越えるのに天蓋や偈箱は
邪魔になる。刀はどこに隠し持っていたのか。虚無僧で隠密
活動をするのは無理があるだ。
一方「赤旗」の日曜版に連載されていた『くじら組』(山本
一力作、西のぼる絵)は、土佐藩の鯨漁をする漁師が、沖合
いを通過する黒船を目撃し、幕府に知らせるいきさつだが、
それぞれの登場人物の一挙手一投足に到るまで克明に表現
されて、読んでいても、その場に居合わせているかのような
迫真の描写である。土佐藩にも幕府の隠密が送りこまれて
いるが、漁師や代官の下僕となっていて、絶対に本性を表わ
さない。何代にも亘って、おそらく、山内一豊が土佐に入った
時から送り込まれていて、すっかり土佐っぽになりきっている
から、シッポを捕まえられないのだ。土佐藩も公儀隠密が入り
込んでいることを承知の上で、あえて詮議したりしない。
もし捕らえて処刑したら、幕府への反逆となる。うまく泳が
せて、情報を幕府に送られせているのだ。そのリアリティに、
感嘆する歴史小説であった。