木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

一級建築士問題について

2006-07-30 22:45:48 | Weblog
今日の新聞に一級建築士の内、構造設計と設備設計を専門とする建築士
について、新たな資格を設ける方針を国土交通省が決めたとの記事が
出ていた。昨年の姉歯事件以来、一級建築士の資格について議論がされ
ていたが、一連の耐震偽装の過程で元請の一級建築士が一切構造チェック
能力がなかったことから、一級建築士の能力を高める必要があるとして、
新一級建築士(特級建築士?)試験の創設や建築士事務所を意匠、構造、
設備等専門別に登録する案等が出されたが、建築士団体から、拒否され
今回の案に落ち着いたと言う。
記事を読んでいて、私には多少の違和感がある。普通我々建築士は
仕事を受注する際、其の協力者として長年付き合った信頼の置ける
構造設計者しか頼まないし、色々な事情で新たに構造設計者を選ばなけ
ればならない場合は、其の能力について実績と人間性に十分な信頼が
置けなければ頼まない。又設備設計についても同様であるが、構造
設計と違い、設備の場合はスペックと費用を決めることが設計者の最低条件
であり、その後現場で設備業者と最終的な収まりを検討する事が可能であり
又通常そのようなケースが多いと思う。従って構造設計ほど厳密な資格、
能力査定は、必要ないのではないかと思う。
このような立場からすると、現在でも構造設計士なる国家資格はあり、ことさら
改めて、資格を作る必要性を認めがたい。あえて言うと、余りに多い一級建築士
のさらに上の資格、特級建築士資格を作り、建築士の諸氏の研鑽を促すことが一番
説得力ある解決策ではないかと思う。
しかし、その上で言いたいのは国交省始め各自治体の責任とこれからの対策あるいは現状の改善策が全然出てこないことである。長年申請業務や、問い合わせで苦労してきた立場からすれば、改善点はたくさんある。規制緩和で多く出来た検査機構
の改善はしなくて良いのか? 資格問題で幕引きでなくもっと民間の実情を知る努力をしてもらいたし、検査側の改善をと思うのは、私だけではないと思う。


マリン・リゾートと公共投資

2006-07-27 00:03:02 | Weblog
今日は夏本番を感じさせる暑さだった。海との付き合いの
増える季節であるが、先日新江ノ島水族館へ行ってみた。
評判が高く、外観も中々モダンな建物であるため期待して
行ったが内部の動線計画は旧態依然のもので正直言って失望した。
一本の動線に皆がぶら下がって一様に動くスタイルから早く脱皮
して欲しい。八景島は若干のチャンネル切り替えがあったように
記憶しているが江ノ島は狭い敷地上やむをえなかったのかもしれない。
海とのつながりが売り物と言うが、海側は相変わらずの汚い砂浜と、
値段の高い海の家とくれば、これが日本を代表する湘南のビーチなの
だろうかと思う。新江ノ島水族館は完全な民営なのか?創業者は日活の
堀社長と聞いた。
海辺は多くの権利や法律が錯綜していて、中々一民間業者の手に負える
ものではないし、だからこそ官公庁が調整を取って大事な資源を保全
していく必要があると思うのだが、、、。
利用者不在の公共投資がまだまだ横行する時代ではあるが、
人々の健康や自然資源を守っていくための最低限の社会資本整備
(それは海辺や森林、丘の整備)に邁進する官公庁が出てきて欲しいと思う
ビーチリゾート湘南を抱える神奈川県庁や自治体の人はどう考え
ているのだろうか?
昔の海を愛した一人の人間としてふと思う。






天谷先生35周年記念パーティ

2006-07-25 22:40:17 | Weblog
昨日は品川パシフィックホテルで、会計士の天谷先生の事務所の
35周年記念パーティがあった。26年前の吉澤ビルの完成パーティで
お目にかかって以来のお付き合いだが、その間色々お世話になった
ミレーヌ・トモダの本社ビルに始まり、千葉真一さんの体育館計画
伊藤社長の本社ビル計画等々。其の時々での色んな議論の繰り返し
考えてみるとお世話になってばかりで、中々お役に立ててないことに
気づく、心しておくこと。
久し振りにミレーヌ・トモダの友田社長に会う。お目にかかれると
思っていなかったが、相変わらずダンディーでお元気そうであった。
25、6年前当時の友田社長のBMWで、東京のこれというファッション
ショップを見て回ったのがついこの間のようである。
旧知の人達とのなつかしく有意義な一夜であった。
天谷先生ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。

パロマガス湯沸し器とリスクマネージメント

2006-07-22 21:16:48 | Weblog
私たちにもなじみの深いパロマガス湯沸し器の不祥事で
死者が出たことが報じられた。普通に使用している器具で死者が
出るケースが昨年から頻発している。昨年暮に松下電器の暖房器具
のリコール問題があり、今年になってシンドラー社のエレベーター
事故で死者が出た。この間は銀座の料理店で一酸化炭素中毒で
死者が出ている。
湯沸し器の中毒死は、現在の建物構造と無縁ではない。
今は殆どの建物が、気密性の高いサッシを使用しており換気が
十分でないとすぐにCOが充満し、発症から短時間で死に到ると
言う。昨年のアパート事故死は、パロマ自体の器具の老朽化や不具合が
早くから指摘されていたようであるが、サービス業者は適当にお茶を
濁していたようだ。
一連の出来事で言える事は、現代と言う成熟社会はすぐ身近なところに
危険が存在するが、我々はそれについての認識が比較的薄いということだ。
事件がおきて初めて気がつく。それでは間に合わない。
いわゆるリスクマネージメントが出来ていないと言うことになる。
建築の世界でも、昨年から恐ろしい話ばかり起きている。耐震偽装などは
典型的な例であるが、これなども国レベルで議論するとすぐ新しい保険を
造るとか金の話ばかりが出てくる。
リスクマネージメントの基本は、個々人が自分の周りの出来事について、
不具合をなくそうと努力し管理することだと日本のリスクマネジャーの先駆者
大谷勝美氏から教えられたのは20年前のことであった。
性悪説に基づくアングロサクソン流のリスクヘッジにすぐ走ることなく
まず身近なレベルで、自らの仕事と生活を正しく律していくことから始める
必要があると思う。







天王洲アイル

2006-07-21 23:03:42 | Weblog
今日は東品川の天王洲アイルに、知人の会社を訪問。
久し振りにりんかい線でアクセス。天王洲と言うと
以前はシーフォートスクエアしか頭に浮かばなかったが、
今はたくさんのビルや、マンションが建っている。
りんかい線の駅からすぐに2階レベルにペデストリアン
デッキが伸びそれぞれのビルを連結している。ビルの
2階は商業施設となっており、よく見られる無機質なデッキ
ではない。ビルの1階部分もテラス、庭園になっていて
歩いて見る風景も落ち着いた感じである。
ただ惜しむらくは、デッキそのもののデザインがいただけない
周りにある程度気を配ったのなら、デッキ・デザイン特にルーフ
にもう一工夫あれば、秀逸なオフィス外部空間となったと思う。
都心で展開されている汐留、六本木、その他の大規模開発でも
多分この収益を生み出さない外部空間の出来次第で、これからの
開発の価値が決まりテナント誘致にも大きく影響してくるのでは
ないかと思う。




上海ティールーム 茶語

2006-07-18 22:40:54 | Weblog
横浜そごうの4階に中国茶の喫茶室がある。婦人服の売り場
の奥にあるので、知る人は少ないと思う。しかし店頭に並んでいる
中国茶のショーケースは、立派で数も多いのに驚く。
ただ残念なことに、ティールームのインテリアはデパートのテナント
だからやむをえないが、上海風を目指しているものの今一である。
今日は雲南プーアル茶を喫してきた。
世界十大銘茶の一つと書いてあった。
昨年、中華街の悟空茶荘で曾社長自ら淹れてくれた幾つかの
お茶の味が忘れられない。
それは日本の抹茶のお手前とまた違った趣の淹れる過程を楽しみ
ながらのあっという間の一時間であった。
日本の街角に多くの喫茶スペースが出来てはきたが、たまには
ゆっくりと心を落ち着けてお茶を味わう時間と空間を持ちたいと思う。


住宅設計

2006-07-17 23:11:00 | Weblog
住宅作家の篠原一男さんがなくなった。
最初は端正でシンプルな作品がいかにも清家さんの一門らしく
印象に残っていたが、最近はまずその形態の奇抜さに驚くことが
多かった。其の変化をきちんとトレースしたことはないが、やはり
数学を専攻した人だけに、理論に忠実な人だったのかもしれない。
今、住宅のテーマは何があるのだろうか?
これほどプレハブメーカーの占有率が増え、一極集中でマンション居住者
が増え、しかも少子高齢化、住宅の数は世帯数を上回る。
最近住宅作家と言う言葉を聴かない。4年ほど前 北沢に住宅を設計した。
其のとき都内の主だった住宅地を調査してみた。白金三光坂、成城、田園調布
代沢、青葉台、松涛、高級住宅地にはそれなりの戸建住宅がまだあるが、
建替えるたびに、スケールが小さくなっていく。
そろそろデザインや形の奇抜さばかりでなく、長持ちのする家を幾世代に渡って
使ってみようと考える人や建築家が出てきてよい時代ではないかと思う。

銀座の街並みと建築

2006-07-15 21:29:47 | Weblog
毎日暑い日が続くが今日は銀座に行った。久し振りに並木通りを散策する。
おそらく並木通りは今、日本で最もファッショナブルで洗練された通りだろう。
表参道がシャンゼリゼなら並木通りはフォーブルサントノーレといったところか
とにかくキラ星のような店舗が並んでいる。
一丁目の街角に面白い曲線屋根の建物、黒川紀章氏設計のスパツイオ・ブレラ
小さな建物だが、周囲の鉄骨円柱のみで構築し、アルミ部材で外壁を囲っている。
荒いアルミのディテール、70年代の黒川さんを思い出した。人は余り変わらないものだ。ペントハウスの円柱が収斂していく空間がフラクタルな雰囲気で売り物のようである。 ジュエリーの店舗らしいがいかにも黒川さんらしい作品。
しばらく行くと左に伊東豊雄の表相建築ミキモト、表参道の樹木調ビルよりは開口部の収まりが綺麗。でも四周同じデザインだとくどい感じ。隣に三井不動産、フジフィルムの商業ビルが建築中、設計はカジマデザイン、さらにしばらく行くと和光の商業ビルが建築中、これは清水建設。7丁目には青木淳のルイヴィトン、これも表相建築であるが、壁面が変化するだけミキモトより面白い。この間に最新のブランドショップが並び、流行の飲食店舗が華やかな雰囲気を作っている。植栽も昔の柳でなくシナノキやリンデンといった樹木を植えている。夕刻が特に良い。どうやら時代を感じさせる通りが出現したようだ。


建物管理とデューデリジェンス

2006-07-11 23:09:16 | Weblog
今日はPホテルの建物管理の議論。数年前から新しく建築を造ることより
出来たものを売買し利用し管理していく過程に、今までと比べて多くの人と金が投入される事実を目のあたりにし、設計という限られた分野だけでなく建物のライフサイクル全般に関与する必要性を痛感。
これは今まで不動産業や建設業の企業の請負仕事であったが
不動産が証券化されるような現代では、むしろ金融投資業に包含される仕事となってきた。
それだけ合理的な日常の管理が重要になったと同時に、建築設備の更新投資を経営と重ねて戦略的に考える時代が来たと言って良いのではないか、やり方次第でその建物の経営に大きな差が出てくると思う。
建築のプロとして又少なからず建築経済の中で生きてきた人間として、知識と経験を役立てる時代と言えそうだ。

調査研究活動

2006-07-09 21:10:26 | Weblog
私は大学の研究室で都市計画を専攻した。建築設計を志しながらなぜ都市計画を専攻したのか 一つは当時の建築界のテーマが成長を続ける都市(アーバンデザイン)にあったこともあるが、やはり私自身社会的な出来事に関心が強かったからだと思う。
設計の仕事は、考えようによって内向きの仕事である。繊細なデザインや細かなデテールの世界は、職人的な修行が必要とされると言える。
しかしなぜか、そこに没入する気になれなかった。
大学での抽象的な研究、黒川事務所での企画の仕事と社工研での調査研究の仕事の延長で、私の現在も官公庁のリサーチワークが1/3を占める。
今後の私の建築設計にどんな形で寄与してくれるのかよくわからないが楽しみではある。視野の広い建築設計を目指したい。