木村 和美 Architect

建築家木村和美の日常活動とプロジェクトについてのブログ

●川崎チネチッタ

2009-05-20 21:55:52 | Weblog

 

川崎駅前に用事があり、行くと駅のコンコースは大変混雑していた。

何事だろうと見ると川崎駅ビル”川崎BE”の今日が改装プレ・オープンで、プレス関係へのお披露目と言う事だった。

西口のラゾーナ一体の街づくりも着々と進んで、以前と見違えるような川崎の駅前となってきた。

 

東口駅前の既存の店舗群はどんな具合だろうと商店街を歩いてみる。

さいか屋の裏側に、古くからあった映画街が”チネチッタ”と名前を変えて随分たつが、私は最初の頃のチネチッタしか見たことがなく、今は物販店や様々な施設を廻りに造り全体を”チッタ・デッラ”と呼んでいるそうだ。 

入り口から石畳のイタリア風の雰囲気が連続し、特徴的な黄土色や、オレンジの外壁を持った建物群が現れてくる。

 

チネチッタを経営しているのは、大正時代から映画館を経営してきた美須興行、今はカワサキ・ミスと言うが福岡のカナルシティなどをデザインしたアメリカのJPI社に設計企画を依頼して、イタリア風の町並みを作り上げたと言う。

古くからの経営とは言え、地元資本としてよくここまで出来たと感心した。

 

バリアフリーの斜路を歩いて自然に上れる店舗構成になっていて、上部のカフェの屋外テラスで休憩した。

囲まれたテラスから外の町並みは見えず、カンツオーネが聞こえてくると、イタリアン・ムードが一杯になるが、残念な事に建物のディテール、スチール・ドアや手すりはフラットバーなどの現代物なのでいささか興ざめである。

 

私見だがイタリアの町の最大の特徴は、何時までもそこにいたい気持ちを起こさせる事ではないかと思う。

ローマの”トレビの泉”やスペイン階段の噴水周りは、とにかくいつも夜遅くまで人が佇んでいる風景がおなじみである。

初めてトレビの泉を見た時は、薄暮の時間で自然光と照明の程よいカクテル光線は、彫刻と泉をこの世のものではないように美しく見せてくれた思い出がある。

 

 

そこまで望むのは無理にしても、川崎チッタデッラは良くできた街づくりだと思う。

線路側の、丸井とオフィスがある部分は、随分前に通称”Kプロジェクト”と称し私がいた黒川紀章さんの事務所で計画を練ったビッグ・プロジェクトであった。

当時目標としたコンセプトは”クラリティとラビリンス”明快さと迷路のような二面性を持つまちづくりであった。

 

今その場所に出来ている施設は、黒川氏の構想とはまったく異なるものではあるが、その向い側の映画街チネチッタが、このような一種のラビリンスをもつ建物群を作っているのをみて、私にはいささか感慨深いものがある。

 

色々な素晴らしいアイデアも、天の時、地の利、人の和が揃わなければ中々思うように現実化しない、ある種建築家の業を見るような思いではある。


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