木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

●静養ホーム”たまゆら”  高齢者施設の火災

2009-03-29 14:33:32 | Weblog

 

私の母親が亡くなって2年が経過し、最近は介護や福祉の問題についてそれほど身に迫って考える事がなかった。

しかし今回起きた群馬県渋川市の高齢者施設の火災は、その犠牲者の人生や様々な境遇が明らかになるにつれ、痛ましさが増して来ると共に、直面している超高齢化社会の恐ろしさを再認識させられた事件であった。

 

私の母はほぼ5年間の介護生活を送ったが、大変だったのは最後の1~2年間であった。

長兄が同居していたので、私に直接負担がかかったわけではなかったが、様々なことで精神的には随分疲労した。

それでもまだ親族がいての介護生活であった分良しとしなければならないと思う。

 

渋川の火災に巻き込まれた犠牲者は10人だそうだが、多くは高齢や病気などで生活に困った末、住み慣れた土地を離れ入居したと言う。

まだ身元不明の4人のうち3人は身寄りのない墨田区の生活保護受給者だそうだ。

運営をするNPO法人の理事長(右写真)は84歳であるが、60歳を過ぎてから福祉事業に参入し、金銭トラブルが続いて経営は順調ではなかったせいか、自ずからサービスも低下し施設にかける費用もカット、確認申請も出さずに増改築を繰り返していたと言う。

 

現在がどんなに恵まれていたとしても、人間はいつそのような立場になるか誰もわからない。

少なくとも高齢者の50%は平均5年の介護生活を送る時代が来たと言う事である。

 

一昨年からデューデリの仕事で有料老人ホームの建築調査を数件したが、ほとんど多額の入居金を払い、20万円/月前後の出費を考えなければならない状況である。

公設の老人ホームはその数が少なく都会では相当な期間を待たなければ入居出来ないことを考えると、現実は中間的な様々な方法を考えなければならないと思う。

 

介護福祉の事業専門家の春山満氏は、自らの発病、障害経験を踏まえ、介護に必要なのは施設もそうだが、むしろ”心のケア”だと言っている。

肉体は弱っても人間としての尊厳を持って生きたいと願う心を大切にすべきだと言っている。

 

ささやかな母の介護を通して私にも良くわかるし、今回の犠牲者の方々もそれを一番望んでいたのではないだろうか、、、。


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