安倍晋三は安田純平さんを真に人命第一で扱うのか、テロ組織に屈しないを貫くのか、説明すべき

2016-03-18 08:06:52 | 政治

 フリージャーナリストの安田純平さんが2015年6月に取材でシリア国内に入ったあと行方が分からなくなった。その安田さんの映像が2016年3月16日、シリアの反政府勢力の活動家のフェイスブック上で公開されたと「NHK NEWS WEB」が伝えている。 

 〈映像を公開したシリア人男性はNHKの電話取材に答え「安田さんはアルカイダ系の武装組織ヌスラ戦線に拘束されており、映像は解放に向けた仲介役を務めている人物から16日に入手した」と話したうえで、映像がどこでどのような状況で撮影されたのかについては「分からない」としています。〉と書いている。

 記事は最後に政府の対応を伝えている。

 安倍晋三は3月17日午前、外相の岸田文雄を首相官邸に呼び、映像についての報告を受けた上で万全の態勢で情報収集に全力を挙げるよう指示したとしている。

 菅義偉(午前の記者会見)「本事案については、これまでも安倍総理大臣の指示を受けて体制をしっかり整えて対応してきているが、今般の映像の公開を受けて、改めて、安倍総理大臣からは『引き続き、邦人の安全確保を最優先で対応するように』という指示があった。内閣危機管理監のもとで必要な体制をとり、さまざまな情報収集をして、対応に全力で取り組んでいく」

 記者「政府や家族に身代金の要求があったのか。また、拘束している集団と接触はしているのか」

 菅義偉「身代金の要求は承知していない。接触については事柄の性質上控えたい」――

 「本事案については、これまでも安倍総理大臣の指示を受けて体制をしっかり整えて対応してきている」と言っていることは、2015年6月に安田さんの行方不明が伝えられてからのことを言っているのだろう。

 「イスラム国」に拘束され、殺害された湯川遥菜さんのケースでは安倍政権は2014年8月に行方不明を把握、直ちに同じ月に首相官邸に連絡室を、そして外務省に対策室を設置。ヨルダンに現地対策本部設置という素早い対応を見せている。

 同じように「イスラム国」に拘束、殺害された後藤健二さんのケースは2014年11月に行方不明を把握、直ちに首相官邸に連絡室、外務省に対策室を設置。ヨルダンに現地対策本部設置と、同じ手続きで進めている。

 安田さんにしても行方不明が伝えられた2015年6月の時点で安倍晋三の「邦人の安全確保最優先で対応」という指示を受けて同じように情報招集や救出に向けた組織を立ち上げてきたということなのだろう。

 そして今回インターネット上に安田さんの映像が公開されたことから、「改めて、安倍総理大臣からは『引き続き、邦人の安全確保を最優先で対応するように』という指示があ」り、必要な体制を取った。

 「邦人の安全確保」とは人命第一を指す。湯川さん、後藤さんの拘束事件時も「人命第一」を言い続けてきた。

 両者が行方不明を伝えられてから年が明けた後の2015年1月20日、二人が後ろ手に拘束され、72時間以内に身代金の支払いがないと二人を殺害するとの動画がインターネットに公開された同じ日、安倍晋三は訪問先イスラエルで内外記者会見を開いている。

 ベイカー・エルサレム・ロイター通信支局長「過去にこうした状況で第3国がこの地域で身代金を支払うといったことがあった。そうしたやり方は今回の問題を解決する上で検討されうるか」

 安倍晋三「先ず、今回の事案については、我々人命第一に考え、各国の協力も得ながら情報収集に当たっております。今後も、人命を確保する上において、全力で取り組んでいく考えであります。いずれにせよ、国際社会は決してテロには屈してはならない、とこう考えております」――

 その後安倍晋三も菅義偉も岸田文雄も「人命第一」を連発した。 

 2015年1月20日の身代金要求の動画公開から4日後の2015年1月24日に湯川遥菜氏の遺体の映像がインターネット上に流され、それから8日後の2015年2月1日に後藤健二さん殺害の映像が流された。

 官房長官の2015年2月1日午前の記者会見。

 菅義偉「この事案発生以来、これまで『人命第一』で、可能な限り、ありとあらゆる手段を行使しながら、全力で取り組んできた。そういう中で、湯川さんに続いて後藤さんが殺害されたとみられる映像が配信された。ご親族のご心痛を思えば、言葉もない。誠に残念で、無念だ」

 記者「日本政府からイスラム国への(直接の)接触は。試みていないとすれば、なぜか」

 菅義偉「今度の事案について、何が最も効果的であるか、そういう観点から対応してきた。関係諸国、あるいは部族長とか、宗教の指導者とか、ありとあらゆる方の中で、日本としては協力を要請してきた」

 記者「日本から接触していないという理解でいいか」

 菅義偉「接触もなかったし、接触することはどうかということも含め、一番効果的なことを政府としては考えて対応してきた」(産経ニュース)       

 要するに仲介者を立てた間接的な交渉に任せて、「イスラム国」に直接接触する試みは一切しなかった。そのような形の「人命第一」であった。

 但しこのような形の「人命第一」だけではなかく、他の形も取っていた。

 同じ日(2015年2月1日)の午後の菅義偉の記者会見。

 記者「身代金を用意していたのか」

 菅義偉「それは全くない。100%ない」(殆んど聞き取れない動画から、「それは全くありません、100%ありません。明快に否定します」だけを聞き取る)

 記者「『イスラム国』と交渉する気はあったのか」

 菅義偉「全くなかった」(ロイター) 

 要するに「人命第一」を掲げていたが、最初から身代金交渉も直接交渉もするつもりはなかった、仲介者任せの“人命第一”が、その正体だった。

 カネを出せと言っている相手にカネは出さずに第三者任せで問題解決を図ろうとする利害の不一致を持ち込んだのであり、その利害の不一致が招いた二人の殺害ということになる。

 但し身代金交渉に応じなかったことで示すことができた最大の利益はテロには決して屈することはなかったという姿勢である。つまり身代金交渉に応じることとテロに屈しないとすることは相容れない姿勢だと言うことである。

 前者を優先させれば、テロに対する敗北宣言ともなりかねない。後者を優先させれば、その姿勢を内外に示すことはできるが、逆に人命は度外視せざるを得ない。

 安倍政権は後者の姿勢を貫くことで邦人二人の命を軽視し、その代償としてテロには決して屈しない、自身にはメリットとなる断固とした姿勢を国内的にも対外的にも示すことができた。
 
 「人命第一」と言っていたのは国民にそのことを悟られないためのペテンに過ぎない。

 だからこそ、今回の安田純平さんの拘束でも、菅義偉は記者の「身代金の要求があったのか」の問いに「身代金の要求は承知していない」と、不都合な立場に立たされたり、事実に反する情報とされないためにあったと肯定することも、今までないと否定することもせずに、情報収集に当たっていながら、そのことに反する聞いていない、あるいは把握していないという姿勢を示すことになったのだろう。

 このような姿勢を最後まで貫くことによって、「人命第一」を口にし続けることができることになる。

 例えテロに屈しない姿勢を優先させたとしても、「人命第一」を言い続けることでそのことを悟られないためのペテンが既に始まっている。

 安倍政権がテロに屈しない姿勢を優先させると決めたなら、ペテンに走ることなく国民に前以てそのように説明すべきである。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-03-18 17:26:42
安倍晋三と呼び捨てにし、安田純平さんと敬称をつけてる時点で、頭おかしいだろう。 安田の共犯かもしれない身代金詐欺かもしれないから、慎重に対応して欲しいものですね。
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